灰へと至る巡礼   作:カルガモ大将

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第3話

俺が目覚めた時の彼女の第一声が「チカラガホシイ」だったのは流石に緑化草生える。オマケで花付き苔玉もあげよう。

 

しゃあないんで、女の子でも筋力的な問題で比較的扱い易そうなレイピア渡して適当に稽古をつけてたんだが、この子やりおるわ。暗黒面に堕ちただけあって、力に貪欲だわ。レイピアでパリィ取ろうとするとか、この子変態かな? こえーよ。舐めプしてる場合じゃねぇわ。

 

ロンソを振るタイミングをずらす事でパリィしようとした手を剣の腹で叩きつけ、左のロンソを彼女の首にピタリとつける。

 

「っと。まあ、今回はこのくらいにしておこう」

 

「ッ! まだ、まだ動けます!」

 

彼女が凄い形相でこっちを睨み付けてくる。コエー。

 

「いや、これ以上やったら君の身が保たない。確かに不死人らしい戦い方の練習にはなるだろうが、まだやらなくてもいいだろう」

 

「でも!」

 

「落ち着け。時間はそれなりにある。今はゆっくりと休め」

 

そう言って肩をゆっくりと叩き、落ち着くように促す。たしかに首を切り落とされようが、死にはしない。まだ暫くの間は動けるだろう。だが、その戦い方はまずい。

 

「……はい」

 

めっちゃしょぼくれてる。可愛い。

 

ま、こんな感じの日々が結構続いてる。ロードランに来てから時間の流れがよくわからないんだが、まあ、一ヶ月くらいはこんな感じかな? で、まあ、特訓が終わると、彼女はいつも同じことを聞いてくる。

 

「……騎士様。私は、どうすればよいのでしょうか」

 

知るかボケ。

 

「好きなように生きるといい」

 

これしか言えんわ。

 

「……好きなように」

 

で、彼女は思考の海に没頭する。水没してたりして。

 

「……はあ」

 

いつまでこんな日が続くんじゃろ。そろそろかぼたんが欲しいなあ。篝火の火を見守るだけって、流石に飽きるんだよなあ。あと、燃料補給したい。

 

「……騎士様」

 

「ん? どうした」

 

「騎士様は、なぜ、探索に向かわれないのですか? 私は元火守女です。置いて行っても問題はないでしょう」

 

んなこと言われてもなあ。

 

「君が、辛そうだったからな」

 

やっぱ、孤独ってのは確実に心を蝕んでいくのよ。やっぱりメンタルケアは大事よ、うん。無害な人が側にいる方が、たぶん、心が安心するはず……もしかして俺、お邪魔虫?

 

「そうだな。私が邪魔だと言うのならば、探索に向かうとしよう。火守は君に任せるよ」

 

「そんな! 違うんです!」

 

「うん?」

 

なんか、切羽詰まってんな。

 

「邪魔だなんて、思ってません。私は、ただ、私のせいで、騎士様の足を引っ張っちゃって、それで……」

 

あーもうまた入っちゃったよ自己嫌悪スイッチ。こーゆー時は全肯定するしかないんだよなあ。

 

「いや、私も助かっているさ。一人で火守をするのは寂しいからな。君も火守をしてくれているおかげで、心が安らぐよ」

 

「でも、でも、騎士様には不死の使命が……」

 

「いいんだ。他の誰かが達成してくれるならば、私はそれでいいのさ」

 

でもこれ、未だに一度も鐘が鳴ってないし、世界線が違うのか、それともただ単にみんながクソ雑魚ナメクジなのかが分からんのよな。

 

「でも、でも……」

 

「大丈夫だ。安心してくれ。君のことを迷惑だと思ったことは一度もない。私は君の味方だからな」

 

「……騎士様」

 

あれ? なんかミスった? このこメッチャ泣きそうな顔で俺のこと見上げてるんだけど。え? 泣かせちゃうの? 騎士が女の子泣かせちゃうの? ヤッベ。騎士失格やん。

 

「ど、どうしたと言うのだ、そんな泣きそうな顔をして。なにか気に触るようなことを言ったのならば、心の傷に触れてしまったのならば、謝罪する。だから、お願いだから泣かないでくれ」

 

うわあああああん泣きたいのは俺だよおおおおおおおお。

 

どうすりゃいいか分からなくてオロオロしてると、急に彼女が笑った。くそ、俺の情けない姿を見て笑いやがって……! ゆるさんゆるさん! もしやさっきのも嘘泣き? つまり俺はハメられた……? なんて小悪魔! 恐ろしや。

 

「ふふっ。騎士様って、おかしな人ですね」

 

いやんなこと言われても。

 

「……そうか」

 

こう返すしかないやん。

 

「……でも、ありがとうございます。私、決心がつきました」

 

「そ、そうか」

 

「私は、やはり火守女にはなれません。ですが、巡礼の旅には出られます。たぶん、何度も死ぬでしょうけど、でも」

 

──死ぬことには、慣れてますから

 

その時の彼女の表情は、本当に、見ていて痛々しかった。

 

「そうか」

 

俺には、彼女を止める権利はない。あれだけ好きなように生きろと言ったんだ。でも、これだけは言っておこう。

 

「私からの忠告だ。巡礼の旅は、何が起こっても自己責任だ。助けを求めたところで無駄だ。信頼できるのは己だけだ。それを理解した上で、旅に出て欲しい」

 

「……はい!」

 

「そして、不死の使命とは、二つの鐘を鳴らすことだ。一つは上にある城下不死教区。一つは下にある病み村。二つ鳴らすと何かが起こるらしいが、私は知らない。さあ、行った行った! 気が変わらぬ内に行くがいい!」

 

「はい! 行ってきます! 騎士様」

 

そう言って彼女は俺に背を向け、歩き出した。心に傷を負ってるし、まともな防具も身につけてないが、まあ、死んだら死んだでその時だ。心折れぬ限り、挑み続けるがよい。

 

「貴公に、炎の導きのあらんことを」

 

彼女の姿が見えなくなる。

 

寂しくなるなぁ。

 

 

 

 

 

 

ひっさし振りにデーモン郵送で人が運ばれてきた。また女の子だ。純白の衣装で……え? なんでスカートが血塗れなん? 取り敢えず篝火に座らせて、傷を癒させる。

 

「分かっているだろうが、まあ一応言っておこう。ロードランへようこそ。ここには火守女がいないんで、私が代わりに火の番をしている。昔はよく巡礼者が来ていたんだが、最近は見かけなくなった。まあ、私についてはこのくらいか。君について教えてもらいたい」

 

彼女は、消え入りそうな程小さな声で語り始めた。

 

「……わ、私は、アストラの、アナスタシアです。ひ、火守女を、やっていました……」

 

ん?

ア ス ト ラ の ア ナ ス タ シ ア ?

 

来た! かぼたんきた! これで勝つる!

 

「そうか、元火守女か。前にも火守女が来たんだがな、彼女は心に傷を負っていて、火守女にはなれなかった。もし、君が火守女をしてくれると言うのならば、君に火守を託したいのだが、頼めるだろうか?」

 

「わ、わかりました。巡礼者の為になるなら、やります」

 

「ありがとう。本当に助かる。君が来てくれて、本当に良かった。ありがとう。心の底から礼を言うよ」

 

ありがとうかぼたん。

感謝、圧倒的感謝……!

 

「いっ、いえ、私なんか、代わりが効きますし……」

 

「そんなことないさ。君が火守女だからいいんだ。むしろ君じゃなきゃダメなんだ」

 

君が火守女じゃないと、原作崩壊してしまう……!

 

「で、でも、私は穢れた存在で」

 

そういや君、汚い声を聞かせたくないとかなんとか言ってたっけ。ここは全肯定してあげるといいか。

 

「君のどこが穢れた存在だと言うんだい? その服は聖女が着るものだ。穢れた存在じゃあ着ないだろう。それに、火守女は人間性を受け入れなければ成れるものじゃあない。君は、他人の為に己を犠牲にすることができる、尊い存在だ。それに、穢れた存在が、君のような美しい声を出す筈がないだろう?」

 

「そ、そんな、騎士様、ダメです……美しいだなんて、そんな……」

 

堕ちたな(確信)。ヘヘッ、チョロい聖女様だぜ。

自分の身体を抱きしめてくねくねしてる辺り、生娘だな。

 

じゃ、俺、探索に行くから。

放置プレイで焦らしに焦らした方が絶対いいと思うの。

 

「では、火守を頼む。私は探索に向かうとするよ」

 

「はう、ダメです騎士様、そんな……」

 

なんやこいつトリップしてやがる。

もうダメだ、助からねえ。

ちょっとほんとに怖くなってきたし、放置しよ。

 

リフトを使って上に行き、アンドレイに挨拶をする。

 

「修理を頼む」

 

「あん? ああ、お前さんか。久し振りだな。どっかでおっ死んでるかと思ったぜ」

 

「ハハハ、冗談がキツイな」

 

いつものやり取りをしながら、使った武具を渡していく。鎧も勿論脱ぎ捨てて修理してもらう。

 

「そういや、オメーさんよお」

 

「ん? どうした?」

 

「弟子がいるらしいじゃねぇか」

 

「……は?」

 

弟子? 弟子なんてとった覚えねえぞ。

 

「ここに来るやつはよお、みんなお前から忠告を受けたりしたやつだ。だがよお、弟子だって言った奴は一人だけだった」

 

なにそれこわい。

 

「そいつあ女でよお、鎧も着込まずにここまで来やがった。盾もなく、レイピア一本でな。流石に可哀想だから、チェインメイルと適当な盾を仕立ててやったが、お前さん、いくらなんでも、あれは可哀想じゃあねえか?」

 

あー、あの子か。

 

「まさか、巡礼の旅に出るとは思わなくてな。勢いで送り出してしまったんだ。それについては、まあ、あまり掘り返さないでくれ」

 

「そうか。お前さんらしくもねえドジだったからよお、気になって聞いたんだ」

 

「……そうか」

 

沈黙。金属を叩く音のみが断続的に聞こえる。

 

「お前さん、なんで自分から進んで巡礼の旅に出ねえんだ?」

 

アンドレイが尋ねた。

 

「私が鐘を鳴らさずとも、誰かが鳴らせばいい。ただ、それだけのことだ」

 

「そうか。いやなに、お前さんの腕なら、直ぐにでも二つの鐘を鳴らせそうだったからな。気になって聞いただけだ」

 

「そうか」

 

再びの沈黙。

 

「よし、これで修理は終わりだ」

 

「そうか、助かる」

 

修理してもらった武具をソウルの業でしまい込み、鎧を着込む。

 

「うむ。いつも通り、最高の仕事ぶりだな」

 

「ハッハッハ。職人としちゃあ最高の褒め言葉だぜ」

 

「では、また今度」

 

「ああ、あんまり気張るんじゃねえぞ。ま、あんたには無縁な話だろうがな! ガハハハハ!」

 

まったく、お茶目なおじさんなんだから。

 




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