「悪魔を殺して平気なの?」「天使と堕天使も殺したい」   作:サイキライカ

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喜劇は喜劇だけどさぁ…

「姉様、どうしてここに居るんですか?」

「白音!?」

 

 さあて、クソくだんねえ喜劇を楽しませて……

 

「どうしてその人の隣に居るんですか?」

 

 あ、あれ?

 

「白音……?」

「わたしからだいすきなひとをとっちゃうんですか?」

 

 な、なんか狙った展開と違うんだが……?

 

「落ち着いて白音!?

 私はお姉ちゃんとして交際相手はきちんと選ぶべきと」

「わたしのしあわせ、またとっちゃうの?」

 

 やべぇ。

 目からハイライト消えて露骨にやべぇ空気纏ってやがる。

 って、纏ってんの空気じゃねえ。

 修行として普段から練るよう教えた小周天で練った氣が漏れ出して可視化してやがんだ!?

 

「おねえちゃん」

 

 こてんと首を傾ける様がもうホラーにしか見えねえ。

 

「おはなししよう?」

「にゃあああああああああ!?」

 

 プレッシャーに負けて白音の姉が全力で逃げ出す。

 おかしいなぁ。俺は喜劇になるよう「まいざわさん」……。

 

「なんだ?」 

「ほうかごまってますね?」

 

 それだけ言うと白音は氣を纏って屋上を蹴って姉を追った。

 

「……さて、寝るか」

 

 取り合えず考えるのは止めよう。

 調子こき過ぎて最終兵器染みた何かを生み出しちまった責任は……ねえよな?

 

「一体何の騒ぎですか!?」

 

 午後は丸々サボるつもりで寝ようとしたところで生徒会が雪崩れ込んできた。

 

「舞沢さん!!

 屋上で何があったんですか!?」

 

 破壊された屋上の惨状に非難が俺に向く。

 ……どうやら俺は傍観者じゃなくて喜劇の役者に抜擢されてたらしい。

 こうなりゃ自棄だ。

 馬鹿躍りを踊りきるしかねえな。

 

「塔城の姉とかいうのに襲われたんだよ」

「塔城さんの……?

 まさかSS級はぐれ悪魔の黒歌ですか!?」

「テメエらの格付けなんか知らねえよ」

 

 確かに強かったが、あれでSS級って悪魔の規準はどうなってんだ?

 俺が抵抗できる程度だったし日本神話の基準だったらせいぜい上位とかその辺りだぞ?

 

「塔城が追っかけてったから心配なら今からでも追えばいい」

 

 転移系の術でも使わねえと無理だろうが。

 

「貴方は追わないんですか?」

「なんで?」

「……塔城さんは貴方を慕っています。

 心配じゃ無いんですか?」

「別に。

 あっちの目的は俺っつう悪い虫がくっついたから払いに来ただけみたいだし、心配する理由がねえよ」

「しかしそれで塔城さんまではぐれ悪魔になったら」

「お前が困るだけだろ?」

「……校舎の修繕費はそちらに持っていただきます」

 

 せめて一つぐらいは勝ちたかったのか、そうシトリーは言うと屋上を後にした。

 

「払ってくれるかねえ?」

 

 俺だったらはぐれ悪魔の侵入を許した管理不手際を突いて逆に叩くけどな。

 

「ま、どうでもいいか」

 

 漸く静かになったんだからと俺は一時の安らぎを寝ることに使おうとして、携帯が震えている事に気付く。

 

「今度はなんだ?」

 

 開いてみればうーちゃんからのメールだった。

 

「『放課後前回の公園に猫を連れて来るよう』ね。

 承知しましたっと」

 

 返信を送ると今度こそ俺は寝ることにした。

 

 

~~~~

 

 

 で、放課後いつもの公園に顔を出してみたんだが……。

 

「この度は本当に申し訳ありませんでした」

 

 邂逅一番で白音の姉から土下座されたわけだ。

 

「別に気にしちゃいねえよ」

 

 死体蹴りは大好きだが、ハイライトが消えた白音が横に立ってる状態のこいつを蹴っても面白い展開どころかめんどくせえ事になるのが目に見えてるしな。

 

「私からもすみませんでした。

 姉にはよくいって聞かせましたので、同じことはもう起こりません」

 

 ね? と問う白音に土下座したままカタカタ震えて「ハイ」と答える姉。

 

「取り合えず起きろ。

 もうちょいしたらうーちゃんが来るだろうから」

「うーちゃんがですか?」

 

 漸くハイライトが戻ってきた白音に事情を知らない姉が誰だと首を傾げる。

 

「待たせたの」

 

 礼儀を欠くとヤバイから説明しようとした矢先に本人が登場した。

 

「よう」

 

 そしてその後ろにタケさんまで来ちゃってるよ。

 

「な、な、なな」

 

 なんちゃってとはいえ仙術使いらしく一目で神格を見抜いた姉が、指を出しかけて不敬だと引っ込めた中途半端な体勢でガタガタ震え出す。

 

「そう怯えるでない猫よ。

 妾達日本神話は主に危害を加える気は無いのじゃから」

 

 そう言うと姉は一転目を点にする。

 

「え?」

 

 どういう事だ?

 

「昨日冥界陣営と談合しての。

 正式に黒歌と白音の二人を日本神話が身請けをすることになったのじゃ」

 

 唐突な話に固まる二人を他所にタケさんがうーちゃんに代わって話を続ける。

 

「ここ最近、各神話勢力に対し無差別テロを繰り返している『禍の団』なる組織がある。

 そこの黒猫がそこの一派に所属しているのが解ったから利用させてもらうために引き取ったんだよ」

「っ!?」

 

 タケさんの言葉に姉が固まり白音が姉を見る。

 

「とと様、そのような言い方では怯えさせてしまうでしょうが」

「む、軽率だった」

 

 うーちゃんの苦言にタケさんが本気で申し訳なさそうに謝る。

 ほんと、タケさんはうーちゃんに甘いな。

 

「言い方が悪かったな。

 ともあれ無差別テロを素直に受けてやるほど日本神話は暇でも鷹揚でもない。

 故に、元々両親共に日の本の国に住まう者だった白音、黒歌の二人を日本神話は拉致監禁と無断転生させた冥界陣営から取り返す事にした」

「利用するため、ですか?」

 

 白音を庇いながら膝を震わせ、そう問う姉。

 

「お前達は被害者だとはいえ、流石に無償でやってやれるほど日本神話も余裕はない。

 別にこの提案を拒否して大陸に逃げるってならそれでも構わねえぞ?

 その場合は身請けの話は流れて姉妹諸共逃亡者となるがな」

「………」

 

 タケさんの言葉に姉、黒歌は苦虫を噛む。

 

「とと様…」

「かか様までが腰を上げた以上もう座していられる状況じゃない。

 その意味は解っているだろううーちゃん?」

「ですが…」

 

 タケさんの叱りにうーちゃんが俯く。

 そうこうしていると、突如黒歌が伏した。

 

「その件、謹んでお受けいたします。

 ですが白音は、妹は平穏に過ごさせてください。

 であればこの黒歌、如何様な任も命の限り果たして見せます」

「姉様!?」

 

 黒歌の言葉に白音が悲鳴を上げる。

 

「心配すんな。

 やって貰うと言っても禍の団が日本で活動を始めるまで潜入して適当な具合を見計らって戻ってくればいいだけだ。

 その間、妹のほうはこいつに付けておく」

「おい」

 

 なんでそうなる?

 

「俺を巻き込むなよ」

「仕事の一環だと思え。

 事が始まるまでに仙猫として仕上げるのが俺からの指令だ」

「……へいへい」

 

 仕事ってなら仕方ねえ。

 面倒に頭を掻いていると白音がこっちに来て頭を下げた。

 

「改めてよろしくお願いします」

「勝手にしろ」

 

 もうどうでもいいや。

 なんでうーちゃんが俺達を見て満足そうに笑ってんだか。

 ほんと、ワケわからねえ。

 

「ちょっと」

 

 と、今度は黒歌が突っ掛かってきた。

 

「白音に変なことしたら許さないんだからね?」

「ね・え・さ・ま?」

 

 黒歌の釘刺しに近付きたくない空気を纏う白音。

 

「と、とにかく白音の事は任せたわよ!!」

 

 そう吐き捨て黒歌は仙術で飛んで逃げた。

 ……なんなんだかな。

 

「まあいいか。

 他になんかあるか?」

「暫くはこのままだ。

 悪魔達が取り零したはぐれ悪魔が出ればそれを狩れ。

 禍の団が動き出したらまた連絡する」

「委細承知」

 

 そう言うと二人は帰っていった。

 

「……帰るか」

 

 踵を返して公園を出れば何故か白音も付いてくる。

 

「なんだよ?」

「一緒に居させてください」

「……勝手にしろ」

 

 いちいち振り払うのもめんどくせえ。

 どうせ付き合いも今生で終わりだ。

 目障りになるまでは、好きにさせてやるよ。




取り合えずここまで。

うーちゃんというか日本神話の神は基本縁結びが趣味。

後は分かるな?


次回は簡単なプロフィール書いてから白音の修行()です。

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