イナズマイレブン! 脅威の転生者 ゴジョウ!!   作:ハチミツりんご

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第二十六条 王者帝国、雷門へと

 

 

 

「だー、くそっ!!だりぃな、おい!」

 

 

 

ボンッ!と各々に割り当てられたリクライニング付きの高級ソファに乱雑に腰を下ろしながら、辺見がボヤく。それを横目に見ながら、彼の隣の席に座る源田がため息混じりに注意を投げる。

 

 

 

「おい、辺見。あまり騒ぐな、これから試合なんだぞ」

 

「だってよぉ!!なんでったって俺達が出向かなきゃならねぇんだ!雷門なんて無名の中の無名!!しかもそこに一軍全員だぞ!?」

 

 

納得いかないとでも言いたげに騒ぐ辺見。あのなぁ、とため息をつく源田だったが、辺見の気持ちも分からなくはーーーというより、大いにわかる。帝国学園は全国でも飛び抜けた実力を持つトップ校。かたやサッカー部があることすら今しがた知ったばかりの超弱小校。実力の差は語る必要も無いほどに開いていると言っていいだろう。

 

そんな相手にわざわざ昨年の覇者たる自分達が出向くのだ。それ相応の価値が無ければ納得がいかないのが常識というもの。そして、雷門にその価値があるとは思えなかった。

 

 

 

「雷門と言えば、ここらの地区でも有数のマンモス校だろ?人数が多い分、活きがいいのが何人かいるかもしれないぜ?」

 

「おいおいおいおい、マンモス校っつったってよぉ〜、実際は人が多いだけでただの私立校だろ?デコ見に同調するのは癪だが、やる気出せって方がムズいだろ」

 

 

 

半笑いで心にも無いことを言って話に入ってきた佐久間と、それを肩を竦めて否定する咲山。彼らも正直、雷門に一軍が派遣されることに違和感を覚えているメンバーだった。

 

 

 

「てかよ、俺達まで連れてくる意味あんのか?レギュラーメンバー全員いるのによ」

 

「兵藤お前、あっほやなぁ。五条君が出番無いんやからそりゃベンチも必要やろ」

 

「なら恵那さんか渋木さんが着いてきゃ事足りるだろぉ?源田のヤローが雷門なんぞに負けるわきゃねぇし、俺いらねぇだろ」

 

「知らんがな。自分で考えぇよ、やっぱアホやな」

 

「てめぇおちょくってやがんのか大楠ゴラァ!?」

 

 

 

しかも今回招集されているのはレギュラーメンバーだけではない。ベンチに座る、3年FWの恵那、2年FWの大楠、1年FWの椋本、3年MFの渋木、2年GKの兵藤。他校ならば間違いなくチームの中核を担えるであろう猛者達も、このバスに同行していた。

 

 

 

 

「でも実際謎だよね〜。2人はどう思う?」

 

「確かにそうだけど・・・総帥のご指示なら従わないとだよね。成神は?」

 

「ん?んー、まぁどっちでも良くね?いつものきっつーい練習するよりかは、弱小相手に試合してた方が圧倒的に楽だし!」

 

 

 

洞面の問いに、至極真面目に応対する椋本。対して2人の座る座席の後ろから顔を覗かせる成神は、あっけらかんと笑いながら楽だからいい、なんて事を述べる。実際普段は進行の早い帝国の授業を受け、その後間髪入れずに練習、夕食の量も強靭な身体を作るために最低限ここまでは食べなければならないなど、はっきりいって苦行すら超えた地獄の日々。そんな日々に比べれば快適な帝国の装甲バスの中でのんびりし、弱小との試合をするだけの方が楽に決まっている。苦笑いしつつも、洞面と椋本はそれには深く同意する。

 

 

 

「ったく、遠足かなんかかよ・・・仮にも試合前だぞ?」

 

「まぁいいじゃねぇか。試合前になりゃ全員シャンとするさ、そうカッカすんなよ寺門」

 

「そうだそうだぁ!今回は調査がメインだろ?気ぃ張りすぎたら分かるもんも分からなくなっちまうってもんだ!」

 

「そりゃそうだが・・・ってか大野お前、食い過ぎだろ。向こうついてから動けんのかよ?」

 

「おやつみてーなもんだろぉ?この程度じゃ試合に支障はねぇな!」

 

 

 

チームメンバーの中でも一際体格のでかい大野、長身の寺門、万丈はそれぞれ後方の席に座り、小腹を満たす為に軽食を口にしていた。・・・大野だけ明らかに『軽』の度合いを超えているが、それ故に彼の体格が形作られているのならいいのかも知れない。

 

 

 

 

 

「・・・あまりにも浮かれ過ぎているな」

 

 

 

静かに声が響いた。その声を聞いた瞬間、全員が姿勢を整え声の主の方を向く。

 

 

 

「確かに今回の目的はとある選手の情報収集だが、それ以前に俺達は王者帝国の力を見せ付けに行くんだ。勝つのは当然、それも圧勝。二度と奴らが立ち直れない程徹底的に、との指令だ。生半可な気持ちで挑んでいては足元をすくわれる。お前達の失敗は自分だけでなく、チームメイトや帝国、果ては総帥の顔に泥を塗ると肝に銘じろ」

 

 

『ハッ!!申し訳ありません!!』

 

 

 

ばっ!!と全員が敬礼を返し、静かに各々の席に着く。

 

 

 

「・・・すみません。続けましょう」

 

 

そんな中で、立ち上がらずに済んだ選手が三人。

この試合で五条に代わりスターティング出場する3年FW、恵那。

その豊富な知識を生かして、先程まで鬼道達と共に戦術の擦り合わせを行っていた3年MF、渋木。

 

そしてこの試合には出場しない、帝国学園特待生にしてディフェンスリーダー、五条の三人だ。

 

 

 

「おいおい・・・いい加減に敬語取れよな。去年から言ってるだろ?」

 

「そうだぞ。一年の時からずっと一軍な恵那はまだしも、ついこの間二軍から上がってきた俺なんかに敬語では、お前が舐められてしまう。総帥からも言われていただろう?」

 

 

2人の先輩から苦言を呈されるが、鬼道は首を振って否定する。

 

「確かにそうですが、同時に恵那さんと渋木さんは年上です。流石に試合相手の前や、大会の際には外しますが、この場では問題無いでしょう」

 

「ククク……お二人共、諦めた方がよろしいかと。彼は昔から妙に頑固なところがありますからねぇ…」

 

 

いつもと変わらぬ慇懃無礼な笑みを浮かべながら肩を竦める親友に、うるさいぞ、と小言のように言う鬼道。そんな彼らを見ながら、相変わらず仲がいいな、と三年生二人は気が付かれないように笑う。

 

 

 

 

「五条先輩ー!ちょっといいっすか?」

 

 

 

そんな時にひょっこりと現れたのは、先程まで1年生3人で話していた成神だ。

 

 

 

「成神?どうしました?」

 

「サイドの動きんとこで質問があって。五条先輩は試合に出ないし、今のうちに質問しとこうかと。いまいいっすか? 」

 

 

 

成神から声を掛けられた五条は、鬼道達に行ってもいいか指示を仰ぐ。鬼道も、今回の試合に出ない事が確定している五条を戦術の相談にかかりきりにするより、試合に出る成神の動きの確認に当てた方が効率がいいと判断。それを聞くと、五条はその場を離れてこちらに寄ってきていた成神の方へと足を運ぶ。

 

 

 

「それで?何処の動きですか?」

 

「えっとっすね、ここの動きなんすけど、辺見さんが下がるタイミングで万丈さんと大野さんが中央に寄るじゃないっすか?その時って俺らはどう動くんすか?」

 

「あぁその場合はーーー」

 

 

 

成神が疑問に思ったことを逐一解説して、お互いがそれぞれ戦術への理解度を深めていく。それを少し見て、問題なさそうだと判断した鬼道達はそのまま試合で使用する戦術についての議論を再開する。

 

そんな彼らの意識が逸れたことを横目で確認した成神は、五条に本題について声を潜めて尋ねる。

 

 

 

 

「ーーー実際のとこ、この展開はどうなんすか?」

 

「解せませんね。前に君に言った通り、この時期に雷門との練習試合は・・・原作の始まりは確かに起こりました。しかし、それは豪炎寺という帝国の脅威になり得る男が転校してきたからです。その豪炎寺が転校して、既に一年………このタイミングで練習試合を組む意図が読めません」

 

 

首を振って分からないと言う意思を示す五条。

 

 

恐らくだが、時期的には原作の練習試合とそう変わりない。この試合の後、少しの期間を置いてからフットボールフロンティアがスタートする。それを考えれば、その間の期間に尾刈斗との試合があり、順次雷門の物語が進んでいくのだろう。

 

しかし、この時期に帝国がわざわざ行く理由がない。前に成神が言った通り、影山が豪炎寺の情報を得ていないとは考えにくい。それならば、豪炎寺が雷門に行った時に練習試合を仕掛ければいい。原作でも部員の足りない雷門に試合を持ちかけたのだ。現状雷門の部員が足りていた場合も理由にならない。

 

 

 

「(・・・まぁ揃ってないだろうけど。豪炎寺の話だと今入部してるのはマックスと影野。だけど残りの風丸は陸上部で、目金は目立つ状況じゃないと出てこない。計10人、試合人数には足りないはずだ。・・・変なイレギュラーとかいなけりゃだけども)」

 

 

ぼんやりとそう考える五条だが、イレギュラーはこの人が大概なものである。それに事実雷門に特別な人物は加入していない。本来二年時加入の5人のうち、3人が加入しているだけで、風丸も帝国からの試合申し込みの後に加入。それ以外にメンバーが増えてることはなかった。

 

 

 

「総帥マジで何考えんてすかねぇ・・・まっ、協力すると約束しましたし、出来ることなら極力努力しますよ。何すりゃいいんすか?」

 

 

 

ボードを使いながら動きの確認をしているふりをしながら成神が問う。その成神のボードに着いたマグネットを動かしながら、五条は少し考えてから口を開いて指示を出す。

 

 

 

「そうですね……一番は雷門の廃部の阻止ですね。帝国も雷門も原作よりパワーアップしている可能性が高いので、どうなるかは分かりませんが、雷門が廃部することだけは阻止して下さい。次点で雷門メンバーの安全でしょうか」

 

 

雷門の廃部も阻止しなければならないが、仮に原作よりも強くなった帝国のラフプレーに耐えられずに怪我で離脱するメンバーが出てはまずい。影山が見ている都合上、明らかに手加減することは出来ないが、せめて大きな怪我なく終えられればよしだ。

 

 

「相手側に怪我させず、花持たせる形にすりゃいいんすか?源田先輩を突破出来るんすかね?」

 

「それは……あまり心配ないかと」

 

「・・・突破出来るだけの選手なんすか、豪炎寺さんって」

 

「名門木戸川清修で一年生で10番を背負った男は伊達ではありません。原作だと、慢心もあったとはいえ源田が反応出来ずに得点されています」

 

 

 

五条から明かされた事実。前年度フットボールフロンティアにおいて、決勝の味方のミスによる失点さえなければ全試合で無失点であった程の鉄壁を誇る、キング・オブ・ゴールキーパー源田幸次郎が、止めるどころか反応出来ない。それを知った成神は、へぇ・・・と俄然興味が湧いた様子。

 

 

 

「……取り敢えず、向こうがどれだけ強くなってるのか未知数です。こちらが強くなっていても、向こうの方が遥かに強い可能性もある。油断しないように」

 

「はーい。・・・あざっした先輩!これで大丈夫そうっす!!」

 

 

 

 

礼を言って洞面達の元に戻っていく成神を見ながら、五条は1人考える。この男、成神を完全に信用していいのか、という事だ。

 

 

 

成神が味方になったことは素直に喜ばしい。取れる手段が増えるし、何よりも相談出来る相手が、秘密を共有している相手が存在する。それだけで心が軽くなるのは事実。知っているのが自分だけではない、というのは存外心強いものだ。

 

 

しかし、あくまで成神自身が『面白そう』と言ってこちらに力を貸しているのも事実。確固たる理由が有る訳ではなく、その点においては心配だ。

 

 

 

 

「勝!そろそろ雷門に到着だ。お前はこの後、我々がバスから出た後ここで待機との総帥からの指示が出ている。席に着いておけ」

 

 

 

そんな考えを巡らせている時、鬼道から席に着くよう促される。

 

 

まぁここで考えたからと言って成神をどうこうできるわけじゃない。常に頭の片隅に置いておくとして、ここは考えを切り替えた方が良いだろう、と判断した五条は、鬼道に従って自身の席に着く。

 

 

 

 

五条が席に着いてしばらくすると、バスがゆっくりと減速しだし、次第に煙を吹き出すような音を立てて止まる。すると、ドアの開く音と共に微かな揺れと足音が響く。同行していた三軍メンバーが用意を始めているのだろう。

 

 

 

「ーーー行くぞ」

 

 

 

鬼道の短い号令とともに、五条を除いた帝国学園一軍メンバー15人が装甲バスの外へと向かって行く。

 

 

 

そんな中で1人席に着いたままの五条。が、不意に背後から「失礼します!」という声が聞こえてくる。振り向けば、帝国の制服に身を包み、生真面目そうに敬礼した生徒が一人。見覚えは無いので、恐らく同行していた三軍の一人だろう。

 

 

 

「おや、どうしました?」

 

「ハッ!安西先生より伝言です!今からバスの3階、最西部の部屋に集合せよ、との事ですので、五条さんをお呼びした次第であります!!」

 

「………安西先生が?」

 

 

 

五条が疑問と驚きの混ざった声を上げるが、三軍生徒は敬礼を崩さずハイ!と答えるのみ。

 

安西というのは、帝国学園における影山の側近のような男。しかし、影山が鉄骨落としで連行された際にそのままだったことを考えると、影山と同じくガルシルド配下、というわけではなくあくまで影山個人の部下だろう。

 

そんな彼は自分から何かを言うことは少なく、あくまで影山からの指示を伝えたりする。それだけの男だった。つまり、今回は実質影山からの召集だろう。

 

 

 

「………了解しました。貴方はこのまま待機に?」

 

「ハッ!他の三軍の者達と合流後、バスの中で待機となっております!」

 

「なるほど、ご苦労様でした」

 

「い、いえっ!とんでもございません!」

 

 

 

席を立ち、後ろの扉から出ていく五条に向かって敬礼の姿勢を崩さない三軍の男。彼からしてみれば、一軍の中心選手であり特待生の五条は文字通り雲の上の人。そんな彼から労われれば、喜びよりも驚きと畏敬が勝つというものだ。

 

 

 

 

そんなことは露知らず、五条は装甲バスの階段を一歩一歩上りながら、このタイミングで呼ばれた意味を考える。

 

 

何故このタイミングで雷門に試合を申し込んだのか、そして何故今自分を呼んだのか。影山から警戒されているのは知っている。それ故にこの試合から外されたのはまぁ納得出来るが、監視するならバスの中に放置しておくだけでいい。監視カメラなどで逐一確認出来るはずだ。それなのに自分の元にわざわざ五条自身を呼ぶ意味が分からなかった。

 

 

そんなことを考えているうちに、五条は影山の待つ部屋の前に到着する。考えていても仕方ない、この場で待たせるよりはさっさと影山の元に行った方がいいか、と判断すると、五条は部屋の扉をノックする。

 

 

 

 

「失礼致します。五条勝、招集に応じ、参上しました」

 

「入れ」

 

 

 

短く返答が返ってきた。それを聞いた五条はゆっくりと扉を開け、部屋の中に足を踏み入れる。

 

 

 

「よく来たな、五条」

 

 

 

入ってすぐ、帝国学園の総帥室に置いてあるものと同種の椅子と机が見える。その椅子に、五条に背を向けるようにして座っていた影山は、ゆっくりと彼の方を向いて話し掛ける。サングラスからその双眸は覗けないが、彼の前だと否応にも五条の警戒心が高まる。

 

 

 

「お呼びでしょうか、総帥」

 

「そう緊張することは無い。そこの椅子にかけたまえ」

 

「………失礼致します」

 

 

 

影山から促された五条は、ここで断るのもまずいと判断。影山の机より少し前に置かれた椅子に座る。先程まで座っていたソファもかなりの高級品だったが、この椅子もかなりのものだろうなと何となく想像がついた。

 

 

五条が座るのを確認した影山は、机の手元の辺りをスライドし、その下に備え付けられていたボタンを押す。すると、影山と五条の椅子が上昇。天井部がハッチのように開くと、二人は装甲バスの屋上へと移動した。

 

 

 

 

「っ!?これは………!?」

 

「ここからなら、試合がよく見えるだろう。なに、話相手が欲しかっただけさ。せっかくだ、一緒に観戦でもしようじゃないか」

 

「………そうですか。総帥と共に観戦できるとは、光栄ですよ……ククッ」

 

 

影山が口角を上げながらそう言い、五条が礼を言うように頭を下げる。

 

が、双方そんなつもりは毛頭ない。傍から見れば信頼しあった監督と選手だが、その内面はお互いへの警戒で溢れており、信頼とは程遠い状況だ。

 

 

 

 

 

眼前に見える光景。五条の目には、以前にあった炎のエースストライカー、豪炎寺修也。その他にも、原作における重要人物達・・・染岡竜吾や風丸一郎太、壁山塀吾郎といった面々の姿も。

 

 

 

そして、何よりも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(・・・円堂、守)」

 

 

 

ーーーこの『イナズマイレブン』という作品の根幹を成す男。初代主人公であり、後に伝説とも呼ばれるGK、【円堂(えんどう) (まもる)】の姿があった。

 

 

 

 

そんな彼ら、雷門の目の前で、帝国学園のレギュラー達はウォーミングアップを始める。彼らにとっては軽く身体を動かしているに過ぎないが、雷門中の生徒達から見たら佐久間があまりの速さで消えて見える程のもの。その隣では、洞面がそのテクニックとボールコントロールを生かして、一切無駄のない高速リフティングを行う。

 

 

しかし、雷門中の面々の目は驚愕ではなく、どちらかと言えば感心に近いもの。一年生の4人や、風丸は驚いていたものの、それ以外の面々は帝国学園の実力に感心し、これからの試合を心から楽しみにしているように思えてならなかった。

 

 

 

そんな中で、相手の実力を見るために帝国が動く。ウォーミングアップをしていた寺門がこれみよがしにボールを高く上げると、それに飛び上がって追いついた辺見がオーバーヘッドキックを叩き込み、鬼道へと繋ぐ。全力では無いものの、それなりの力を込めて鬼道が円堂に向かってシュートを放った。

 

 

 

「円堂!!」

 

「っ!!フッ!!」

 

 

 

しかし豪炎寺の声を聞いた円堂がすぐさま反応。自身に向かって飛んできたボールを両手で掴むと、そのまま回転を殺すように力を込める。しばらくはギュルギュルと回転したボールだったが、少しして煙を上げながらその回転を止める。

 

 

 

「・・・ほぅ」

 

 

全力では無かった。しかし、自分と辺見、そしてエースストライカーたる寺門の3人による連続キックは、並の学校の必殺技よりも強力なものである事は周知の事実。それを必殺技を使う訳でもなく、完全に止めて見せた円堂へ興味が湧いたらしく、鬼道が小さく呟く。

 

 

 

 

「すっげぇシュートだ・・・!!燃えてきたァ!!みんな!!俺たちの特訓の成果、アイツらに見せてやろうぜ!!」

 

「よっしゃぁ!!任せとけ!!」

 

 

 

試合に向けて、熱意を全開にして円堂が仲間たちへと鼓舞をかけると、代表するかのように染岡が吼える。他のメンバーも、口々にやる気溢れる言葉を口にして士気を高めている様子。帝国のシュートを円堂が完璧に止めたことにより、萎縮していた一年生や風丸の心も軽くなったようだ。

 

 

 

 

 

「おい寺門、見たか今の・・・俺とお前、そして鬼道さんのシュートを止めやがったぞ」

 

「総帥はこのチームのある選手の調査をしろと仰られていたが・・・なるほど、あのキーパーか。確かにあれを必殺技なしで受け止めるとは、総帥が気にしておられるのも無理はないな」

 

「へぇ・・・まっ、こんな無名の弱小にいるんだ。アイツ以外は大したことないだろ。それに、どんなに強力なキーパーでも、デスゾーンをシュートブロック無しで止められるわけがない」

 

 

嘲笑気味に辺見がそう言って。しかし、それを聞いていた鬼道が二人の間違いを訂正するように小さく呟いた。

 

 

 

「違う」

 

「・・・なんですって?」

 

「違う、と言ったんだ、辺見。寺門も、認識を正せ。総帥が気にしておられるのは、あの白髪のFWだ。キーパーの話は総帥から聞いていない」

 

「違うって・・・つまりあのキーパーは総帥の情報網にも引っかからなかった選手って事ですか!?有り得ない、全力とは程遠いとはいえ、俺達3人の同時シュートを完璧に止めたんですよ!?実力は間違いなく全国区だ!」

 

「確かに、辺見の言う通りだ鬼道。いくら何でもあの実力の持ち主が総帥の耳に入らないとは・・・」

 

 

有り得ないと喚く辺見に同調するように顎に手を当てる寺門。事実円堂の実力は並のキーパーのそれではなく、間違いなく単独としては全国でも有数だろう。そんな選手が今まで影山の耳に入らず無名で居続けたことが信じられないと言った様子だが、それは鬼道も同様だ。

 

 

 

「気持ちは分かるが落ち着け。情報収集すべき相手が2人になったと考えろ。まとめてデータを取り、総帥にお渡しすればいいだけだ」

 

「しかし!!」

 

「落ち着け、と言ったんだ。総帥からの指示は出ていない。つまり、総帥にとっては些末な事なのだ。我々は当初の目的の通り、任務を続行する。一応、DF陣は連携の確認をしておけ。勝がいない為に連携に齟齬が生じるような事がないようにな」

 

 

 

鬼道が冷静に指示を出す姿を見て、辺見も落ち着きを取り戻す。そして同時に、突然現れた実力者を前にしても動じず、的確な判断を下す鬼道への尊敬を新たにしていた。

 

 

 

「さて・・・お前達、そろそろいいな?最初は様子見で一本打たせる。が、油断はするな。特に源田。足元をすくわれないようにな」

 

「心配するな、鬼道。たとえどんなストライカーが相手だろうと、俺のパワーシールドは破られない」

 

「フッ・・・それを聞いて安心した。それではそろそろ行くぞ。我々の実力を見せつけるために」

 

『ハッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

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