灰へと至る巡礼   作:カルガモ大将

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第2話

どうやらこの世界にはまだヘルカイトが来てないようだったので、ガンガン探索を進めてアンドレイから狭間の森経由で不死街への扉を開けてハベル君をパリィ致命でパパッと沈めて指輪を貰ったのだが、いやまさか、帰ったタイミングで人が来るとは思わなかった。

 

「やあ、ようこそロードランへ。この人間性はサービスだから、まずは落ち着いて生身を取り戻して欲しい。うん、私しかいないんだ。済まない。 ロイドの顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。 でも、この篝火を見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。 殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい 。そう思って、篝火を作ったんだ。 じゃあ、君の話を聞こうか」

 

話によると、どうやら彼は白教の信徒で不死の使命でここに来たらしい。なるほど俺と同じパターンか。てか上級騎士装備てあなた、マジですかい。結構高い地位のお方? 正義感すんごおい。ノブリスオブリージュってやつかね。

 

産廃……破壊天使砲……重量過多……ウッ、頭が……

 

「じゃ、先輩として少しだけ情報提供させてもらうよ。ここから上に行けば最初の鐘がある。ここから下に行けばもう1つの鐘がある。不死の使命は、この2つの鐘を鳴らすことだ」

 

「なるほど。上と下に鐘があるのだな。感謝する」

 

そう言って彼は一礼し、上へと向かって行った。

 

「貴公に、炎の導きのあらんことを」

 

デーモンは倒してるし、ガゴは彼に任せますかね。

さて、じゃあ俺は、篝火を見張ってましょうか。ほら、俺が見張ってないと消えちゃうし、あの上級騎士様が死んだ時に火が消えてたら、もしかしたら生き返れないかもしれないし、念の為ってやつだよ。

 

篝火に座り、意味もないのにこれからのことを考える。

これからここに来るのは、分かっているだけで、ロートレク、大沼のラレンティウス、ヴィンハイムのグリッグス、ローガン、ペトルスと聖女御一行、アナスタシアちゃん、真鍮の乙女、青ニート、そして主人公だ。

リロイ、タルカス、ドーナル、ファリス、ビアトリス、ソラール、パッチ、センの古城の商人、玉葱、カー君、ミル姉さん、団体客は微妙。

 

あとは、各地に落ちてる装備から推測して、まあ、色々と来そうだな。こりゃ、篝火から目が離せないなあ。

 

おっと、またデーモン郵送か。またさっきと同じこと言うのは疲れるし、パパッと手短に話すか。

 

 

 

 

 

 

色んな人を迎えて、ついでに、ソウルに余裕がある時は篝火にソウルを注いで貰っていたのだが、最近めっきり人が来なくなった。ちょっと前まで、やれデーモンが倒せないだの、ガゴがキツイだの、クラーグ姐さんがエロくて殺せないだの愚痴を言いに戻って来てた癖に、最近は祭祀場に帰って来ることもない。

 

寂しくなったなあ。

 

……おっと、久し振りにデーモン郵送か。今度は誰かね。

 

運ばれてきたのは、酷く汚れた衣服を着た亡者だった。おっとこれはやばい。どうやら亡者はぼーっとしてるのか、地面に降ろされてから動く気配がないので、人間性を突っ込んで篝火に座らせる。

 

「……あ、あれ?」

 

生身を取り戻し、ついでに意識も戻ったのか、自分の手を触ったり頬を触ったりしている。あとこの子可愛い。声からして女の子。あざと可愛い。

 

「ようこそロードランへ。こうやって腰を下ろしての会話になるが、まあ、礼儀なんてここではあってないようなものだ。気にするな」

 

こちらに気づいたようで、隣に座らせていた彼女がこちらを向いて座り直す。

 

「ああ、楽に座ってくれればいいよ。そんな畏まらなくてもいいさ」

 

「あ、貴方は……」

 

「そういえば、私のことを話してなかったな。私はここで篝火の火を守ってるのさ。探索は他の巡礼者に任せてるよ。ああ、別に、君は探索に出なくていい。亡者の状態でここに送られて来るってことは、恐らく、白教の信徒で迫害されて送られたんだろ。元々戦闘に秀でていない奴が探索に向かったところで、意味はないからな。ま、こんなもんか。次は君について教えてくれ」

 

彼女はゆっくりと頷き、語り始めた。

 

「……私は、元々白教の聖女として、火守女をしていました。ですが、私にも呪いの証が浮かんで、それで迫害を受けて。それからのことは、あまり……」

 

そこまで話して、彼女は自分の身体を抱きしめ、震えを抑えようとしていた。

 

「安心してくれ。この祭祀場は安全だ。誰も君を迫害しようとはしないさ。日がな一日中篝火の火が消えぬよう、見守り続ける日々だ。ゆっくりと、心の傷を癒すといい」

 

俺には、それ以上の言葉が見つからなかった。震える女性を横目に、ただ、火を見守ることしか出来なかった。

 

「……はあ」

 

まったく、面倒なことになったな。

元火守女とは言え、トラウマ持ち。これは、火守女を任せる訳にはいかなさそうだな。はあ、仕方あるまい。俺はまだ篝火の番をするとしよう。

 

──ボッ

 

篝火の火が強まり、火を吹いた。

どうやら、久し振りに誰かが死に戻ってきたらしいな。

 

「人が戻って来るのは久し振りだな」

 

目の前で亡者の肉体が構成されていく。目の前の亡者は手慣れた様子で人間性を捧げ、生身を取り戻す。

 

「クソが。なんで俺がこんな目に……」

 

久し振りに戻ってきたのは、上級騎士の格好の男だった。こいつ、不死の使命が簡単だと思ってたのか、最初の頃は結構な頻度で死に戻ってたんだよなあ。

 

「今度はどこまで探索を進めたのだ?」

 

「……チッ」

 

あらら。やっぱり嫌われてんのな、俺。

 

「……なんでお前は探索に行かねえんだよ」

 

すっげードスの効いた声で聞かれた。こっわ。

 

「なぜ、と問われても。私が篝火の火を見守らなければ、火は消えてしまうから、としか答えようがないな」

 

「ケッ」

 

なんでやねん。しゃあないやん。どないせえっちゅうねん。

これが三段活用だ(大嘘)。

 

「そういやあ、そこの女。俺はオメーを見たことがあるぞ」

 

びくっと、隣の彼女が肩を震わせた。

 

「オメー、アストラでは名の知れた聖女だったぜ。不死人だから、どれだけ適当に扱おうが怖れることのない、最高の性処理道具だってなあ」

 

うわおっも! 話がおっも! こんなんトラウマ抉られるどころじゃねぇわ! 心が持たんわ! いっそのこと殺してやった方が彼女のためだったわ!

 

「元々火守女なんだからよお、オメーが火を見守ればいいじゃねぇか。それともあれか? また輪姦して欲しいのか? いいぜ、メチャクチャにしてやるよ」

 

そう言って男は彼女へと手を伸ばした。

 

「あん?」

 

俺が男の手を払ったことで、不機嫌そうにこちらを向いた。

 

「悪いが、騎士としてこれ以上は見逃せん」

 

強姦、ダメ、ゼッタイ。

 

「ほお〜。騎士サマが偉そうに高説垂れ流すとはなあ。あんた、見た限りだとあんまり階級は高くないよなあ? 俺と違って、普通の騎士装備だもんなあ。オメー、戦場ではどうしてた? 男はどうした? 女はどうした? ほら、言ってみろよ。街へ攻め行った時、裸にひん剥いて、無理やり犯してやったってなあ!」

 

「……ハッ」

 

まったく、笑えるよ。

 

「ッ! テメェ、何がおかしい!」

 

本当に、くだらな過ぎて、笑えてくる。

 

「私は、無辜の民を手にかけた事は無いのでな。貴公の言っていることがサッパリ理解できん」

 

「……チッ」

 

おや、意外と冷静な部分が残ってるようだ。それとも、そこそこ頭はいい方か?

 

「いいことを思いついたぜ。なあ、お前。篝火は何を燃料にしてんだ」

 

いかん。それはまずい。怒りの方向性が彼女に向かうのはマズイ。

 

「篝火にはソウルが必要なんだってなあ。だったらこの女を殺して、ソウルにすりゃあいい燃料になるじゃねえか」

 

男が剣を両手で持った。

 

マズイ!

 

急いで彼女の前に躍り出て、背に庇う。

 

「下級騎士が俺に逆らうか。下級騎士らしく、ロンソでもブンブンしとけやおらあ!」

 

男が両手でツヴァイヘンダーを振るう。避ければ螺旋剣に当たってしまう。だったら、やる事は一つだ。

 

「っしゃらあ!」

 

バスターソードでツヴァイヘンダーの剣身を上から叩きつける事で、ツヴァイヘンダーの軌道を変えて地面に叩き落とす。ツヴァイヘンダーが地面に突き刺さっている間にバスターソードから手を離し、左手を伸ばして男の兜を掴み、上方向にずらす。右手からはソウルの業で盗賊の短刀を取り出し、男の兜を上にズラすことで生まれた鎧との隙間に差し込んだ。

 

「グフッ……ッッッ!!!」

 

掻っ捌くことで動脈も切り、男の身体から血が勢いよく流れ出す。

 

「ッ! ッッッ!!!」

 

声を出そうとしているようだが、もう声も出ないらしい。全身から力が失われ、倒れ込んだ。

 

「貴公のような存在は、許せないのでな。死んでくれ」

 

男から兜を外し、首を切り落とす。

これで男は死んだ。だが、このままでは生き返ってしまう。だから俺は、まず男の鎧を奪ってソウルの業でしまい込み、男の全身をぶつ切りにして加工しやすくし、肉を削いで骨だけにして、砕いて篝火の地面に埋めた。

 

──ボッ

 

そこそこのソウルだったのか、篝火の火が少し強くなった。

 

彼は死ぬことなく、燃え尽きるまで、篝火の燃料として燃え続けるのだ。火継ぎENDだし、喜んでもらいたいものだ。

 

「ふう。久々のいい運動だった。私は少し、休ませてもらうよ」

 

そう伝え、私は篝火の近くで仰向けになった。不死人には人間の三大欲求は存在しないが、まあ、生身の間はそれなりに名残があるようで、寝ようと思えば眠れるのだ。

 

「ここはロードランだ。もう、過去のことを気にする必要はない。好きなように生きて、好きなように死ぬといい。人間の本質はそれだ。周りのことなど、気にしなければいい」

 

それだけ言い残し、目を閉じた。

彼女にも、色々と、考える時間が必要だろうしな。私が起きていては、色々と不都合もあるだろうよ。

 

ああ、そういえば。

 

 

俺って

 

 

 

ロードランに来て

 

 

 

 

初めて

 

 

寝るんだな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……騎士様?」

 

声をかけても返事がない。近寄ってみると、呼吸の音が聞こえた。どうやら、本当に寝ているらしい。

 

「あなたは、なぜ……」

 

なぜ、私のような穢れた存在を庇ったのですか?

 

あの貴族のように、私を、道具として扱った方が、貴方のためになったでしょうに。あなたは、とても強いお方です。あの貴族は、あれでも、アストラではかなり強いと言われていた方でしたのに、それをあれだけあっさりと殺してしまうだなんて。

 

火守女にもなれず、不死の使命すら達成出来ない私なんて、存在価値がないのに。

 

ふと、騎士様の言葉が脳内でもう一度語られる。

『好きなように生きて、好きなように死ぬといい。人間の本質はそれだ。周りのことなど、気にしなければいい』

 

「好きなように生きて、好きなように死ぬ……」

 

私も、本当は恋愛をして、結婚して、子供に囲まれて、幸せな暮らしをしたかった。

でも、聖女なんて祭り上げられて、火守女に成らざるを得なくて、それで、結局、あんなことに。

 

「私だって、私だって、好きに生きたかった!!!」

 

修道院になんて入りたくなかった!

聖女なんて祭り上げられて、自由に行動出来なくなるなんて嫌だった!

火守女だって、好きでなった訳じゃあない!

純潔だって、好きで散らした訳じゃあない!

 

「私だって、好きに死にたかった!」

 

あんな迫害を受けたくなかった!

人間性が蠢く醜い姿を、人に見られたくなかった!

あんな辱めを受けたくなかった!

あんな心に傷が残るような事、されたくなかった!

 

あんな無慈悲に、無邪気に、殺されたくなかった!

 

神さまに祈ったって、助けてくれなかった!

私は何も悪いことをしていないのに!

 

呪いの証だって、浮かんで欲しくなかった!

 

私は、好きに生きたかった!

 

「ねえ、騎士様。私はどうすればいいの?」

 

寝ているから無駄だと分かっているのに、語りかけてしまう。私の心をこんなにも掻き乱した人。許さない。

 

「責任、取ってもらいますからね」

 

ねえ、騎士様。

 

私は、どうすればよいのですか……?

 

 




次は12時。
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