イナズマイレブン! 脅威の転生者 ゴジョウ!!   作:ハチミツりんご

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書く時間が取れない。やること多過ぎる。いつもの如く更新速度はガッタガタですが、どうか気長にお待ちいただければ。感想もきっちり返しますので………


第三十条 終結!雷門vs帝国!

「【ジャッジスルー】っ!!」

 

「っ、しまっ……うわぁぁぁっ!?」

 

 

 

佐久間の放った回し蹴りを、ボール越しに受けた松野。咄嗟に踏ん張ろうとしたが体勢が整っておらず、ダメージを軽減することなくモロに直撃。大きく後ろへ吹き飛び、地面へと倒れ込んだ。

 

 

 

「マックス!!」

 

「余所見してる場合かァ!?______っらぁ!!」

 

「っ!うあっ……!?」

 

 

 

すぐ後ろでポジションをとっていた影野が倒れた松野を按じる声を上げる。しかし、松野を吹き飛ばした佐久間から素早いパスを送られた寺門がダイレクトでボールを撃ち放ち、影野へとシュートをかます。それを受けた影野が大きくよろけたのを確認した寺門はさらに距離を詰め、ボール越しに飛び膝蹴り。連撃を受けた影野は倒れ、腹部を抑えてうずくまってしまう。

 

 

 

 

「【百烈ショットV2】ッ!!」

 

「っ!【爆裂パンチ改】ッ!!」

 

 

 

すぐさま寺門が必殺技で雷門ゴールを強襲。しかし、いくら体力が削がれてダメージを負っているとはいえ元々難なく止めていた百烈ショット。進化した円堂の爆裂パンチならば、問題なく弾き飛ばすことが出来た。

 

 

 

「クソっ……!!」

 

「いや、それでいい寺門!!隙があればどんどんシュートしていけ!!」

 

 

 

後半になってからも決められないことに悪態をつく寺門だったが、すぐさま鬼道が言葉をかける。ストライカーとしては決められないのは癪だが、伝えられた作戦的にはこれでいい。そう自分に言い聞かせながら、寺門はその場から離れていった。

 

 

帝国側の作戦。それは、相手側の脅威となり得る選手______円堂達の体力を消耗させる事だった。ジャッジスルーなどで体力を削り取り、GKの円堂には絶え間なくシュートすることで休む暇を与えない。それにより、じわじわと帝国を絶対的優位へと運んでいけば、勝ちは貰ったも同然だ。

 

 

 

「……しかし良いんですか鬼道さん?もっと力押しでも勝てると思いますが…」

 

「いや、これでいい」

 

 

 

そんな中で辺見が鬼道へと疑問を投げかける。当然だ、帝国の恐ろしさを見せつけるのならば圧倒的な力で捩じ伏せるのが一番効果的、かつ効率的。わざわざ円堂達の体力を削ぎに掛からずとも、デスゾーンならば得点出来る為、そう問題はないように思えた。しかし、それを鬼道は首を振って否定する。

 

 

 

「確かにデスゾーンならば得点は可能だ。しかし、力で上から抑えられるほど奴らは甘くは無い。確実に勝つ為にも、奴らの劣る点を利用させてもらう」

 

 

そう宣言した鬼道は、油断無く雷門を見つめる。その姿は圧倒的強豪校故の慢心の混ざったものではなく、ただひたすらに、貪欲に勝利の芽を摘み取ろうとする姿勢。全ての盤上を見通す今世代最強ゲームメイカーは、全身全霊を持って雷門を潰しにかかっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まっずいなぁ………」

 

 

 

そんな中。一人ユニフォームの首元を引っ張って口元の汗を拭いながらそんなことを呟く選手の姿______言うまでもなく、ほかのメンバーとはある意味違う心持ちで試合に望んでいる男、成神である。

 

唯一の一年生特待生であり、かつ五条から『原作』の情報を伝えられている者______【共犯者】として、彼は一抹の不安を感じながら現状のグラウンドを見渡す。

 

 

 

「(今んとこ雷門でまだ動けるのは六人……うち一人はキーパーだし実質五人。対してコッチはまだまだ走れるどころか、ちょうど身体があったまってきて全員がベストに近いコンディション。

技術面に関してはあの豪炎寺サンと帽子かぶった……松野サン?だっけ。その二人がかなりやべーけど抑えれない訳じゃない、コッチにも対抗出来る人は何人もいる)」

 

 

 

試合の動向を見守り、一つ一つ分析していく。身体能力の面でも技術の面でも、帝国学園に負ける要素は万に一つも無い。名門たる木戸川清修で一年生にして十番を背負った天才ストライカー、豪炎寺は流石の実力者だし、単純なパワーなら彼を超えるストライカーである染岡のツートップ。帝国にいても遜色無いボール捌きを見せる松野、攻守バランスの取れた半田、気配を殺して死角からボールを奪ってくる影野の中盤陣。そして全国屈指の点取り屋である寺門を完全に抑え込んでいるキャプテン兼GK、円堂。

 

どれも無名校とは思えない実力を誇っており、完全にここに来る前の帝国側の読みが外れていた。現在のスコアは2-1、前半フルに戦って王者帝国が僅か二得点、更には先制を許している。数名劣るメンバーがいることを考えれば、事実上半分の人数でここまで善戦した雷門には諸手を挙げて賞賛が贈られてもおかしくはない。

 

 

 

「(………だけど)」

 

 

心の中でそう呟き、コートを見る。

 

 

一年生4人と助っ人の風丸は既に体力が尽きており、ほぼ気力で動いている。中盤でなんとか奮闘している半田、松野、影野の3人は、先程からマトモに必殺技を食らっていて満身創痍。今、フィールド上で十全に動けている雷門の選手はGKの円堂、身体の頑丈な染岡、そしてエースたる豪炎寺の3人のみだ。

 

 

 

「______いくら何でも、()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

そう。雷門の大半の選手達にとって、これが初めての試合。人数が足りなかった彼らは練習試合はもちろんのこと、実戦形式のミニゲームすら出来なかった。それ故に、殆どのメンバーが試合に慣れていなかった。

 

 

サッカーにおいて______いや、スポーツにおいて練習と試合は全くの別物だ。当然ながら練習中でも試合のような緊張感を持って取り組め、とは常々言われるであろうし、事実雷門サッカー部もしっかりとした練習を行ってきた。

 

 

しかし、しかしだ。本当に、真実の意味で試合と同じ緊張感を持つことは極々稀である。どれだけ練習を重ねようと、どれだけ技術を身につけようと、どれだけ肉体を鍛えあげようとも。咄嗟の判断力や、瞬時に最善を導き出す能力、仲間の場所をリアルタイムで把握出来る視野______そして何よりも、『試合の流れを読み取る能力』は、実践の中でしか身につけることは出来ない。

 

 

相手が何をしようとしているのか、何処を狙っているのか、どうすれば最小限の被害で食い止められるのか……それを導き出せない雷門メンバーは、コチラの思惑に見事に嵌ったのだ。だからこそ、ジャッジスルーやキラースライドをまともに食らってしまいダメージが重なって動けなくなってしまっている。

 

それを上手く躱せているのは、やはり試合経験が豊富な豪炎寺のみ。円堂と染岡が立っているのは、前者はこちらのシュートを受け止められるGKであるからだし、後者は単純に身体が頑丈だからだ。

 

 

 

ともかく。このままいけば帝国の勝ちは揺るがない。あのキーパー単体ではデスゾーンを止めるのは『現状』不可能。仮にシュートブロックの可能な豪炎寺を守備に回せば止められるかもしれないが、彼らが負けない為には最低でもあと1点必要だ。最も高い得点能力の持ち主をみすみす下げることはしないだろう。

 

 

 

「(まっ、だからこそまずいんだけどね)」

 

 

 

息を吐いて、考える。今このままの状態で進めば、間違いなく帝国が勝つ。()()()()()()()()()()

 

 

共犯者たる五条から伝えられたのは、【雷門中サッカー部の廃部阻止、及び誰一人として再起不能にさせないこと】。それがこれからの流れを決める絶対条件だと伝えられている。

 

 

 

「円堂守……この物語の主役だっけ?確かに主人公っぽい熱血な雰囲気するわぁ~………そりゃ主人公が大会不参加とか、物語としてアウトだよね」

 

 

 

見たところメンバーは控え含めてたったの12人。しかもその控えはあからさまな素人、実質ここに出ているメンバーがそのまま正規メンバーになるのだろう。五条から詳しくは話されていないが、追加メンバーも数人程度という。つまるところ帝国とは比べるべくもない層の薄さ、という事だ。

 

 

だからこそここで一人でも欠けるのは、物語に大きく影響してしまう。それは五条の考え的には避けたいこと……つまり成神的に言えば『負け』の条件。となれば怪我させず、しかし違和感無く雷門に花を持たせなければならない。

 

 

 

 

「(んじゃやっぱり円堂サンの必殺技を目覚めさせるしかない………か)」

 

 

 

五条から伝えられた情報。円堂守、主人公の代名詞にしてこの物語で最も有名な必殺技と呼ばれるもの。『神の手』を名を冠するその技は、現状コチラに破る手立てがないほど強力な技らしい。

 

それを発動させれば流れを一気に雷門に傾けられる。しかしその発動条件が、自分以外のメンバーが倒された怒りの反動によるもの。本来はいないはずの豪炎寺と既に絆を結んでしまっている以上、豪炎寺が立っていてもその技を発動させられるほど怒らせなければならない。

 

 

 

 

「まだだ!!まだいけるっ!!こっちだ、少林!!!」

 

 

 

となれば、と視線を前に向けた成神。その視線の先にいたのは、雷門の十一番を背負ったガタイのいい坊主頭の人物。

 

 

「っ!染岡さん!!」

 

「っしゃあ!!どけどけぇ!!」

 

 

小柄なポニーテールの選手からパスを受けとり、荒々しく敵陣に突進していく。身体能力に任せたプレーのように見えるが、帝国側のポジショニングと豪炎寺の位置を逐一確認して動いている。中々に上手いドリブルだった。

 

 

 

 

「くそっ!めんどくせぇピンク坊主が!!【キラースライド】ッ!!」

 

「っぐぅ………!!わ、たさねぇ!!!」

 

 

辺見がすぐさまキラースライドで奪いにかかるが、染岡は自身の足を盾に使い、キラースライドをブロック。そのまま真正面から、強引に突破する。

 

 

 

「【アースクェイク改】!!」

「【サイクロン改】ッ!」

 

「ぐわぁぁぁぁっ!?」

 

 

 

しかし流石に単独で帝国守備陣をぶち抜けるほどのドリブル力は染岡には無い。すぐさま大野のアースクェイクで体勢を崩され、そこに狙いすました万丈のサイクロン。一気に上空まで吹き飛ばされて地面に叩きつけられる染岡だったが、すぐさま起き上がって自陣へと走る。

 

 

 

「大丈夫か、染岡!!」

 

「大丈夫だ、心配すんな!!お前は絶対に隙を見逃すんじゃねぇぞ、豪炎寺!!おらっ、お前ら!!豪炎寺や円堂にばっか負担掛けてんじゃねぇ!!今こそ特訓の成果を見せる時だろ!!!」

 

「…!そ、そうだ……こういう時のために、一年間やってきたんだ…!!」

 

「お、オレ……まだ、大丈夫っス!!」

 

「俺も、負けないでやんす!!」

 

 

 

豪炎寺から声が掛かるが、不敵な笑みを浮かべて大丈夫だと返す。倒れているチームメイトたちに声を掛ければ、それぞれがぎこちない動きながらも闘志に満ち溢れた目付きで立ち上がり、しっかりと大地を踏みしめる。

 

 

 

______染岡竜吾。雷門の点取り屋、後の物語でも重要な役割を担う選手。一年時から円堂、半田と共にサッカー部に入っていて、信頼も厚い。オマケに中学二年生とは思えない程恵まれた身体付き。大野には劣るだろうが、ラフプレーにも揺るがない屈強な体幹と精神力の持ち主。

 

 

 

 

 

 

「____________みぃつけた」

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マックス、こっちだ!」

 

「頼むよ、半田っ!!」

 

 

 

松野からサイドの半田へ素早くパスが送られる。全身に痛みが走りながらも、なんとか堪えてドリブルで駆ける。咲山が止めに来るが、すぐさま松野とのワンツーを駆使して必殺技を出さずに突破。今はドリブル技に使う体力すら惜しいのだ。

 

 

「【キラースライド】ッ!!」

 

「っ、しまっ、ガァァっ!?」

 

 

 

が、深くまで切り込み豪炎寺へとクロスをあげようとした隙を見計らって、成神が素早くブロック。豪炎寺達の方に気を取られている上に体力を消耗している半田に躱すことは出来ず、ボールを奪われてしまった。

 

 

そのままドリブルで上がっていく成神。当然、その動きを止めようとして近くにいた染岡がカバーに入った。

 

 

 

「そう何度もやらせるかっ!!」

 

 

気迫を込めて吠える染岡。今の雷門において、攻撃の要である豪炎寺は温存するべきだ。つまり自分が一番走り回って全員のサポートに回るべきということを、彼は良く理解していた。

 

 

 

 

______そしてここに来ることが、成神の狙いでもあったのだが。

 

 

 

ポンッ、と成神は軽くボールを蹴って染岡へと渡す。

 

 

 

「(っ、ジャッジスルーか!!)」

 

 

 

この試合で何度も見た反則スレスレのドリブル技。腹部をボール越しに一発蹴るこの技は、タイミングを見計らって踏ん張れば最小限のダメージに抑えられる。その為、染岡は来るであろう衝撃に備えて全身に力を込めた。

 

 

 

 

「………フッ!!!」

 

 

 

しかし。染岡の思考とは異なり、成神は回し蹴りをせず。代わりに、一歩深くしゃがんでから、突き上げるようにして膝蹴りを染岡にお見舞いした。

 

 

 

「がっ……!?」

 

 

 

予想外の行動に、一瞬思考が停止してしまう。そしてその一瞬が、染岡の身体を僅かに宙に浮かせてしまった。

 

 

「ソラソラソラソラァ!!」

 

 

くの字に曲がった染岡に向かって、何度も何度も膝蹴りを加えていく。一発の威力はジャッジスルーにこそ劣るものの、防ぐ手立てが無く連撃を加えていくことで染岡の意識は次第に刈り取られていった。

 

 

 

 

「【マッド______ジャグラー】ッ!!」

 

 

 

最後にダメ押しの強烈なキックを加え、染岡を大きく吹き飛ばす。弧を描きながら飛んだ染岡は地面に叩きつけられると、僅かな呻き声を上げながら苦しそうに息を漏らす。

 

 

 

「っ!!染岡っ!!」

「染岡さん!!!」

「染岡ァァァァァァァ!!!」

 

 

 

「お前ぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

 

豪炎寺が、宍戸が、円堂が叫ぶ中、真っ先に動いたのは先程ボールを奪われた半田。力を振り絞り、一緒にやってきた仲間にあのような仕打ちをした成神へと突貫する。

 

 

 

「………邪魔っ!!」

 

「ぐぁ……っ!?」

 

「半田ッ!!」

 

 

 

しかしダメージを受けている半田と完全に近いコンディションの成神とでは比べるべくもなく。必殺技すら使うことなく、ボールをぶつけられて彼も倒れ込んでしまう。

 

 

 

 

「………こんくらいかな……鬼道さんっ!!」

 

 

 

ポツリと呟いた成神の言葉は誰の耳にも届かず、代わりに鬼道へと強烈なパスを送った。染岡と半田に気を取られていた松野、影野の二人は反応する事が出来ずにあっさりと鬼道にパスが通る。

 

 

 

 

「______これで終わりだ。デスゾーン、開始」

 

 

 

染岡達の負傷により、浮き足立つ雷門の隙を見逃すほど鬼道有人は甘くない。すぐさま上空へとボールを蹴り上げ、寺門、佐久間、洞面の3名が空中で三角形に並び回転する。深い闇が一点に集中され、満身創痍の雷門守備陣は動くことするままならなかった。

 

 

 

「マックス、半田、上がるぞ!!!」

 

 

 

 

しかしそんな中、1人だけ叫ぶ男がいた。雷門の主軸であり、エースストライカー。ただ一人、帝国の猛攻を凌ぎ続けていた豪炎寺だ。

 

 

 

『こ、これはどういう事だぁ!?豪炎寺、デスゾーンには目もくれずに帝国ゴールへ一直線!!そして松野、半田もそれに続く~!!』

 

 

 

豪炎寺、松野の二人に、先程吹き飛ばされながらも必殺技未使用故に立ち上がれた半田。染岡を除いた攻撃陣が、一斉に走り出した。見ていた観客達も、帝国メンバーの大部分も、円堂を見捨てたのかと邪推した。

 

 

 

 

「違う……アイツらは……豪炎寺達は信じてくれたんだ。俺がこのデスゾーンを止めるって……絶対にパスを送るって……!!」

 

 

 

「円堂っ!!」

「円堂くんっ!!」

『キャプテン!!!』

 

 

「止めろ、円堂ォォォォォ!!!!」

 

 

 

風丸が、木野が、染岡が、後輩達が叫んでいる。止めてくれと。雷門の意地を見せてくれと。それに答えないほど、円堂守という男は………主人公というのは、薄情では無い。

 

 

 

「止める……絶対にっ!!!」

 

 

 

 

円堂の右手に、光り輝くエネルギーが集まっていく。爆裂パンチとは全く異なるその様子に、鬼道が思わずぴくりと眉を動かした。

 

 

 

 

『【デスゾーン】ッ!!』

 

 

 

打ち出された、2度目のデスゾーン。帝国学園が誇る、最強の連携シュート。シュートブロック込みならともかく、単独で止めた選手なんて歴史上に存在しえないハズの、必殺技。

 

 

 

「だぁぁあァァァァァァァァァァ!!!」

 

 

 

光を帯びた黄金色のエネルギーを右手に集結させた円堂は、それらを巨大な手の形にかたどった。円堂の頭上に現れたソレは、彼の意思と共に、止めるという明確な決意を持って繰り出された。

 

 

 

 

 

 

 

「【ゴッドハンド】ッ!!!!」

 

 

 

闇色の球体を、黄金色の巨大な手が受け止める。強大なエネルギーとエネルギーとがぶつかり合い、辺りに旋風を巻き起こす。そしてその風と衝撃波が収まり、ゴッドハンドが消えた時……ボールは、ガッチリと円堂の手に収められていた。

 

 

 

 

 

「……っ!!!馬鹿なっ!?」

 

「デスゾーンが……単独で!?」

 

 

 

佐久間、寺門のふたりが信じられないとでも言うように叫ぶ。いや、寺門達だけではない。帝国メンバー全員が、目の前の光景を受け入れることが出来なかった。何時いかなる時も、帝国を勝利に導いてきた文字通りの必殺シュート。それをたった一人の無名のキーパーが、打ち破った瞬間だった。

 

 

 

 

「行っけぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

 

 

そしてその一瞬に、円堂は全力を持ってボールを投擲。一直線に飛んでいったボールは、既に敵陣深くまで切り込んでいた松野の足元に収まった。

 

 

 

「っ!!カウンターなんかやらせるかよっ!!」

 

 

 

しかし真っ先に我に返った辺見が松野へとプレスをかける。松野のドリブル技はイリュージョンボール、最初は不意を突かれたがこれは帝国の…ひいては鬼道の技だ。何度も見てきた、対策も分かっている。だからこそ真っ先に止められると思った。

 

 

 

「【ジグザグスパーク】!!!」

 

「なにっ!?がぁぁっ!!!」

 

「誰も、ドリブル技一個なんて言ってないよね!!」

 

 

 

それを理解していたからこそ、松野はあえて一番使い慣れた技を出さず、半田から教わったジグザグスパークで意表を突いた。予想外の行動に辺見は対応出来ず感電、そのまま突破されてしまう。

 

 

 

「豪炎寺へは通さねぇ!!」

 

「ここで終わらせてやるっ!!」

 

 

 

しかしそこを突破しても帝国にはまだ大野、万丈の2人がいる。源田を破る為にも、この二人を攻略しなければならない。だからこそ、松野はもう一人に呼びかけた。

 

 

 

 

「半田ッ!!」

 

「はいよ!!!」

 

 

 

松野はボールを上に蹴りあげて跳躍、そして少し遅れて半田も飛び上がった。

 

 

 

「フッ!!!」

「そらっ!!」

 

 

 

空中にあがったボールに松野が右斜め下から左上に蹴り上げ、変わりざまに半田が右斜め上から左下に向かってかかと落とし。すると、空中でボールはバツ印のエネルギーを纏って静止。

 

地面に降りた二人は、間髪入れずにジャンプ。松野が上から、半田は下からオーバーヘッドでボールを蹴り抜いた。

 

 

 

 

『【アスタリスクドライブ】ッ!!』

 

 

 

二人が蹴り抜いたことにより、上下に伸びるようにエネルギーが加わったボールは名前の通りアスタリスクの形となりゴールへと向かっていった。松野のシュート技、クロスドライブを進化させた隠し玉だ。

 

 

 

「んなもん踏み砕いてやるっ!!【サイクロンクェイク】ゥ!!!」

 

 

 

 

 

クロスドライブの進化系、通して豪炎寺と連携されては源田も危ういかもしれない。真っ先に万丈に呼びかけ、大野が竜巻に乗って大きく飛び上がり、ボールを真上から踏み付ける。

 

 

 

「ぐ…ぐぐっ………!!」

 

 

 

しかし衝撃波を纏ったアスタリスクドライブは、ドラゴンクラッシュなどの技と違い物理的な接触に強い。これがエネルギーをぶつけるスピニングカットなどならばまた違っただろうが、サイクロンクェイクは直接接触する技、完全に沈黙させるのに時間がかかっていた。

 

 

 

「(その一瞬だ……その一瞬さえ作れればいい)」

 

 

 

しかし時間をかければこのまま止められるであろうこの状況。これこそが、豪炎寺の真の狙いだった。

 

 

マックスと半田の新技で意表を突くことで考える時間を与えず、どんな状況でも効果があるであろうサイクロンクェイクを無意識に選択させる。そして上から押し潰そうとし、大野とボールのあいだに衝撃波が挟まった状態で拮抗する。

 

 

 

「______【ドラゴンクラッシュ……………」

 

 

 

 

 

それが出来れば、それさえ作れば。

 

 

 

 

 

「…………改】ッ!!!」

 

 

 

 

 

この男が反応しないはずはない。

 

 

 

大野の目の前に現れた男。成神のマッドジャグラーをまともに食らって地面に倒れ伏していたハズの、染岡。アレでもうこの選手は動けないとタカをくくっていた。

 

そんなはずはないだろう。豪炎寺修也という目標を目指し愚直に前に進み続けるこの男は、それくらいでシュートチャンスを見逃すほどやわなせいしんは、していないのだから。

 

 

 

「んなっ………うおおおおっ!?」

 

 

 

衝撃波と拮抗していたところに加えられたドラゴンクラッシュにより、大野は大きく弾かれる。大野に削られたとはいえ、アスタリスクドライブとドラゴンクラッシュ。2つのシュートを合わせたそれのパワーは、今までで最も強力なもの。それが天を駆け上がり、空中で信じて待っていた豪炎寺へと送られる。

 

 

 

 

 

「【ファイア……トルネード】ッ!!!」

 

 

 

信じた友のため、今日一番の炎を利き足に纏って。回転によるエネルギー全てをこの一点に集約して、最大火力でボールを蹴り付けた。

 

 

 

 

「ここまで来て、やらせるかっ!!【フルパワーシールド】ォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!」

 

 

 

それに応え、源田も己の最強の技をもって迎え撃つ。まだ手に掛る負担は大き過ぎる。完全には完成していないが、可能性があるのはこの技しかない。両の手にエネルギーを充填し、右の拳に連結。単純計算で2倍……いや、エネルギー同士の共鳴を考えたらそれ以上の壁となって、雷門の攻撃を阻む。

 

 

 

 

「オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!」

 

 

 

通さない。絶対王者の名にかけて、ここを通す訳には行かない。その気迫を込めて源田が吠える。

 

 

獄炎を纏ったシュートは、しばらくの間分厚い衝撃波の壁と激突。しかし、徐々に、徐々に押し込んでいき______

 

 

 

 

「………そん、な………馬鹿な………!!」

 

 

 

 

 

______世代最強キーパーの、最高の技を、打ち砕いた。

 

 

 

 

 

『ゴォォォォォルッ!!なんということでしょう、雷門!!この場面でデスゾーンを止め、源田幸次郎の新技を打ち破りっ!!同点に追いついたァァァァァァ!!!!』

 

 

 

 

帝国 2-2 雷門

 

 

 

 

 

 

 

 

『よっしゃぁぁァァァァァァァァァァァァ!!!!』

 

 

 

雷門全員が拳を突き上げて喜びを声を上げる。眺めていた観客達も、まさか絶対王者の最強技を防ぎ、同点に追いついて見せた同級生や後輩に興奮をあらわにしていた。

 

 

「ったぁ!!!上手くいったな、マックス!!」

 

「とーぜん!やるからには成功させなきゃね!染岡、豪炎寺、ナイスシュート!!」

 

「ったりめぇだろ!!豪炎寺、お前俺が来んの分かってただろ!」

 

「あのチャンスを逃すお前じゃないだろう?」

 

「……へへっ!お前に追いつかなきゃだからな!!」

 

 

 

シュートを決めた4人がそれぞれを称え合う。その後ろでは影野を筆頭に風丸や一年生たちが傷だらけで体力も残ってないだろうに、立ち上がって喜びを表していた。

 

 

 

「みんな……みんなすっげぇよ!!!よっしゃぁぁ!!この調子で、逆転してやろうぜ!!」

 

 

 

円堂の声に全員が呼応し、勢いづく。逆に帝国は、未だに震え続ける拳を見つめている源田を筆頭に、フィールドのメンバー、ベンチメンバー含めて勢いを失っていた。特に大野、万丈のセンターバックコンビは、この為に編み出した技を破られて2度も得点へと結びつけてしまったからか、地面に膝をついて拳を叩きつけていた。

 

 

 

 

 

「……デスゾーンを防ぎ、源田の新技を破ってみせるか………面白いッ!!」

 

 

 

しかしただ一人、鬼道のみがゴーグルに隠れた眼光をギラつかせて笑っていた。興奮冷めやらぬ、と言う言葉がピッタリであり、普段の冷静沈着な彼からは想像もつかないような形相で試合の再開を待ちわびていた。

 

 

「そ…それでは!帝国ボールで、試合を再開します!!」

 

 

 

そんな鬼道の様子を見てか、はたまた帝国が押されているのが信じられないのか。しどろもどろになりながらも審判が試合を再開しようと笛を手に取り………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「______その必要はありません」

 

 

 

 

不意に響いた声に、手が止まった。

 

 

雷門が、観客達が、審判が、そして帝国メンバーが声をした方をゆっくりと見やる。

 

 

「………お前は……!!」

 

「試合途中に、申し訳ありません。ですが、総帥からの言伝を預かって参りましたのでねぇ………ククク」

 

 

 

豪炎寺が目を見開く。そこに立っていたのは、この場の誰もが知っている人物。帝国が誇る最強のDF、鬼道有人と並び立つ唯一の選手。

 

 

 

 

「______これ以上は必要無い、直ちに帰還せよとのことです。雷門のみなさん、大変申し訳ないのですが、我々はここで失礼します。試合はそちらの勝ち、ということで構いません」

 

 

 

 

肩を竦め、慇懃無礼に笑うディフェンスリーダー。帝国学園特待生……【ピッチの絶対帝王】の異名を持つ男、『五条勝』が、遂に姿を現した。





オリジナル技解説

【アスタリスクドライブ】

カテゴリ:シュート・SC

属性:風

習得者:松野空介

特徴:2人技
→習得者がクロスドライブを使用出来る

消費TP:47(無印3基準)

説明文

クロスドライブの正統進化!
相手ゴールを切り裂き決めろ!


解説

マックスと半田の連携シュート。マックスが覚えたクロスドライブに半田がもう一手間加え、2人でシュートすることで威力を向上させた。衝撃波が三本重なる形なので、本編内でもやってるようにサイクロンクェイクなどの直接接触するブロックに強い。逆にエネルギーをぶつける系にはそこまで効力を発揮出来ないので、見極めが大切。中盤からシュートして染岡、豪炎寺がチェインしたり、これを囮にしてフェイントからのドリブル突破など選択肢を増やす意味合いが強い。

雷門もパワーアップしているというのを分かりやすくする為にぶっ込んだ必殺技。というか作者がマックスと半田好きだったりする。というか雷門勢は割とオリジナル技が多い。帝国組のように一人に複数、という訳では無いが各々に用意はしている。ちゃんと宍戸や少林にもあるから2人のファンは安心してね
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