聖闘士星矢【魔を滅する転生星Ω】   作:月乃杜

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第15話:究極 小宇宙の真髄!

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「ペガサス……流星拳!」

 

 光を湛えた百にも及ぶ拳が光牙より放たれる。

 

 青銅聖闘士ペガサス光牙──属性は光、義父である元ペガサスで現射手座(サジタリアス)の星矢より受け継いだペガサス流星拳、その速度は正に音速だ。

 

 対するは、麒麟星座(カメロパルダリス)の優斗。

 

 本来ならば双子座(ジェミニ)の黄金聖闘士だが、その役目を影武者とも云うべき兄──優雅に任せて、自身は小宇宙を青銅聖闘士並に落とした上で、修業の一環として五感を封じて、パライストラに弟子であるエデンと共に来た。

 

 今は光牙と模擬戦中だ。

 

 ユートが光牙の流星拳、その悉くを一つ一つ受け止めて防ぐ。

 

「な、なにぃ!?」

 

 僅か一秒という一瞬に、百発もの拳を繰り出したにも拘わらず、ユートに防がれて驚愕を露わにした。

 

「驚くには値しない」

 

 ユートは光牙の拳を防ぎながら瞑目して言う。

 

「光牙の流星拳は読み易いんだ」

 

「読み易いだって!?」

 

「だいたい、二十発で一巡をして似通った軌道を取るからね。況してや聖闘士に一度視た技は通用しない」

 

 どれだけ繰り出しても、ユートには通用してない。

 

 ユートの言の通りなら、光牙は二十発に一回の割合で同じ軌道の拳を放っている事になり、これでは何万発放とうがヒットする事は無いだろう。

 

「くっ!」

 

 流石に苦しくなってきたのか、光牙は呻き声をあげつつそれでも拳を揮った。

 

 一秒間に約百発、それをもう一分くらい……六千発は撃ち放っているのだし、今の光牙には辛いだろう。

 

 尤も、白銀聖闘士クラスにもなれば秒間二百発から五百発が当たり前であり、況んや黄金聖闘士ともなれば桁違いで、秒間一億発は放てなければならない。

 

 つまり、今の光牙は全くの未熟者という事だ。

 

 そんな光牙が捻り出すかの如く放つペガサス流星拳だが、ユートは涼し気な顔をして容易く受けていた。

 

「ちぃっ、くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおっっ!」

 

「っ! へぇ、速度が少し上がったか。マッハ一.二って処かな?」

 

 秒間で約百二十発。

 

 確かに速度が上がっている様だが、ユートの余裕は崩す事が出来ない。

 

「だけど駄目だね、これじゃ全然駄目だ。幾ら速度が上がっても結局は同じ軌道をなぞっているだけ。それならせめて秒間に五万発は欲しいね」

 

『『『ごっ!?』』』

 

 ユートの言葉に全員──ユナ、龍峰、蒼摩、小町、アルネ、詠、星那達──が絶句してしまう。

 

 星那はエデンと同様で、ユートが黄金聖闘士だと知ってはいたが、まだ実力を正しく見た事が無かったからか、まだ実感はしていなかったらしい。

 

 秒間五万発……要するにマッハに換算をして五百、凡そ百七十キロ毎秒の事──即ち雷速である。

 

 それでも〝せめて〟というレベルだし、ユートには単に速いだけの攻撃は意味を為さない。

 

 況して、光牙は同じ軌道で流星拳を放っている為、欠伸混じりに防げた。

 

「五万発が無理だって云うのなら、こういうのはどうだろうな?」

 

 光牙の攻撃が途切れたのを目処に、ユートが光牙の流星拳の出だしに近い構えを執る。

 

「うう!? それは!」

 

 ユートの腕がペガサスの星座……十三の星の列びを描いていく。

 

「ペガサス流星拳っっ!」

 

 ズガァァァァンッ!

 

「がはぁぁぁっ!」

 

 刹那の刻、光牙は受ける事も避ける事も許されず、無様に全ての拳を受けてしまい吹き飛んだ。

 

 本家本元たる光牙でさえどうにも出来ないユートの流星拳、その真髄は完全なアトランダムな自由軌道を越えた無限軌道の拳。

 

 放つ間に同じ軌道の拳は一つたりと存在してなく、龍峰のドラゴンの盾でさえ防ぎ切れはしない。

 

 

 防ぎたいなら前に龍峰がやったみたいな、点による防御ではなく面による防御の方が良かろう。

 

 まあ、それを突き破られたら終わりだが……

 

「ちっくしよー! やっぱ父さんみたいにはいかねーよなぁ」

 

「父さん……つまりは黄金聖闘士・射手座(サジタリアス)の星矢だな?」

 

「ああ、知ってんのか?」

 

「知ってるも何も、星矢は黄金聖闘士(ゴールド)を纏める立場だぞ? 二つ名は【神殺し】の星矢」

 

「神殺し……なぁ。光牙、本当に星矢って神を殺したのか?」

 

 ユートの説明を聞いて、蒼摩が訊ねた。

 

「俺に訊かれても……な。別に現場を見た訳じゃねーんだしよ」

 

 そもそも、光牙は数年前まで星矢を普通の父親だと思っていたし、神殺しなどと聞いたのも最近の事で、詳しく知る筈もなかった。

 

「海皇ポセイドンはアテナが封印、冥王ハーデスを斃したのもアテナ。こうしてみると星矢が神を殺した事は無さそうに思えるけど、太陽神フォェボス・アベルや聖魔王ルシファーなんかも斃しているし、ちゃんと神殺しなんだよねぇ」

 

「そうなのか? ってか、優斗はよく知ってんな」

 

聖域(サンクチュアリ)では常識レベルだから」

 

 蒼摩もある程度なら一摩から聞いていたが、聖域では星矢やその仲間の功績が至極当然に語られている。

 

 その割りには、双子座(ジェミニ)の黄金聖闘士に関して余り知られてない。

 

 何しろ、意図的にユートが情報を封鎖して隠していたのだから。

 

「光牙、射手座(サジタリアス)の星矢だけでなく、黄金聖闘士に抗するなんて成り立ての青銅聖闘士には少し烏滸がましいぞ?」

 

「うっ? そうか?」

 

「知っての通り、基本的な青銅聖闘士の速度はマッハに……音速に到達をする。音速とは秒速三四〇メートルの事、即ち三.四メートル離れた位置からなら百発の拳を叩き込める速さだ」

 

「あ、ああ。それは知ってるけどよ……」

 

 因みに、時速に換算をすると時速一二二五キロ毎時となる。

 

「白銀聖闘士だと最低でも二倍、最大で五倍にも達する速度となる。つまりは、超音速というやつだな」

 

 マッハ二〜五とは超音速と呼ばれる領域、それを越えると極超音速と呼ばれる領域だ。 

 

「そして、黄金聖闘士ともなればその全員が時速にして約三〇万キロ──地球を一秒で七周半出来る速度、つまり光速の動きが可能となっている」

 

「なっ! 桁違いじゃねーかよ!?」

 

「だから言ったろ? 烏滸がましいって。白銀聖闘士にさえ『高が青銅聖闘士(ブロンズ)』なんて呼ばれる訳だしね」

 

「高がって……」

 

 青銅聖闘士と白銀聖闘士は神と虫けら程の差がある……とは誰が言った言葉であったか。

 

 まあ、そんな割りには下に見ていた虫けら(星矢)にアッサリと殺られたが……

 

「黄金聖闘士に肩を並べたいのなら最低限、小宇宙の真髄に目覚めないとね」

 

「小宇宙の真髄?」

 

「そう、人間──に限らないが──は肉体を動かしている五感があるんだが……判るか? 光牙」

 

「それくらい判るさ。要は触覚、味覚、視覚、聴覚、嗅覚の事だろう?」

 

「その通り。そして小宇宙とは更に上の意識──即ち第六感に当たる」

 

「第六感……」

 

 肉体に宿る精神の力……魔力や氣力といったモノが存在する訳だが、その上位に位置するのが第六感たる意識から発する小宇宙。

 

 勿論、そうだからといって魔力や氣をバカに出来たものでもない。

 

 小宇宙と共に強大な魔力を持つ竜は、黄金聖闘士に通用する魔法を使った。

 

 塔城小猫は仙術の力の源たる氣を使いつつ、小宇宙さえも使い熟している。

 

「そして小宇宙の真髄とは更にその上、末那識」

 

「ま、末那識だって?」

 

 流石に知らなかった光牙は驚くが……

 

「父さんから聞いた事があるよ」

 

 龍峰が顎に手を添えながらそう言う。

 

 正に往年の『老師から御聞きした事がある』だと、意味も無く感動するユートであった。

 

「小宇宙とは心の奥底から沸き上がってくる生命の煌めきにも似たエネルギー、それを用いた戦闘をすれば魔力や氣力なんかより遥かに効率良く身体強化が成されるし、神と闘える奇跡をも起こせる。その真髄とは即ち、究極の小宇宙・セブンセンシズだ……と」

 

 一巡目とは違って魔傷を受けてないからか、紫龍は自分の言葉で確りと今までに学んだ事を子供達に伝えていたらしく、龍峰も究極の小宇宙セブンセンシズを予め識っていた。

 

「セブンセンシズだって? 龍峰、それが末那識ってモノなのか?」

 

「うん、末那識というのは仏教に則した呼び方だね。こう言えば光牙君にも解り易いかな? 第六感を越えた第七感覚(セブンセンシズ)への至り……」

 

「五感を越え、第六感をも越えた究極の小宇宙セブンセンシズ。第七感か」

 

 光牙は両手を見遣ると、握々としながら呟く。

 

「小宇宙は更に究極を越えた極限なる小宇宙も在る。そしてそれすら上回るだろう小宇宙……正に現状では終極なる小宇宙と呼べるってモノがね」

 

「極限の小宇宙に終極なる小宇宙だって!?」

 

「実際、乙女座・バルゴの瞬の先代……シャカはその極限の小宇宙に黄金聖闘士の中でも唯一、覚醒をしていて『最も神に近い男』と呼ばれていたくらいだよ」

 

「そ、それは……?」

 

「まあ、第七感にすら目覚めていない光牙に言う意味があるのかどうかってのはあるけど……」

 

 ふと、辺りを見回してみればその場の全員が期待を込めて見つめている。

 

「話さないと収まりが付きそうにないねぇ」

 

 ユートが苦笑いをしながら言うと、全員が一斉に頷いたものだった。

 

 溜息を吐いたユートは、光牙達の将来性に期待をして口を開く。

 

 元より、深い知識を以て力の覚醒を促そうというのが今回の模擬戦の趣旨で、だからこそ檄達の教師陣も許可をミケーネ学園長から取ってくれたのだ。

 

 勤勉に勉強したい者だけを募り、自主的に集まった訳だが……

 

「極限の小宇宙というのは仏教に於いて『阿頼耶識』と呼ばれ、自我と無我との狭間……境界線を越えるとも云われている。これに目覚めると死の国・冥界の掟にすら逆らえる神の領域に程近いモノ。第八の感覚──エイトセンシズだ」

 

『『『エイトセンシズっ!?』』』

 

 驚きの声色で全員が唱和をした。

 

「そ、それってさぁ、単に数が段々と増えてくだけなんじゃ?」

 

 ジト目な光牙が言う。

 

 その論法で云うならば、それこそ第二十感──トゥエンティセンシズだとか云えば神も越えていそうだ。

 

「仏教九識といってね? 最上位に第九感(ナインセンシズ)と云える阿摩羅識(あまらしき)が存在する。これは真我や如来蔵や心王ともされて、全ての現象は此処から生じると云うな。こいつは完全に神仏の位だからね、此処に達したならもう人間を止めて神化してるんじゃないか?」

 

「それが終極なる小宇宙という訳?」

 

「いや、違うな」

 

「──え?」

 

 行き成り否定をされて、質問をしたユナが呆気に取られてしまう。

 

「終極なる小宇宙は神仏に到達するモノじゃ無いし、そもそも個人では得られないと考えられている」

 

「と、云うと?」

 

「昔話だが、サジタリアスの星矢がまだペガサスだった頃の事、強敵との戦闘をする際にピンチに陥ってきたけど、その度に仲間から小宇宙を分けて貰って増力して勝利を掴んだとか……だから個人より仲間と共にというのが大凡その見解となっているらしい。そしてそれこそ……」

 

 フェニックス一輝との闘いでは、氷河や瞬や紫龍が武装や小宇宙を分けてくれたから倒せたし、この世界の場合はユートが闘った訳だが、本来は双子座のサガとの闘いでも青銅聖闘士達の小宇宙を受けて闘った。

 

 況んや、海皇ポセイドンや冥王ハーデスとの戦闘、フォェボス・アベルなどとの闘いもそうだ。

 

 常に星矢は皆の小宇宙を背負って闘っている。

 

 それは人間ながら神をも降す、乃至は傷付ける程度にせよ確実に叩けるだけの力を発揮していた。

 

 その最終型こそが……

 

「終極なる小宇宙……Ω」

 

「オメガ?」

 

「最終であり究極。究極の小宇宙にはセブンセンシズを用いてるから、此方には終極と名付けた訳だね」

 

 首を傾げる光牙に対してユートが言うが、基本的にΩは兎も角として『終極』はユート自身の案だ。

 

「まあ、神の領域に足を突っ込まずに神力(デュナミス)に対抗するなら、Ωに到達した方が良いな」

 

 セブンセンシズまででも闘えなくはなかろうけど、キツいモノとなるのは自明の理というやつだろう。

 

 特に大神レベルが相手ともなると、キツいで済む訳もないのだから。

 

「阿摩羅識──神力(デュナミス)は正に現象その物を操る事さえ可能だから、少なくともセブンセンシズに目覚めないと闘えない。神との闘いの最低ラインがセブンセンシズの目覚め、それこそが黄金聖闘士と張り合うって事なんだよ」

 

 聖戦で直接的な戦力として数えられるには、やはり黄金聖闘士と同じ領域へと達せねばならない。

 

 嘗ての伝説(レジェンド)たる星矢達の如く。

 

「先ず目指すはセブンセンシズって訳か」

 

 詠も伝説の聖闘士である瞬の息子だし、父の到達した領域を目指したかった。

 

 それは龍峰も同じくで、教皇にして伝説の聖闘士の紫龍の息子として、目指す先は同じ領域である。

 

 

 光牙は星矢との血縁こそ無かったが、それでも父親として慕う相手。

 

 星那にしてもやはり同様であり、母親こそ一般人? ではあるがユートを父親としているからには、この領域に目覚めたいと思う。

 

 否、この場へと集う若き聖闘士達は親の如何に拘わらず、その目指す先は第七感(セブンセンシズ)となる瞬間だった。

 

「ねぇねぇ、ユートォ?」

 

「どうした小町?」

 

「ユートって色々と詳しいんだしさ、鶴星座(クレイン)の技とか知らない?」

 

鶴星座(クレイン)の技……ねぇ」

 

 ユートが即座に思い付いたのが、鶴座(クレイン)の白銀聖闘士・ユズリハ。

 

 造り直した聖衣は青銅となってはいるが、ユートが体験をした時の神クロノスによる悪戯で、アテナや瞬とは違う一巡目のLC世界に落ちて出逢った世界では白銀聖衣だった。

 

 そのユズリハが使っていた蹴り技──絢舞裳閃脚(けんぶしょうせんきゃく)である。

 

「絢舞裳閃脚って蹴り技が在るかな?」

 

「技名に星座名が入ってないんだね……」

 

「ペガサス流星拳とか?」

 

「うん」

 

 確かに星座名が入っていたら解り易い。

 

「っても、星座名が入る技って存外と少ないぞ?」

 

「ううん、そうだけど」

 

 実は小町には小宇宙を用いた必殺技がまだ無い為、参考にしようとユートに訊いてみたのだ。

 

「……鶴翼飛剣(クレイン・ウイングブレード)

 

「ふえ?」

 

「両手を手刀にして翼へと見立て、秒間で撃てるだけの攻撃を放つ。先の絢舞裳閃脚は昔の鶴座(クレイン)が使っていた蹴り技だったけど、これは即興とはいえ僕が考えた技だよ。まあ、流星拳を両手刀で放つだけとも云うけど……」

 

「クレイン・ウイングブレード……〝アタシの為〟にユートが考えてくれた技……かぁ」

 

 何処かうっとりした口調で言う小町は無表情な仮面で見えないが、仮面の下ではトロンと蕩けた目に紅潮させた頬で、だらしがない表情となっているに違いないと確信出来る。

 

「おとう……優斗」

 

 ジト目となって睨むのは星那で、娘としては同い年の女の子が見た目は兎も角として、父親に恋慕を抱くというのは複雑な想いをせざるを得ない。

 

 なればこそ、咎める様な鋭い視線も已むを得ないであろう。

 

「ああ、何だな。光牙……じゃ危険だから、曲がりなりにも最強の盾を持つ龍峰に頼むか。ちょっと技を出すから受けてくれるか?」

 

「最強の盾っていっても、前にアッサリと君に破壊されちゃったけどね」

 

 娘の視線から逃れる様に龍峰へ話し掛けると、苦笑いをする龍峰が前回の模擬戦でドラゴンの盾を破壊された事を持ち出し、少しだけ居た堪れない気分になってしまった。

 

 その後に、ユートが絢舞裳閃脚と鶴翼飛剣(クレイン・ウイングブレード)の実演を行い、小町はそれを練習して出来る様になる。

 

 とはいえ、まだまだ未熟も未熟な出来映えだが……ともあれ今回の合同自主練は成功だったと云う。

 

 

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