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「止まれ!」
アテナの結界が存在する其処に門が存在しており、雑兵が何人も慌ただしくしている中、門番をしていた雑兵の二人が槍を門前にてクロスをし、目の前の人物を止める。
栗毛色な髪の毛を肩口から御下げにした女性は脚を止め、眉根を寄せてそんな門での様子に首を傾げた。
とはいえ、女性は銀色の仮面で顔を覆っている為、表情は誰にも判らない。
この仮面が意味する処、即ちそれは女性が聖闘士であると云う事。
「現在、聖域は厳戒体制に入っているのだ! 貴女の身分を証明出来る物は有りますか?」
「
「リリウム? 聞いた事も無いが……取り敢えず取り次いでみよう」
雑兵の一人が双児宮へと急ぎ走った。
最下級とはいえ、相手は正規の聖闘士だと云うし、雑兵では勝手に門前払いになど出来ない。
嘗て別世界の冥界にて、ユートを人間だからと門前払いにしようとした悪魔が居たが、高が門番〝風情〟が無理に押し入るならまだ兎も角として、正規の手続きで来た者を上からの判断も仰がずに自己判断をするなど、門番の役目には悖る行為である。
門番の役割は上への取り次ぎといざと云う時の門の守護であり、政治的な判断をするなど僭越に過ぎるのだから。
況してや、魔王が共に居るのなら判断は魔王自身が下す、門番が魔王を越えて判断して門前払いなどと、愚かとしか云えまい。
あの時は魔王セラフォルー・レヴィアタンが居り、ユートが門番をぶっ飛ばさなければ彼女がキレてしまって、可借……とも云えないが命が消し飛んでいてもおかしくなかった。
閑話休題……
暫くすると取り次ぎの為に双児宮へ走った雑兵が、此方へと再び走って戻って来ていた。
「し、失礼しました。確かに確認をしてきました! 青銅聖闘士・
「ありがとう、では通らせて貰いますね」
「ハッ!」
雑兵に見守られながら、アガシャと名乗った女性は門を抜け、アテナの結界に入ると聖域に向かう。
ある程度を歩くと白羊宮が見えてきた。
「アガシャさん」
「シエスタさん……」
現在、白羊宮を守護しているのは黄金聖騎士・牡羊座のシエスタ。
「優雅様に報告があるの。通して貰えますか?」
「ええ、聞いているから」
アガシャは双児宮に居るのがユートでなく優雅だと知っており、それはつまり可成り近い立ち位置に在る事を意味している。
「聖域が慌ただしいけど、何かあったのですか?」
「賊が侵入をしたの」
「賊?」
「
「っ!? そう……」
驚愕するアガシャ。
直接は対峙した事も無かったが、彼女の居た〝時代と世界線〟でも暗黒街なるモノが幅を利かせていたと聞いたし、それを牛耳っていたのが暗黒聖闘士だとも聞かされている。
「詳しくは優雅様に御訊きして」
「判りました」
アガシャが白羊宮を通ろうとすると……
「あ、聖衣を纏った方が良いわよ? 金牛宮の守護者も殺気立ってるから」
「そ、そうですか……」
シエスタからの忠告に、冷や汗を流しながら右腕を掲げて叫ぶ。
「
白い宝玉が光を放つと、百合を象るオブジェが顕現
して分解、装着された。
蓮座は蓮座で別に聖衣が存在しており、そちらの方は白銀聖衣である。
アニメ版に登場していた
因みに、余り関係は無いが牡羊座の貴鬼の妻がこの時に祖父を亡くし、ユートの奨めでジャミールに預けられた少女である。
順当にいけばアガシャは
聖衣を纏ったアガシャは金牛宮を目指した。
金牛宮は牡牛座のハービンジャーが守護を任されている宮で、腕組みをしながら瞑目して直立不動の構えとなっている。
「待ちな、誰だテメエは? 聖衣を纏って仮面をしてるってこたぁ、聖闘士なんだろうが……」
「私は
「ああん? アイツの?」
「はい」
ハービンジャーを聖域に連れて来たのは他ならぬ、
そしてハービンジャーもユートの部下やら何やら、全く把握が出来ていない。
暫し考えると、後は丸投げで良いかと決めた。
「良いぜ、通りな」
「はい、ありがとうございます」
アガシャはハービンジャーの横側を通り過ぎると、金牛宮から走って抜ける。
「まったくよ、暗黒聖闘士共が何やら画策して聖域に潜り込みやがったってーのに……女なんて連れ込んでじゃねーよ」
ハービンジャーは憮然とした表情で吐き捨てた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
教皇の間では、教皇である紫龍と
「チィ、抜かったな」
「ああ、奴ら何者なんだ? 十二宮の留守が多かったとはいえ、まさかアッサリとあれらを奪われるとは。アテナの結界を過信し過ぎたかも知れん」
玄武が舌打ちをすると、冷静に瞑目をしていた紫龍が呟く。
暗黒聖闘士だけでなく、聖衣を纏わない人間が何人か存在していた。
留守を預かっていた黄金聖闘士は、牡牛座のハービンジャーと双子座の優雅、獅子座のレオーネと乙女座の瞬の四人。
現在は居るが、天秤座の翔龍は聖域から出ており、水瓶座の氷河は東シベリアだし、射手座の星矢も今は三日月島にアテナと共に暮らしている。
それは兎も角、アテナの結界でテレポーテーションによる移動は出来ない様になっている十二宮だが……
「
抜け道という訳だ。
「参ったな、聖戦も近い今は黄金聖闘士を出す訳にもいかんし、ユートから借りたシエスタも白羊宮の工房で聖衣修復が忙しいしな」
紫龍が唸る。
そもそも、黄金聖闘士の仕事は十二宮の守護だし、その究極はアテナの護り。
アテナの守護は星矢がしているし、今までは兎も角として現在は聖闘少女派遣で護りの層を厚くした。
だが、人手不足な聖域は黄金聖闘士が軽々しく動く事が出来ない状況だ。
平素の暇な時は良いが、緊急時には如何にも拙い。
そういう時の為に居るのが実動部隊たる青銅聖闘士であり、それを取り纏める隊長の白銀聖闘士だ。
とはいえ、聖戦が近付くに伴って各地では散発的な戦闘も起きており、聖域で出せる戦力も限られる。
「
富士流忍軍に属していた蜥蜴座・リザドの芳臣は、この手の諜報活動な仕事には適していた。
だが、今は弟の
「まったく、聖戦も近付きつつあるというのに、機を読めぬ連中だな暗黒聖闘士というのは」
玄武は嘆息をしながら、暗黒聖闘士の空気を読めなさ加減に憤っていた。
「仕方あるまい、優雅を通じて優斗に誰かしら戦力を借りよう」
「まあ、それしかないな」
「そうだね……」
紫龍の意見に玄武と翔龍が頷く。
実際、紫龍は足りてない聖闘士の穴埋めをする為、ユートからこの世界に現存する聖騎士など、戦力を借りて聖域運営をしていた。
一九九〇年までの闘い、自分達で白銀聖闘士を撃破してしまい、更にハーデスとの聖戦でも数少なかった聖闘士が命を落とす。
後の一九九九年に起きた【マルスの乱】でも、育っていた少なくない聖闘士が犠牲となり、パライストラを通じて聖闘士の育成はしているが、どうしても人材不足になりがちである。
現状、
また、異世界に住んでいる
そんな悩ましい紫龍達の許へと、双児宮の優雅からテレパシーが送られる。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
少し時間を遡り……
アガシャは双児宮に辿り着いていた。
「よく来たな、アガシャ」
「はい、優雅様」
恭しく頭を下げる。
アガシャも優雅の存在については聞かされており、相手をユートと見間違えたりはしない。
雰囲気からして違うのだから、身体を重ねてさえいる相手を理解できていた。
「暗黒聖闘士が現れたと聞きましたが……」
「ああ、忌々しい連中だ。ユートの黒鍛聖闘士計画が始まった矢先に、暗黒聖闘士が暗躍をするとはな」
勿論、二二年前の面子は一人も居ない新しい連中がメンバーで……
「確認が出来たのが、暗黒時計座、暗黒カシオペア、暗黒山猫座、暗黒小馬座だったな。しかも大量の雑兵レベルで暗黒フェニックスが居て、外周部を撹乱して此方の目を欺きやがった」
「何かあったのですか?」
「ピスケス、キャンサー、カプリコーン、スコーピオン……担い手が居なかった黄金聖衣が四つ、暗黒カシオペアの聖衣を纏った男に奪われてしまった!」
「っ!? 黄金聖衣を! しかも
それを邪悪な目論見の為に盗み使うなど、聖衣を汚されたみたいで思わず奥歯を噛み締める。
『君が
あの言葉が嬉しくて手を取ったアガシャは、彼方側の世界線で続く者が継ぐまで
「
「判りました、優雅様! この
「流石、長年ユートが連れ添った話が早くて助かる。あの頃はまだ俺は居なかったからな、寂しい限りだ」
「……優雅様」
ユートと同じ顔、少しだけ吊り目がちではあるが、魂の形をその侭にユートが【
とはいえ、ユートと優雅は本来だと普通の双子ではなくて、同じ肉体に宿った一つの魂に生じる
本当ならユートとは魂の相克という関係だったが、自身の内に全てを受け容れる特性か、優雅という存在を受け止めたが故に相克にはならず、第三の人格たる瑠韻が誕生してしまう。
それすらも受け容れて、今や双子のユートと優雅と妹? の瑠韻は共存をしていたりする。
そんな関係上、ユートも優雅をいつまでも分離してはおけず、暫くしたら優雅は今の肉体から出てユートの内に戻らねばならない。
理由は簡単で、ユートと優雅と瑠韻は同じ一つの魂に宿る三つの意識。
つまり、分離をするのは魂を三分の一に分割してしまうという事だ。
これは弱体化を招くし、消耗もしていく。
今のユートの能力は全体の三分の二、瑠韻が肉体に留まっているからマシという感じだが、聖戦のラストになれば神との闘いが待ち受ける以上は、弱体化してはいられないのだから。
両面宿儺之神から簒奪をした権能──【
「フッ、バカを言ったな。厳戒体制となったからには俺も迂闊には動けんから、頼んだぞ」
「はい!」
「アンナとネカ姉も動かすから、二人と合流して事に当たってくれ」
「判りました!」
話を終えた優雅は教皇の間にテレパシーを送る。
「ああ、此方で人員を確保出来た。
話し合いはすぐに終了、優雅はアガシャへと向き直って口を開く。
「話は付いた。
「ハッ、拝命致します!」
バサーッ! とマントを翻しつつ、右腕を前方で左から右へと開く様に振って命じると、アガシャも跪いて命令を承けた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「アーニャ・フレイムバスタァァァ……キイィィィィィィィィックッッ!」
『ギャァァァアアッ!』
緋色の鎧──
「まったく、キリがない」
「そうねぇ……そろそろ疲れてきたし、アーニャちゃんも上がりましょう」
「うん、それにしても……最近は多いわ!」
アンナ・ユーリエウナ・ココロウァ……通称アーニャによるフレイム・バスターキックが炸裂をしたが、それを見ていた方も慣れたものなのか、世間話に興じる辺りが逞しい。
ネカネ・スプリングフィールド……今生に於いてはユートの従姉に当たるお姉さんである。
燃える様な少女アーニャとは違って静かな性格をしているが、ベッドの上では激しく燃え上がっており、〝三歳の頃〟のユートからすっかり骨抜きにされてしまって以来、こういう現状となっていた。
長い金髪に碧眼、典型的な英国美女なネカネだが、実年齢と姿形が伴わない。
二〇〇三年で成人はしていたが、それから九年が経った現在でもあの頃と全く変わってはいなかった。
使徒契約のメリット……賜物というやつである。
ユートの擁する十二宮騎士団が青銅聖騎士・
「待て!」
「雑兵の
「如何にも! 私は漸深層が
「デメニギス? 漸深というのは階級、そしてそれは貴方の
「そうだ。貴女方は?」
「十二宮騎士団の聖騎士・
「同じく、
ユートの趣味から聖闘士と同じ聖衣や階級を持ち、基本的には使徒で構成されるが故に、ハルケギニアの頃とは異なり少女や女性が主要メンバーだ。
「闘うのかしら?」
「いや、今はよそう。此方も想定外の被害を受けた。私も所詮は下っ端だから、上役に報告せねば……な。また会おう、今度は正真正銘の敵として」
そう言うとトワイトは消える様に居なくなった。
「下っ端……ね。少なくとも白銀聖闘士クラスの力は感じたけど。やっぱり階級もピンからキリかしら?」
冷や汗を流しつつネカネが呟く。ユートなら兎も角としても、自分では万が一にも敵わないとまでは言わないが、敗ける事も視野に入れねばならない相手だ。
「行きましょうアーニャ。ユーガに呼ばれてるし」
「うん、ネカネお姉ちゃん……」
何とも言えない面持ちで二人はその場を離れる。
二人共が共通して考えたのは『ユートに会いたい』……その一つの想いであったと云う。
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【聖闘士名鑑37】
名前:パブリーン
年齢:二十代
属性:水
階級:白銀聖闘士
聖衣:孔雀座
誕生日:?月?日
血液型:?型
身長:?
体重:?
出身地:?
修業地:?
必殺技:孔雀吹雪(ピーコック・ブリザード)
備考:鷲星座のユナの師匠となる女性聖闘士。一人称はわたくしで、シャイナ達とは異なり可成りの優雅な佇まい。一巡目では生死が不明となっている。
【聖闘士名鑑38】
名前:時貞
年齢:?歳
属性:?
階級:暗黒聖闘士
聖衣:暗黒時計座
誕生日:?月?日
血液型:?型
身長:?cm
体重:?kg
出身地:日本
修業地:?
必殺技:時間拳
備考:蜥蜴座の芳臣と因縁を持つ。時間操作に執念というか、妄執すら持っているらしい。一巡目では白銀聖闘士の時計座から黄金聖闘士の水瓶座に昇格して、後に二級刻闘士となった。
【聖闘士名鑑39】
名前:パラドクス
年齢:?
属性:?
階級:精霊聖闘士
聖衣:自己聖衣
誕生日:五月
血液型:?型
身長:?
体重:?
出身地:?
修業地:ギリシア・聖域
必殺技:終着運命(ファイナルデスティネーション) 交路幻影(クロスロード・ミラージュ) 幸運防壁(フォーチネイトウォール) 廬山昇龍覇
備考:インテグラの双子の姉だが仲は全く良くない。二重人格らしく、憎悪に染まると髪の毛や瞳の色が変わる。一巡目と同様、紫龍に偏執的な想いを懐いているらしい。容姿は化粧美人と云えるくらい厚化粧で、運命やら愛を囁く電波女。『皆を愛して上げれば仮面なんて要らない』とほざくビッチ。当然、愛を受け容れないと憎悪してくるヤンデレでもある。その為か、訓練生時代からインテグラとは違って引かれていた。自己聖衣(エゴ・クロス)が気に入っていないらしく、インテグラを振り切り聖域を脱走した。聖衣は白色の自己聖衣と黒色の二影聖衣が二つで一つのオブジェ。