聖闘士星矢【魔を滅する転生星Ω】   作:月乃杜

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第16話:出発! 鋼鉄聖闘士養成所へ

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 檄から説明をされた。

 

「我々は鋼鉄聖闘士養成所へと赴き、合同訓練を行う事は聞いているな?」

 

 事前に通達されており、決定事項として鋼鉄聖闘士養成所に行く事になっていたが、ユートはやはり早いと考えている。

 

 それでも最終的に反対をしなかったのは、彼方側に良さそうな人材が居ないか探してみる為だ。

 

 小宇宙を使えなかったり星座の導きが無い者達が、鋼鉄聖闘士として養成をされる訳だが、小宇宙というのは基本的に誰もが持ち、本来なら発現自体は誰にも可能なモノだ。

 

 但し、覚醒が難しい上に魔力などのエネルギーに慣れていると、更に発現がし難いという欠点もある。

 

 ユートの場合、末那識には既に目覚めていたのと、牡牛座(タウラス)のアルデバランとのぶつかり合い、それが発現の切っ掛けとなっていた。

 

 この世界とは、幾つもの純世界を内包し混沌とした混淆世界。

 

 【聖闘士星矢】の世界観だけでなく、【魔法先生ネギま!】や【機神飛翔デモンベイン】、【隠忍シリーズ】などが入り交じる。

 

 故にこそ、普通に魔法や霊術や超能力が存在した。

 

 超能力は聖闘士も使う、だがそれは霊術や魔法などと違い、多分に感覚的な処が小宇宙と似通っているのが理由だろう。

 

 術式を用いる必要も無い訳だし。

 

 これらはそれぞれが全く異なるエネルギーで発露をするが、その大元となるのは一つである。

 

 つまり、小宇宙だ。

 

 魔法は魔力。

 

 闘気は氣力。

 

 霊術は霊力。

 

 超能力(サイオニック)念力(サイオン)

 

 これらのエネルギーを、一つに融合したら事実上の小宇宙となる。

 

 何故ならこれらは、謂わば小宇宙から分かれた一つの欠片だからだ。

 

 同じ量の魔力や氣で肉体を強化するより、小宇宙で強化されていた方が強力な力を揮えるが、それは氣と魔力を混ぜた咸卦の氣が、窮めて強力なのと似た理屈だと云えた。

 

 例えると、魔力一〇による強化と咸卦の氣一〇による強化と小宇宙一〇による強化、同じ量での強化であるが魔力なら一〇パーセント強化され、咸卦の氣なら五〇パーセント強化され、小宇宙なら通常モードでも一〇〇パーセント強化されるという感じだろうか?

 

 飽く迄もこの数値は例えに過ぎないが……

 

 小宇宙も更に上の領域──セブンセンシズやエイトセンシズ──に昇華される事により、強大なる力を揮う事が可能となる訳だが、此処までくればそれこそ神と戦り合う事すら出来る。

 

 そしてそれは領域の違いによる純度の差だ。

 

 魔力や氣などは可成りの表層に顕れた、言ってみれば純度の低い上澄みみたいなモノだが、小宇宙は意識と無意識の狭間という中層に存在する純度の高いエネルギーとなる。

 

 そして、更に下層というべき位置にセブンセンシズやエイトセンシズが在り、最下層まで行くと高純度の神にも匹敵──否、神そのものと云っても過言ではないエネルギーとなるのだ。

 

 表層に浮く上澄みとて、混ぜてやれば中層の小宇宙と同じモノになる。

 

 これが体内エネルギーの簡単な理屈だった。

 

 そしてこれらは資質次第で扱えない──車などに使われるガソリンがストーブの灯油代わりにならずに、その逆もまた然りと同様──場合もあるが、決して持たないという訳ではない。

 

 なら、今は小宇宙を発現出来ていない鋼鉄聖闘士達とて、或いは発現が出来る様になるかも知れないと云う事になる。

 

 少なくともそれが、割とすぐに出来そうな人材でも居ればラッキーだろうし、居なくてもその心算で訓練を施すのもアリだろう。

 

 だからこそユートは今回

の合同訓練に、最終的な否やを出さなかった。

 

 懸念はあるが……

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 パライストラから移動をする事、だいたい一日くらいだろうか? 鋼鉄聖闘士を育てる養成所に着く。

 

 青銅聖闘士を育成しているパライストラの候補生を凌ぐ人数、百人を明らかに越える訓練生が訓練に勤しんでおり、それを監督しているのは深緑の革鎧を纏う中肉中背の男と、橙色の革鎧を纏う大柄な男。

 

 更に、アイドルにでもなったら良いのにと思える顔立ちな赤い革鎧を纏う男、顔に傷を持った青い革鎧を纏う男、ゴツい肉体で黄色い革鎧を纏う男も居た。

 

「よう檄。久し振りだな」

 

 深緑の革鎧を纏うタレ目な男が右手を挙げて、檄に挨拶をしてくる。

 

「ああ、那智。確かに随分と久し振りだな」

 

 破顔しながら檄も挨拶を返す。

 

「皆に紹介をしておこう。彼は那智、嘗ては狼星座(ウルフ)の青銅聖闘士だった男で、今は鋼鉄聖闘士養成所の教官だ」

 

「フッ、グレートティーチャーと呼んで欲しいな」

 

 檄からの紹介を受けて、那智はニヒルに笑いながら言った。

 

「クックッ、抜かせ!」

 

 檄もまた、それに笑いながら拳を那智と互いにぶつけ合う。

 

「那智、蛮、久し振りザンスねぇ!」

 

「そういえば……市はまだ現役でパライストラの生徒をしているんだったか」

 

 蛮と呼ばれた橙色の革鎧を纏った厳つい顔の男が、何処かの世紀末で『ヒャッハー!』とかしていそうなモヒカンヘアの男、海蛇星座(ヒドラ)の市を見て呆れながら言う。

 

 此処にもう一人、邪武も居れば青銅聖闘士二軍の男が勢揃いするのだが……

 

「此方が、元・仔獅子星座(ライオネット)の青銅聖闘士だった蛮だ。蒼摩、お前の先代という事になるな」

 

 現在の仔獅子星座(ライオネット)である蒼摩を見遣り、檄は腰に手を添えながら説明をする。

 

「貴方が先代の仔獅子星座(ライオネット)! 初めまして、俺の名前は蒼摩って云います。今代の仔獅子星座(ライオネット)です」

 

「おう、宜しくな後輩!」

 

 蛮は笑うと、蒼摩の肩をバシバシ叩きながら言う。

 

「おおい、お前達も挨拶をしろ!」

 

 檄が呼び掛けると、残りの三人が振り返って頷き、此方へと駆けて来た。

 

 リーダー格なのだろう、赤い革鎧の美男子が最初に挨拶をする。

 

「俺はオリジナル鋼鉄聖闘士で、スカイクロスの翔」

 

 次に顔に傷を持った青い革鎧の男。

 

「マリンクロスの潮だ」

 

 最後に黄色い革鎧を纏う大柄な男。

 

「ランドクロスの大地だ、宜しくな!」

 

 その説明によく解らなかったのか、光牙が首を傾げながら疑問を口に出す。

 

「オリジナル鋼鉄聖闘士って何だ?」

 

「鋼鉄聖衣には最初の四つが存在する。その内の三つを纏うのが俺達なんだ」

 

 潮が説明をしてくれて、それを補足する様に大地が口を開く。

 

「四つ目が量産を前提に造られた試作機さ。俺達のはそれぞれの領域に生きている動物の星座を象った聖衣なんだが、四つ目はそれが無いんだよ」

 

「? 星座を象ってるって事は、星座の導きがあるって事なのか?」

 

「いや、単に大地を駆ける動物を象りランドクロス。海を泳ぐ生物を象ってマリンクロス、空を翔ぶ鳥類を象ってスカイクロスと呼んでるだけだ。俺のランドクロスは子狐座。翔のスカイクロスが巨嘴鳥座。そして潮のマリンクロスが旗魚座を象ってるって訳だ」

 

 一巡目では上手くいった鋼鉄聖衣だったが、二順目である此方ではどうしても開発が難航してしまって、結局は星矢達が白銀聖闘士や黄金聖闘士と闘っている最中に完成はしなかった。

 

 最終的には二〇〇三年の冬の事、財団法人【OGATA】の【超技術(チャオ・テクノス)】から聖衣を供与されて、それを基礎として量産する事になる。

 

 翔、潮、大地の三人も、この時になって漸く鋼鉄聖闘士を名乗れたのだ。

 

 つまり一巡目と異なり、それ程の戦闘経験はしていないのである。

 

 とはいえ、二〇〇〇年頃から現れ始めた海魚兵(インスマウス)や、極稀にだが海魚兵を指揮するべく動く深淵士(ディープ・ワン)を討つ為に闘う事もあり、経験不足には陥らない。

 

 また、オリジナル鋼鉄聖衣には量産型に無い機能が盛り込まれている。

 

 つまり、小宇宙が無くともある程度は闘える機能、魔力と氣力の融合だ。

 

 初めから【超技術(チャオ・テクノス)】が開発をしたオリジナル鋼鉄聖衣、謂わば試作機であるが故に量産機に無い試験機能が付いていてもおかしくない。

 

 PS装甲、陰陽合一システム、スターリット・リアクター、各種武装。

 

 PS装甲だけは、単純に装甲版を取り換えた上で、エネルギーを送れる様にするだけだから、量産型にも適用が叶った。

 

 武装はオリジナルだと、スカイクロスが風の攻撃を可能とし、マリンクロスが水の攻撃を可能とし、ランドクロスは土を操作可能な機能が付いている。

 

 勿論、量産型に付いている武装も装備されており、鋼鉄旋風(スチール・ハリケーン)も使えた。

 

 だからだろう、実際には鋼鉄聖闘士上位スリー処か下手な白銀聖闘士より強かったりする。

 

 勿論、幾ら何でも音速の五倍なんて速度では動けないが、それでも普通に音速の二倍くらいは越えて行動が可能なのだから。

 

 だが、それを理解出来ていない……というよりは、説明をされる前だったからだろうが、飛魚星座(ヴォランス)のアルゴを始めとする鋼鉄聖闘士をバカにしている一派が、鼻で嘲笑ってくる。

 

「はん、所詮は鋼鉄聖闘士なんて紛い物の聖闘士モドキじゃねーかよ! それが偉そうに」

 

 アルゴ本人はボソリと言った心算らしいが、それは風に乗って三人のオリジナル鋼鉄聖闘士に届いた。

 

「ほう、言うじゃねーか。卵の殻が尻に付いた雛が」

 

「んだと、てめえっ!」

 

 潮の不敵な笑みを浮かべての挑発的な言葉を聞き、アッサリとキレるアルゴ。

 

 見下していた相手から、逆に見下されたのが理由であろう。

 

「余り鋼鉄聖闘士を舐めんなよ? ルーキー以前の雛の分際で」

 

「て、めぇっっ!」

 

 未だに自力では翔べず、親から餌を口に入れて貰わねば何も出来ない雛。

 

 確かにルーキー以前だ。

 

「潮、いい加減にしろ」

 

「翔……」

 

 潮の肩を掴んで窘めてくる翔に、少しばかりバツの悪そうな表情となり……

 

「わーったよ、リーダーに従いますって」

 

 翔は鋼鉄聖闘士三人衆のリーダーだし、潮とて事を荒立てたい訳でもなくて、頭を掻いて引き下がった。

 

「アルゴ、お前もだぞ! 何度も言っているが、彼らも俺達と同じで地上を狙う邪悪と闘う聖闘士なんだ。見下すなぞ許されんぞ!」

 

「くっ、はい……」

 

 不承不承なのが明らかに見て取れ、檄は盛大な溜息を吐いて翔達に向き直り、アルゴに代わって真っ直ぐに頭を下げる。

 

「三人共、済まんな」

 

「いや、檄がそこまで畏まる必要は無いだろう」

 

 とはいっても、教師たる檄の教えがきちんと浸透をしていないという事だし、責任を感じるのも仕方がないのかも知れない。

 

 翔もそれは理解をしているのか、苦笑いをしながら檄の頭を上げさせる。

 

「兎も角、新世代鋼鉄聖闘士の養成所へようこそ」

 

 鋼鉄聖闘士版のパライストラとも云える鋼鉄聖闘士養成所へ、この日に初めてパライストラ生が足を踏み入れた瞬間であった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 仮免生達は宿泊施設に置いてきて、教師である檄と実質的なトップのユートは自称グレートティーチャーの那智と蛮、それに翔と潮と大地を加えて今後の数日をどうするか話し合う。

 

「っていうか、僕は曲がりなりにも仮免生なんだが? どうして呼ばれた?」

 

「おいおい、学園長よりも格上な黄金聖闘士様が居るってぇのに、話し合いには参加しないってのはねーんじゃねぇか?」

 

 ユートの抗議に、那智がやれやれとオーバーアクションで言う。

 

 ちょっとイラっとした。

 

 某国的なオーバーアクションは、他人の心情を苛立たせるには最適らしい。

 

「ハァー。まったく、何が悲しくて男だけで顔を付き合わせながら話をしなきゃならないのやら」

 

「仕方ないだろ? 此処には女教師も居ないしな」

 

「まあ、居たら居たで仮面を着けてるから華と呼べるかどうか……それに基本的には姐御肌ばかりだしな」

 

 那智と蛮が冗談めかして言ったが、パライストラには現役の白銀聖闘士である孔雀座(ピーコック)のパブリーンを据える計画が動いていると聞き、ちょっとしたやっかみが入っている。

 

 現役な上に白銀聖闘士、しかも鷲星座(アクィラ)のユナの師匠という事から、人を教え導く経験持ち。

 

 パライストラに教員資格は要らないから、任務さえ無ければ即日就任すら可能となっている。

 

 黄金聖闘士より任務地に自由が利く白銀聖闘士だったが、当然ながら聖戦が近いと判っている現在だと、どうしても任地から離れられない者も出た。

 

 例えば、杯座(クラテリス)のヤコフは東シベリアを中心に、ロシアの土地を護る任務に就いているし、南十字座(サザンクロス)の一摩はメキシコ辺りだ。

 

 この二人はホームグラウンドだからまだ良い方で、聖域で聖闘士の統括を任されている蛇遣座(オピュクス)のシャイナは、事件が起きればあちこちに飛んで解決に動いている。

 

 パブリーンは任されていた土地が、数年前に戦争で無くなったりしていた為、聖戦が近い今は若き聖闘士の育成をするべく、パライストラの方へと配置替えになったのだ。

 

 基本的に聖闘士は人同士の戦争に関わらない。

 

 万が一にも、敵対勢力に同じ聖闘士が居たら洒落では済まなかったし、聖闘士を戦争で利用出来るなどと思われても困るからだ。

 

 聖闘士の役割は飽く迄も『討つべき邪悪』を討つ事にあり、戦争で動くという事は人間を邪悪と断じているのと同義で、地上を狙う神々などから人々を守護する大義名分を喪う。

 

 それが故、理由の如何を問わず参戦は許されない。

 

 ユートは別口で戦争をした事もあるが……

 

 

 閑話休題。

 

 

「それで檄、僕の言っていた意味は解ったかな?」

 

「むう……よもやあれ程の差別意識があったとなは」

 

 腕組みをして唸る。

 

 鋼鉄聖闘士への差別意識は強く、ユートはそれを抑え切れていない今は時期として尚早だと主張した。

 

 そして今回、遺憾ながらそれが証明されてしまう。

 

「少し虐めみたいな事にはなるけど、翔辺りがアルゴと模擬戦でもして〆るか? 鋼鉄聖闘士は雑魚で雑兵と同義──そう考えているのは何も差別意識の強い者ばかりじゃない。蒼摩達も余り期待はしてないみたいだからね」

 

「ふむ、確かに〆るかどうかは兎も角、余り舐められるのも面白くは無いか」

 

 顎に手を添え、瞑目しながら呟く翔は割かし乗り気らしい。

 

 だが、これはある意味で仕方ないとも云える。

 

 鋼鉄聖闘士の大半は……否、殆んどは小宇宙を扱えない者ばかりだ。

 

 単純な肉体的な能力に関して云えば、青銅聖闘士も鋼鉄聖闘士も大して違う事などない。

 

 寧ろ、経験値の差がある翔とアルゴなら、間違いなく翔が圧勝するレベルだ。

 

 生身でそれを簡単に覆せるのが小宇宙で、修得しているか否かによって大きく変わってしまう。

 

 何しろ、青銅聖闘士ですら亜音速〜音速のスピードで行動が出来るし、その拳は空を裂き、蹴りは大地を割るのだから。

 

 どれだけ厳しい修業をしようとも、生身の人間ではそれは難しい。

 

 DBとかならやっているとか思うなかれ、あれとて氣による強化無しで出来る芸当ではないのだ。

 

 人間、瓦や煉瓦を割る事くらい出来ても、地面へとクレーターを穿つ事など、とても出来やしない。

 

 小宇宙を使えない者が殆んどの鋼鉄聖闘士が侮られるのも、これではある意味で当然の帰結だろう。

 

 取り敢えず明日の方針を決めて、その日は解散する流れとなった。

 

 

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