イナズマイレブン! 脅威の転生者 ゴジョウ!! 作:ハチミツりんご
本当にありがとうございます!!
ショコラティエさん、バンバードさん、誤字報告ありがとうございます。
さて、俺が帝国学園に入学してから早くも1ヶ月が過ぎた。まぁ基本的に順調そのものであり、部活動、学業、交友関係、どれも上手くいっている。
・・・いや、嘘ついたわ。交友関係については上手くいってなかった。佐久間とこの1ヶ月全く仲良くなれず、むしろ順調にその距離は離れていっていた。心理的にも物理的にも。
顔を合わせれば心底嫌そうな顔をし、会話を試みてもめっちゃ舌打ちされるし。どうやってあれと仲良くなれと!?
「・・・何変顔してんだ、お前?」
対面に座っている咲山が、呆れたような目をしてこちらを眺めていた。マスクを外しており、手には箸と弁当を持っている。
まぁ、食堂で飯に手をつけずにいたら怪しまれるわな。
「ん?なんだ、五条じゃないか。」
そんなときに聞き慣れた声を聞き、後ろを振り返る。そこに立っていたのは、ストーリーに関わるけど日本代表にはなれない可哀想な男こと源田幸次郎。その隣には前髪に水色のメッシュを2本入れ、頬に引っかき傷のような模様を入れた、猫目の少年もいた。
「おや、源田君。奇遇ですね。それと、隣の君は、大楠君でしたか?」
「なんや、俺の事知っとるんか?嬉しいわぁ、あの五条勝に名前覚えられてて。改めて、『大楠星士』や。よろしゅうな。」
細い目をさらに細めて笑う大楠は、隣ええか?といいながら俺の横に座る。源田も咲山の隣に座った。
この子こんな関西弁とか喋るキャラだっけ?まぁゲームでもベンチだしアニメも出てないし分かんねぇけど。
「にしても、珍しい組み合わせやなぁ。なぁ咲山、お前五条くんと仲ええん?一軍と二軍で関わりないやろ?」
「あ?・・・あぁ、同じクラスだよ。んで、こいつが何かと世話を焼いてんのさ。今日もこうやってわざわざ俺の分まで弁当持ってきてんのよ、こいつ。」
「凄いな、それ手作りなのか!?・・・ただ五条、なんでわざわざ弁当なんだ?ここは食堂なんだから、頼めば色々あるのに・・・。」
「私は、ここの食事は少し口に合わなくてですね………。なんで学校の食堂で三大珍味が平然と出てくるんですか………。」
「あぁ、わかるわぁ。身構えてまうよな。なんやねん、『国産牛フィレ肉のポワレ 季節の温野菜とマスタードソース オレンジの香りをまとったブールパチュー』て。長すぎやねんな。」
うんうんと頷きながら、この間話題になっていたメニューの名前を挙げる大楠に対し、普通じゃないのか?と言った様子で首を傾げる源田。くそう、金持ちめ。
「まぁええわ。とりあえず五条くんがここの飯苦手いうことはわかったけど、なんで咲山の分の飯まで作っとるん?わざわざそんなことせんでええやろ?」
大楠の言葉を聞き、俺はため息をつきながら答える。
「………彼、放っておいたらハンバーガーとかしか食べないんですよ。育ち盛りの学生にそんなものばかり食べさせる訳にもいかないでしょう?」
そう、俺がわざわざこいつの分まで弁当を作る理由。それは、咲山の栄養バランスをあまりにも無視した食生活をみかねたからだ。
だって、飯の時間にハンバーガー2、3個食べて、それでおしまいだぜ?大野と土門も呆れてたし、流石にあかん、ということで俺が朝に自分の分のついでに作っているのだ。
「・・・ジャンクフードが一番美味いんだよ。」
「あはははははっ!!!なんや君、それだけの理由でわざわざこんな怪しいマスクマンに弁当作っとんのか?優しいやっちゃなぁ!」
「うるせぇ!!誰がマスクマンだこら!!てかてめぇに言われたくないわこのメッシュ野郎!!フェイスペイントまでしやがって!」
「待て、咲山とやら。フェイスペイントは校則違反では無い!現に俺もこうやってフェイスペイントをしているぞ!」
「そういう事じゃねぇんだよ、このクソGK野郎がぁ!!!?!?!」
ギャーギャー騒ぐ咲山に、どこかズレたツッコミをいれる源田を見ながら大楠が爆笑する。そんなカオスな空間を見て、完全に周りの生徒達が引いている。
「………御三方。そろそろ静かにしないと周りの方々に迷惑ですよ。」
「はっ!?す、すまない五条・・・。」
「けっ。こいつがわりーんだよ。」
「あー、笑った笑った。ほんまおもろいわぁ。ほな、俺はこのへんで。源田くん、はよ食わんと置いてくでー。」
大楠に急かされた源田は、急いで残っていたご飯をかきこみ、じゃあな、と別れの言葉を告げて去っていった。
・・・どうみても丼1杯分くらい残ってたんだけど、どうやってあの量かきこんだんだろう。不思議だ。
「・・・ごちそーさん。俺先に戻るぜ。」
そう言って咲山は立ち上がり、マスクをつけてから出口の方へと歩いていく。
だが、途中で立ち止まり、俺の方を振り返る。指でマスクを下に下げ、少し恥ずかしそうにして口を開く。
「・・・美味かったよ。また頼むわ。」
「………ええ、お粗末さまでした。」
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練習も終わり、帝国寮の自室にて俺は、小さい頃より続けている必殺技ノートの作成に勤しんでいた。
最近では2冊目も書き終わり、3冊目に突入している。円堂大介のようにごく一部の人間しか読み取れない汚ったない文字ではなく、普通に綺麗にまとめているので、普通の子達でも問題なく使えるだろう。
「おい五条、いるか?」
自身の書いた必殺技ノートの出来に満足しながら頷いていると、部屋の扉がノックされる。扉を開けると、そこには恵那が立っていた。
「恵那さん?珍しいですね。」
「別に、俺がお前に用がある訳では無いんだがな。・・・総帥がお呼びだ。すぐに総帥室に来るように、だとさ。」
「………影山総帥が?」
・・・いきなりだな。何か呼び出されるようなことしたか?基本的に影山に従っているし、部活の練習と並行して特訓もしている。成績だって影山のメンツの為に高成績を取っている。この間のテスト、有人と並んで学年一位だったし。元々持ってた知識と五条さん本来の頭脳が合わさった結果、現在の俺めっちゃ頭良いのだ。
とりあえず、部屋着から制服へと着替え、俺は影山の待つ総帥室へと向かった。
「失礼します。」
総帥室の扉が開く。五条の視界に入ってきたのは、悠然と椅子に腰掛け、こちらを見据える影山と、その前に立ち、こちらを振り返るようにしてみる鬼道の2人だった。
「五条勝、招集に応じ、参上しました。」
「来たか、勝。」
「有人、これはどういう………?」
「それは、私から話そう。」
突然の招集に疑問を感じる五条に対し、影山は手元の資料を2人に見せながら招集した理由を説明していく。
「まず1つ。1ヶ月後にフットボールフロンティアが開幕する。それに伴い、今から二週間後に出場メンバーの選考を兼ねた昇級試験を行う。五条、一軍寮の面々にはこの資料を配っておけ。フットボールフロンティアの日程について詳しく書かれている。昇級試験の伝達も忘れるな。」
「ククク………了解致しました。」
影山から資料を受け取りながら、五条は次を促す。そんな彼を見ながら、心底愉快そうに影山は顔を歪める。
「それともう1つ。・・・三軍の一部を退部させる。」
「っ!!」
「三軍の中にも、未来ある者はいる。しかし役に立たない者がいるのも事実だ。そんな奴らを残しておけば、帝国学園サッカー部全体に悪影響を及ぼす可能性がある。」
「なるほど、道理ですね。俺は構わないと思います。力なき者に存在価値などありませんので・・・。」
影山の考えを盲信している鬼道は、その提案を当然と言わんばかりに受け入れる。対して五条は、三軍の一部、という言葉に嫌な汗をかく。
「………退部させる者は、きまっているのですか?」
「ああ、勿論だとも。これが、そのリストだ。お前達も知っておいた方が良いだろう。」
五条の質問に、影山は手元の資料の一部を鬼道と五条に手渡す。
3年生なのに未だ三軍から上に上がったことがない者、素行不良が目立つ者、成績が振るわない者、単純に練習についていけてない者など、様々な理由から退部させられるもの達の中で、五条の目には、一人の少年の姿が飛び込んで来る。
(・・・やっぱりか。)
五条の嫌な予感は当たっていた。彼が見たのは、薄い水色の髪をし、片目を眼帯で隠した少年。鬼道有人に憧れ、その隣に立つ五条勝に恨みを持つ男。
『佐久間次郎』だった。
「………総帥。彼を退部させる理由は?」
「・・・佐久間次郎か。そいつは確かに、突出した実力を持っている。しかし、それは三軍での話だ。お前達には遠く及ばない。
その上、連携を無視し、独りよがりなプレーが目立つ。更には五条。お前に悪感情をもっているのだろう?そんな者を残しておく理由が分からないな。」
五条は鬼道と並び、確実に帝国学園の中心となる人物。そんな彼を恨み、まともに連携が出来るかも怪しい佐久間は、帝国学園に必要ない、影山はそう言った。
・・・しかし、内心影山は佐久間の才能に気がついている。磨けば光る才能だと。だが、それは替えがきくレベルの才能でしかない。
本心は、自分に恨みを向けていた男が退部させられると知って、五条勝がどのような反応をするのか。それが知りたかった。
そんな影山の心の内を知ってか知らずか、五条は持っていた資料を影山に突き返す。
「ククク………彼を退部させる?いやはや、聡明な影山総帥とは思えないほどの愚かな判断としか言いようがありませんねぇ。」
「・・・ほう?」
「おい勝!!総帥になんて事を・・・!申し訳ありません、総帥!」
「いやいや、構わないとも。
それで、五条。何故、私の判断が愚かなのか教えて欲しいものだな?」
突然の五条の暴言に、咄嗟に鬼道が謝る。影山はそれを気にすること無く、五条へと質問を投げかける。何故この男を庇うのか、と。
「何故?影山総帥ならば気がついているのでしょう?彼の持つ才能に。将来帝国の大きな力になるであろう金の卵を自ら投げ捨てるとは、影山総帥らしくない、と思ったまで。」
「金の卵、か。私にはこの男にそれ程の価値があるとは思えないがね。それに、佐久間がいなくなった方がお前にとっては都合がいいだろう?自身に恨みを向ける人物がいなくなるのだからな。」
「彼は現在、私への恨みによって動いています。そのせいで彼本来のプレーが出来なくなっているだけですよ。本来の彼ならば、私すらも超える才能でしょう。」
自分を超える
あの五条勝がそう断言したことに、隣に立つ鬼道は勿論のこと、目の前の影山すらも驚きを隠せないでいた。
あの五条勝をも超える才能。影山の中では、それを持つのは自身の最高傑作とも呼べる少年、鬼道有人しか有り得ないと思っている。しかし、目の前の本人が言ったのだ。佐久間次郎は五条勝を超える、と。
(何故だ?何がこの男をそこまでして動かしているんだ?)
幼い頃から影山の監視下に置かれていた五条に、佐久間のプレーを見る機会など無かったはずだ。にも関わらず、この男は佐久間を評価している。
「・・・分かった。お前がそこまで言うならば、佐久間の退部は取り消そう。しかし、次の昇級試験の際に結果を残せなければこの男は退部だ。いいな?」
「ククク………ええ、構いません。話は終わりですか?それでは、失礼します。」
鬼道は信じられなかった。いつも、自分に従っていればいい、という影山が、自身の意見を曲げてまで五条の意見を取り入れたことが。
それと同時に、影山に意見を曲げさせた親友に対し、尊敬の念と共に、一種の恐怖心が湧き上がってくる。
(・・・勝。お前は一体、何なんだ。)
そんな鬼道の疑問に答えることは無く、五条は総帥室を後にするのだった。
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「くそっ!!」
足元に置かれたボールを力の限り蹴りつける。真っ直ぐゴールに向かっていったボールはネットを揺らすが、自分が狙っていた場所からはズレていた。
「くそっ!!」
もう1発シュートを放つ。またズレる。
「くそっ!!くそっ!!くそっ!!」
何度蹴っても、結果は同じ。狙った場所からは必ずズレてしまう。
「くそぉぉぉぉぉおぉ!!!!」
怒りに任せて蹴ったボールは、枠を捉えること無くあらぬ方向へと飛んでいってしまう。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・。」
上手くいかない。憧れの人の隣に立つ、あの男に追いつくため、佐久間は必死に練習をしていた。それなのに、一向に上手くならない。むしろ、昔のようなプレーすら出来なくなっている。その事に佐久間は焦っていた。
そして、佐久間が怒りを抑えきれていないのには、もう1つの理由がある。先程、三軍寮にいる者のうち、一部の者達が退部を宣言された。それについては構わない。力なき者に存在価値がない、それは帝国学園サッカー部の常識だ。
佐久間の怒りの原因は、その際言われた言葉。
『あの五条勝が、お前の退部を待って欲しいと総帥に願い出たんだ。感謝しろよ。』
情けをかけられた。佐久間はそう思った。
自分はあの男を倒す為に、これまでずっと努力をしてきた。あの男を倒し、自分が憧れの人の隣に立つ為に。それなのに、あの男は自分の退部の延期を願い出た。
遠回しに、お前なんかがいても脅威にはならない、そう言われている気がした。
(馬鹿にしてやがる!!!)
それが、佐久間が怒りを感じているもう1つの理由だった。
そんな佐久間の元に、何かが高速で飛来してくる。
「っ!!」
咄嗟にそれを右脚で受け止める。それは、佐久間が先程蹴ってあらぬ方向へいったサッカーボールだった。
飛んできた方を見る。そこには、赤い髪をおかっぱ頭にしたたらこ唇の少年と、薄紫色の髪をオールバックにした少年の二人が立っていた。
佐久間はその2人に見覚えがあった。当然だろう。その2人は学年でもかなりの有名人。1年生にして二軍に合格した実力者だ。
「万丈一道に、辺見渡・・・?」
佐久間が疑問の声を上げるが、そんなの関係ないと言わんばかりに、辺見と呼ばれた少年が口を開く。
「おいてめぇ、三軍だろ?今から俺達が使うからよ、とっとと空けてくんない?」
「なっ・・・!!ここは自主練習用のコートだ!二軍も三軍も関係ないだろう!?」
「はぁ?つべこべ言わずにとっととどけよ。お前みたいなのがプレー出来るほど、帝国は甘くねぇんだよ。」
「なんだと・・・!?」
辺見のあまりにも乱暴な言葉に、佐久間は少し落ち着いていた怒りが再び湧き上がってくる。
そんな時、辺見と万丈の後ろから一人の少年が顔を出した。
「おい、何やってんだよ。とっとと練習・・・あ。」
「どうした咲山。あいつ知り合いか?」
顔を出したのは、これまた有名人。緑色の髪で片目を隠し、顔の下半分をマスクで覆った少年、咲山修二だった。
「いや、直接話したことがあるわけじゃないんだけど、あいついつも五条のことすっげぇ睨んでるから覚えたんだよ。」
「五条だと・・・!?俺の前でその名前を出すな!!」
五条、と聞こえた途端、佐久間の怒りは一気に爆発した。実力主義の帝国学園において、自分より強いものに逆らうことは許されない。しかし、そんなもの知ったことではないと佐久間は食ってかかる。
そんな佐久間に対し、咲山は近づいていき、目の前に立つ。
「・・・お前、なんで五条のことそんなに嫌ってんの?」
「お前には関係ないだろう!!」
そう叫んだ佐久間に向かって、いつの間にか近くにきていた辺見は、心底鬱陶しそうに口を開いた。
「三軍ごときが、特待生をライバル視ってか?かなうわけねぇだろ、そんなん。」
「っ!!!お前達に何が分かる!!!お前達なんかに、才能の無い俺の気持ちが分かるわけないだろ!!!!」
そんな佐久間に向かって咲山は胸ぐらを掴んで話しかける。
「ぐっ・・・!!」
「別に、お前が才能どうこうで喚こうが知ったこっちゃねぇけどよ。アイツはそんなチンケな事で人を馬鹿にするようなやつじゃねぇよ。」
「そんな訳が「そうなんだよ。」っ!?」
「・・・アイツ、お前と少しでも仲良くなろうと、土門や大野にいつも相談してんの、知ってるか?」
「っ!!」
「それにな、悩んでる奴がいたら話を聞いて、出来る限りのことをしてる。
・・・それに、ひねくれた事しか言わねぇ二軍なんかの為に、毎日弁当作ってくるようなお人好しだ。どうだ?これでもアイツが人を馬鹿にするような奴だと?」
そんな咲山の言葉に、佐久間は絶句する。自分が恨んでいた男が、自分を馬鹿にしていると思っていた男が、そんなことをしていると知って、自分のこの感情が正しいのかどうか分からなくなった。
困惑している佐久間をしばらく眺めていた咲山だったが、舌打ちをしてから手を離し、クルリと踵をかえしてコートから離れていく。
「お、おい咲山!!」
「気分が乗らねぇ。帰る。」
そう言って歩いていく咲山に、離れて見守っていた万丈が静かに耳打ちする。
「・・・お前、なんでそんなに五条の肩を持つんだ?」
その言葉に、咲山はピタリと立ち止まり、横目で万丈を見る。が、すぐに視線を戻し、ボソリと呟く。
「・・・別に。ちょっとした恩返しだよ。」
静かにそう言った咲山は、そのまま帝国二軍寮の自室に向かって歩みを進めた・・・。