オフサイドさんが腹黒で性格が悪いかもしれません。もしオフサイドトラップのファンの方が不快に思われた場合この小説は公式さんのガイドラインに従い削除いたします。
ゴルシさんが出てきますがやや暴力的かもしれません。まあこっちは原作どうりか
ダービーの後、私は夏競争にあたる七夕賞を勝ち重賞勝ちを手にし無事に以前と同じように秋の天皇賞への参加準備を整えていた。七夕賞を勝った日はアマさんにチケ先輩、そしてブライアンも祝福してくれた。しかし喜び方が足りなかっただろうか。『お前本当にトラップか?』とアマさんとブライアンは少し不思議なものを見るような眼を向けられてしまった。
天皇賞に出るためのポイントは間に合った。あとはあの日のサイレンススズカとの決着をつけるために、秋の天皇賞をアイツがケガをしないで走りきり、私がその上でアイツに勝てばいいのである。だが
『逃げ切りましたサイレンススズカ、期待のエアグルーヴは3着』
問題はアイツが度を越えて強すぎる事であるが。リョテイの奴はともかくあのエアグルーヴまでもがあんなあっさり負けてしまうとは。次元の違いを思い知らされる。
生半可なウマ娘ではあの日のアイツの運命を覆すのは厳しいだろう。あのときと同じメンバーでは結果は変わらないはずである。重賞上がりの私にいつものキンイロリョテイ。砂が本職のグルメフロンティア。長距離の方が強いメジロのブライト。明らかに調子を落としていたシルクジャスティス。
「すごいですねスズカさん。エアグルーヴ先輩にも勝ってしまうなんて。ね、トラップさん。トラップさん?」
「ああ、すまないスペシャルウィーク。少し考え事をな」
興奮気味にかけられたスペシャルウィークの声に我に帰る。奇縁を装いながら私は宝塚記念をチームスピカの面々と観戦していたのだった。上の空気味だった私にジュニア組の面々がコソコソと何やら言っている。大方スズカの走りを見てそのすごさに私が惚けていたとかそんな話だろう。どうだ、私たちの先輩はすごいだろうとそんな風に私に目を向けている。でもそんな言われようも腑に落ちるほど今日のスズカのパフォーマンスはすごいものがあった。
「ああ、そうだな。あんな走りはアイツ以外にできないだろうな」
勝てるのだろうか、アイツに。アイツのレースを見るたびにそう思わされる。そんな思考を振り払うように避けるように観客に手を振るスズカから目を反らせば隣で目をキラキラとさせながらスズカを見つめるスペシャルの姿が映った。スズカに対する強いあこがれを感じさせるスペシャルウィークの瞳。
そして閃いてしまった。スズカに憧れるスペシャルウィークならもしかしたら私の申し出にも首を縦に振るんじゃないかと。ああ、悪い先輩だなぁ私は。たった一度のクラシックを走っている後輩を誑そうだなんて。
「なあ、スペシャルウィーク」
「なんですかトラップさん」
「お前、スズカと走ってみたいか」
他のスピカのメンバー、特にトレーナーに聞かれると厄介だ。大切なダービーウマ娘に無謀にも近い挑戦を持ち掛けようとしているからな。スペシャルウィークにだけ聞こえるように、まるで口からその言葉がこぼれたかのようにスペシャルウィークに話を振る。彼女は脈絡もない唐突な私の声掛けに一瞬だけぽかんとした後私の方を向いて答えた。キラキラと輝いた眼を私に向けて。本当に純粋な娘だと思う。
「はい、もちろん走ってみたいです……ってトラップさん?」
答えを聞き終わるよりも早く私はスペシャルウィークにメモを握りこませるとその眩しすぎる彼女の視線から逃れるように、スピカのメンバーから離れるように彼女の目の前から競馬場の人ごみに姿を消した。
日も暮れた夕方。学園のあの切り株でさっき呼び出したスペシャルウィークを待つ。時間を巻き戻ってから最初にここで出会ったのも彼女だったなと振り返る。切り株に叫んでいた彼女が中にいた私を見つけた時の顔は傑作だった。向こうから見たら私の姿も滑稽だったろうとは思うが。笑うよりも心配してくれたのは彼女の人のよさからだろう。だから私はこの話し合いにスペシャルウィークは乗ってくれると思っていた。
それに彼女自身のスズカへのあこがれもある。だから私の提案、『菊花賞を回避して秋の天皇賞に出てくれ』という案にも乗ってくれるだろう。最悪私の見た未来の話をすればスズカを助けるためスペシャルウィークは菊花賞を捨ててでも首を縦に振るだろう。
「やあ、待ってい」
「おう、その待ち人じゃねえだろうけどなあ、オフサイドトラップ」
しかしそううまく事は運ばないらしい。予想外の声に驚きばっと振り向く。この声は間違いない。チームスピカに所属する学園屈指の癖ウマ娘。その評判にたがわない恐ろしい表情で切り株のある広場の入り口に立っていた。
「はっは、アンタのそんな顔が見れて少しは気分が晴れたぜ」
「君を招待したつもりはないんだけどな、ゴールドシップ」
「でもそれだけじゃあたりないよなあ。アタシのかわいいかわいい後輩をたぶらかせやがってくれたお代にはさ。覚悟できてんだろうな、おい」
厄介なことになった。ゴールドシップは評判こそ悪いがスピカ、というよりは身内への愛情は非常に深いウマ娘だ。自身がクラシック二冠馬であるにもかかわらず人数不足で解体状態にあったスピカから離れなかったということからも自分より仲間を重視するタイプのウマ娘だ。一番悟られてはならない相手に悟られた。怒っているだろう相手に気おされそうになる。
臆するなよオフサイドトラップ。自分の名前を思い返せ。ラインを下げたら相手の思うつぼだ。相手を罠にかけるためにはラインは上げてなきゃいけないんだよ。
「怖い怖い。私は何を払えば満足してくれるやら」
「おいおい、払えると思ってんのかよ。勝つために後輩をそそのかすような奴に。そいつは笑い種だ」
腹を抱えて笑うジェスチャーを相手はするも目は一切笑っていない。ただただまっすぐと私の事を射抜いていた。
「最近お前がスピカに妙に近づいてきてるのも、スズカやスぺに妙な視線を向けてやがるのもしっていた。スぺにちょっとカマかけてみたら怪しいメモ持っているしよ。クラシックを戦うスぺにちょっかいとはそれが先輩のやることか」
ゴールドシップはスペシャルウィークに持たせたメモを取り出すとそれをビリビリと破くと怒り半分、失望半分といった感じで私をなじる。ああ、そんなことは知っているさ。私が悪い先輩だってことくらい。
「君に嫌われるのはわかってはいたが私も君たちの事を思っているつもりだけれど」
「御託はいらねえ」
取り付く島もないとはこのことを言うのだろう。ゴールドシップは私の言葉など聞くつもりもないようでズカズカと私に近づけば今にも襟元をつかみそうな勢いで私に言った。
「お前はだれの差し金でスぺにちょっかいかけたんだ。エルコンか?セイウンか?」
「頭に血が上りすぎてるよゴールドシップ。彼女たちはそんなことを私に頼むような子じゃないよ。スペシャルウィークを見てればわかるだろう」
「なら」
「この件は私が悪い。それで納得してくれ、ゴールドシップ。私もスピカへの干渉はしばらく自粛するから、それで手を打ってくれ」
私のあっさりとした言葉にゴールドシップは顔をしかめたりしながら感情の行き場を探るように地面に思いっきり足をおろしてからもう一度私を見た。いくら何でも暴力沙汰がまずいことくらいは理解しているらしい。私もそうなってしまうのは本意ではないのでほっと胸をなでおろす。
スズカがこれで秋の天皇賞に出れなくなったら困るからなあ。
「いい先輩だな、ゴールドシップ」
ゴールドシップは怒りのままに私の顔面すれすれにパンチを放つ。その剣幕に緊張の糸を切らしてへたり込みそうになるが足に力を入れてこらえる。おびえるな。虚勢を張り続けろ。
その場で互いに声を発することなくにらみつけあっていた。その硬直は様子を見に来たスペシャルウィークが私たちを見つけるまで続いた。私の勝ちみたいだな、ゴールドシップ。
「何やっているんですかゴルシさん、トラップさん」
「やあスペシャルウィーク。彼女とはまあちょっとした意見の相違だよ」
困惑するスペシャルウィークに軽く笑いかけながら手を振る。ゴールドシップもスペシャルウィークの登場にバツが悪くなったのかこぶしを引っ込めて私を睨みつけている。
「スペシャルウィーク、秋の天皇賞に出る気はないかい?」
主の解釈
ヒンバについて
ヒンバはウマ娘のうちの種族だと思ってます。馬にも一口にサラブレッドからポニーまでいろいろあるように生まれた時点で遺伝子的に違うものとしてボバとヒンバを定義してます。
ゴルシについて
ゴルシさんは二冠をとってからチームが瓦解して出走出来てないと解釈しました。世代的にはこの作品ではエアグルーヴ世代としてます。牡馬のウマ娘いないからね。ダンスインザダークさんは好きだけどここが一番しっくり来るから許して。