俺は火を継ぐ予定は無いので、飛竜とダークレイスを狩ってから祭祀場へと戻った。原盤も鱗も落とさないとかつらたん。
で、問題はここから。
「騎士様、お願いです騎士様。私を置いていかないで下さい……」
こんな感じで懐かれちゃったというか、依存されちゃったというか、クッソ面倒(直球)。
優しくされたらコロッと堕ちちゃうとかメンヘラかな? いやでも逃げ出さないために足の筋を切り落とされた説もあるぐらいだし、メンヘラっちゃうのも仕方ない説。迷惑だがな!
まあかぼたんがこんな感じだから、後から来た巡礼者からはよく思われない。俺だってよく思わないさ。リア充爆発しろって思うさ。でもさ、この子めんどくさいねん。だから許してくれや。
おかげでペトルスからは「火守女と恋仲になるとは、罪作りな方ですね」なんて言われるし、ロートレクからは「貴公の人間性も限界と見える……」って、ドン引きされながら言われたわ。おいテメェら後でアノロンな。復讐霊として殺しに行くわ。
だが、まあ、恐らくは、役者は揃った。
俺がかぼたんとイチャイチャしてる間に原作の登場人物たちがここに降り立ち、巡礼の旅へと出た。そして先程、上級騎士がカラスに連れて行かれるのを見た。ようやくだ。ようやく主人公がこの地にやって来る。
「では次は、大回復の奇跡について語りましょうか」
いや知ってるわ。信仰あるから知ってるし使えるわ。もうその奇跡の物語だけで20以上は聞いたわ。もうやだこの子ネチっこい。
かぼたんが俺にべったりくっついてるせいで、まともに探索にも行けない。最下層でネズミマラソンして人間性稼ぎたいけど、たぶんあそこも、篝火が無いか、あったとしても火が弱くて雑魚モブが復活しないかのどちらかなんだよなあ。うーむ、悲しい。
「来たか」
「へ? どうかされたんですか? 騎士様」
羽ばたく音が聞こえた。ようやくだ。ようやく主人公が来る。
音が更に近く。大きな影が篝火を通り過ぎていく。小さな影を落としながら。
「ようこそ、ロードランへ。君を歓迎しよう」
「……」
騎士装備のそいつは、ただただ突っ立っていた。
「まさか……」
ベンテールを動かして顔を確認すると、亡者だった。
ああ、うん。そうだよね。俺が悪かったわ。
残り少ない人間性をぶち込み、篝火に座らせて生身を取り戻させてやる。
「……はっ!? 私は何を……」
「意識が戻ったか。ここはロードランだ。恐らくは君も聞いただろうが、不死の使命を成し遂げるための場所だ」
「あ、あなたは……」
「ああ、私か。まあ、気にする必要もあるまい。お互い、明日も知れぬ身だ。それよりは、これからをどう生きるかを話した方がいいだろう」
「た、たしかに」
納得しちゃうんかい。もっとこう……あるだろ?
「で、では、不死の使命について、詳しく教えてください。オスカーさんの為にも、聞かなければならないんです」
「そうか、そうきたか。面白い」
「へ? 面白い?」
首を傾げてる。可愛い。あざと可愛い。
あっ、ちょっ、アナスタシアちゃん。足踏まないで。今ここシリアスなシーンだからやめて。シリアルになっちゃうから。
「いや、なんでもないさ。さて、不死の使命とは、二つの鐘を鳴らすことにある。一つは上の方にある不死教区の鐘。一つは下の方にある、病み村の鐘だ。二つ鳴らすと何か起こるらしいが、まあ、その目で確かめるといい」
「そうなんですか。では、私はまずは上の方から探索することにします。騎士様、ありがとうございました」
丁寧な一例をして、彼女は上の方へと向かっていった。
ノロノロとした歩みで。
……あれ、明らかに装備可能重量足りてないよなあ。騎士装備は誰かからパクったのか? だとしたら、誰からパクったんだ? うーむ分からんなあ。意外と、オスカーが渡してたりして。そのまま彼女の姿が見えなくなるまで見送っていたのだが、腰に正拳突きを食らった。地味に響くから止めてください。
取り敢えずかぼたんの頭を撫でてその場を誤魔化しておく。
──カーンカーン
「は?」
え? え? 鐘鳴らしたの? え? は? 早くない? RTAなの?
いや、俺もこの鐘の音は何度か聞いたけど、こんなに早く鳴ったことはねぇぞ!
俺が呆然としてると、リフトの方から生身のロートレクとさっきの主人公が仲良く並んで帰って来ていた。嘘やろお前なんでロートレクも生身なんだよ。いやそれよりもさ、ロードランは時の流れが歪んでるからって、幾ら何でも歪み過ぎでは?まだ全然時間経ってないんですけど。
「騎士様! 無事に鐘を鳴らせました! ロートレクさんも手伝ってくれました!」
「ああ、うん、そうか。おめでとう」
駆け寄って飛びついて来た彼女を受け止め、労いとは言えないような言葉をかける。仕方ないね。動揺から立ち直れていないんだ。あ、ちょ、アナスタシアちゃん。足踏まないで。地味に痛いから。
「ククク。やはり貴公、押しに弱いと見える」
「お前は黙ってろ」
「図星か? 余裕がないと見える」
もういい俺が黙るわ。
「騎士様騎士様! 私頑張りました! 私のお話を聞いてください!」
なにこの子勢いが凄い。
「あ、ああ、そうだな。立ち話もなんだ。座って話してくれ」
くそ、勢いに負けた。
「はい!」
篝火に座り、アナスタシアちゃんに横から抱き憑かれながら話を聞く。
「まずは城下不死街で亡者となってしまった方々を殺して回りながら探索をしていたんですが、正気を保った亡者の方が居たんです」
不死の商人かな?
「最初は普通に会話出来ていたんですが、途中から幻覚でも見ているのか、存在しない犬の事について語り始めたんです」
ユリアか。桶のことをユリアって呼んでるあたり、本当に謎だよなあ。
「このままでは襲われてしまうと思い、先に殺しました」
え? 殺しちゃったの? え? マジ?
「私も本当は殺したくなかったんですが、仕方なかったんです」
せ、せやな。ダトゥーの為には仕方ない犠牲やな。
「その後、なんだか黒くて太くて大きくて長くて硬いモノを振り回している人がいたので」
大竜牙のことを悪く言うのはヤメロォ!(建前)
ナイスゥ!(本音)
「パリィして倒しました。あの人が落としてくれた指輪のお陰で、今は快適に動けてます」
ああ、道理で重量過多じゃない訳だ。
「あ、そうそう。デーモンが居たんですよ。私、デーモンを初めて見ました。あんまり強くなかったので拍子抜けしましたけど」
ん? 初めて? もしや、北の不死院にはデーモンがいなかった?
「その後、アストラのソラールって人に会ったんです。彼は太陽が好きっていう、変な人でした。近くに飛竜がいたので、2人で協力して倒したんです! 彼、すっごく強かったです!」
ええ……ワイにもそーゆーイベント欲しかったなあ。ヘルカイト共闘イベとか燃えそう(色んな意味で)。
「その後、祭壇でソラールさんと太陽の戦士の誓約を交わして、一緒に不死教区を探索しました」
え、なにそれ羨ましい。いいなー。いいなー。なんでそんなにイベント豊富なんだよお。ズルいぞ。チートだチート。
「そこで、間抜けな事に、牢屋に閉じ込められているロートレクさんを見つけたのでした」
「……」
ロートレクが呆然としてるよ。まさかここで自分が標的にされるとは思わなかったんだろうなあ。
「あとは3人で鐘を鳴らしにガーゴイルを蹴散らして終わりです。途中でアンドレイって人に武器を鍛えてもらったりしました」
「そうか。大変だったんだな」
主にロートレクの胃が。
「ええ、すごい大変だったんですから」
そう言って彼女はゴロンと寝転がった。
「今日は大変だったので寝ます。疲れました。おやすみなさい」
彼女はすぐに寝息を立て始めた。
寝付きの早いことはいいこって。まるでタマネギだな。
あとアナスタシアちゃん、そろそろ離れてもらおうか。
アナスタシアちゃんを身体から引き離す。
「ククク。貴公、せいぜいその女には気をつけることだな」
あ、こいつ俺に押し付ける気だな。
「まあ待ちたまえ」
立ち上がり、背を向けて歩き始めたロートレクの肩をガシりと掴む。ククク、生贄になるのはお前の方だ。
「私も久し振りに探索に行こうと思ってな。貴公は探索を終えて帰ってきたばかりなのだから、暫く休むといい。私が代わりに探索に行こう」
「クッ……いや、貴公にはそこの火守女の面倒を見るという仕事があるだろう。貴公こそ、ここで待ち続けた方がいいだろう」
「いやなに、私もそろそろ不死の使命とやらを達成すべく、動き始めようと思ったのだ。では後のことはよろしく頼む」
急いでその場から走って抜け出す。ロートレクが肩をつかもうとするのを、身体を捻って避けて、リフトへ駆け込む。
後ろを向くが、ロートレクはついて来ていない。
「……ふう」
危ないところだった。
だが、これでいい。まずは下層に行って犬のデーモンを倒し、それから最下層で人間性マラソンをしよう。人間性を稼ぐために人間性を削るとはこれ如何に。
そんなことを考えながら下層の鍵を使って扉を開け、下へと向かう。不死街とのショートカットである扉を開け、近くにいる亡者を倒して安全を確保する。また下へと向かい、突っ込んでくる犬を盾で受け、アス直で首を切り落とす。
そのまま進み、家の扉を破壊して中の亡者盗賊を殺していく。更に進んで犬の突進を受け止め、再び首を切り落とす。
今度は亡者盗賊が先に扉を開けて襲いかかって来た。
クロスボウを取り出し、引き撃ちをする事で安全に処理し、奥へと進む。このまま進むとボス部屋だが、すぐ横の階段から下へと降りて行き、正面に見える亡者盗賊を弓で頭部を射抜き、こちらへ誘い出す。近づいたところで首を切り落とし、壁に隠れていた亡者盗賊も斬り殺す。
そのまま進んで螺旋階段を上って、みんな大好き苔BBAに会った。
「正気があるのは久し振りに見たよ。ヒヒヒッ、私の苔を買っておくれ」
私の苔(意味深)。うーん汚い。
残り少ないソウルで毒苔と花苔を数個買い、そこを後にする。そのまま走って扉を開け、これで祭祀場とのショートカットが開通だ。
よし、準備は整った。
来た道を戻り、霧の壁を潜って犬のデーモンと対峙する。
まともに攻撃を食らえば鎧がへしゃげて一回休みとなるだろう。だから、ヤギの方に気を配り、犬は鎧で受け止めることにした。
ヤギの大振りの攻撃を躱し、階段を駆け上がる。追ってくる犬2匹を槍で刺し殺し、地味に痛い傷を治すためエストを飲む。
ヤギがこちらを追って来たので再び攻撃を避けて後ろに回り込み、今度はバスタードソードで尻尾を切り落とす。
「グオオオオオオオオオ!!!」
やはりかなり痛いのか、悶えながら数歩前進した。その間にバスターソードで背中を何度も突き刺し、体力を削っていく。
「フーッ! フーッ!」
ヤギがゆっくりと振り向き、血走った目でこちらをガン見してきた。
ヒェッ。こわっ。これはガチギレですわ。
ヤギが大鉈をブンブンと振り回して、こちらを近づけぬように荒ぶっている。これじゃあ近づけないので、右手のバスターソードをタリスマンに変え、雷の槍を投げる。
「太陽ばんざああああああああい!!!」
この掛け声は気合を込めるのと、詠唱だ。決してテキトーな理由で叫んでるのではない。ないったら無い。奇跡ってのは結局、奇跡の物語を読んで信仰心を育むもんだが、要は信仰心さえあればいいんだから、俺は太陽信仰でぶん投げるだけだ。
雷の槍がヤギの顔にクリーンヒット!
「グオオ!」
結構な衝撃なのか、ヤギが顔を手で押さえて仰け反った。
「オラァ!」
この隙を逃す訳にはいかない。これでも俺はアストラでは名の知れた(と思う)騎士だった。だから俺はアストラの大剣を所持している。それを両手で持ち、走って近づきながらホームランを狙うよう思い切り横に振り、遠心力と重心移動によって振り切られたそれは、ヤギのデーモンの首をいとも容易く跳ね飛ばした。
びくとりぃあちぃぶど。
もしくは、でーもんはんてぃっど。
これにて犬のデーモン戦は終わり。ゲームと違ってヤギの方が強かったです(小並感)。
それじゃあ最下層、イクゾー。
●
人間性マラソンしてました。結果はどうなのかって? 驚異の134! フハハ! これで何も怖くない!
まあ、人間性がゴリゴリ削れて、壁をガリガリ噛んでる時がありましたけどね。流石にヤバイと思って、人間性パリンしましたよ。そういや、最下層の篝火はなぜか消えてないんだよな。あれかな? 火守女の数が増えたから篝火間ネットワークが強化されて、消えなくなったとかそーゆーことかな? それとも、王の器を誰かが置いて、篝火間ネットワークが強化されたとか? もしくは両方? あり得そうでなんだかイマイチ信憑性に欠けるなあ。
まあそれはそれとして、人間性もソウルも十分集まったし、そろそろ祭祀場に戻るとしよう。
ルンルン気分で祭祀場へと戻る。
が、様子がおかしい。妙に静かだ。静かすぎる。まるで、時が止まったように。
近づくと、祭祀場の火は消えているのが確認できた。また、歩いて回ってみると、ペトルスと聖女御一行も消えている。祭祀場に帰ったはずのラレンティウスも居ない。
いや、まさか……。
篝火の真下に位置する牢の前に立つ。
「ああ、そうか……」
血の匂いだ。
ランタンで明るくし、牢の奥へ進むと、そこには彼女の骸があった。
「すまない……」
そして彼女は、黒い瞳のオーブを両手で握りしめていた。
──騎士様、今日はこの奇跡についてお話ししましょう。
「すまない」
これは俺の傲慢だ。
──見てください! あの雲、剣のような形ですよ!
「すまない」
膝から崩れ落ちる。
──えへへ、なんでもないです。
「すまない」
ただ、彼女の両手を上から包み込んで、赦しを請うように、言葉を紡ぐ。
──騎士様のおち○ち○、あまり大きくないんですね。
……いや、これは違う。思い出す思い出を間違えた。
「……すまない」
そこには、哀れな男の姿があった。
彼女によってもたらされた差異。ただ、篝火の火を眺め続けるだけだった騎士に、変化という刺激を与えた彼女。毎日毎日、幸せそうに笑って話し掛けてくる、そんな彼女に、影響されてしまったのだろうか。この過酷極まりない残酷な世界で、人を信じてしまったが故の罰。いや、それは人を信じたのではない。大丈夫だろうと楽観し、思考を放棄した結果そのものである。
人は罪を犯す生き物である。それは、神でも同じことである。教戒師に免罪などしたところで、なんの意味があるだろうか。人の罪とは火と異なり、決して消えることなく、残り続けるものだ。消えることの無い、呪いの証のように。
「今、助けに行くよ」
もういい。最早、
ならば、行動で示すのみ。
目指すは、神々の住まうアノール・ロンド。
立ちはだかるは神々の試練。
鐘守。
イザリスの魔女。
巨像の兵士。
はてさて、この不死人はアノール・ロンドへの巡礼が許されるのか。それとも、志半ばで心折れてしまうのか。
「ああ、絶対に助けてやるさ」
騎士の瞳の内には、昏い焔が燃えていた。
そう。
それこそが、人が内に宿している──
──
次も0時。
タイトルのせいで誰も読まないと気づいたので、それっぽいタイトルに変更しました。