イナズマイレブン! 脅威の転生者 ゴジョウ!!   作:ハチミツりんご

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第二十九条 vs雷門中③

 

 

 

「………同点か」

 

 

ハーフタイム。タオルで汗を拭いながら、得点板を見つめる鬼道がそう呟く。王者帝国の力を見せつけると息巻きながら前半で取れたのはたったの一点。しかも世代でも頭一つ抜けたGKである源田が早々に突破され同点。実力で得点をもぎ取った相手に対し、こちらは相手選手の中で実力が低い面々のスタミナ不足に助けられての得点。前半の内容としては即座にレギュラーを下ろされても仕方ない内容だった。

 

 

 

「で、でも流れはこっちですし!こっから一気に点取っちゃえば問題ないですよね!」

 

 

 

そんな中、近くにいた洞面が鬼道の呟きに反応する。相手選手のうち約半数は既にスタミナ切れ。控えの選手もはっきり言って実力があるようには見えず、雷門中は事実上6人で試合をするようなものである。対して帝国は全員スタミナは問題無く残っている。相手のマークを外す為に走り回っていた佐久間、新技を連発した大野と万丈が他より疲れてはいるが、後半も問題なく動ける程度のもの。

 

 

情勢的には圧倒的優位。そんな洞面に向かい、同い年の成神が声をかける。

 

 

 

「……確かにこれが同程度の実力だったら総帥も何も言わないだろうけど……相手無名校だぜ?」

 

「ゔっ……やっぱそうだよねぇ……なんなのさアイツら、源田先輩のパワーシールド破るし、寺門先輩のシュート止めるし……」

 

 

 

入学し、練習を共にするようになってから先輩達の凄さを洞面はよく目にしてきた。

 

ドリブルや相手の裏をかくトリッキーなプレーには自信があったし、事実帝国でも洞面の突破力はかなりのもの。小柄故に邪魔されにくく、相手の一瞬の隙を突く機転の早さに加え、1年生ながらデスゾーンに組み込めるほどの対応力の持ち主である洞面は歴代帝国レギュラーの中でも充分上位に入るサイドハーフだ。

 

 

しかし、現レギュラーの面々は洞面に出来ないことをやってのける。

 

全てにおいて高い実力を持ち、チームのキャプテンであり司令塔の鬼道はもちろんの事、エースストライカーたる寺門にサポートに秀でた佐久間、キング・オブ・ゴールキーパーと呼ばれる守護神、源田。

 

他にも全国でも飛び抜けたパワーディフェンスを得意とする大野、シュートブロックに加えマンマークで特定の選手を自由にさせない事に定評のある万丈。同い年ながら高い才能を認められ特待生となった成神。

 

特定の分野に秀でた訳では無いものの、総合力と判断能力は帝国でもトップクラスに位置する攻守の繋ぎ役たる辺見に、トップクラスのドリブル技術に高い身体能力を兼ね備えた洞面と同じポジションの咲山。

 

 

 

______そして鬼道と並ぶ傑物、五条。

 

 

 

 

ベンチの5人もそれぞれが帝国学園のユニフォームを着るに相応しい実力者揃い。今は五条こそいないものの、まず間違いなく無名校に苦戦することなぞ考えられないほどの力を有しているのは他ならぬ彼ら自身がいちばんよく知っていた。

 

 

なのに現実はその無名校相手に同点だ。その事実を再び認識した洞面に、その重圧が大きくのしかかってくる。

 

 

 

 

「そうだ鬼道さん、後半の動きについてなんですけど……」

 

「…ちょうどいい、こちらからも指示を出そうとしていたところだ」

 

 

 

チラリと見れば、近くにいた成神は鬼道と話して後半の動きについて細かく確認している。そこに恵那と源田も加わり、豪炎寺と染岡を自由にさせない方針を固めていた。

 

 

さらに周りを見れば、大野と万丈は新技の感覚について共有し合っており、辺見はベンチから見ていた兵藤、大楠に全体の動きがどうだったかを聞き自身の動きの甘さを反省していた。咲山と寺門、佐久間はお互いに相手の動きの甘さ、相手の選手の苦手な部分を話し合って後半に向けての準備を進めている。

 

そんな中で洞面のみ一人考え事をして出遅れていた。せっかく一軍の、しかもレギュラーになれたというのにこのままでは……と思っているとき、ポンっと頭に手が置かれる。

 

 

 

 

「おう、どうした暗い顔して」

 

「…渋木先輩」

 

 

 

洞面に声を掛けてきたのは、彼と同じMFでありベンチメンバーの渋木。現一軍では恵那と並んで二人しかいない三年生であり、面倒見のいい性格から一軍だけでなく二軍、三軍にも慕われる人物だ。同ポジションという事もあり、洞面も世話になっている。

 

そんな彼は隣に腰を下ろすと、そのサングラスをかけた強面な顔からは想像出来ないほど穏やかな雰囲気をまとって話し掛ける。

 

 

 

「前半についてか?いい動きしてたと思うがなぁ」

 

「………そう、ですか?」

 

「あぁ。パスの繋ぎ役として色んな所に顔出してたし、サイドからのドリブル突破でチャンス作れてた。それに、本番でデスゾーンも問題なく決められたじゃねぇか」

 

 

 

 

 

渋木からそう言われ、改めて自分の動きを振り返ってみる。

 

単独でのドリブル突破は相手の長髪のDF______影野のカバーに阻まれた故少なかったものの、鬼道に指示を出されるよりも早く動けていた場面も幾つかあった。それによりギリギリのところでパスコースを作り、ゲームメイクをしやすく出来ていたようにも思える。何より渋木の言う通り、本番で佐久間、寺門の両FWと連携してデスゾーンを成功させた。一年生にしてデスゾーンに組み込まれたのは、去年入学の寺門、一昨年入学の恵那くらいなもの。しかも両者はFWであり、MFでデスゾーンに組み込まれた一年生は洞面が初だ。

 

 

そうやって思ってみれば、確かに思っていたよりも動けているのではないか、と胸の中で思う。だがそれも渋木には読まれていたようで、わしゃわしゃと乱雑に頭を撫でられた。

 

 

 

「うわわっ!?」

 

「ははっ、ほら見ろ。他の奴らも凄いけど、お前もその『凄いヤツら』の一員なんだよ。胸張ってけ」

 

「……はい!ありがとうございました!」

 

 

 

ほれ!と言いながら軽く背中を押して洞面を立たせる。元々自分の実力に自信があった洞面は、3年生である渋木からそう言われて元の表情へと戻っていた。べこりと頭を下げると、鬼道と成神達の元へ小走りで駆け寄り、試合中に感じたことなどを細かく報告、相手の動きに関しての分析などに混ざっている。

 

 

 

そんな洞面を見ながら笑みを零す渋木。と、そこへ別の場所から声が掛かる。

 

 

 

「渋木さん!ちょいと相談があるんですけど、いいっすか?」

 

「おう、分かった。そっち行くわ」

 

 

 

辺見達から声を掛けられた渋木は立ち上がって埃を払うと、『スコアブック』と『事細かに書かれたメモ帳』を手に、彼らの方へと足を運ぶ。

 

 

 

 

「………頑張れよ洞面。お前は俺と違って、あの場所に立てる選手なんだからな。………まぁ、もっとも………」

 

 

 

 

 

 

____________俺だって、まだ諦めない。

 

 

 

 

 

 

 

そう言って男は進んでいく。三年生の夏、ギリギリのところでベンチを掴み取った男は、自分にできることに全力を尽くしながら、虎視眈々と牙を研ぐ。

 

 

 

 

 

例え………その牙を振るう時が来なかったとしても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ!!今まさに後半が始まろうとしております!!前半終了間際、同点に追いつかれた我らが雷門!!ここから巻き返せるのでしょうか!?』

 

 

 

角馬の実況が響き渡る中、帝国ボールで後半がスタート。佐久間が寺門に渡し、バックパスですぐさま鬼道へと送る。

 

ボールを受けた鬼道はすぐに攻め込もうとするが、雷門のフォーメーションを見て僅かに目を細める。

 

 

 

雷門フォーメーション

 

 

ーー豪炎寺ー染岡ーーー

ーマックスー半田ーーー

ーーーー影野ーーーーー

ーーー風丸ー少林ーーー

ー宍戸ー壁山ー栗松ーー

ーーーー円堂ーーーーー

 

 

 

 

 

「……体力の切れた面々を中央付近に固め、ゴール前には比較的体力が残ってパワーのある壁山(3番)を配置……しかし影野(4番)を上げている、か……」

 

 

 

愚策。鬼道の抱いた正直な感想だ。

 

 

恐らくの狙いは、3人でも抑えられなかった佐久間を4人がかりで押さえ込み、寺門はパワーのある壁山が担当。どちらか片方でも封じられれば、デスゾーンを発動させずに済む。残りのシュートはGKの円堂が止められる為、サイドの守備は半ば捨て気味、と言ったところだろう。そうして、攻守どちらも行ける位置に影野を置き、一気に攻め込んで1点もぎ取って勝ちを拾う……そういった戦略であるだろうとアタリをつけた。

 

 

 

 

「………舐めているのか?」

 

「っ!」

「なんだと!?」

 

 

 

豪炎寺と染岡に、すれ違いざまにそういう。この戦略を考えついたのは豪炎寺……もしくは松野のどちらか。確かにとれる手の内ではこれが最善だと判断したのかもしれないが、鬼道としては正直不愉快だ。

 

 

その理由として、1つは幾ら役者が少ないとはいえ自分が指揮する攻撃を初心者で凌げると思っている点。

 

2つ目は寺門と佐久間を防げばデスゾーンをどうにか出来るなどという幻想を抱いている点。そんな事を我ら帝国が思いつかないはずが無いとは思わないのか、ということ。

 

 

そして、何より3つ目。

 

 

デスゾーンをどうにかすれば止められる?サイドの守備を捨てても問題ない?『円堂』ならばどうにかしてくれる?

 

 

 

「………馬鹿にするなよ」

 

 

 

俺たちは誰だ?40年間無敗を続けてきたのは何処だ?誰にも負けぬよう毎日最先端の特訓を重ね研鑽を続けているのは誰だ?

 

 

俺達は、影山総帥から認められた選手達だ。そして、歴代最強とも呼ばれる絶対王者、【帝国学園】の戦士達だ。

 

 

 

 

「たかだかそれだけの事で凌げると思われるとは、馬鹿にされたものだな………なぁ、お前達」

 

 

 

 

瞬間、鬼道の横を通り抜ける風が2つ。サイドのDFとして出場している、恵那と成神だ。事前に指示を出していたサイドハーフの洞面、咲山も素早く動く。

 

 

 

「………行くぞ、デスゾーン______」

 

「っ!やらせない…!!」

 

 

 

鬼道がそう告げようとした瞬間、影野、そして近くにいた半田が動く。それぞれがサイドの洞面と咲山をマークし、飛ばせない。寺門と佐久間は他のメンバーがマークしている為、この2人を封じれば残りはDFとして出ている2人のみ。デスゾーンは不可能であり、ここからの距離ならば例え連携シュートを打っても円堂が止められる。そう判断した2人は、正しかった。

 

 

 

 

______それが本当に『デスゾーン』なら、の話だが。

 

 

 

「……フッ!!」

 

 

 

相手が思惑通りに動いてくれた事にニヤリと笑う鬼道は、高くボールを蹴りあげる。そこに飛び上がるのは、3人ではなく……1人。

 

 

「っ!?やっべ…!!」

 

 

半田が察して目を見開くが遅い。飛び上がった男こと成神は、空中を駆け上がりながらチク…タク…という時計の音を奏でながらボールに追いつき、オーバーヘッドで真下に打ち出した。

 

 

 

 

「【ダイナマイトシュート】っ!!」

 

 

 

単独でも十分威力のある成神のシュート技。しかし、そう簡単に終えるはずもない。即座にそのシュートに向けて恵那が反応、縦回転を加えたカカト落としを叩き込んでさらに加速。

 

 

あわや地面へと激突するのでは、という程の速度とエネルギーを内包したボール。そこに、先程ボールを蹴りあげた鬼道がダッシュで距離を詰める。コースを計算、最も効果的な場所を瞬時に選択し、恵那の打ち下ろしたボールにボレーキックを叩き込む。

 

 

 

「【ツインブースト改】っ!!!」

 

 

 

朱色のエネルギーを纏い、弾丸の如き速度で突き進む。事前に知っていた寺門、佐久間は即座に横へと身体をずらし、コースから外れる。

 

 

 

『うわぁぁぁぁぁっ!??』

 

 

 

……が、反応速度が高くない壁山、そして体力の少ない風丸達は不意をつかれた故に躱すことは不可能。その衝撃波をまともに受けた面々は吹き飛び地面に叩きつけられ、真正面からボールを食らった壁山は大きくのけ反って地面へと倒れ込んだ。

 

 

 

「風丸!みんな!!くっそォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」

 

 

 

倒れ伏す幼なじみと後輩達。そんな彼らの身を案じながら、円堂は全身の力を両拳に込めていく。その炎は円堂の気持ちに応じてか、はたまた今まで共に戦ってきた故か。その炎は今までのものより大きく揺らめき、その力を増していた。

 

 

 

 

「【爆裂パンチ改】ィィィィィィィィィ!!!!!」

 

 

 

一段階進化した爆裂パンチ。円堂の基礎能力と合わせ、十二分に全国で通用する威力を内包している。これがただのダイナマイトシュート+ツインブーストならば、なんの問題もなく弾き飛ばせていただろう。

 

 

 

 

 

「______っ!?どわぁぁぁぁっ!?」

 

 

 

ただの、だった場合は、だ。

 

 

 

拳を弾かれた円堂は足に力を込め、腹部でどうにか受け止めようともがくがどうにもならず。ボールごとゴールへと叩き込まれ、地面に膝をついてしまう。

 

 

 

 

「………今シュートを打った2人………成神は俺や勝と同じ特待生に選ばれた男で、恵那はFWながらどのポジションもこなすオールラウンダー……さらにはこの帝国学園で、俺達より1年長く研鑽を積んできた男だ。DFについているとはいえ、そのシュート力は並のチームのエースストライカーなんぞとは比べ物にならん」

 

 

 

 

ゴーグル越しに円堂を、豪炎寺を……雷門中を睨みつけた鬼道は、背にエースナンバーを背負い、その赤いマントを風に揺らしながら、力強く宣言する。

 

 

 

 

「俺達は一人一人が地獄のような特訓を乗り越え、この場に立っている。そしてその力の全てを発揮出来る戦略、戦術、フォーメーションを作り、頭に叩き込んでいる。そう簡単に防ぐことができると思われるのは心外だな。

 

 

 

………舐めるなよ。貴様らが今相手しているのはただのチームでは無い。絶対王者【帝国学園】だ。肝に銘じておけ………これから見せてやろうじゃないか、『帝国のサッカー』を、たっぷりとな……」

 

 

 

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