イナズマイレブン! 脅威の転生者 ゴジョウ!!   作:ハチミツりんご

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今回、めっさ長いです。いつもの倍くらいあります。


第十条 決着!吹雪兄弟!

「クソが!!!」

 

 

ガンッ!とベンチが音を立てて倒れる。怒りが収まらない比得が力任せに蹴りつけたせいだ。

 

 

「あぁ、クソ!!ムカつく!!なんだよあいつら!!クソガァ!!」

 

「・・・うるっさいわよ比得!!!少しくらい静かに出来ないわけ!?」

 

 

比得の行動を見かねて・・・ではなく、イライラしていた為に八つ当たり出来る相手を欲していた小鳥遊が叫ぶ。

 

 

「はあ?誰のせいでこうなったんだよ!!相手1人止めれねぇ上にヘナチョコなパス出しやがってよォ!!」

 

「1点も取れないエースストライカー(笑)に言われたくないわよくそボケが!!」

 

「お、おいやめろよ!」

 

 

今にも殴り合いを始めそうな二人を見かねて、近くにいた坂本くんが止めに入る・・・が、近づいた途端2人から突き飛ばされ、尻もちをつく。

 

 

「ってぇ!なにすんだよ!」

 

「うるさいわね!!何も出来ないあんた達雑魚が、いっちょ前に私たちに文句言おうとしてんじゃないわよ!!」

 

「そもそもてめぇらがものの役にも立たねぇから3-0になったんだろうが!!すっこんでろ!!」

 

「なっ、んだよこらぁ!!」

 

 

2人から理不尽な文句を言われ、坂本くんは立ち上がり、二人を睨みつける。

 

 

 

・・・あーあー、あいつらはもう・・・。こんな感じになるとは思ってたけど、ここまで酷いとはなぁ。メンタル弱すぎでしょ。負けたことないの?無いんだろうなぁ。

 

 

そんな事を思いながら、2人の背後に近づいていく。途中で坂本くんが気づいたが、黙っているようジェスチャーをし、2人のすぐ近くまで忍び寄る。近づいたところで、俺は両手を高く上げーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー思いっきりゲンコツをした。

 

 

 

「ったぁ?!」「いってぇ!?」

 

 

ゴンッ!!と鈍い音を立てて俺の拳が2人の頭にぶつかる。殴られた2人はこちらを振り向き、少しの間呆然としていたが、すぐにその表情を憤怒に染め、俺に詰め寄ってきた。

 

 

 

「てめぇ!!!何しやがんだ!!あぁ!?」

 

 

比得が俺の胸ぐらを掴み、そう叫ぶ。小鳥遊は叫んだり胸ぐらを掴んだりはしていないが、その表情はもはや怒りを通り越して殺意が芽生えているように思えた。

 

 

 

「ククク………いえいえ、随分頭に血が上っていたようなのでねぇ。殴れば少しは血が下に行くかと思いまして。」

 

「・・・あんた、ふざけてんの?」

 

「おやおや、これはまさか!!私は至って真剣ですよ?では、逆に聞きますが………………

 

 

 

貴方達の方こそ、ふざけてるんですか?」

 

 

「「・・・は?」」

 

 

2人はポカンとした表情を浮かべるが、お構い無しに話を続けていく。

 

 

「おや、聞こえませんでしたか?ふざけているのか、と質問したのですが?」

 

 

「・・・てめぇ、俺達のプレイの何処がふざけてんだ?おい、言ってみろや!!!」

 

「おや、あのプレイの何処がふざけてないんですか?

 

周りにパスは出さない、馬鹿の一つ覚えのように同じことを繰り返す、挙句の果てには戻ってきて八つ当たり。

 

………これの何処がふざけてないんだ?あ?」

 

 

少々語尾を強めると、2人はビクッ!と身体を揺らし、比得は掴んでいた俺の胸ぐらを離す。

 

・・・いかんいかん、子供相手にムキになったらダメだ。

 

俺はひとつ深呼吸をして、気分を落ち着けると、再び2人に向かって話しかける。

 

 

「……とりあえず、前半で分かったでしょう?吹雪兄弟には、今までの貴方達のやり方は通用しませんよ?」

 

 

「・・・分かってるわよ。私たち2人じゃ、まだあのDFは突破出来ない。でも、五条!!あんたが前線に加われば、3人なら、絶対突破出来る!そうすれば・・・!!」

 

「私はDFですよ?できる限りサポートはしますが、前線には加わりませんよ。」

 

「っ!!じゃぁ、どうすればいいって言うのよ!!!」

 

 

小鳥遊がそう叫ぶ。比得も同じ気持ちのようだ。・・・まぁ、相手の方が強い、と認められただけ成長してるか。あとは、試合中にもっと分かってくれれば・・・。

 

俺は、優しい声で2人に語りかける。

 

「決まっているでしょう?

 

 

 

彼らを頼ればいいんですよ。」

 

 

 

そう言って、俺が指さした先には、坂本くんを初めとした一般生達。

 

 

「・・・え?俺ら?」

 

 

1番前にいた坂本くんが、頬をヒクヒクさせながら自分を指さす。後ろの一般生達も、同じように頬を引きつらせていた。

 

 

 

「はぁ!?あんた正気!?あんな雑魚どもに何が出来るのよ!!」

 

「サッカーはチームスポーツです。11人が協力すれば、不可能なんてありませんよ?」

 

「いくらなんでも限度ってもんがあるでしょ!?あぁもう、いいわよ!!私と比得でどうにかする!!」

 

 

 

俺の提案が余程気に食わなかったのか、小鳥遊は1人ピッチの方に歩いていってしまう。

 

 

 

「五条。」

 

 

ふと、目の前にいる比得が俺に話しかけた。

 

 

 

「俺、お前がそんなにバカだとは思ってなかったわ。」

 

「おや、私は至極当然のことを言ったつもりですが?」

 

 

比得の言葉に答えるが、彼は俺を睨みつけながらピッチに向かってしまった。

 

 

・・・なんだかんだ言って、あいつにあんな目を向けられるの初めてだな。呼び方も五条になってたし。ちょっとへこむわ。

 

 

 

 

「・・・取り敢えず、そろそろ後半が始まる。田所は五条と交代しろ。

 

後半は、愛媛リトルエンペラーズの名にかけて、必ず逆転しろ、いいな!!」

 

 

 

はい、と一般生が返事をするが、元気がない。まぁ、3-0な上にあれだけの実力を見せられれば心配にもなるか。

よし、ここはひとつーーー

 

 

「………皆さん、聞いてください。後半の作戦なんですがーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ、決勝戦の後半が始まろうとしていますが、これは・・・』

 

 

後半が始まろうとしている時、今まで熱い実況をしていた彼が言い淀むのには、とある理由があった。それはーーー

 

 

 

FWーーー比得

 

-----------------山田 小鳥遊 山本

MFーーー 田中 坂下 田沢 坂本 田上

 

 

DFーーー五条

 

 

GKーーー佐藤

 

 

 

 

【愛媛リトルエンペラーズ】の、MF8人という超奇抜なフォーメーションに面食らった為だ。

 

 

 

「・・・なんだあれ?舐めてんのか?」

 

「どうだろうね?自分一人で止めれるっていう自信の表れかもよ?」

 

 

このフォーメーションをみた吹雪兄弟は、相手の考えが分からずに首を傾げていた。

 

 

 

「ほんっとに意味わかんないんだけど。」

 

「アイツ、マジでバカになったのかなぁ?」

 

 

一方、小鳥遊と比得は割と真剣に五条の頭の心配をしていたりする。

 

 

 

互いのチームが困惑する中、試合は再開する。まず、ボールを持ったアツヤが自慢のスピードで相手を抜き去っていく。比得や小鳥遊、一般生達が立ち塞がるが、前半よりもさらにギアが上がっているアツヤに翻弄され、抜かれてしまう。

 

 

そして、ついにGKの前に立っているのは、五条1人となってしまった。

 

 

 

「待ってたぜぇ!!この瞬間(とき)をよォ!!」

 

そんなどこかで聞いたことがあるようなセリフを言い放ちながら、アツヤは五条へと突っ込んでいく。

 

対する五条は、アツヤに向かって走りながら、勢い良く右足を振るう。

 

 

「【スピニングカット】!」

 

「っ!!あっぶねぇ!」

 

 

衝撃波の壁が生み出されるが、アツヤは咄嗟に上に飛ぶことでそれを回避した。思っていたよりもあっさりと躱せたことに驚きながら下にいる五条を見ると、彼は先程と同じように右足を後ろに振り上げていた。しかし、今度はその足に風が纏わされていた。

 

 

「空中なら、躱すのも至難の業でしょう……?【サイクロン】!!」

 

「ぬ、おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 

再び振るわれた右足によって、巨大な竜巻が巻き起こる。それによってアツヤは天高く吹き飛ばされ、五条はゆうゆうとボールを奪う。

 

 

「ククク……小鳥遊さん!!」

 

 

ボールを奪った五条は、前線にいる小鳥遊に向かってパスを出す。

 

 

(・・・悔しいけど、やっぱりあいつは上手い・・・!!私も、活躍しなきゃ、点を取らなきゃ・・・!!)

 

 

ボールを受け取った小鳥遊は、比得にパスを出し、再び2人で【たつまきどくぎり】を仕掛ける。

 

 

「またそれかい?【フリーズウィンド】!」

 

 

しかし、案の定士郎によってその毒霧は霧散させられてしまう。そして、士郎はパスを出そうとコースを探す。その時、ふと気づく。

 

 

(・・・パスコースが、塞がれてる?)

 

 

パスを受け取る選手達と自分との間に、小鳥遊を除く7人のMF達が立ち塞がっている。

 

なるほど、この為にあんなフォーメーションにしたのか、と士郎は納得すると同時に、1人だけ右サイドの子が空いていることに気づく。

 

 

(そのフォーメーション、まだ完璧には程遠いね!!)

 

 

そう思いながら、士郎は空いている彼にパスを出す。そのパスコースが、()()()()()()()()()()()()()と気づかずに。

 

 

「よし、アツーーー」

 

「させない!!【コイルターン】!!」

 

「っ!?うわぁぁぁ!!」

 

 

 

パスを受けた少年が前線のアツヤに渡そうとした瞬間、一般生唯一のディフェンス技使いである田中がボールを奪い取る。

 

 

「今だ!!坂本!!」

 

 

ボールを奪い取った田中は、逆サイドにいる坂本にむかってパスを出す。

 

が、ボールを受け取った坂本の前に、ゆきんこベアーズのDFが立ち塞がる。

 

「行かせないべ!!」

 

「舐めんなよ!!【たまのりピエロ】!!」

 

 

しかし、坂本はドリブル技を巧みに使い、DFを抜き去っていく。そのまま坂本は、中央に向かってパスを出す。がーーー

 

 

(パスが高すぎる、ミスキックだ!!)

 

 

比得や小鳥遊がジャンプしても、届かないであろう高さまで上がっていったボールを見て、誰もがそう思った。

 

 

ーーー作戦を知らされていた一般生達と、いち早くそれに気づけたアツヤ以外はーーー

 

 

 

「アニキ!!上だァ!!!」

 

 

弟の叫びを聞き、ハッと士郎は上を見上げる。

 

 

 

 

そこには、その身を回転させながら、黒い炎を身にまとい、いつもの慇懃無礼な笑みを浮かべた、一人の少年の姿があった。

 

 

 

「【ダーク……トルネード】ォ!!!!」

 

 

不意打ちのごとく放たれた漆黒の一撃は、士郎とGKに動く暇すら与えず、その勢いのまま進んでいき、ゴールネットを揺らした。

 

 

 

 

 

『・・・ご、ゴォォォォォォォォォォォォォル!!!!!!なんということだ!!交代したばかりの五条勝、ゴール前から一気に駆け上がり、必殺技による奇襲攻撃!!リトルエンペラーズ、この試合初めての得点だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

 

 

 

『よっしゃぁぁぁァァァァァァ!!!』

 

 

「すっげぇ、すっげぇよ五条!!」

「なんだよあれ!!あんなの隠してたのかよ!!」

「ずりーぞお前、言えよなぁ!!」

 

 

「ククク……いえ、正直あそこまで上手くいくなんて思ってませんでした。皆さんのおかげですよ。」

 

 

シュートを決めた五条の周りに、チームのみんなが集まって祝福する。

 

喜びを分かち合う彼らを、小鳥遊と比得は呆然と見ていた。それに気づいた五条は、ゆっくりと2人に近づき・・・

 

 

 

「………どうです?チームプレイっていうのも、いいと思いませんか?」

 

 

ニヤリと、そう言い放った。そして、それを皮切りに、一般生達も2人に声をかける。

 

 

「比得!小鳥遊!俺達頑張って、お前らをサポートするからさ!!」

「シュートをバンバンきめてくれよ!!」

「いつもみたいに余裕の表情でやれよ、小鳥遊!!!」

「そんな焦った顔はお前には似合ってねーぜ、比得!!」

 

 

今まで、バカにしていた彼らからの言葉に、小鳥遊と比得は呆然とした顔のまま、互いの顔を見つめ合う。そしてーーー

 

 

『・・・プッ、アッハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!』

 

 

二人揃って、屈託のない笑みを浮かべて盛大に笑いあった。人を見下したような笑みや、ヘラヘラとした笑みではなく、純粋に、心からの笑顔を浮かべていた。

 

 

「ほ、ほんっと!!なんでさっきまで喧嘩してた相手にそんなクサイ台詞が言えるのよ!!」

 

「ヒ、ヒーッ!!腹が、腹が捩れるぅ!!」

 

「ク、ククク・・・てか、あのパスが中盤じゃなくて前線に直接出されたらどうしてたのよ。」

 

 

「その時は、私がボールカットして、そのままシュートをうつ予定でしたが?」

 

「・・・ねぇマサルちゃん。それ、チームプレイじゃなくね?」

 

「………………あ。」

 

 

 

比得の言葉に、ポカンと口を開ける五条。そして、2人はそれをみてブフゥ!!と吹き出す。

 

 

 

「あ。って!!!あの五条があ。って!!アッハハハハ!!!」

 

「無理!!もう無理!!ふ、腹筋がァ!!」

 

「………ちょっと2人とも、そんなにわらうことないじゃないですか?」

 

 

 

ギャハハハと笑う2人を、呆れたように眺める五条。しかし、その表情は、とても穏やかだった。

 

 

ひとしきり笑ったところで、小鳥遊と比得は五条たちの方を向いた。その顔は、憑き物が落ちたかのように晴れやかだった。

 

 

 

「はー、面白かった。ひさびさにあんな笑ったわ。」

 

「ほんとほんと。マサルちゃんのあ。は傑作だよねぇ!!」

 

「はぁ……ほんっとに貴方達はもう……。

 

それで、どうするんですか?チームプレイ、するんですか?」

 

 

五条の言葉に、2人は再び顔を見合わせる。次の瞬間、2人はニヤリとした笑みを浮かべながら五条に向き直る。

 

 

「しっかたないわねぇ。まぁ、せいぜい引き立て役くらいこなしてよ?」

 

「ま、俺達天才だし?お前らと連携しながらプレイとからくしょーじゃん?」

 

「よく言いますよ、前半全くいいとこ無しだったくせに。」

 

 

『そーだそーだ!!』

 

 

「うっせ!これからバシバシ決めんだよ!」

 

「あーもー、とっととポジションつくわよ!相手まってるじゃないの!」

 

 

 

小鳥遊が注意し、全員がそれぞれのポジションに戻る。試合再開の笛がなると、アツヤがボールを持って上がっていく。

 

しかし、その前に比得が立ち塞がり、巧みなディフェンスでアツヤを止めにかかる。

 

 

(こいつ、さっきより動きが良くなってやがる・・・!!)

 

 

一般生と和解したためか、焦りがなくなったからか、はたまた自分が抜かれても五条がいるという安心感からか、比得のプレイは、先ほどとは打って変わって、彼本来の実力を取り戻していた。

 

 

「だが、まだあめぇ!!」

 

 

しかし、そこはエースストライカーとしての意地を見せ、アツヤが比得を抜き去っていく。が、すぐさま小鳥遊が進路を妨害する。

 

 

(【キラースライド】じゃ止められない!けど、まだ【サイクロン】は・・・。)

 

 

 

「小鳥遊さん!【サイクロン】です!今の貴方なら使えるはず!!風を味方につけるんです!!」

 

 

 

(風を、味方に・・・。)

 

 

後ろから飛んできた五条のアドバイスに頼り、右足を後ろに振り上げる。

 

 

(風を無理やり引っ張ってくるんじゃなくて、風を集める・・・いや、風に集まってもらう・・・?)

 

 

そう考えた彼女の足に、うっすらと、風が纏わりついてくる。そしてそのまま、右足を前方に向かって振るった。

 

 

「これで・・・!!【サイクロン】!!」

 

 

「なに!?うわぁぁぁぁ!!」

 

 

巻き起こった風が、アツヤに向かって襲いかかる。不意を打たれたアツヤは、体勢を崩しそのまま飛ばされていく。

 

 

「やった・・・!!」

 

「こっちだ、小鳥遊!!」

 

 

土壇場で必殺技を成功させた小鳥遊に向かって、一般生の1人、山田がパスを要求する。彼女はそのまま山田にボールを預け、自身も上がろうと前を見る。その時、ふとひとつ作戦という程でもない、とあるやり方を思いつく。

 

 

「山田!!比得にパス!!さっきの坂本みたいに、高く!!」

 

「?わかった!!」

 

 

山田は言われたまま、比得の真上にパスを出す。すると小鳥遊は先ほどと同じ体勢をとり、その右足を比得に向かって振るう。

 

 

 

「比得!!!【サイクロン】!!」

 

「へ?どわぁぁぁぁぁぁぁ!!!??」

 

 

 

小鳥遊の起こした竜巻によって比得は天高く吹き飛ばされていく。すると、吹き飛ばされた先で、ちょうど山田のパスが足元に届く。

 

 

 

「あんたの必殺技、足りないの高さだったわよね?!これでどう!?」

 

 

「っ!!ははっ!!いいねぇ、最っ高だぜ、忍ちゃん!!!」

 

 

 

ニタリ、とした笑みを浮かべ、比得はボールを踏み台にして、より高く跳躍する。そして、その勢いを利用し、ボールを連続で蹴りつける。

 

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァ!!!」

 

 

十、二十、三十、四十・・・九十九まで蹴りつけたところで、とどめと言わんばかりに両足でボールを踏みつけるようにして放つ。

 

 

 

「これが俺の、【百裂ショット】だぁ!!」

 

 

「くっ!!【フリーズウィンド】!!!!」

 

 

 

比得の必殺シュートに、士郎は咄嗟に技を繰り出すが、超高打点から放たれたそのシュートを止めるには至らず、ゴールに突き刺さった。

 

 

 

『ゴォォォォォォォォォォォォォル!!!!決めましたリトルエンペラーズ!!この試合、沈黙を保っていたエースストライカー、比得の目が覚めるような一発だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

 

 

 

 

「ひゃっほーーーーい!!!みたか、これが大エース比得様じゃーーー!!!」

 

『いえーーい!!!』

 

 

 

比得がそう叫んだところで、彼は祝いに来た一般生たちからもみくちゃにされる。だけどかなり嬉しそうだ。

 

 

 

仕切り直して、再び笛がなる。アツヤは再び上がっていき、比得をかわして小鳥遊と対峙する。

 

 

「いかせない!【サイクロン】!」

 

「っは!!そう何度も同じ手を食らうかよ!」

 

 

小鳥遊が放った竜巻を、アツヤはタイミングを見切り回避する。一般生達が襲いかかるが、アツヤの敵ではなく難なくかわしていく。

 

 

ーーーあとはあのメガネだけだ!!ーーー

 

 

 

そう思ってアツヤは前を見ると、そこにはGKが1人いるのみだった。

 

 

「なっ!?アイツはどこに・・・!?」

 

「ククク……【クイックドロウ】……。」

 

「っ!しまった!?」

 

 

 

五条がいないことに動揺して動きを止めてしまったアツヤは、死角から高速で近づいてきた五条にボールを奪われてしまう。

 

 

 

「小鳥遊さん!!」

 

「ナイスパス!!比得、もっかいいくよ!」

 

 

そう言って、小鳥遊は再び体勢を整える。

 

 

「っ!!させないよ!!」

 

 

しかし、それに気づいた士郎が、小鳥遊のボールを奪いにくる。技を発動する前に、至近距離まで近づいた士郎は、ボールを奪えると確信した。

 

しかしーーー

 

 

「かかったね?」

 

 

トン、と士郎の股下を通してスルーパスが出される。

 

「な!し、しまった!?」

 

「ナイスパス、小鳥遊!!」

 

焦っていた士郎は、サイドから上がっていた山田に気がつけなかった。小鳥遊からのパスを受け取った山田は、そのままシュートを放つ。

 

 

「させないっぺ!!」

 

 

しかし、ゆきんこベアーズのGKが意地を見せ、そのシュートをパンチングで弾いた。しかし、そこに比得が走り込んでボールをとると、そのままボレーシュートを放ち、ゴールを奪い取る。

 

 

「弾いたと思った?残念!俺ちゃんでしたぁ!!!」

 

 

『ゴォォォォォォォォォォォォォル!!!!なんということでしょうか!!!後半、五条勝が入ってから生まれ変わったかのようなプレーをするリトルエンペラーズ!!この土壇場で同点に追いついたァ!!!!』

 

 

 

「すまん、助かったよ、比得。」

 

「ドンマイ、ドンマイ!!次いこーぜ!」

 

「おう!!」

 

 

 

つい先程までいがみ合っていた特待生と一般生が、互いを褒め合い、慰め合い、非常に楽しそうにサッカーをプレイしている。それを見た五条は、密かに心の中で感動していた。

 

 

(………あぁ、俺は、こんな風に笑う2人を、見たかったんだな………。)

 

 

 

再び、試合が再開される。すると、今まで1人で上がっていたアツヤが、後ろにいた士郎にパスを出す。

 

 

「アニキ!!あの技だ!!アレなら絶対に決められる!!」

 

 

「っ!!そうか、アレがあったね!!よし、行くよ、アツヤ!!勝つのはボク達だ!!」

 

 

「当たり前だろ!!」

 

 

 

そんな言葉を交わしながら、2人で上がってくる。兄弟の巧みな連携に、比得や一般生は勿論、小鳥遊も必殺技を打つタイミングを潰され、残るDFは五条1人となる。

 

 

吹雪兄弟は、1度ボールを前に蹴ると、走ってそれに追いつき、二人同時にボールを引っ掻くかのように蹴りつける。すると、2人の背後に巨大な狼が現れ、その雄叫びと共にボールが3つに分かれ、発射される。

 

 

 

「これがぁ!!」

 

「俺たちの!!」

 

 

『【ウルフレジェンド】だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!』

 

 

 

 

(うっそだろ【ウルフレジェンド】!?何でこんなのがこの時期に・・・そうだ!!この技、確か2人の合体技だったんだ!!)

 

 

思いもしない大技の登場に、内心動揺しながらも、GKの手助けをするために五条は技を繰り出す。

 

 

「くっ!!【スピニングカット】!!!!!【サイクロン】!!!」

 

 

跳躍しながら左足で衝撃波の壁を、右足で竜巻を同時に起こす。ふたつの力が合わさるが、大狼の雄叫びにはかなわず、ぶち破られてしまう。

 

 

「クソっ!!【ダークトルネード】!!」

 

 

咄嗟に身体を回転させ、黒い炎と共にボールを蹴りつける。

 

ふたつの吹雪が放った大狼の一撃と、仲間の思いを背負った男の黒炎の一撃とがぶつかり合い、凄まじい衝撃波があたりを襲う。

 

 

「「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」

 

「ククク……………………!!!!!」

 

 

お互いの意地と意地がぶつかりあった勝負、これを制したのはーーー

 

 

 

 

狼だった。

 

 

「グゥ………!!!」

 

「「っしゃあ!!!」」

 

 

五条が弾き飛ばされ、ゴールネットに向かって一直線にボールが飛んでいく。吹雪兄弟だけでなく、ゆきんこベアーズのメンバーも、会場の観客も、このシュートが入る未来が見えたようだった。

 

 

 

そんななか、五条は不敵な笑みを浮かべて、吹雪兄弟にこう言った。

 

 

「………あまり、うちのGKを舐めないで頂きたいものですねぇ?」

 

 

「おおおおおおおおおおおおおお!!!!【タフネスブロック】ゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」

 

 

 

五条によって弱められたシュートを、GKの佐藤が真正面から受け止める。それでも、徐々に佐藤の身体は押し込まれていく。しかし、気合で踏ん張った佐藤の力により、ボールはゴールネットを揺らすことなく、彼の手に収められた。

 

 

「「なにぃ!!!?」」

 

 

「ぐっ・・・あとは、頼んだ!!」

 

 

 

受け止めた佐藤は、咄嗟に近くにいた五条にパスを出す。残り時間は僅か、悠長にしている暇はない。

 

 

「っ!させない!!」

「ぜってぇ止める!!」

 

 

吹雪兄弟が反応し、五条からボールを奪いにかかる。しかし、ニヤリと笑った五条の身体がブレ、3人に分裂する。

 

 

「【ぶんしんフェイント】!!」

 

 

2人で奪いに来た吹雪兄弟に対し、3人の五条による巧みな連携でかわしていく。そして、1人に戻った五条は小鳥遊に向けて全力のシュートを放つ。

 

 

「小鳥遊さん!!頼みます!!」

 

「っ!!そういう事ね、面白いじゃん!!比得!!行くよ!!」

 

 

五条の意図を察した小鳥遊は、そのままダイレクトでボールを比得に向かって蹴る。比得も2人の意図を察して、ケラケラと笑う。

 

 

「あーもー、マサルちゃんも忍ちゃんも、ほんとマジで最高じゃん!!!」

 

 

そして、比得もボールを受けることはせず、そのままボレーシュートを放つ。

 

 

 

「これがぁ!!」

 

「私たち3人の!!」

 

『【トリプルブースト】ォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!』

 

 

 

3人の針の穴を通すかのような連携シュートの前に、ゆきんこベアーズのGKは太刀打ち出来ず。GKごとシュートを叩き込んだ。

 

 

 

『ゴォォォォォォォォォォォォォル!!!!そして、ここで試合終了のホイッスルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!なんという劇的な幕切れ!!この白兎少年サッカー大会を制したのは、愛媛からの招待チーム!!後半4得点で大逆転優勝の、リトルエンペラーズだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』

 

 

 

 

 

 

「・・・勝てましたか。」

 

 

ホッと息をつく。すると、近くにいた士郎が五条に近づき、そっと握手を求める。

 

 

「負けたよ。凄いね、君。」

 

「ククク……凄いのは、このチームですよ。」

 

「それはそうだけど、あの状態から立て直した君は、やっぱり凄いよ。またいつか、勝負したいな。」

 

「………ええ、喜んで。」

 

 

そう言って、両チームのキャプテンはガッチリと握手を交わす。

 

すると、士郎の後ろにいたアツヤが、ズンズンと五条に近づき、ビシッと彼を指さす。

 

 

「いいか!!俺はまだ負けてねぇからな!!表彰式終わったら速攻勝負だ!!絶対逃げんなよ!絶対だぞ!!!」

 

 

そう言って、アツヤはさっさとどこかへ行ってしまう。

 

「・・・ごめんね、あいつ、負けず嫌いだからさ。」

 

「いえいえ、構いませんよ。どうせなら貴方とも勝負したいですねぇ。」

 

「っ!・・・ふふっ。意外と早く、リベンジの機会があるみたいだね?

 

・・・僕は、『吹雪士郎』。さっきのは、弟のアツヤ。ねぇ、君の名前は?」

 

 

「………『五条勝』、ですよ。」

 

「じゃぁ、五条くん。また後でね。」

 

 

そう言って、士郎もアツヤの方へと歩いていく。ふと前を振り向くと、そこには小鳥遊と比得を筆頭に、リトルエンペラーズ全員が立っていた。

 

 

「五条」「マサルちゃん」

 

 

そう言って、2人の手が掲げられる。その手の意味を察した俺は両手をあげーーー

 

 

 

 

 

 

パァン、と乾いた音が響いた。

 

 




リトルエンペラーズの子達は、小鳥遊と比得だけ覚えてくれれば大丈夫です。ほかの子は特に出番ないんで。
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