イナズマイレブン! 脅威の転生者 ゴジョウ!!   作:ハチミツりんご

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第十一条 新たな出会いと、彼の今

俺たちの決勝戦が終わってすぐに表彰式があり、俺たちは大会優勝チームとしてそれに参加していた。

 

・・・といっても、参加賞と優勝記念のメダルを貰って、スポンサー会社の社長さんの話を聞くだけですぐに終了したが。

 

 

 

表彰式が終わって、俺たちは監督役のもとに集合していた。

 

 

「さて、ひとまず良く頑張ったな。最後の試合はひやひやしたが、優勝出来て私も嬉しく思う。この後はホテルに戻って、それぞれゆっくり休息をとって欲しい。ただ、夕食の時間には遅れないように・・・ん?」

 

 

不意に監督役が話を止め、俺たちの後ろの方をポカンと眺めている。そんな監督役の行動に首をかしげながら、俺たちは後ろを振り向く。すると、そこにはーーー

 

 

『メェェェェェェェガァァァァァァァネェェェェェェェェ!!!!!』

 

 

ものすっごい勢いでこちらに走ってくるオレンジ色のツンツンヘアーがいた。

 

 

キキィー!!と俺の前で急ブレーキをかけたツンツン男は、俺を睨み、ビシッと指を突きつける。

 

 

「勝負だメガネ!!忘れたとは言わせねーぞ!!!」

 

 

ドヤ顔で高らかと宣言するツンツン男こと吹雪アツヤ。

 

いや、いくらなんでも早すぎない?俺らまだ話終わってないんだけど!?などと考えていると、静かにアツヤの肩に手が置かれる。

 

ビクリとアツヤは身体を揺らし、壊れたブリキの如く、ギ、ギ、ギと後ろを振り返る。

 

 

「・・・アツヤ?まだ五条くん達の話終わってないよね?何してるのかな・・・?」

 

 

優しい微笑みを浮かべている筈なのに、真っ黒なナニカが背後に見え隠れしている士郎に、アツヤはしどろもどろになりながら言い訳を口に出そうとする。

 

「こ、コラ!アツヤ!!」

 

「はぁ、はぁ・・・。す、すみません!!うちの子が・・・。」

 

 

と、そこに現れたのは、メガネをかけた歳若い男性と、士郎にそっくりな優しい瞳をした女性が息を切らしながら走ってくる。言葉の内容からして、吹雪兄弟の御両親だろう。

 

そんなふたりは頭を下げながら、アツヤの頭を掴んで一緒に頭を下げさせる。アツヤも自分が悪いことをしたということは分かっているのか、不満げだが抵抗せずに受け入れる。

 

 

「本っ当に、申し訳ありません!!!お話の最中に、こんなことを・・・!!」

 

「あぁ、いえいえ構いませんよ。子供のしたことですし・・・。それと、勝負、というのは?」

 

 

監督役の問いに、吹雪一家に変わって俺が答える。表彰式が終わったら、もう一度勝負をする約束をしていた、と。

 

俺の説明に納得した監督役は、吹雪夫婦に疑問を投げかける。

 

 

「なるほど、こちらとしては本人達が納得しているのなら構いませんが・・・そちらは、お時間は大丈夫なんでしょうか?もうそろそろ夕方ですが。」

 

「あぁ、それが私たちの家は大雪原を越えた先にあるので、そろそろ帰らないとかなり遅くなってしまうんです。ただ・・・。」

 

「ヤダ!!メガネに勝つまで絶対に帰らない!!!」

 

「・・・と、駄々をこねていまして。ですが、これから宿を探すとなると・・・。」

 

 

と、吹雪父は言葉を濁す。まぁ、この時間から宿を探すのは大変だし、見つけたとしてもかなりの金額がかかるだろうしなぁ。

 

ただ、アツヤはどうしても俺と勝負したいらしく、言うことを聞きそうにない。アツヤを止めようとしている士郎の方も、どちらかと言えば俺にリベンジしたいようだ。さて、どうしたものか。

 

 

 

 

 

 

「ホッホッホ。話は聞かせてもらったっぺよ。」

 

 

 

 

いきなり響いたその声に、俺も含めてその場にいた全員が驚き、そちらを見やる。

 

そこに立っていたのは、先程の表彰式で話をしていた恰幅の良い男性と、ちょうど俺たちくらいの小さな女の子の2人だった。

 

男性の方は、確か大会スポンサーである『しろうさぎ本舗』という会社の社長さんだったはずだ。

 

 

 

 

「こ、これは白兎屋社長!!ご無沙汰しております。この度は招待チームとして参加させていただき、感謝の言葉もございません!」

 

「ホッホッホ、いいっぺ、いいっぺ。サッカー協会の影山さんからの推薦だっペからなぁ。

 

期待していたけど、本当に凄いチームだったっぺよ。特に決勝戦は、年甲斐にも無くはしゃいでしまったっぺ。」

 

うんうん、と頷きながらそう言う白兎屋社長は、とても穏やかだった。

 

・・・俺たち、ていうか、小鳥遊と比得の態度はかなり酷かったけど、こう言ってくれるんだから優しい人なんだな。

 

 

「ありがとうございます。しかし、白兎屋社長。先程のはどういう・・・?」

 

 

「いやいや、どうも宿探しで困っているみたいだっぺからな。それなら、わしのホテルに招待しようか、と思ったんだっペ。」

 

 

監督役の疑問に、ゆっくりと答えた白兎屋社長。詳しく話を聞くと、どうも俺たちの泊まってるホテルのようだ。確かにあのホテル、近くにサッカーグラウンドがあったし、丁度いいかもな。

 

その言葉を聞き、アツヤは目をキラッキラさせながら両親を見る。士郎の方も、アツヤ程あからさまではないが、期待しているようだ。

 

 

 

「いやしかし、そんなお世話になるわけには・・・。」

 

「あぁ、お金の問題なら大丈夫だっペ。さっき素晴らしい試合を見せてもらったお礼にも含めて、こっちが負担するっぺよ。」

 

 

 

そんな白兎屋社長の言葉に、ウンウンと唸っていた吹雪父は、お世話になることを決めたようだった。やっぱり無料ってデカいよね。分かる分かる。

 

 

 

「やったぁ!!おいメガネ、すぐ戻って準備しろよ!!すぐ来るからな!!」

 

「ま、待ってよアツヤ!!ごめん五条君、また後でね!!」

 

「コラ!待ちなさいアツヤ!!」

 

「す、すみません!!失礼します!!」

 

 

泊まりでサッカー、ということでテンションが跳ね上がったのか、アツヤは1人で駐車場の方まで走っていった。士郎と両親も急いでアツヤを追いかけ、その場を離れてしまった。

 

 

・・・アツヤってあんなにアホの子みたいなキャラだったっけ?

 

 

 

 

「あらま、行ってしまったっぺ。困ったっぺなぁ、頼み事もあったんだっペが・・・。」

 

「頼み事、ですか?」

 

 

頬をポリポリと掻きながら呟いた社長さんの一言に、思わず聞き返してしまう。

 

すると、社長さんは隣に立っていた女の子の頭に手を置き、撫でながら話を始める。

 

 

「いやぁ、実はさっきの決勝戦で、うちの子がサッカーに興味を持ってなぁ。出来れば、この子も混ぜてほしいんだっペ。」

 

 

社長の言葉を聞いて、女の子に視線を向ける。

 

緊張やら期待やらが入り混じったような表情をしている彼女は、ピンク色のセミロングヘアーに、緑色の瞳を携えた、綺麗な子だ。成長したら間違いなく超がつく美人になるだろう。

 

 

・・・今更ながら小学生でピンクってどうなのよ。いや、ほんとに今更だけどね?うちにもピンクヘアーの女の子と緑色の髪の男もいるし、士郎は灰色っぽいし、アツヤはオレンジだし。

 

 

おっと、話がそれた。

 

まぁ、個人的には全然OKなんだけど。新しくサッカーの魅力に気づいた人には、そのまま楽しくプレイして欲しいし。

 

 

 

「私は構いませんよ。一緒にやりましょう。」

 

 

俺がそう言うと、女の子の表情がパァっと明るくなる。

 

 

「あたしも別にいいよ?」

 

「俺もぜんぜんおっけー!ちょーかわいいし!!」

 

 

小鳥遊と比得がそう言うと、一般生たちも口々に了承の念を伝える。

 

 

「おお、ありがとうだっペ。ほらなえ、自己紹介しなさい。」

 

 

そう言って、社長さんは女の子に自己紹介を促す。

 

 

・・・ん?『なえ』?

 

 

1歩前に出た女の子は、満面の笑みで俺たちに挨拶をする。

 

 

 

「うち、『白兎屋なえ』やっぺ!みんな、よろしゅうな!」

 

 

 

・・・『アレスの天秤』の新キャラじゃん。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パス!!パース!!」

 

「はいはい、ソレ!」

 

「ホッ、トッ、ア、アワワワ!!」

 

 

白兎屋の要求に応じて小鳥遊がパスを出す。しかし、白兎屋は上手くボールを受けることが出来ず、ボールは遠くに転がっていってしまう。

 

 

「うーん、玉蹴りっちゅうのも難しいもんやっペなぁ・・・。」

 

「足にボールが当たる時に、少し後ろに下げるのよ。そうすれば、ボールを受け取りやすくなるから。」

 

「うーん・・・?」

 

 

白兎屋が悩んでいると、小鳥遊が丁寧にやり方を教え、もう1回プレイし、また小鳥遊がアドバイスをしていく、といった感じで練習をしていくと、白兎屋はメキメキと実力を伸ばしていく。

 

 

 

・・・しかし、小鳥遊があんなに丁寧に教えることができるとは思わなかったなぁ。

 

『やり方?んなもん適当にやってればできるようになるでしょ?』

 

とか言ってそうなのに。

 

 

そんな事を思った瞬間、小鳥遊からパスというよりもはやシュートに近い速さでボールが飛んでくる。

 

 

「うぉっ!?」

 

「あぁ、ゴメンゴメン!ちょっとミスっちゃってさ!・・・ところで、なんか変なこと考えてなかった?」

 

「イエ、ナニモ。」

 

「そう?ならいいけど。」

 

 

そう言って、小鳥遊は白兎屋の方へと戻っていく。口には出てないはずなんだが、勘がいいなぁ。

 

 

 

 

「おいこらメガネ!!よそ見すんなこら!!もう1回だ!」

 

 

おっと、そうだった。まだアツヤとの勝負の最中だったわ。

 

俺がアツヤの方を向くと、アツヤはドリブルしながら近づいてくる。俺はアツヤに近づきながら、右足を振るう。

 

「【スピニングカット】!!」

 

「!!そんぐらいどうって事ねぇ!」

 

足を振るって出来た衝撃波の壁を、アツヤは強引に突っ込んで突破する。

 

まぁ、予想通りだけどな。俺はアツヤの視界が塞がれているうちに、スピードを上げてアツヤの後ろに回り込む。

 

 

「んなっ、どこに!?」

 

「【うしろのしょうめん】……!!」

 

「のわぁぁぁぁあぁぁぁ!?」

 

 

後ろに回り込んだ俺は、膝を使ってアツヤを前に吹き飛ばし、ボールを奪い取る。

 

 

「ククク……まだまだですねぇ。」

 

「アツヤ。突破できるからって、無策で突っ込んでいくのはダメでしょ?」

 

「いやー、アホだねぇ。」

 

「うるせぇ!てゆーかピエロ野郎!!テメーにだけは言われたくねぇ!!」

 

「ピエロ野郎だってぇ!?俺にもちゃんと『比得 呂介』って名前があるぞ!!」

 

「結局ピエロじゃねぇか!!」

 

 

 

ギャーギャーと口喧嘩を始める比得とアツヤ・・・というよりも、気の短いアツヤを比得がからかってるだけだなあれ。

 

 

「全くアツヤは・・・。五条くん、次は僕とやろうよ。」

 

「ええ、構いませんよ。ーーーん?」

 

「なぁなぁ、うちも混ぜてーー!!」

 

 

 

2人が喧嘩しているうちに士郎と勝負を始めようか、としたところで、離れて練習していた白兎屋と小鳥遊がこちらに向かってきた。

 

 

 

「はぁ?なんで初心者とやらなきゃいけないんだよ!」

 

「えー!?ええやん、うちも混ぜてよ!!!なぁなぁ!!」

 

「い・や・だ!!」

 

 

 

いつの間に復帰したのか、アツヤが白兎屋の参加に猛反対していた。性格的に仕方ないかもだけどね。俺や士郎との対戦時間が減るの嫌だろうし。

 

 

うーん、このままじゃ絶対アツヤは納得しないだろうし、だけど仲間はずれって言うのもなぁ・・・あ、そうだ。

 

 

 

 

「皆さん、ちょっと競走しませんか?」

 

「?いきなりどうしたのよ?」

 

「みんなで競走!!うちはええで!!楽しそうやん!!」

 

「俺ちゃんもいいよー!!2人は?」

 

「僕はいいけど、アツヤは?」

 

「競走〜?まぁいいけど、なんでだよ。」

 

「アツヤくんは納得してないみたいですからね。競走ならフェアでしょう?

 

それでは、向こうのゴールラインまでで構いませんか?」

 

 

俺がそう尋ねると、全員が了承したため、6人全員で横一列に並ぶ。

 

 

 

「それじゃ、合図は誰がする?」

 

「はいはーい!!うち!うちがやる!!」

 

「はいはいどうぞご自由に。おいメガネ!負けねぇからな!」

 

「………何時になったら名前で呼ばれるんでしょうか………。」

 

「まぁ五条と言えばメガネだし、仕方なく無い?」

 

「そうそう、マサルちゃん=メガネ、これ常識だぜー。」

 

まさかの周りの評価に若干傷つきながらも、それぞれ思い思いの姿勢をとる。

 

 

 

「用意はいい?よーーーい・・・ドン!!」

 

 

 

白兎屋の合図と共に、全員一斉に駆け出す。しかし、スタートダッシュの時点で、白兎屋は既に体1つ分ほど先を行っていた。

 

 

「凄い、速い・・・!!」

 

「んなっ!?負けるかぁ!!」

 

 

その速さに士郎が驚きの声を上げ、負けず嫌いのアツヤがその背中を捉えようとギアを上げる。

 

しかし、白兎屋はそこから更にスピードを上げていき、そのまま独走状態でゴールした。

 

 

その後、少し遅れてアツヤと俺が、そのすぐあとに士郎が、士郎から少し遅れて比得が、最後に小鳥遊がそれぞれゴールした。

 

 

 

「やったぁ!!一番乗りやっぺぇ!!」

 

 

「はぁ、はぁ・・・凄いね、僕はまだしも、アツヤが追いつけないなんて・・・。」

 

 

「っあーーー!!悔しい!!!おいてめぇ、もう1回だ!!」

 

「もう1回やっぺか?うちは構わんよ!!それじゃ、よーーーい、ドン!!」

 

「ウォォォォォォォ!!!」

 

 

白兎屋の掛け声とともに、アツヤと白兎屋は逆方向に戻っていった。

 

・・・いや、なんで全力疾走してからそんなに元気に走れるのさ。小学生でしょ?君ら。

 

 

 

「はぁ、はぁ・・・あ、あたし、それなりに速いはずなんだけど・・・。」

 

「まぁ、今回は相手が悪かったですね。」

 

「それ、サラリと同率2位になったマサルちゃんが言うことなの・・・?」

 

 

 

 

 

その後、白兎屋に負け続けたアツヤは、

 

『負けたわけじゃないからな!!でも、仕方ないからお前も混ざっていいぞ!!』

 

的なことを言っていたので、そのまま白兎屋を混ぜて、6人で夜遅くまで一緒にサッカーをしていた。

 

 

 

 

 

 

 

ホテルに戻る時に、駄々をこねるアツヤと白兎屋(アホの子)を引っ張っていくのが大変だったが。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とあるグラウンド

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・。」

 

 

マントを羽織り、ゴーグルを付けたドレッドヘアーの少年が肩で大きく息をしながら、大粒の汗を垂れ流す。

それもそのはずだ。彼は、練習が始まってから此方、マトモな休憩をとっていないのだから。

 

 

「鬼道!大丈夫か?ほら、ドリンク!」

 

 

そこに、髪の毛をオールバックにまとめ、後ろ髪をドレッドヘアーにした少年がドリンクをもって駆け寄ってくる。鬼道と呼ばれた少年はそれを受け取ると、急いで喉に流し込む。

 

乾ききっていた身体に、流し込んだドリンクが染み込んでいき、徐々に少年の体力を取り戻していく。

 

 

「・・・すまない。助かった、寺門。」

 

「あぁ、それはいいんだが、どうしたんだ、お前?」

 

 

寺門、と呼ばれた少年がそう問うと、近くにいた2人の少年ーーー茶髪を右側に流し、目から頬にかけてオレンジのフェイスペイントをした少年と、ゴーグル付きのメットを被った大柄な少年も近づき、疑問を投げかける。

 

 

「そうだぞ、鬼道。何をそんなに焦っているんだ?」

 

「いつものお前らしくねぇんじゃないか?」

 

 

「いや、気にしなくていい。それよりも、練習を再開するぞ。源田、シュートを受けてくれ。」

 

「あ、ああ・・・。」

 

 

鬼道はそのまま、源田と呼ばれた少年を連れてその場を離れてしまう。

 

残された2人は、首をかしげながら鬼道の様子について話し合う。

 

 

「・・・ほんとにどうしちまったんだ、アイツ。なぁ大野、なんか心当たりあるか?」

 

「いんや、俺にはねぇな。・・・ただ、あいつがああなったのって、総帥に呼ばれてからだよな?」

 

「そういやそうだな。けど、なんであんなに焦ってるんだろうな。」

 

「さぁな。」

 

 

「おい、お前達!!練習再開するぞ!!」

 

 

 

悩んでいたふたりは、鬼道の声を聞きハッと我に返る。見ると、既に練習は始まっていた。

 

 

 

「まぁ、分からんことを気にしても仕方ない。練習しようぜ。」

 

「・・・そうだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼道有人は焦っていた。

 

 

原因は先程影山に呼ばれた際に見せられた映像だった。それは『白兎少年サッカー大会』という、地方大会の決勝戦の映像で、影山の傘下の少年チームが出ているとのことだった。

 

 

 

そこには、鬼道にとって親友と呼べる、懐かしい男が映っていた。最近は連絡もほとんど取れていないし、本当に懐かしく感じた。

 

 

 

そんな試合は、前半は酷いものだった。いや、酷いという言葉さえまだ優しいものだと鬼道は感じた。

 

確かに、相手チームのFWとDFの兄弟は実力者だったが、対処は出来る。それなのに、馬鹿の一つ覚えのように突っ込んでいき、なんの対策も立てない奴らに腹が立つ程だった。

 

 

「・・・こいつらは、勝のチームメイトに相応しくない。」

 

 

ボソリと、そう呟いた。それほどまでに酷かった。後半になり、五条がDFとして出場した。MF7人という奇妙なフォーメーションとともに。

 

しかし、いくらなんでも五条1人でこの点差をひっくり返すのは不可能だ、と鬼道が思った瞬間ーーー彼は、戦慄した。

 

 

 

「・・・なんだ、これは。」

 

 

 

試合が始まった途端、五条はすぐさまボールを奪う。その後パスを出した相手が無様にもボールを取られるが、すぐさまボールを取り返した。

 

そして、ボールを持った少年が上空高くにあげた。しかし、高すぎる。届くわけが無い。

 

 

しかし、五条はまるでそれを予測していたかのように反応しーーー黒い炎を纏いながら、シュートを放ち、ゴールネットを揺らした。

 

 

あんなシュートは、寺門でも打てない。

 

 

 

その後、五条はバラバラだったチームを見事まとめ上げ、ついには同点にまで追いついた。

 

 

 

自分は、あそこまでバラバラのチームをまとめることが出来るだろうか?

 

 

 

そして、試合終了目前、相手の兄弟が協力してシュートを放った。はっきりいって、威力は桁違い。源田ですら止められないであろうそのシュートに、なんと五条は3つの必殺技を連続して発動し、その威力の大部分を削り取った。

 

 

 

あんな芸当、大野でも不可能だ。

 

 

 

そして、ディフェンスラインから放った五条のシュートに合わせて、ピンク髪のMFと緑髪のFWがボールを蹴り、逆転。見事五条のチームは大会で優勝した。

 

 

 

 

 

鬼道は、悔しかった。自分は、現在のチームを全国優勝まで導いた。総合力で自身に対抗出来るプレイヤーなどいなかった。そして、五条ならば必ず自分のいる場所まで登ってくるはずだ、と。

 

 

彼は、少なからず自分が上だと、心のどこかで思っていた。

 

 

しかし、現実はどうだ。彼は、自分よりも遥か高みにいるではないか。

 

 

キック、ドリブル、ディフェンス、どれをとっても間違いなく世代のトップクラス。特にディフェンスにおいては、並び立つものなんぞ居ないだろう。

 

しかも、彼は影山の指導を受けていない。間違いなく自分の方が環境には恵まれている。それなのに、自分は彼よりも大きく劣っている。

 

 

 

鬼道は、嫉妬した。

 

自分の遥か前を走っていく親友に。

 

彼の足元にも及ばない実力なのに、彼の隣で笑い合う彼のチームメイトに。

 

 

 

そして失望した。

 

 

 

親友(ごじょう)の隣に立つことの出来ない、自分自身に。

 

 

 

 

 

 

 

 

映像を見終わった瞬間、影山に練習時間を増やすように頼み込んだ。鬼道のワガママを影山は快く了承し、練習はより長く、より厳しいものになった。

 

それでも、鬼道はがむしゃらに練習をこなしていった。より速く、より巧く、より強くなる為に。

 

 

 

 

 

 

・・・ただ、そんな練習がとても楽しかった。こんなに無我夢中でボールを追いかけたのは、いつ以来だろうか。

 

そんなことを考え、あぁ、と思い出す。

 

 

 

まだ自分が影山の元に来るよりもっと前、妹と、親友と一緒に過ごしていたあの時以来だ、と。

 

 

「こい、鬼道!!」

 

 

 

自身の目の前で、源田が構える。鬼道は息を吐きながら、ボールを強く蹴り込む。

 

 

衝撃を受けたボールは、キャッチしようとした源田の手を弾き、ゴールネットを揺らす。

 

 

 

・・・これじゃダメだ、まだ勝には及ばない。

 

 

 

しかし、そんなことを思いながらも、鬼道の胸は弾んでいた。今まで、追いかけられる立場だった自分が、誰かを追いかける。たったそれだけの事が、鬼道には酷く新鮮に感じたのだ。

 

 

 

 

 

 

「俺は、追いつくぞ。待ってろよ、勝!!」

 

 

 

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