でもウマぴょいから追ってるし多生の延期はへーきへーき。
アニメのスぺちゃん可愛すぎじゃない?
ウマ娘。それは異世界から受け継いだ輝かしい名前と競走能力を持ち人の夢を乗せて緑の映えるターフを走る国民的エンターテイメントスポーツの主役で人気者である。
彼女達のひたむきに走る姿やその可愛らしい容姿とのギャップが人を引き付けるのだろう。ただ走るだけではあるが人々はそんな姿に夢を見て夢を託す。
そしてウマ娘はそんな人々の声援や応援を背に受けて自分たちが生まれた意味を、その身に宿る名前の誇りを再認識するのである。
さて少し話を移そう。ウマ娘として人気者になるにはどうしたらいいだろうか。
まず高い成績をたたき出す。大きなレースをたくさん勝ったりなどすればおのずと人気はついてくる。私の同期であるナリタブライアンなんかがそうであろう。強すぎて退屈などと揶揄されることもたまにはあるが多少のやっかみも人気者には必要な要素だ。私にはそこまでの抜けた実力がなかった。
次に特徴的な走り方をする。大逃げや追い込みなどはおのずとレースが派手になり見てるものに単純な見てわかる面白さゆえに支持を集めやすい。これも私の同期のタイマンバk、ヒシアマゾンなんかがこれにあたる。簡単に真似できるものではない。あれは自分の適性と研究の成果である。
そしてタフな体だ。軽んじられがちだがタフネスは非常に重要な才能である。必然的に出てるレースが多ければその名前を目にすることが多くなり自然と名前や姿を覚えていく。後輩でアイツと同期のキンイロリョテイなんかがそうだろう。あんなにレースに出て勝ち負けに持っていけるんだから素直に尊敬する。生憎私の足は怪我と隣り合わせだった。
アイツの話をしよう。
成績は私より良かったがまだ特筆するほどではなかった。少し違うだろうか。まだそこまでだったがアイツの走りは間違いなく次の伝説を作るであろうその途上であった。それくらい鮮烈な走りをしていた。
アイツの走り方は特徴的で普通の逃げとは違う。バカみたいな速度で後続を置き去りにしてそのままゴールへと駆け抜ける。普通ならとある愉快な先輩のように途中で力尽きるのにアイツは違った。むしろゴール前で加速するのだ。逃げて差すなんてチートもほどほどにしてほしい。そんな冗談みたいな破天荒なレースに人は夢を見たのだろう。
押しも押されぬ人気ウマ娘。それがアイツ、サイレンススズカのその時点での評価だった。
私の話をしておこう。
成績はようやく重賞を勝利した程度だった。これでスズカと同期くらいだったら新進気鋭のウマ娘として名乗れたのだろうが私はブライアンと同期である。ウマ娘としての成長のピークはおそらく過ぎたとみられても仕方なかった。
走り方は正直凡庸だ。よく言えばセオリー通り。悪く言えば面白みに欠けるだろう。
最近上り調子の一世代前のウマ娘。それ以外に特に語ることのないウマ娘だ。
その日は展開はわかりきっていたはずだった。だけれど大欅の向こう側、先頭に躍り出ていてのは私だった。
夜のトレセン学園。私はよく負けたウマ娘がうっぷんをぶちまける切り株の前に立っていた。中を覗き込めば今にも深淵に吸い込まれそうな暗闇が広がっていた。まるで自分の心を映しているかのようにも思えた。その暗闇が今は心地が良かった。
「探したぞ、トラップ」
切り株に向かい合う位置から声をかけられる。顔を上げはしないがその声の主が自分たちの世代における一等星であるナリタブライアンのものであることは分かった。シンボリルドルフ以来の三冠馬。学園最強のリギルに所属するまごうことなきスーパースターだ。付き合いは入学からで長いが今に限ってはその声音からは相手の表情をうかがい知ることはできなかった。
「なんだブライアン。お前はスズカの心配はいいのか?アマさんの様子を見るに知り合いじゃないのか?薄情なウマ娘だなあ」
人に会いたくなかったから私は突き放すようにブライアンに対して嫌味を返す。おそらくひどい顔をしているだろうから顔を見られたくはなかった。
「……いきなり飛び出していった同期を心配するのはそんなに不思議なことか?ともに切磋琢磨してきた仲間を思うことは薄情なことなのか?」
「スズカはもう走れないんだろう。さっき聞いたよ。」
私はブライアンの言葉を無視してそう続ける。ブライアンは悔しさをにじませながら短く「ああ」とだけ返した。
「じゃあ私は何のために走ればいいんだろうな?」
自暴自棄気味にそう言い放った。欲しくて欲しくて仕方なかったはずのG1タイトルが自分の心に呪いのように重く重くよりかかっていた。
「あの日私の勝利など誰も望んでいなかった。皆が望んでいたのはスズカの圧倒的勝利であってスズカの伝説だったはずだろう。わかってるよ。あの日の本当の勝者が私じゃないことくらいさ。そんなこと私が一番。あれがなければ私じゃなくて勝っていたのがスズカだったことくらい。走っていた私が一番わかっているんだ」
うんざりしたようにうつむいたまま静かに言葉をこぼす。ゴールした時に歓声はなくウイニングライブは一応開催されたがその客席はとてもじゃないがG1のウイニングライブと言えるものじゃなかった。そんな惨状だったのだ。頑張って強がったとしてもわかりきってはいたのだ。
「だとしてもあの日あの事件の後に勝利を手繰り寄せたのはお前の精神力と判断だろう。」
「皆気にするなとそう言ってくれた。だけどさ、本当の勝者なら気にする必要なんてないだろう。そう声をかけるということはあの日の勝者は私じゃないんだろう。」
心無い言葉もいっぱいあった。偽りの盾の女王。そうとまで呼ばれていた。
「だから何としてでもスズカに勝ちたかった。勝ちたかった。勝負すらできないなんてあんまりじゃないか」
汚名を濯ぐチャンスすら二度と訪れないなんてあんまりじゃないか。
私はあの日何としてでも勝ちにいきたかった。ブライアンに追いつくために。屈腱炎を抱えた私は無茶なスケジュールは組めない。かといって実績のない私はレース数を少なくして大レースだけ出るということはできなかった。だから実績が必要だった。4年半ぶりに掴んだG1のチャンスだった。メンバーもスズカ以外は控えめでもしかしたらの思いもあった。
『サイレンススズカ……サイレンススズカに故障発生です。何ということでしょう。これは、大変なことになりました。サイレンススズカ、大丈夫でしょうか。大欅の向こう側で、いったい何が起こったのか』
先頭を異次元の速度で駆け抜けていたスズカの走りがおかしくなった時、チャンスだと。そう思った。一瞬どころじゃすまない時間レースを動揺が支配した。だから私はあの時思い切ってスパートをかけた。明らかに皆の反応が遅れた。それは致命的だった。
悔いがないわけはなかった。だけれども勝負がどうあろうとG1勝ちの、盾の栄誉が欲しかった。あの4角を曲がるまでは。
4角を曲がったところだった。私の残酷なまでのスパートで優位に立っていたはずの私の眼には、あるはずもないあの逃亡者の幻影が映っていた。そしてその影は結果を望んだ私をあざ笑うかのようにのはるか先にゴールを駆け抜け見えなくなった。
客席の反応はなく電光掲示板を見るまで私は自分が勝ったことなどわからなくなっていた。
その日誰より結果を望んだ私は皮肉にも勝利という結果を得たことで、敗者のレッテルをはられてしまうことになった。
「なあ、正直に答えてくれ。あの日の勝者は誰だったんだ?」
顔を上げまるですがるようにブライアンに私は近づこうとする。自分がどこにいるかなんて忘れて。
足元への注意が疎かになっていた私は切り株の端に足を引っかける。あとは自由落下の要領で切り株の穴に落ちていくだけだった。
「弥生賞の時みたいに走ったのに、お母ちゃんに勝ったところを見せてあげたかったのに、私は……調子に乗ってたんだぁ」
切り株の穴から見上げればそこに映っていたのは涙目のスペシャルウィークだった。
どうやら私、オフサイドトラップは半年ほどタイムスリップしたらしい。
オフサイドさんの世界線
スぺちゃんが上京後府中競馬場に行かない
↓
スズカさんに一目ぼれしない
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リギル入団テストでブーストかからずトレーナーの目に留まらない
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スピカに入らない
↓
沈黙の日曜日を乗り越えられない