聖闘士星矢【魔を滅する転生星Ω】   作:月乃杜

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 遂に次回は龍峰が脱ぐ! 五老峰師弟の悪癖が此処に極まるのか?

 っていうか、四天王すら捨て石感が溢れるとか……まあ、準神枠とか云われてて黄金聖衣が三体分だし、聖剣は兎も角として本人はそれ程でもない?

 そしてパラスのヤンデレがパネーです。

 兄さんは『フェニックスは何度でも甦る!』とか、しれっと出て来そう……





第12話:同じ宿星の下に ネビュラVSネビュラ

.

「うわーい!」

 

 薄い菫色で、鶴の星座が浮かぶ聖衣石(クロストーン)の填まる腕輪を手に、小町は喜びを全身全霊で露わとしていた。

 

 鶴星座(クレイン)新生聖衣(ニュークロス)を渡された事で、嬉しさに溢れ返っているのだろう。

 

 まあ、表情の変えられない銀の仮面の所為もあり、万歳をしながら喜ぶ小町はいっそ不気味に映るが……

 

 破壊が激しかった事もあってか、完全に形状が変化した新生聖衣。

 

 それは貴鬼の腕前も相俟って、とても美しい輝きを放っていたと云う。

 

「ありがとうね、ユート」

 

「僕はジャミールの貴鬼の所へと持って行っただけ、聖衣修復の為の血液だってユナとアルネが提供した。まあ、その言葉は受け取っておくよ」

 

 右腕を挙げて去るユートの姿は、気障ったらしくも気取っているのではなく、極々自然とやっているのが理解出来て、ユナは戦慄を覚えてしまった。

 

「(うわ、小町ってば堕ちちゃったかしら?)」

 

 仮面で表情の変化は判らなかったが、ぽけーっと後ろ姿を見送る小町を見て、そう考えるしかなかった。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「ではこれより、龍星座(ドラゴン)の龍峰と麒麟星座(カメロパルダリス)の優斗による模擬戦を行う!」

 

 檄先生の宣言を受けて、龍峰とユートが前へ出る。

 

 既に聖衣は纏っており、龍峰は濃翠色の龍星座聖衣であり、飛流直下三千尺と謳われる廬山の大瀑布に打たれ続けていた事により、ダイヤモンドさえ凌ぐ硬度を持つと云うドラゴンの盾と拳を装備していた。

 

 ユートは闇翠色(ダークエメラルド)に輝く麒麟星座聖衣を纏う。

 

 龍星座みたいな特筆する機能は付いておらず、能力は純粋に防具としてのみ。

 

 模擬戦は普通の学校で云う処の体育の授業の一環、つまりは定期的に誰かしらがこうして闘う。

 

 尤も、ユートの初の授業で鶴星座(クレイン)の小町が飛魚星座(ヴォランス)のアルゴから、手痛いダメージを肉体ばかりでなく聖衣にまで受けてしまい、その修復でジャミールまで出てしまった為、制裁の意味でアルゴを魔法でブッチめた後は全く模擬戦をしてはいない。

 

 アルゴ戦以来、二度目の模擬戦という事になる。

 

 とはいえ、新青銅聖闘士が本来なら黄金聖闘士たるユートに敵う筈もなくて、本気を出すでもない教導戦に近い闘いとなるだろう。

 

 仮令、小宇宙を青銅まで下げていたとしても経験値が違う訳だし、肉体的には神殺しの魔王(カンピオーネ)だから、地力からして大幅にユートが勝った。

 

「始めっ!」

 

 檄による合図を皮切りにして、ユートが様子見として一発目をかましに往く。

 

「はぁぁっ! 土燐撃!」

 

 土属性を乗せた一撃は、龍峰の水属性に強い。

 

 光属性だと聞いていたが故に、驚愕に目を見開きながらもドラゴンの盾で攻撃を受けた。

 

 ガキィィッ!

 

 流石は青銅聖衣最高硬度を誇るドラゴン盾、ユートの一撃を軽々と止める。

 

「くっ、君は光属性だと要ってなかったかい?」

 

「確かに言ったね。だけど他の属性が使えないと言った覚えはないな」

 

「っ! 栄斗みたいなものって訳か……」

 

「はると?」

 

「忍者出身の狼星座(ウルフ)の聖闘士さ!」

 

 龍峰は話ながらも油断無く後ろへと跳ぶと……

 

「はぁぁぁあああっっ! 鏡花水月っっっ!」

 

 小宇宙を水属性へと形質変化させ、右拳へと収束をすると撃ち出して来た。

 

 聞いた話だと撃ち出すだけでなく、近距離まで接近された場合は直に殴る事もあるらしいが、その場合だとカウンター気味に別な技を放つ事もあるのだとか。

 

 これは星那からの確度の高い情報だった。

 

 やはり余り近接(クロスレンジ)戦闘は得意でないらしく、どうあっても龍峰は近距離(ショートレンジ)中距離(ミドルレンジ)に重きを置く様だ。

 

「はぁぁぁっ!」

 

 ユートは、秋の大四辺形を含めた一三の星の軌跡を描いていく。

 

「あれは俺の!」

 

 ペガサスの光牙が叫ぶ。

 

「ペガサス流星拳っ!」

 

 光牙の技であり、大元は光牙の義父たるペガサスの星矢が得意としたモノ。

 

 その速度は音速に届き、その拳の数は百にも及ぶ。

 

「くっ! 明鏡止水!」

 

 ドラゴンの盾から水属性に変換された小宇宙が噴き出すと、龍峰の肉体を護るかの如く前面に展開。

 

「高速でジェット噴射された水は仮令、ダイヤモンドでさえも断ち切るという。その威力を防御に換えた、君の拳は僕に届かない!」

 

 個別な防御をするのにはユートの流星拳がランダムな軌道故、難しくてユナはまともに喰らってしまった訳だが、バリアの様に水を展開して全身を防御してしまえば軌道に関係無く防ぐ事が可能となる。

 

 龍峰もまたユナから聞いていたのだ、ユートが光牙の流星拳を使うのだと。

 

 しかも完全アトランダムな無限軌道であり、点にて防ぐのが困難な事を。

 

 前動作で流星拳だと知った龍峰は、防御の為に小宇宙を燃焼させた。

 

 宣言の通りに流星拳は水のバリアに阻まれ、龍峰には傷一つ付いていない。

 

 ユートが使う水瀑結界みたいなものだろう。

 

「燐光拳っっ!」

 

「そうはさせないよ!」

 

 盾で防ぐ龍峰だが……

 

「えっ!?」

 

 左腕に強い痛みを覚えて目を見開き、頭を上げるとユートの表情を見遣る。

 

「中国は五老峰で修業をしていたなら、勁ってのは知ってるよな?」

 

「勁……」

 

「運動量を導く事により、正確に運動エネルギーをぶつける技法。これで相手に与える衝撃を徹す」

 

 最高硬度だとはいえど、伝わる衝撃まで完全カット出来るものではない。

 

 衝撃そのものを内部へと伝えるなど、この手の技であれば仮に黄金聖衣だとはいえダメージ必至。

 

「ドラゴンの盾は確かに、青銅聖衣最強の硬度を誇るだろうけど、どうもそれに頼り過ぎなきらいがある」

 

「ぐっ!」

 

 とはいえ、ある程度ならダメージを防いだらしく、吹き飛びながらも脚を地に付け、スリップをしながら後退った。

 

「それならこれでどうだ! 廬山……昇龍覇っ!」

 

 直ぐ様、龍峰は小宇宙を籠めて右腕を……右拳を振り翳すと、アッパーカットで水龍を撃ち放つ。

 

 ユートはその姿を確りと視た。

 

「(成程……ね)」

 

 水龍はユートを巻き上げると、その身体を天井にまで吹き飛ばしてしまう。

 

「くっ!」

 

 殆んど無防備に昇龍覇を喰らったユートは呻き声を上げ、天井には大きな罅を入れてしまった。

 

 だけど大したダメージでないからか、空中で一回転をすると……

 

「な、に!?」

 

 完璧には技が極らなかったのと、更には体勢を空中で整えた事に驚く龍峰。

 

 ユートは全身に捻りを加えて高速回転を始める。

 

骨砕螺旋(ボーンクラッシュ・スクリュー)!」

 

「な、何だって!?」

 

 スクリューの名の通り、螺旋を描く蹴りが龍峰へと向かって降り注ぐ。

 

「くっ! 鏡花水月!」

 

 再び小宇宙を水属性へと形質変化し、骨砕螺旋(ボーンクラッシュ・スクリュー)をドラゴンの盾で防がんとする。

 

 グシャァァァァッ!

 

「そ、そんな……ぼ、僕のドラゴンの盾がぁぁっ!」

 

 ドラゴン最強の盾が粉々に砕け散り、敢えなく吹き飛んで壁へとぶつかって、罅割れた壁も砕け……

 

「ガハッ!」

 

 弾ける様に壁から跳ね返ると床に伏す。

 

「うっ……そんな、最強の盾が砕けるなんて!?」

 

 フラフラと立ち上がりながら、砕けて盾が喪われたレフトアームを見る。

 

「歴史に於いて、ドラゴンの盾が砕かれた事例は何度でもある。過信をし過ぎた様だね、龍峰」

 

「うう……?」

 

 最初の事例、銀河戦争(ギャラクシアンウォーズ)での対星矢戦で、紫龍が己の最強の盾と拳をぶつけ合わせて矛盾の故事に倣うかの如く、盾も拳も砕け散ってしまっている。

 

 劇場版の邪神エリス戦、楯座(スキュータム)のヤンとの闘いでも、今回ユートが放った必殺技と同じモノ──骨砕螺旋(ボーンクラッシュ・スクリュー)を盾で受けて砕かれた。

 

 黄金十二宮の闘いでま、黄金聖闘士・山羊座(カプリコーン)のシュラによる聖剣抜刀(エクスカリバー)にて、真っ二つに切り裂かれた事もあるし、海界での海将軍が一人クリュサオルのクリシュナのゴールデンランスに貫かれた事例すらあるのだ。

 

 最強を謳う盾とはいえ、決して無敵ではない。

 

「それならもう一度、廬山昇龍覇で!」

 

 龍峰は再び左腕を胸元に持っていき、右腕は腰を落としながら腰元に……

 

 だが、ユートはクスリと笑みを浮かべていた。

 

「良いのか、龍峰?」

 

「な、なにぃ!?」

 

「二度も昇龍覇を撃って……龍の右拳ががら空きになるぞ」

 

「っ!?」

 

 ピクリと額を震わせる。

 

「師から聞いた事は無かったのか? 廬山昇龍覇には致命的な弱点が存在する。それは最大の力を入れようとする余り、無意識に左腕が下がるというものだ」

 

「そ、れは……」

 

 龍峰も師の教皇・紫龍より聞いていた。

 

 それは廬山昇龍覇自体が持つ弱点であり、銀河戦争(ギャラクシアンウォーズ)で星矢が紫龍に指摘をした事でもある。

 

 勿論、紫龍も師匠であった天秤座(ライブラ)の黄金聖闘士たる老師より、同じ指摘を受けていた。

 

 僅か一万分の一秒という瞬間的な時間に過ぎない、だけど確実に紫龍の龍紋の右拳が──人体に於いては左胸である心臓の在る部位が無防備となる。

 

 尚、童虎には猛虎の紋、紫龍には昇龍の紋、翔龍にはその名の如く翔龍の紋が背中に浮かぶが、この紋様は単なるタトゥーでなく、その聖闘士が最高潮にまで小宇宙を燃焼させる事で、初めて背中へと浮かび上がるモノであり、この紋様は天秤座(ライブラ)の後継者の証でもあると、ハーデスとの前聖戦時に童虎本人が紫龍へと説明をしていた。

 

 そして龍峰にも紫龍のと同様、昇龍の紋が背中へと浮かび上がるのだ。

 

 故に、紫龍が指摘をされた龍の右拳は龍峰にも適用されている。

 

 この弱点は神闘士であるドーヴェのジークフリートも持っていたが、彼の場合は十万分の一秒という刹那の時間だった。

 

 だけど龍峰は未熟に過ぎるらしい。

 

「その時間は千分の一秒、だが聖闘士ならそれだけの時間が有れば充分だ」

 

 紫龍よりも隙が大きい。

 

「なら試してみるさ!」

 

 龍峰は自信と誇りを持って言うと……

 

「廬山昇龍覇っっ!」

 

 アッパーカットで水の龍が天に昇り往く。

 

「見えたぞ、龍の右拳! 廬山……龍飛翔!」

 

「なにぃ!?」

 

 小宇宙が龍を象り、まるで真っ直ぐに飛翔をするかの様に龍峰へと翔ぶ。

 

 属性変換をしない純粋な小宇宙による攻撃……

 

「がはぁああっ!」

 

 ユートの振るわれた右拳が龍峰の左胸を穿った。

 

「ゴフッ!」

 

 音速で龍峰の背後まで、一気に駆け抜けるユートと後から抜けた衝撃波にて、壁まで吹き飛んだ龍峰。

 

 更に右腕を振り翳して、ユートは小宇宙を水に変換させ、龍峰へと手刀を振り下ろす。

 

「よく見ておけよ龍峰! これは龍星座(ドラゴン)の紫龍が、山羊座(カプリコーン)のシュラから受け継いだ技……聖剣抜刀(エクスカリバー)ッ!」

 

「うおおおおっ!?」

 

 極限まで出力を上げて、超高圧力で薄く鋭い水の刃と化し、まるで西洋剣の如く変化させる。

 

 それが龍星座聖衣(ドラゴン・クロス)を斬り裂くが、龍峰は何とか躱す事に成功した。

 

「それまで! 勝者、麒麟星座(カメロパルダリス)の優斗!」

 

 だが素早く追い掛けて、龍峰の首筋へと手刀を突き付けていたのを檄が認め、ユートの勝利を宣言した。

 

「大丈夫か、龍峰?」

 

「う、くっ……強いね……優斗は」

 

「ああ……まあねぇ」

 

 そもそもにして肉体的な強さと経験が違うが故に、少しばかり心苦しい気分となってしまう。

 

 小宇宙を青銅聖闘士並に落としても、そこら辺まで変化はしていないから。

 

 ユートが龍峰に手を貸してやると、『ありがとう』と言って手を取ってゆっくりと立ち上がる。

 

「うわ、結構ボロボロになっちゃったな」

 

 自身の姿を見遣りつつ、そのズタボロな聖衣や服に苦笑いを浮かべた。

 

「小町の時程じゃないし、聖衣石に仕舞えば自然修復をするだろう。早目に修復して欲しければ、自分の血を傷付いた部位に掛けておくと良い」

 

「そうなんだ?」

 

「ちょっとした裏技だね。聖衣が死んでいるのなら、修復師に頼むしかないんだけど、そうでないならそれだけで済むよ」

 

「うん、判ったよ」

 

 龍峰は聖衣をオブジェへ戻すと、軽く手首を切って血液を龍星座聖衣(ドラゴン・クロス)へと掛ける。

 

「戻れ、ドラゴン!」

 

 右腕を翳しながら龍峰が叫ぶと、光を放って聖衣が吸い込まれる様に消えて、龍峰の深翠色の聖衣石には龍星座の紋様が浮かぶ。

 

「うむ、二人共よく闘ったものだな。では次、アンドロメダの詠と黒鍛アンドロメダの星那、前へ!」

 

「「はい!」」

 

 前へと出た翠の髪の毛を両横で御下げにした詠と、薄い亜麻色の癖っ毛な星那の二人が聖衣石(クロストーン)を掲げて叫ぶ。

 

「アンドロメダ!」

 

黒鍛(ブラック)アンドロメダ!」

 

 星那にとっては聖衣受領から初めての戦闘だ。

 

 アンドロメダは深い緋色に黒い縁取りという色合いであり、早い話が一巡目の世界で瞬が聖衣石化してから纏っていたのと同じ物。

 

 黒鍛アンドロメダは全体が漆黒で、形状は最終青銅聖衣のアンドロメダと同じに形を整えられている。

 

 オブジェは共に鎖で絡め取られた女性の姿。

 

 カシャーン! 軽快で甲高い音を響かせて分解されると、アンドロメダ聖衣は詠の肉体、黒鍛アンドロメダ聖衣は星那の肉体を各々で鎧っていく。

 

 詠も星那も色の違いこそあれ、同じアンドロメダであるが故に基本的な戦法は変わらない。

 

 つまり、アンドロメダの星雲鎖での戦闘。

 

「始めぇぇっ!」

 

 檄の宣言を受けると同時に二人はチェーンを放つ。

 

「征け、星雲鎖(ネビュラチェーン)ッ!」

 

「征きなさい、黒鍛星雲鎖(ブラックネビュラチェーン)ッッ!」

 

 緋色と黒色の鎖が飛び交って相手を襲う。

 

雷陣波撃(サンダーウェーブ)!」

 

黒鍛雷陣波撃(ブラックサンダーウェーブ)!」

 

 雷の如く波打つチェーンが交差し、互いに互いを穿つべく飛翔する。

 

「護れ、回転防御(ローリングディフェンス)!」

 

「護って、黒鍛回転防御(ブラックローリングディフェンス)!」

 

 星那の黒鍛雷陣波撃(ブラックサンダーウェーブ)を詠の回転防御《ローリングディフェンス》が防ぎ、詠の雷陣波撃(サンダーウェーブ)は星那の黒鍛回転防御(ブラックローリングディフェンス)が防ぐ。

 

 正に同キャラ対戦とでも云うべきか、全くの互角で攻防が繰り広げられた。

 

 二人の唯一の相違点……それは即ち属性である。

 

 詠は瞬と同じ風属性へと小宇宙を変換するのだが、星那は父親たるユートから水精霊との親和性を受け継いでおり、水属性への変換を得意としていた。

 

 チェーン同士での闘いが互角なら、残るは小宇宙による闘いが勝敗を分ける。

 

黒鍛・蛇牙星雲(ブラックファングネビュラ)!」

 

「な、なにぃ!? 星那の黒い鎖が蛇に?」

 

 だが、小宇宙のぶつかり合いとなる前に星那が仕掛けてくる。

 

 暗黒アンドロメダが使っていたブラック・ファングネビュラ、鎖が蛇へと変わって相手に絡み付き締め上げる必殺技だ。

 

 然しも回転防御であれ、這う様に防御をすり抜けてきた攻撃に、防ぐ事も叶わなかったらしい。

 

「うわぁぁぁぁっ!?」

 

 ギリギリと詠の身体を締め付ける黒い鎖、息苦しいのか自然と涙腺が弛んだらしく涙目となり、息を荒くしながら鬱血もあって頬を紅く染めていた。

 

「あ、ん……食い込んで……くる……っ!」

 

 ゴクリッ!

 

 色っぽい苦しみ方をする詠を見て、何人かの男子が微妙に前屈みになりつつ、固唾を呑んでいる。

 

 見遣れば、光牙が『俺は正常、俺は正常……』とブツブツ呟いており、蒼摩も『へへ……俺とした事が、男にトキメいちまったぜ』と前屈みに膝を屈していたと云う。

 

 まあ、それも仕方ないと云えるだろう。

 

 詠は前世と変わらない姿をしており、端から視れば貧乳ボクっ娘な美少女とも取れる容姿をしている為、吐息を荒々しく吐いて頬を赤らめながら縛られ悶える姿は、何だかイケない気分にさせてくれるのだから。

 

 だが男だ!

 

 メイド服やスク水が似合いそうな可憐な容姿……

 

 だが男だ!

 

 檄も父親が父親なだけに納得していたりする。

 

「うむ、然もありなん!」

 

 アホ者共で一杯であり、女子聖闘士仮免生達が絶対零度の視線を向けていた。

 

 それは兎も角……

 

 この侭で済ます心算など無い詠は、全身に力を籠めて振り解こうとする。

 

 だけど絡み方が絶妙で、力が上手く入らない。

 

 チラリとユートを見て、途端に恥ずかしくなる詠。

 

 何故か解らなかったが、こんな姿をユートに視られるのは恥ずかしく、紅くなった頬を更に真っ赤に染めてしまう。

 

「くうっ……逆巻け、僕の小宇宙(コスモ)よ!」

 

 聖闘士とはいえ肉体的に見れば、ちょっと強いだけの人間に過ぎない。

 

 神の闘士が超人染みた力を発揮する事が出来るのは偏に、小宇宙という心の奥底から沸き上がる生命の煌めき、小振りなビッグバンに等しいエネルギーを燃焼させる事によって、肉体を大幅に強化しているから。

 

 小宇宙を無しに、聖闘士とはいえどもクレーターを穿つパンチは放てないし、音速を越え超音速を越えて極音速さえも超越、亜光速は疎か光速にさえにも達する速さを得る事は不可能。

 

 通常の小宇宙で無理だと云うのなら、更に小宇宙を燃焼させてやるまで。

 

「ウオォォォォオオッ!」

 

 翠の風が逆巻いて詠を包み込むと、詠の中から力が沸き起こってきた。

 

「せいっ!」

 

 ジャリィィンッ!

 

「チェーンが!?」

 

 引き千切られた黒い蛇が鎖に戻る。

 

「この侭、往かせて貰う」

 

 翠の風が気流となって、星那の周囲を巡り往く。

 

「これは……」

 

「我が父、元アンドロメダの瞬より教わった星雲気流(ネビュラストリーム)

 

 瞬は時に甘いとさえ云える優しさ故に、有り余った小宇宙を封じて星雲鎖(ネビュラチェーン)のみで闘っていた。

 

 それ故に危機に陥る事も非常に多く、劇場版などでは『兄さん招喚装置』と化していた程だ。

 

「成程、これが……ね」

 

「星那、下手に動かない方が良いよ。僕のストリームは君の動きに合わせて変化をする。気流(ストリーム)から(ストーム)へ」

 

「そうかしら?」

 

「えっ!?」

 

 はたと気付く。

 

「こ、この蒼い小宇宙……まさか星那の?」

 

 冷たく重たい小宇宙の渦が詠の周囲を取り囲む。

 

星雲潮流(ネビュラカレント)……詠の星雲気流と似た技よ」

 

「そんな……どうして?」

 

「私もね、お父さんから教わっていたの。アンドロメダの聖闘士が使うネビュラの技について。私の小宇宙は水属性、詠の周囲を囲んだそれは潮の流れ。そして今一つ、とある世界に於いてペルセウス・アンドロメダ型神話では、エチオピアの王女であるアンドロメダとは即ち、ペルセウスが斃した海獣そのものであると云う。その名を海水を司る海母竜──ティアマット。淡水と暗黒を司る神アプスの妻であり、マルドゥクにより退治された【蛇】で、その神話を取り込んだのがペルセウスがアンドロメダを救う逸話。ティアマットを斃しまつろわされた存在こそがアンドロメダ王女、つまりブラックアンドロメダである私が使うに相応しい技という訳よ!」

 

 【カンピオーネ!】世界に於いて、ペルセウス自身が言っていた話だ。

 

 【蛇】たる母神を斃し、まつろわせた美姫を我が物とするが【鋼】の英雄たる彼の役割。

 

 その神話に準えて、星那は大気中の水分から潮流を操作し、詠の星雲気流と同じ様な現象を起こした。

 

「くっ、こうなったらぶつけ合うまで!」

 

「私と詠、小宇宙の量では詠が勝るけど、重さに於いては私が勝る……故に私達は殆んど互角」

 

 風は軽いが故に全属性で最も攻撃力が低く、水属性や土属性は重さがあるから有利と云える。

 

 だが、量という意味では詠に分があるが故、相対的には互角となっていた。

 

「吹き荒べ!」

 

「押し流せ!」

 

 小宇宙を全開……

 

「「ネビュラよっ!」」

 

 翠と蒼が渦巻く。

 

星雲嵐渦(ネビュラストーム)ッッ!」

 

星雲潮渦(ネビュラヴォルテクス)ッッ!」

 

 ぶつかり合うネビュラとネビュラ。

 

 押し合い圧し合う小宇宙の渦──ストームとヴォルテクスが相殺をし合って、そして世界が反転する。

 

「うわぁぁぁぁっ!?」

 

「キャァァァァアアッ!」

 

 相殺し合わなかった余剰エネルギーが、力の反作用によって二人を吹き飛ばしてしまうのだった。

 

 

.

 




【聖闘士名鑑31】
名前:ミケーネ
年齢:30代
属性:雷
階級:十二宮黒鍛聖闘士
聖衣:黒鍛獅子座
誕生日:8月?日
血液型:?型
身長:デカイ
体重:それなり
出身地:?
修業地:?
必殺技:王者咆哮(キングスロア) 王之紋章(キングスエンブレム) 疾風迅雷
備考:ルードヴィグの友人であり、一巡目の世界ではエデンの師匠を務めていた獅子座の黄金聖闘士。この二順目の世界は一輝が在任していたし、後にレオーネが聖衣を継いだ為、黒獅子となって闘うパライストラの学園長。疾風迅雷は自らに風雷を纏って体当たりをする必殺技。


【聖闘士名鑑32】
名前:芳臣
年齢:20代前半
属性:風
階級:白銀聖闘士
聖衣:蜥蜴座
誕生日:?月?日
血液型:?型
身長:?cm
体重:?kg
出身地:日本・富士山麓
修業地:?
必殺技:マーブルトリパー 大気防御(ウインドディフェンス) 忍術
備考:元は狼星座の青銅聖闘士だったが、現在は昇格して白銀聖闘士。一巡目では時貞により殺された。


【聖闘士名鑑33】
名前:玄武
年齢:三十代前半
属性:水
階級:白銀聖闘士
聖衣:祭壇座
誕生日:?月?日
血液型:?型
身長:?
体重:?
出身地:?
修業地:中国・五老峰
必殺技:廬山真武拳 廬山上帝覇 廬山昇天覇
備考:紫龍の弟弟子にして老師の不肖の弟子。嘗ては修業をサボってばかりで、余りにも不真面目だった。今は修業をやり直した為、一時的に天秤座の黄金聖衣を預かり、紫龍の義息子の翔龍に継承した後は祭壇座の白銀聖衣を授かり、紫龍のサポートをしている。


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