イナズマイレブン! 脅威の転生者 ゴジョウ!! 作:ハチミツりんご
蓋を開ければ、吹雪兄弟+なえでまさかの8000字超え。3000で収めるとはなんだったのか。とゆーわけで、吹雪兄弟+なえ、比得、小鳥遊でそれぞれ1話ずつ投稿することにします。
とゆーわけで、トップバッターは北海道3人組です!どうぞ!
北海道。この世界の日本において、何故か一年中雪が降り続け、常に一面の銀世界が広がっている場所である。
そんな無垢な白に覆われた北海道の中でも、特に広い大雪原を超えた先。そこに建つ一軒家に、彼らは住んでいた。
「ガァァァァァ……ゴォォォォォォォ………」
その一軒家の二階、2つのベッドが置いてある部屋にて、巨大ないびき声が響く。布団を蹴り飛ばし、自慢の橙色の髪を寝癖で歪ませ、口からヨダレを垂れ流す姿は、見るものが見ればいっそ清々しいまでの寝入りっぷりだ。
「アツヤ?まだ寝てるの?」
そこに、一人の少年がやってくる。そこで寝ている少年とよく似た顔立ちだが、髪は灰色であり、トロンと垂れた目が特徴的だ。
「アツヤ!もうすぐ練習時間だよ?アツヤ!」
「グォォォォオォォォ…………」
寝ている少年を起こす為に声をかけ、何度か揺さぶるものの、彼は一向に起きる気配は無い。
「・・・まったく、しょうがないな・・・」
呆れた様子の少年は、彼を起こす為の最終兵器を使用することを決意する。どこからともなく取り出した、袋に入ったそれをーーー
「はい、ドーン」
「ッ?!!!つめっ、冷ってぇ!!??」
ーーー『氷』を、少年の服の下に大量に投入していく。暖かい部屋の中で眠っていた少年の意識は、突如としてその身に降りかかった極寒の冷気によって覚醒していった。
「はい、おはようアツヤ」
「てめ、兄貴!!朝っぱらからなんてことしやがんだ!!」
「そんなことよりもいいの?時間、そろそろなんだけど?」
「はぁ?何言って・・・はぁ!?」
兄からの言葉に首を傾げながら時計を確認すると、なんとビックリ!兄が所属している、白恋中学校のサッカー部の練習時間が間近に迫っていた。
「やっべぇ!?なんで起こしてくれなかったんだよ、兄貴!!」
「何度も起こしたのに、アツヤが起きなかったんだけど・・・?」
あんまりな弟のもの言いに、僅かに頬をひくつかせながら答える。
ちなみに、兄の方は既に2時間ほど前に起床しており、隣に置いてある彼のベッドも綺麗に畳まれている。何故ここまで兄弟で性格が違うのか、甚だ疑問である。
「おぉ、おはようアツヤ。朝からバタバタしてるなぁ」
「おはよう父さん母さん!朝飯くれ!」
「おはよう。はい、どうぞ」
「いただきます!」
一階に駆け下りながら練習着に着替えた少年は、両親に挨拶を済ませると、物凄い勢いで朝ごはんをかっこんでいく。寝起きにも関わらず、ちゃっかりお代わりもした。サッカープレイヤーは体が資本なのである。
「ご馳走様!美味しかった!」
「食べ終わった?はいアツヤ、荷物まとめといたよ。早く行こう」
「流石兄貴だぜ!!いってきます!!」
「いってきまーす」
「いってらっしゃい、頑張れよ〜」
「いってらっしゃい、気をつけてね!」
「「はーい!」」
防寒着を身につけた二人は家の外へと出る。兄の活躍により、弟が起きてから僅か五分で準備が完了している。なんだかんだ言って世話を焼いてしまう兄なのだった。
そんな二人の前に、一台の車が止まる。見慣れた高級車であるその車から、これまた見慣れた一人の少女が降りてくる。
「いってらっしゃいませ、お嬢様!」
「はーい、いってきますやっぺ!」
車から降りた少女に1度頭を下げた運転手の男性は、再び車に乗り込むと来た道を戻っていく。車に手を振りながら別れを告げた少女は、クルリと二人に向き直り、お互いに挨拶を交わす。
「おはよう、白兎屋さん」
「おはよう、士郎、アツヤ!相変わらずアツヤは寝癖だらけだっぺ!」
「うるせぇアホなえ!さっさと行くぞ!」
「失礼な!アツヤほどアホじゃないやっぺ!」
「んだと!?」
「むー!」
「はいはい二人とも、喧嘩しないで早く行くよ。ただでさえ遅れ気味で、雪も強いんだから、ね?」
そう諭す兄ーーー『吹雪 士郎』の言葉に、若干不満そうな表情で従う弟ーーー『吹雪 アツヤ』と、少女ーーー『白兎屋 なえ』。
小学生時代からの付き合いである3人は、普段から一緒にサッカーをやっており、1つ歳上の士郎が白恋中学校に通うようになってからはそのサッカー部の練習に小学生のアツヤとなえが参加するようになっていた。
まぁアツヤとなえの2人は既に全国でも十分通用するレベルであるし、そもそも白恋中サッカー部は部員が足りていないので、問題無く歓迎されているのだが。
白恋中にほど近い場所に住んでいる吹雪家から歩いていた為、程なくして白恋中へと辿り着く。現在夏休み期間であり、あまり生徒は見られないのだが・・・
「・・・なんだこりゃ」
「ちょっと、これは・・・」
「真っ白やっぺ!!」
なえの言う通り、白恋中のサッカーグラウンドは一面が真っ白い雪に覆われていた。雪かきするのも骨が折れるレベルであり、今日の練習は難しいと思われた。
「・・・あ!吹雪くん、アツヤ、なえちゃん!やっと来たべ!」
「あれ、真都路さん?」
「珠っ香ちゃんやっぺぇ!!」
キャー!!と叫びながら目の前の歳上の少女に抱きつくなえ。相手も笑顔で受け止めており、仲の良い様子が見受けられる。
少女の名前は、『真都路 珠香』。金髪に、ファーのついた白いロシア帽が特徴的な少女であり、吹雪と共に白恋中サッカー部創設メンバーの一人でもある。
「どうしたの、真都路さん。他のみんなは?」
「みんなは部室にいるべ。詳しくはそっちで話すべさ。さ、なえちゃんもアツヤも一緒に行くべー」
「はーいやっぺ!」
「ちょ、引っ張んなよ!歩く、歩くから!」
真都路について行くなえと、苦笑いしながら後ろを歩く士郎に、引っ張られるアツヤ。いくら認めた人物以外には噛み付きに行くアツヤでも、女性相手には強くでれないのである。哀れ、吹雪アツヤ。
「みんなー!3人連れてきたべー!」
「ん?おお、吹雪君、アツヤ、なえちゃん!やっと来たな!」
「あぁ、いらっしゃい。外寒かったべ?コタツに入るといいべさ」
4人が部屋に入ると、真っ先に反応したのは、室内にも関わらず頭に雪を乗せている少年。更に、外から入ってきた吹雪たちを気遣って、大柄な少年がこたつを勧める。
「おはよう、なえちゃん」
「紺子ちゃんやっぺ!!」
「よう、寒そうだな、アツヤ」
「ちーっす、目深先輩。先輩は深く被りすぎでしょ、帽子・・・」
「おはよう、吹雪君。はいお茶」
「あぁ、ありがとう喜多見君。戻って来てたんだね。」
他のメンバーも、やってきた吹雪たちに続々と話しかけていく。今、この場にいるのは、吹雪たち3人を除いて6名。
雪を頭に乗せたイケメン、『氷上 烈斗』。
頬に傷のある大柄な少年、『函田 鉄』。
帽子にサングラスが特徴的な、『目深 宗司』。
藁帽子を被った小柄な少女、『荒谷 紺子』。
先程吹雪たちを案内した少女、『真都路 珠香』。
眠たげな目にマフラーをした、『喜多見 流』。
これにキャプテンの吹雪士郎を足した7名が、現在の白恋中サッカー部全員である。
更に、吹雪、氷上、真都路、荒谷、函田の五名は創設メンバーである。
残った喜多見はふらっと学校に戻ってきた時に氷上に、目深は部活を決めかねていた時に同じクラスの函田に、それぞれ誘われて入部した。
・・・とまぁ、全員合わせて7名、来年入学及び入部の確定しているアツヤとなえを含めても9名しか居ないため、大会出場すら出来ず。その上、士郎たち3人と、それ以外の6名の実力差が大きく離れてしまっている、良い意味ではエースを中心としたーーー悪く言えば、エース頼りなチームである。
しかし、チームの仲は良く、6名も士郎や年下の二人に頼りきりにならないよう努力しており、3人もそんな彼らに色々なことを教えている。
「ーーーそれで、何があったの?みんな揃ってるみたいだけど」
「それがさ・・・」
士郎が聞くと、メンバーを代表して氷上が話し始める。
話を要約すると、ここ数日の大雪で雪が降り積もり、グラウンドが使えないこと。除雪しようにもあまりの量に人手が足りず、危険な為しばらくは部活動を控えさせる、との事。
「てことは、練習も禁止ってこと?」
「まぁ、そういう事だな」
「ほかの部活もそうみたいだし、勧誘も無理だべなぁ」
士郎の問いに、氷上が答え、真都路も伸びをしながら話に加わる。
「せめて、後二人は探さないとなぁ」
「来年の新入生にかけるにしたって、うちの学校でわざわざサッカーしようとする子は少ないだろうね」
「んだんだ。吹雪君達みたいに凄い子は厳しいべ」
「なえちゃん、知り合いの子で白恋に入学する子は居ないべか?」
「うーん、こっちに来る子はいないっぺ。そもそもサッカーやってる子も少ないし・・・」
荒谷が、自分達とは違う小学校に通っているなえに望みを託すが、芳しい返事は返ってこない。
そんな中、目深がチラリと士郎、氷上を見ながら口を開く。
「まぁ、最終手段として、吹雪とか氷上が勧誘に行けば何人か女子は来るだろうけど・・・」
「やる気がないのはダメだべ。アツヤが真面目にやれ!って暴れ出すべ」
「だべだべ。それに、二人の顔に釣られるような女子は、うちも紺子もお断りだべ!」
「おいちょっと待て、なんで俺が暴れん坊みたいな扱いなんだよ!?」
「暴れん坊でしょ?」
「暴れん坊だろ」
「暴れん坊だね」
「暴れん坊だな」
「暴れん坊だべ」
「暴れん坊やっぺ!」
「えっと、唯我独尊!って感じで素敵だと思うべ!」
「紺子、それフォローになってないべ」
「てめぇらァ!?」
士郎、氷上、喜多見、目深、函田、なえ、荒谷、真都路がそれぞれ意見を述べ、アツヤが叫ぶ。白恋中サッカー部の日常風景だ。
「まぁ、確かに部員の問題は深刻だよね」
「それだけじゃなく、監督も探さないとな」
「今年だけじゃなく、来年もフットボールフロンティアに参加できないのはちょっとな」
「俺達よりも、吹雪君達が可哀想だべ」
「でも、このままだとまた参加出来ないべ」
「「それはヤダ(やっぺ)!!」」
参加出来ない、と聞いたアツヤとなえが、声を大にして嫌だと言う。
「来年こそは参加して、メガネとの決着をつけるんだ!!」
「しーちゃんやヒエー、ごまちゃんとサッカーしたいやっペー!!」
「・・・誰やっペ、その4人?」
アツヤとなえが口にした聞き覚えのない人物に、メンバーを代表して真都路が首を傾げる。唯一それを知る士郎は、あぁ、と言いながら答える。
「小学校のときに、僕とアツヤが戦った子達だよ。その試合がきっかけで、白兎屋さんがサッカーを始めたんだ。
後、4人じゃなくて3人。アツヤの言ってるメガネと、白兎屋さんが言ってるごまちゃんが同じ人だよ」
「なんか響きが可愛いべ。女の子だべ?」
荒谷の問いに、士郎は首を振って否定する。
「いや、男の子だよ。みんなも知ってるんじゃないかな?帝国学園の、五条勝くんって言うんだけど・・・」
士郎の言葉に、女子二人は「帝国学園!?」と驚き、男4人はお茶を吹き出した。
「うわ、汚ぇ!?」
「ゲホッ、ゴッホッ!?ご、五条!?五条って、あの五条か!?」
「?知ってる子だべ?」
「知ってるなんてもんじゃないべ、超有名人だべ、彼・・・」
「旅先でも、よく聞く名前だよ・・・」
「帝国学園の誇る天才!無名から一気に全国トップクラスに登り詰めた世代最強DF!あの天才ゲームメーカー、鬼道有人と並ぶ帝国の双璧!『ピッチの絶対帝王』、五条だぞ!?」
「なんで目深先輩は興奮してるんやっぺ?」
「同じDFだからね、憧れてるんじゃないかな?」
目深の熱い説明を聞いても、イマイチよく分かっていない真都路と荒谷に、アツヤが口を挟む。
「俺と兄貴が一方的にやられた。それなら少しは凄さがわかるだろ」
「はぁ!?吹雪君とアツヤが一方的に!?」
「そうやっぺ!3点取って勝ってたところに、後半から出たごまちゃんが大活躍して逆転勝利だっペ!」
「そ、想像出来ないべ・・・!!」
アツヤとなえの口から語られた事実に、女子二人だけでなく男子4人も戦慄する。自分達が未だ一度も勝てていない2人を相手に、勝利を収めた五条。
そんな彼のことが気になった真都路は、携帯電話を使って五条のことを検索にかける。
次の瞬間、真都路は吹き出した。
「ぶふぅ!?」
「珠香ちゃんどうし・・・ぶぶぅ!?」
そんな真都路の反応に疑問を持った荒谷が近づいて画面を覗くと、彼女も思わず吹き出す。
画面には、帝国学園のユニフォームに身を包んだ、慇懃無礼な笑みを浮かべたメガネの少年。まかり間違っても、『ごまちゃん』などという雰囲気ではない。
「悪の組織に居そうだべ・・・!」
「あー、まぁ分かるな」
「えー、ごまちゃん可愛いやっぺ?」
「いや可愛いってより、恐ろしいだろ!?」
「五条くんをお世辞抜きで可愛いって言えるのは白兎屋さんだけだと思うなぁ」
まさかのなえの評価に、アツヤも含めた一同は苦笑いを浮かべる。彼のことを可愛いと断言出来るのは、世界広しといえど彼女くらいなものだろう。
「・・・てことは、アツヤは帝国学園に勝とうとしてるのか?」
「はぁ?当たり前だろ。兄貴とアホなえもそうだぜ?」
目深の問いに、何を今更と言いたげな様子で答えるアツヤ。その隣で、士郎となえも当たり前のように頷いている。
「マジかよ、相手は全国一位だぜ・・・?」
「プロもいっぱい出してる凄い学校だべ・・・!?」
「それに、僕達と同世代って、歴代の中でも最強って言われてるよね」
「いくら吹雪くんたちでも厳しいべ・・・」
40年間無敗の帝国学園に、勝つ。
あまりにシンプルで、しかしとてつもなく難しいその目標に、思わず尻込みをする面々。
「・・・でも、そこまで行けたら、きっと凄く楽しいと思うべさ!」
そんな中、荒谷の発した一言で、全員が顔を合わせる。
「・・・確かにな」
「僕達が、帝国と戦う、か」
「面白そうだべ!」
「お、俺、絶対シュート止めてみせるべ!」
「俺達でアツヤ達を支えてやらないとな!」
「そんなこと言うなら、俺に一回でも勝ってみてくださいよ、目深先輩〜?」
「ぐっ!じ、事実だから否定出来ねぇ!」
アツヤと目深のやり取りに、部室に笑い声が響く。
「まぁでも、部員を集めないとどうにもならないよなぁ・・・」
氷上が思わずそう呟いた、その時。
「あ、あの〜・・・」
部室の入口から、声が聞こえた。中にいた9人が振り向くと、そこに立っていたのは、長めの前髪で片目を隠した、中性的な少年。
その後ろには、鼻を垂らした恰幅のいい少年、被り物を被った背の低い少年、サングラスと耳あてを身につけた少年が立っており、計4名がこちらを見つめていた。
「どうしたの?何か用かな?」
部員を代表して、士郎が用を聞く。えっと、と少しどもりながらも、先頭に立つ少年は要件を言う。
「えっと、サッカー部、だよね?僕達、入部したいなぁ、って・・・」
先頭の少年の言葉に続いて、後ろの少年達がうんうん、と頷く。
それを聞いた途端、士郎を含めた部員全員の表情が明るくなる。
「ほんと!?大歓迎だよ!さ、入って!」
部室に4人を招き入れると、ソファーに座らせ、話を始めていく。
「一度に4人も来てくれるなんて、嬉しいなぁ。僕がキャプテンの吹雪士郎。よろしくね」
「俺、弟のアツヤ」
「白兎屋なえやっぺ!!」
「二人は、まだ正式な部員じゃないけど来年には入部するんだ。君たちの名前は?」
「えっと、空野礼文です」
「居屋真降・・・」
「雪野星也だべ」
「押矢万部って言うべ!」
4人の自己紹介に応じて、残った6人もそれぞれ自己紹介をしていく。
「おい、先輩方。ちょっといいか?」
自己紹介が終わると、アツヤが4人に向かって口を開く。
「俺達は帝国学園に勝つこと・・・ひいては全国制覇を目指している。それについてくるだけの覚悟はあんのか?」
「ぜ、全国制覇・・・!?」
アツヤのもの言いに、思わず空野は言葉に出す。ほかの三人も同様であり、その様子に顔を顰めながらアツヤは話を続ける。
「そうだ。全国制覇だ。今はまだ部員も足りない、実力も足りてないが、俺達は中学サッカー界の頂点を目指してる。練習も当然厳しくやる。休日に練習することも多くなる。俺みたいな年下からダメ出しされることもあるだろうな。
それを踏まえた上で、あんたらは俺たちと全国にいくってだけのやる気はあんのか?」
アツヤの厳しいもの言いに、思わず4人は押し黙る。思いがけずそんな言葉を投げたアツヤを士郎が注意しようとすると、それを目深達が止めた。
アツヤのこの質問は、これからの白恋中にとって必要なものだ。サッカーはチームスポーツだ。チームのパフォーマンスを向上させるためには、チームの雰囲気がーーーひいては、個人個人の気持ちが大切になってくる。
全員が気持ちをひとつにすれば、チームは思いもよらぬ力を発揮することもある。
しかし逆に、たった一人の気持ちの甘さが、チーム全体に影響し、勝てる試合も勝てなくしてしまう。
スポーツとはそういうものであり、特に全国区のチームと比べれば実力的に劣り、猶予期間も短い白恋中が全国制覇を成し遂げるためには、チームが一丸となることは大前提とも呼べるものだ。
ゆえに、ここで僅かでもその片鱗を見せなければ、アツヤは容赦なく追い返すつもりだった。
ーーーつもりだった。
「・・・ぼ、僕は!」
空野が口を開く。その口調は強く、前髪の間から垣間見得る瞳も、確かな意思を感じさせるもの。間違っても、先程のオドオドとした少年ではなかった。
「僕は!小さい頃から体が弱くて、スポーツも下手で!みんなからバカにされた!だから僕はスポーツは向いてないと思ってた!
でも!!やっぱりサッカーが好きなんだ!!毎日真面目に・・・でも楽しそうに練習してる君たちを見て!僕は一緒にサッカーをしたくなったんだ!!
どんな練習にも耐えてみせる!足だって引っ張らない!だから、僕をサッカー部に入れて下さい!!」
勢いよく、空野は頭を下げる。確かな気持ちを込めた彼の言葉は、確実に部員達に届いていた。
そんな彼を見て、残りの3人も自らの気持ちをぶつける。
「お、オラも!!こんな見た目で、足も遅いけんど、サッカーが好きなんだべ!一緒にやらせてくんろ!!」
「俺、最初サッカー部がないって聞いて、ここじゃサッカー出来ないんだな、って諦めたんだ。でも、自分達で部員を集めて、サッカー部を作ったあんたらが、すっげぇかっこよく見えたんだよ!俺も、あんたらと肩を並べたいんだ!お願いします!!」
「俺、実はもっと軽い気持ちだったんだべ。仲がいい部活だから、楽しくやれればいいなって・・・。でも、今の言葉で目が覚めたべ!やるなら徹底的にやる方が楽しいに決まってるべ!俺もチームに入れて欲しいべさ!」
お願いします!!と、4人が頭を下げる。その光景に目を丸くする士郎と、4人に好意的な笑みを浮かべる7名と、ニヤリと笑うアツヤ。
「よーし、合格だ!まぁなに、心配すんな!この俺がバシバシ点を取って、勝利に導いてやるからよ!!」
ナーハッハッハ!!と笑うアツヤの声に、士郎がハッと我に返ると、頭を抱えながらアツヤに向かって拳骨を振り下ろす。
「ってぇ!?何すんだ兄貴!!」
「何すんだ兄貴ー、じゃないでしょ!?せっかく来てくれたみんなにあんな失礼な態度とって!しかもアツヤより年上だよ!?何様のつもりさ!?」
「う、いや、えっとその・・・」
「みんなもだよ!!なんで止めたのさ!!」
キッ!と士郎が後ろの面々を睨むと、全員がさっと視線を逸らす。このモードの士郎はお怒り状態なので、絡まれると面倒なのだ。幸い矛先はアツヤに向いているため、彼に犠牲になってもらおうという考えである。
哀れアツヤ、これも白恋の友情である。
まったく・・・と呟きながら、しかし笑顔で、士郎は4人へと向かい合う。
「・・・でも、君たちの気持ちが聞けてよかった。そんな風に思ってくれてるなんて、正直思ってなかった。ごめんね」
今度は士郎が頭を下げる。その様子に、入部しに来た4人は慌てた様子で頭を上げるように要請する。
「ありがとう。でも、僕はみんなと同じ1年生で、キャプテンって言うのも形式上はってだけなんだ。これからは、もっと気楽に接してくれると嬉しいな」
「・・・え?てことは・・・!!」
「うん!もちろん、僕達は君たちを歓迎するよ!」
眩しい笑みを浮かべ、士郎はこう言った。
「ようこそ、白恋中学サッカー部へ!!」