イナズマイレブン! 脅威の転生者 ゴジョウ!! 作:ハチミツりんご
鬼道が亜夜からの挑戦を受け、はや三日。ついに対戦の日がやってきた。俺と鬼道、助っ人としてチームに入っている施設の子供たちは、亜夜直属の黒服サッカーチームと対峙していた。大体大柄で筋肉質な奴らだ。
服装は似てるがビジュアルはSPフィクサーズの勝利だな。舞さんを見習え、舞さんを。あの人は普通にメインキャラクラスの顔の持ち主だぞ。
え?てつかべ?個人的には好きだよ、うん。
「くくく……ついに!ついにこの時がやってきましたよ!!この日をどれだけ待ちわびたことか!!!」
いや、3日しか経ってないじゃん。
「さぁ、2人とも。お友達とのお別れは済ませましたか?この試合が終わったら引越しですよ?」
「ふっ。そっちこそ後で吠え面かくなよ。」
「なんだとぉ……!!」
あぁ、鬼道さん、やめてください。心強いけどめんどいから相手怒らせないで。そんな思いを込めた視線を向けると、鬼道がこちらに気づき、薄く笑う。
「分かっている、五条。お前が完成させたブロック技、それに俺の新しいシュート技があれば、恐れることはない。」
違う、そういう事じゃないんだよ鬼道さん。あんまり挑発しないでねって事だからね?そこんとこ分かってね?
「みんな!この試合は俺と五条の指示に従ってくれ。五条、DFへの指示は任せたぞ。」
え、ちょっと待って聞いてない。
「大丈夫だ、俺と五条を信じろ。
行くぞ、みんな!!」
『おおーー!!』
え、ちょっま、えぇ……?
そんな五条達を、1人影から見ている男がいた。
「見せてもらうぞ、天才ゲームメーカー高島有人と、その高島があれだけ評価する男の実力を……!」
――――――――――――――――――――
審判の笛がなり、運命のゲームが始まった。
まずは黒服側の攻撃から始まる。
黒服達は、攻撃重視の3-4-3。野生中を想像していただければわかりやすいだろう。
対する五条達は、極端に守備を重視した――ゲームにおいてはファランクスと言われる――5-4-1というフォーメーション。
ワントップに鬼道が、後列5人の中央に五条がいる。
笛が鳴った瞬間、鬼道はボールを無視し、前へ向かって走り出す。
それを見た黒服側のFWは、驚きながらも嘲笑を浮かべる。
「へっ!なんだぁアイツ?俺達が怖くて逃げたのか?」
「違ぇねぇや!!」
などと油断しきった黒服は、中央の男がボールを持ち、その左右をそれぞれ1人が走っている。その足は、とても普通の子供では追いつけないほどだった。
……そう、普通の子供では、だ。
「………落ち着いて、左右の黒服に二人ずつついてください。パスコースを塞ぐだけでいいですよ。」
落ち着いた声で、五条が指示を出すと、MFの子供たちはその指示通りにパスコースを塞ぐ。ボールをもった黒服は、特に気にすることもなく五条に向かって突っ込んでいく。
そして、五条もまた、黒服に向かって突っ込んでいった。
「おら、邪魔だァ!!」
「………【キラースライド】!!!」
無策で突っ込んだ黒服は、五条の放ったブロック技によって吹き飛ばされる。
「な、なんだとぉ!!」
「………高島くんに比べたら、月とスッポンですね。」
ボソッとそんなことを呟いた五条は、そのままボールを持って上がっていく。MFの黒服達は、抜かせまいと五条を潰しにかかるが、軽く体を揺らすフェイントだけであっさりと抜かれてしまう。
「高島くん!」
五条はそのまま、近くにいた鬼道にボールを渡す。鬼道はそのままゴールに向かって走り出す。当然DFが止めに来るが……
「甘い!【ひとりワンツー】!!」
あっさりと鬼道のドリブル技で躱されてしまう。そして、鬼道とゴールの間には、黒服達の中でも一際大きいGKの黒服しかいなくなった。
「こ、子供のキック力なんて、たかが知れてんだ!!俺からゴールを奪えるはずがねぇんだよ!!!」
「くらえ、これが俺のシュートだ!!
【スパイラルショット】!!」
ボールを上から踏みつけ、バック回転をしながらボールが浮き上がる。それを鬼道の右足が撃ち抜いた。
子供とはいえ、鬼道有人の必殺技を、キャッチ技を持っていない黒服が止められるわけもなく。
あっさりと鬼道たち子供チームは一点を先制した。
子供 1-0 黒服
「なぁんだそのざまはぁ!!!!」
ベンチに座っていた亜夜は、先制された怒りからか、頭を掻きむしりながら黒服達へ怒鳴りつける。
「いいか!?この試合に負けたらお前らは全員クビだ!!そうなりたくなければさっさとそいつらをつぶせぇ!!」
亜夜の言葉に、黒服達は顔を青ざめながらプレーを再開する。そこに先程のような油断――というか余裕――は存在しなかった。
「どけぇ!!」
「きゃっ!!」
黒服のFWが、MFの女の子にぶつかりながら進んでいく。女の子は、ぶつけた腕を押さえて痛みを堪えていた。
それを見た五条は、少し語尾を強めながら黒服へと言葉を発する。
「ピッチに立てば皆平等……ですが、ああもあからさまに女の子に手を出すのは、頂けませんねぇ……!!!【キラースライド】!!」
再びブロック技で五条がボールを奪う。そのまま五条は進んでいくが、黒服達がボールを奪う為に押しかけてくるが、五条はことごとくそれを躱していた。すると、突然五条はドリブルをやめ、その場にとどまってしまった。そして……
何故かその場でリフティングを始めた。
『……は?』
「っ!!何をしているんだ、五条!!」
鬼道の言葉も聞こえていないかのように、その場でリフティングを続ける五条。
「ククク……いえいえ失敬。あなたがたを相手に走る必要を感じなくてですねぇ。ほら、今なら取れるかも知れませんよ?ほら、ほら。」
そう言って、五条は黒服達に見せびらかす様にボールを蹴り続ける。ワナワナと震えていた黒服達は、我慢しきれなくなったのか五条に向かって飛びかかる。
「舐めてんじゃねぇぞ糞ガキがぁ!!」
次々と五条に向かっていくが、五条は巧みなボールさばきで黒服達を躱していく。
「ほら、女の子は倒せても、私は無理なんですか?あぁすみません。あなたがたのような図体だけの輩では無理ですね。」
「クソがァァァァァ!!!!」
「っ!!何をしているんだ、五条!!今のうちに点をとるべきなのは、お前もわかっているだろう!!それなのに……?」
鬼道が苛立ちの混じった声を上げるが、ふとそれを止める。そして、鬼道は考えた。
――あの五条勝が、意味の無いことをするだろうか?
ふと、鬼道は五条を見る。その周りには、まるで素人のようにボールに群がる黒服達がいた。
それを見た瞬間、鬼道は五条の考えを察した。五条が何故、今攻めていないのかが分かったのだ。
「そういう……そういう事だったのか、五条!!!」
五条の考えを察した鬼道は、彼にパスを要求する。すると、先程までは要求してもパスを出さなかった五条が、あっさりとパスを出したのだ。
鬼道はそこで、自分の考えは正しかったと確信した。鬼道も彼にならい、ドリブルやリフティングで相手の黒服たちを挑発する。
「ふん、間抜け共め。せめてハンデをやろうじゃないか、ありがたく思えよ?」
「てめぇもかこのガキ!!!」
それからというもの、試合は鬼道と五条がボールを持ち、相手を挑発する。危なくなったらもう1人にパスを出す、といった行動を取り続け、前半が終了した。
「なぁんだ貴様ら!!!なんであのガキどもからボールが取れないんだ、この無能共が!!!」
肩で息をし、大粒の汗をかく黒服達に向け、亜夜はそんな汚い言葉を放つ。
「私は、必ずあのガキどもを連れていかねばならんのだ!!そうすれば、あのお方も私のことを認めてくださる!!!
いいか、お前ら!!後半は、ファウルでも何でもして、あの二人を退場させろ!!最悪怪我させても構わん!!そうすれば、いくら無能なお前らでも勝てるだろう?」
ニヤニヤと、気味の悪い笑みを浮かべる亜夜。しかし、彼は気づいていなかった。目の前の黒服達の異常に……。
「なんであんなことしたんだよ、2人とも!?」
「そうだよ、せっかく点をとるチャンスだったのに!!」
おうっふ・・・みんなからのコメントが胸に刺さる・・・。【キラースライド】でボールをとった後、大人相手に無双するのが楽しくて、つい挑発してしまった。
いや、だってねぇ?自分よりあんだけでかい大人達が飛びかかってもスラスラと躱していく五条さんスペックに感動してしまったのさ。途中で鬼道が叫んでから我に返ったけど。
てか、なんで鬼道もあんな事したんだろ?鬼道がやるからには、何か策があるんだろうけど。
「まぁ、気持ちは分かるさ。俺も、五条の作戦に気づくまでは同じだったからな。」
「五条の、作戦?」
・・・え、何それ初耳なんだけど。
「みんな、黒服達はどんなイメージだ?」
「えっと、怖い!」
「大っきい!」
「全員でっかいな。」
「そう、デカいんだ。あれは、普通の大人と比べてもかなりでかい部類に入る。力だけなら、並のチームよりもずっと上だ。」
鬼道の話す内容を、真剣な様子で聞く子供たち。俺は未だ鬼道が何を言っているのか分からず混乱中。
「だが、足は大して速くない。俺達子供でも追いつけるレベルだ。
そして、黒服達を見てみろ。」
そう言われて黒服達を見ると、彼らは肩で大きく息をし、大量の汗を流していた。地面に座り込んで、浴びるようにドリンクを飲んでいる。
「・・・すごい疲れてるな。」
「ああ。しかも、ストレッチのひとつもしていない。恐らく、あいつらは図体だけだ。サッカーに関しては素人もいいところだな。
そんなヤツら相手に、俺と五条の2人でとにかく走らせたんだ。ああなるのは当然だろう?」
「なるほど!つまり、後半は・・・!!」
「確実に動きが鈍るだろうな。対して、俺達は前半ほとんど動いていない。後半は全員で走り回るぞ!」
『おおーー!!』
「凄いね、まさるくん!!お兄ちゃんよりも早くそんなことに気づくなんて!!」
ベンチで試合を見ていた春奈が、キラキラした瞳を俺に向けてきた。
いや、勘違いだからね?俺そんなこと考えてないからね?
「いえ、私はそんなこと考えてませんよ。全ては高島くんの考えです。」
「・・・過ぎた謙遜は嫌味に聞こえるぞ。」
鬼道が溜息をつきながらこちらに近づいてきた。なんでその歳で謙遜なんて知ってるの。
「俺は、前半でとにかく点をとって、後半は守備に集中して逃げ切るつもりだった。相手も、後半は俺達を潰しに来るだろうと思ってな。」
そんなことを唐突に語り出す鬼道。ああー、そう言えば潰せって叫んでたね、向こうの怪しい人。
「だが、それは間違いだった。俺の作戦では、俺とお前はもちろん、他の奴らも怪我をする可能性が高かった。さっきの物部がいい例だ。」
悔しそうに顔を歪める鬼道。ちなみに、物部とはさっき黒服に吹っ飛ばされたMFの女の子の『物部 黒湖』ことモノクロちゃんの事だ。
「だが、お前の作戦ならば、怪我の危険性も少なく、かつ勝てる可能性も高いだろう。
・・・ただ、一言くらい相談して欲しかったものだがな。」
いや、相談も何も、俺別にそんなつもりじゃなかったし。そちらの勘違いですし。
「まぁいい。後半は全員で攻めるぞ。五条もシュートチャンスがあったら積極的に打ってくれ。」
「ククク………了解しました。」
俺達は念入りにストレッチをし、水分を補給してからピッチに戻る。
そして、運命の後半戦が始まった・・・。
といっても、圧勝してるんだけどね。
相手は鬼道の言った通り、動きが鈍っていた。そんな黒服達が元気いっぱいの子供たちに追いつける訳もなく、あっさりとゴール前までボールを運べる。
唯一元気が残っているGKも、鬼道のシュートだけではなく、子供たちの連携で翻弄されて決められたり、ループシュートを取れずに決められたりと散々だった。
「五条!!アレをやるぞ!!」
ボールを持った鬼道が叫ぶ。アレというのは、俺が鬼道と練習していた技だが、結局完成までは至らなかったシュート技の事だ。
「………アレはまだ未完成でしょう?」
「今の俺たちなら決められる!いくぞ!」
「ククク……はいはい、分かりましたよ。」
俺が了承すると、鬼道は真上にボールを蹴りあげる。そこに俺がジャンプして、勢いをつけてかかと落としをする。
そして、俺が落としたボールを、鬼道が渾身の力を込めてシュートする。
そう、これが原作において鬼道が使った、帝国学園の連携必殺技、その名も――
「「【ツインブースト】!!!」」
俺たちの放った【ツインブースト】を、鬼道1人の【スパイラルショット】を止められない黒服が止めれるはずもなく、ボールはGKごと吹き飛んでゴールネットを揺らした。
そこで、試合終了の笛が鳴り響く。
俺たち2人と、施設の未来がかかった大事な試合は、5-0という大差で子供たちが勝つという結末で幕を下ろした。