イナズマイレブン! 脅威の転生者 ゴジョウ!!   作:ハチミツりんご

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第二十三条 敵か、味方か、何者か

 

 

 

「へ?成神がどんな奴か、ですか?」

 

 

 

キョトンとした表情をしたのは、今年見事帝国学園に入学し、サッカー部の一軍の座を勝ち取った秀才、【洞面(どうめん) 秀一郎(しゅういちろう)】。その横で緊張した面持ちをしているのが、洞面や成神と同じく一軍に合流した団子っ鼻の【椋本(むくもと) (けい)】だ。

 

 

 

「えぇ。学年は違えど同じ特待生………それに、現状の一軍メンバーを鑑みれば、彼は私と同じくサイドバックに着くことになりますからねぇ。親交を深めたいと思いまして」

 

 

 

そう言って2人の前に立っているのは、あの五条勝。名門、帝国学園でも鬼道と並んでトップクラスの実力を誇る、世代を代表するDFだ。とうぜん、洞面と椋本もその噂はよく聞いている。

 

実際、新一年が一軍に合流してから既に一週間が経過しており、その間の練習で何度も五条のプレーを見た。自分達は未だ一度も突破できたことは無いし、今話題に出ている成神すらも抑えられるほど高い実力。同じ特待生の鬼道有人と比べて、指揮能力という点では劣るが、一選手として見た時にはこの人のがチートじゃね?というのが洞面と椋本の見解である。

 

 

 

「へぇ〜、五条先輩もそんなこと思うんですね!もっとこう、『アイツを放置してたら面倒だから潰してやるぜキヘヘ……』的な感じなのかと思ってました!」

 

「洞面!?」

 

「………君、見た目の割に毒吐きますね………潰そうなんて思ってませんよ。一緒にプレーする以上、彼も君達も私の仲間です。てか潰そうと考えてるならここで言うわけないでしょう?」

 

「それもそっかー」

 

 

 

あっけらかんとした雰囲気でそう言った洞面。いきなり仲良くもない先輩に向かって失礼な事を言う辺り、変に素直というか、肝が座ってるというか・・・椋本からしたらハラハラするような事でも平気でやるのがこの男なのだ。

 

 

 

「まぁ冗談は程々にして・・・成神と仲良くなりたいって言ってもなぁ〜・・・ねぇ椋本、なんかある?」

 

「・・・うーん・・・無い、かなぁ?」

 

「おや、彼は趣味とかは無いんですか?いつもヘッドフォンを肌身離さず持っているから、てっきり音楽が好きなのかと思ったのですがねぇ………」

 

 

 

五条がそう訊ねるが、洞面達は揃って首を傾げて唸るまま。そんな2人の様子に疑問を覚える五条。少しして、椋本が悩みながら口を開く。

 

 

「いや、音楽は好きなんですけど・・・それ関連で人と話してるのはあんまり見覚えないですね。てかアイツ、別格だし・・・」

 

「別格?」

 

「成神、なんでも出来るんですよ。ほんと、比喩とかじゃなくて、ガチでなんでもこなせるんです」

 

「文武両道どころか絵を描いたりだとか、料理作ったりだとか・・・後、さっき言ってた音楽関連!一回しか聞いてない曲を譜面も見ないで平然と再現するし」

 

「随分多才ですね………」

 

 

 

洞面と椋本曰く、成神は1つの分野に特化しているわけではなく、様々な分野に高い才能を持っているとのこと。それだけ聞くと特化しているものがない、所謂『器用貧乏』のように聞こえるが、実際はどの分野も高い次元で纏まっており、器用貧乏ではなく『万能』の方が正しい、との事。

 

 

 

「それだけ出来るのに、妙に目立つの嫌いみたいなんですよねぇ。だからコンクールとかにはあんまり出ないし・・・」

 

「サッカー始めたのだって、何年か前に僕と洞面がアイツを誘ったからですし」

 

「なるほど………そう言えば、何故彼はあなた達のチームで補欠だったんですか?ここ数日の練習を見る限り、補欠で収まるようなレベルではないと思いますが……それに、前に有人達のチームと試合した時は『つまらない』と言ってベンチに下がったそうですし……」

 

 

五条が新たに質問すると、2人は「あー・・・」と声を上げながら微妙な顔をする。何か言いにくい事情でもあるのかと思ったが、洞面たちがそれを否定して話を続ける。

 

 

 

「いやーその・・・僕らのチーム、そこそこ強豪だったんですよ。帝国学園の一軍になったのは僕ら3人が初めてだけど、木戸川とか千羽山とかからスカウトが来る人もいたりする程度には」

 

「確かに帝国には劣りますが、木戸川は総合力、千羽山は守備力が優れた強豪校………そこからスカウトが来るなら、確かに実力あるチームだったのでしょうねぇ」

 

「実力はあったんですけど、鬼道さん達のチームには勝てたこと無かったらしいし・・・それに、妙にプライドが高かったんですよね、僕らの先輩方」

 

 

 

洞面達のいたチームーーー『御門KFC』というらしいが、どうやらそのチームの選手達は実力こそ高いものの、それを遥かに超えるレベルのプライドの塊だったらしい。さらに洞面達の先輩、つまり五条と同い年か1つ上の選手達は歴代でも頭抜けて頑固だったようで、実力の高い成神や洞面はとにかく目をつけられていたらしい。

 

 

「成神も洞面も、何かにつけて先輩達から目の敵にされてて・・・特に成神には酷かったんです。あいつ自身は冷めた目で見てたけど、途中から面倒くさくなったのか、バレないように手を抜き始めたんです」

 

「それで自分から補欠に………2人は大丈夫だったんですか?」

 

「あ、はい!僕はFWですけど、ポストプレー主体なので・・・先輩にパスを出す事の方が多かったので。成神や洞面みたいに目の敵にされる事はあんまり無かったです」

 

「僕の場合はテキトーに流してましたー!こういったらなんだけど、成神に先輩達の意識は集中してたし、僕の見た目だと舐められてたから意識されにくかったんですよねー。こんなちんちくりんに負ける訳ない!ってよく言ってましたよ!・・・まぁ負ける訳ないってのはこっちのセリフだけどねー」

 

 

けらけらと笑う洞面。自分にはパワーは無いが、頭を使った相手の裏をかくプレーが得意だし、絶対の自信を持っているとのこと。彼らの先輩の中には帝国に進学したのもいるらしいが、洞面達がチームに入るまで『御門KFC』の名を聞かなかったことを考えると入部拒否されたか、今も三軍で燻っているのだろう。

 

 

 

「(………そう言えば、土門は大丈夫だろうか)」

 

 

ふと、原作初期の重要キャラであり、いつかは帝国を去ってしまう友人の事を思い起こす。三軍時代に佐久間を励まし、早い段階で二軍に上がった彼だったが、いまいち帝国での成績は振るっていない。同じ三軍で燻っていた佐久間を助け続けていた彼が、見事一軍に上がった佐久間と違って二軍で伸び悩んでいるのは、何となくだが皮肉めいた運命だと思う。

 

 

ーーーが、助けるわけにもいかない。ここで五条が手を加えて、土門が一軍になったとしよう。それをしたら、鬼道が雷門に送るのは別の人間となるだろう。そして、その別の人間が土門のように雷門中の面々と信頼を結び、冬海の妨害工作を摘発するとは限らない。土門がいないから、仮に一之瀬が来たとしてもトライペガサスの練習に発展しない可能性、さらには一之瀬自体の加入すら無くなるかもしれない。

 

 

それに、と五条はふと思う。

 

 

土門のプレースタイルは、帝国には向いていない。彼自身の実力の高さから十分にプレー出来ているものの、組織的に動いて戦う故に選手の個性よりも意思の統率を旨とする帝国のサッカーよりも、各選手の特性を最大限生かして戦う、自由な雷門のサッカーの方が土門には向いている。彼の為にも、ここで手を加えるのは控えるべきだろう。

 

 

 

 

「ーーーんぱい?五条先輩!?聞いてますー!?」

 

 

洞面が眼前で意識を確認するように手を振る。はっ、と意識を引き戻された五条に、洞面が呆れたように話し掛ける。

 

 

 

「だいじょーぶですかー?疲れてる時は無理せず休んだ方がいいですよ?」

 

「あぁいえ、少し考え事を……気にするほどのものではありませんよ……ククク」

 

「それならいいですけど・・・あ、まだ成神のこと聞きます?」

 

「えぇ、聞いていたら俄然興味が湧いてきました。他にもあるなら、是非」

 

 

 

そう言って、再び2人から話を聞いていく五条。しかし、これといって重要そうな情報は掴めなかったーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………分からん」

 

 

いやー、お手上げっすわーハッハッハ。何も浮かばん。どうすりゃええねんな。

 

 

成神が転生者の可能性がある、と思い、調査しようと思いたった俺こと五条勝。だが影山から選ばれた特待生である成神について嗅ぎ回っていると影山から何かしら行動を起こされるかも、という恐怖感から、同じチーム所属だった洞面と椋本に聞く程度しか行動出来ないが。

 

 

そう思って2人に話を聞いたが、正直大した情報は手に入らなかった。てか聞けば聞くほどチートみてーな性能してんぞアイツ。

 

 

だが正直、成神は転生者ではない気はしている。根拠の無い、所謂直感に近いものだが。

 

 

例えばこの間、成神の実力を見る為にちょっとしたミニゲームをした時。成神はシュートをして源田に止められた時、そのことに驚いていた。

 

 

ーーー『パワーシールドが進化していること』ではなく、『シュートが止められたこと』に、だ。

 

 

 

少なくともアニメ版に置いて、技の進化が始まったのは世界編からだ。その為、この時期の源田のパワーシールドは本来進化していないはずなのだ。その進化に反応しなかった時点で原作知識を持ってるとは考えにくい。

 

それに、パワーシールドは豪炎寺と染岡のドラゴントルネードをシュートブロック無しでも防げる程に強力な技だ。そんなパワーシールドにダイナマイトシュート程度の技を止められた事に驚いてる為、成神が原作を知っているとは思えない、というのが俺の見解だが・・・。

 

 

 

 

 

 

・・・まぁガバガバ理論もいいところだ。だってあくまでパワーシールドがドラゴントルネードを止めるのはアニメ版。原作のゲームで考えれば、成神の放ったダイナマイトシュートの方がパワーシールドよりも威力が上なのだから、その点で驚いていたと考えることも出来る。ゲーム版の知識のみだったらこの時点でパワーシールドがV2になってても違和感は無いし、一概には言えない。

 

 

まぁそもそも、原作知識を持ってるのに影山の懐にくるとは考えにくいんだけどね。そう考えると知識持ちとは・・・やめよう。いたちごっこな気がしてきた。

 

 

 

 

ん?俺?え、だって五条さんだよ?帝国にいなきゃでしょ?雷門より帝国の方が個人的に好きだし、それに小さい頃に有人と約束したしね。

 

 

 

 

・・・てかもうこれ考えるのやめよう。成神のことを調べてるのだって実害があったわけじゃなく、あくまで俺が見られてるような違和感を感じただけだし。彼自身がなにか怪しい行動をしているわけじゃない。

 

 

それに、こういったらなんだけど今の成神の実力ではこれからの展開に大きな影響があるとは思えない。転生者じゃないならなんの問題も無し、仮に転生者でも知識持ちじゃないならそれも問題無し。

 

てか原作知識持ってるなら今の帝国の状況が違和感しか無いだろうしね!向こうから接触してくるか、原作に介入しようと行動起こした時に分かるし、その時でも遅くないでしょ。

 

 

 

 

「………よし、ほっとこう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何をっすか?」

 

「うおっ!?」

 

 

いきなり背後から聞こえた声に驚きながら振り返ると、きょとんとした顔の成神がそこに立っていた。俺の驚きの声を聞くと、彼はケラケラと笑って話し掛けてくる。

 

 

 

「五条先輩もそんな声出すんすね!意外っす!」

 

「そりゃいきなり背後から声掛けられたら驚きますよ………何か御用ですか?」

 

 

メガネの位置を直しながらそう尋ねると、成神は大した用事じゃないけど、と前置きして話し始める。

 

 

 

「いやー、五条先輩、俺と仲良くなりたいって言って洞面達に話しかけてたんすよね?俺びっくりしちゃって!なんで先輩のこと探してましたー!」

 

「あぁなんだ、そういう事ですか……」

 

「だってあの五条先輩が俺の事知るために洞面達に聞きに行ってるとか、正直ウケる!とか考えてました!」

 

「酷い言いようですねぇ………ククク」

 

「にゃはは、冗談っすよ、冗談!五条先輩がそんな事思っててくれたなんて、俺嬉しかったんすよ?」

 

 

 

近くの壁にもたれ掛かりながら、ニコニコとした顔でそんなことを言う成神。その様子に嘘をついているような雰囲気は無く、あの時感じた観察されるような違和感も無い。やっぱり、俺の勘違いか。

 

 

 

「あ、そうだ!五条先輩、ちょっとお願いがあるんすけど・・・」

 

「お願い?」

 

「はい!五条先輩、俺の事聞いたんすよね?五条先輩は俺の事知ってるのに、俺は五条先輩のこと知らないなんて不公平じゃないっすか!だから、一つだけ質問させて下さい!ね、いいでしょ?」

 

 

 

顔の前で両手を合わせ、お願いします!と笑う成神。うーん、やっぱりどっからどう見ても普通に良い奴なんだよなぁ・・・まぁ俺が勝手に調べてたのが悪いんだし、これくらい答えるべきだろう。

 

 

 

「えぇ、勿論……私が勝手に調べていた訳ですし、当然答えますよ………」

 

「やっりぃ!!」

 

 

嬉しそうに顔をほころばせる成神は、んじゃ早速!と言って、1つの質問を投げかける。

 

 

 

 

「五条先輩!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんた、()()()()()()()()()?」

 

 

 

俺の背中に、ゾクリ、と悪寒が走る。

 

 

興味深いものを観察するように、成神健也は笑った。

 

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