イナズマイレブン! 脅威の転生者 ゴジョウ!!   作:ハチミツりんご

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新年、明けましておめでとうございます。本年が皆様にとって幸多き一年であることを切に願っております。


さて。2020年ですね。東京オリンピックの年ですね。5の倍数ですね。つまりオリンピックは五条さんと言っても過言ではないですね、みんなで選手の皆さんを応援しましょう。


まぁ、長々と前書きを書いてもあれなので、最後に一つだけ。

さぁさぁ皆さんご一緒に!!

新年最初の、一日一条、五日で五条!!


第三十一条 転機

 

 

 

「______勝、どういうことだ」

 

「どうもこうも……総帥はこれ以上のデータ収集は不要と判断されたのです。試合は帝国側の放棄とみなして雷門の勝利、我々は引き上げる………何か問題でも?」

 

 

鬼道からの言葉に肩を竦めて答える五条。試合はここから、ようやく面白くなってきた所に水を差すようにやってきた彼の登場に、試合を観戦していた雷門の観客たちがザワザワと騒ぎ始める。

 

 

「総帥が……そうか、分かった。お前達、引き上げるぞ」

 

『ハッ!!』

 

 

新技を有効的に使いつつ帝国の守備陣を切り裂いた雷門の攻撃勢、そして円堂のゴッドハンド。1人のサッカープレイヤーとして最後まで試合をしたい欲がない訳では無いが、帝国において影山の指令を超えるものは存在しない。私情を捨て、チームメイトに撤退の旨を伝えると、帝国の選手達は胸に拳を当てて了承の意を示す。

 

 

 

 

 

「ちょっと待て!!てめぇら逃げる気か!?」

 

 

しかし帝国側は納得いったとしても、雷門側はそうはいかない。たった今キャプテンたる円堂がデスゾーンを単独で止めてみせ、攻撃陣の見事な連携で大野と万丈の【サイクロンクェイク】、そして源田の【フルパワーシールド】を破ってみせたのだ。流れは間違いなく雷門にあり、このままいけば帝国に勝てる、と全員が闘志を滾らせていた。そんな最中で棄権されても納得はいかないだろう。

 

 

そんな雷門の気持ちを代弁するかのように染岡が食ってかかるが、五条は何食わぬ顔で染岡の方を見やる。

 

 

 

「おや………これはあなたがたの為でもあるんですがねぇ」

 

「なんだ______っ!?」

 

 

五条の言葉の意図が分からず染岡が詰め寄ろうとした時。突然染岡の身体が糸が切れたかのように揺らぎ、地面に膝を着く。額には大粒の汗が滲み出ており、呼吸は一気に荒くなった。

 

 

 

「染岡ッ!?」

 

「お前、染岡になにを______っ!?」

 

「か、身体……が……っ!!」

 

 

 

豪炎寺が驚いて染岡に駆け寄る。半田が怒りをあらわにして歩み出そうとするが、彼も同様に膝をつく。よく見れば彼らの背後にいる松野や影野も同様に荒い呼吸をしており、一年生四人と助っ人の風丸に至っては倒れ込んでしまっている。

 

 

 

「て、てめ……俺たちに、なにしやがった……!!」

 

「なんでそうなるんですか、人聞きの悪い。単純にスタミナ切れですよ………先程までは試合の高揚感で誤魔化せていただけ、それが一気に露出したに過ぎません」

 

 

染岡からの言葉に呆れたように五条が答える。そう、別段特別なことを帝国がやったのではない。純粋に、雷門のメンバーの疲れが表に出ただけなのだ。

 

 

 

「君達は確かに強かった。しかし、マトモな試合経験を持つのは豪炎寺のみ………ほかは今回が初試合だ。さらに相手は我々王者帝国、負ければ廃部という極限の状況。頭では試合を楽しんでいても、必ずどこかに緊張が残ります。

 

その状況であれだけダメージを負い、ギリギリの勝負を繰り広げれば限界を超えるのは自明の理。意識が勝つ事、その一点に向いているうちは良いとしても、試合が中断されればその疲れは急速に身体を蝕みます」

 

 

雷門のメンバー達の状況について律儀に解説を入れた五条は、カチャリ、と自身の眼鏡を左手で軽く押し上げる。

 

 

 

 

「______その状況で、我々の相手になるとでも?」

 

「っ!てめぇ……!!」

 

「まぁ、そういう事です。ここは大人しく身を引いた方が利口ですよ?それでは雷門の皆さん、失礼致します。次は私も、あなたがたと試合出来ることを願っていますよ………ククッ」

 

 

 

最後にそう言い残すと、五条はくるりと踵を返し、ヒラヒラと軽く手を振って歩いていく。帝国のメンバーは殆どが装甲バスへと戻っており、残っているのは鬼道と数名のみだ。そのままゆっくりと去っていく五条だったが、不意に背後から声が掛かる。

 

 

 

「五条」

 

 

静かに、しかし力強く睨みつける眼光。かつての木戸川清修の10番にして五条の友人。現雷門のエースストライカー、豪炎寺だ。

 

 

 

「………豪炎寺、お久しぶりですねぇ。夕香ちゃんはお元気で?」

 

「あぁ、久しぶりだな。まだ車椅子から降りられないが、いつも通り賑やかなままさ」

 

 

足を止めて豪炎寺に挨拶を返す。会話だけを聞けば友人同士の何気ない会話だが、先程の試合があるからか、それともこの2人だからか。何となく介入し難い、独特の緊張感が漂っていた。

 

 

 

「______五条。『アレ』はお前の指示か?」

 

「……はて、何のことでしょうか?」

 

 

豪炎寺が言う『アレ』、というのに心当たりが無いのか、五条は首を傾げる。その反応を見て、豪炎寺はしばらく彼をじっと見ていたが、「そうか」と視線を下げた。

 

 

 

 

「すまない、邪魔したな」

 

「いえいえ。…………豪炎寺、一つだけ」

 

「なんだ?」

 

 

「………音無さんに伝えて下さい。心配しないで欲しい。あいつは変わっていない、と」

 

 

 

五条の口から出てきた人物に少し目を丸くしながらも、豪炎寺は彼の気持ちを汲み取ったのか薄く笑みを浮かべる。

 

 

「分かった、伝えよう」

 

「ありがとうございます。それでは、また」

 

「あぁ、またな」

 

 

 

その言葉を最後に、今度こそ五条は雷門から去っていった。装甲バスの傍まで来ると五条を出迎えるように三軍メンバーが敬礼しており、地面に再度赤い絨毯がひかれようしていた。五条はそれを手で制し装甲バスに乗り込むと、すぐそばに鬼道が壁によりかかって待っていた。

 

 

 

「おや有人、どうしました?」

 

「いや………少し、聞きたいことがあってな」

 

 

 

既に装甲バスに乗り込んでいったのを見ていたので、影山に呼ばれているものだと思っていた五条はすぐ入口で待っていた鬼道に驚く。壁にもたれ掛かるのを辞め、五条の横に並び立った鬼道は少し俯きながら五条へと言葉を投げる。

 

 

 

「…………総帥は、ずっと試合を見ておられたのだろうか」

 

「えぇ、何故か私も呼ばれましたがね。随分熱心に見ておられましたよ」

 

「そうか、やはり…………なぁ、勝」

 

「なんでしょう」

 

 

 

どこか覇気のない親友の様子に疑念を抱く五条。鬼道はゴーグルを外し、それをじっと見つめながら話を続けた。

 

 

 

「……俺は、正しいのだろうか」

 

「……どうしました、いきなり」

 

 

 

久しぶりに人前でその瞳を見せた鬼道。その切れ長な赤い目を揺らがせながら、悲痛そうな面持ちで手に持つゴーグルを見る。影山が、鬼道の成長の為にと特注で用意してくれた唯一無二の逸品。影山と鬼道の、絆の証とも言うべき品だった。

 

 

 

「…………俺は総帥からサッカーを教わった。常に相手の行動を予測し、敵の行動を潰し、こちらの思うがままに試合を運ぶ。王者ならば堂々たる貫禄で臨まねばならない。負けなんぞ以ての外、圧勝以外は許されないと」

 

「…………」

 

「だが俺は………雷門との試合で先制点を許し、デスゾーンを破られ、挙句に同点にまで追いつかれた。恥ずべきことだ、無名の弱者を蹂躙出来ず無様な姿を晒したのだから。総帥の築き上げてきた帝国40年無敗の歴史に、泥を塗ったのだから」

 

 

 

鬼道は己の心境を露呈する。帝国学園キャプテンとして、世代最強のゲームメイカーとして。リトルエンペラーズで小鳥遊達と共にいた五条とは違い、彼は表舞台でずっとトップを走り続けてきた。それを成すことが出来たのも、また春奈と一緒に暮らしたいという願い……そして影山の教えのお陰だ。

 

 

だが、と鬼道はそこで言葉を切った。言っていいのか、少し悩んだ様子だったが意を決して口に出した。

 

 

 

「______雷門との試合が、酷く楽しかった。ひとつのミスで負けてしまうかもしれない緊張感が、仲間の力を最大限に引き出す為に即興で策を練るのが、どうしようもなく楽しかったんだ」

 

 

 

 

今まで帝国にここまで食い下がってきたチームはいなかった。全国にも敵はおらず、無失点なんて当たり前。試合に出れば自分はハットトリックを達成し、その試合の総得点は2桁以上。王者帝国の絶対的優位に変わりなく、特に鬼道の代は歴代最強とも呼べる布陣。負ける方が難しかった。

 

当然ながら、この東京地区で帝国に勝とうなんて馬鹿げた妄言を吐くのは極々僅か。100は軽く超えるであろう東京地区の中学校でも、フットボールフロンティアに参加を表明するのは昨年全国で木戸川清修と戦った実力派の『野生中』や地区の古豪『尾刈斗中』、帝国と裏で繋がっている『御影専農中』など少数のみ。

 

 

 

それがどうだ。雷門中の名は知っていた。同地区内でもマンモス校として有名で、陸上などでそれなりの結果を残した私立校。ただ、それだけの学校のはず。

 

そんな雷門に、あろうことか敗北しかけた。それなのに鬼道の胸は酷く猛り、あの極限を味わいたいと躍動する。影山の考えとは全くの反対、あってはならない思考回路。それを、鬼道はその身で感じてしまった。

 

 

 

「それに………春奈が、いたんだ」

 

「!」

 

「アイツが雷門にいるとは思わなかった。しかも、ベンチに座っているなんて…………春奈が見ている、と思った時。昔を思い出したんだ。勝や春奈、施設のみんなと、ただ単純にサッカーを楽しんでいた時のことを………。

 

それに対して、今の俺は……相手選手を、ラフプレーで潰すように仲間に指示を出していた。それが当然だと、最も効率がいいと、今の今まで信じていたが………こうしてお前に零すと、それが本当に正しいのか分からなくなったよ。俺は、総帥を………大恩あるあの人を、裏切っているんだろうか」

 

 

 

強くゴーグルを握った拳に力を込める。今まで信じてきたものが、この短時間で信じられなくなってしまった。恩義は感じている。しかし、影山が絶対的に正しいのか、と問われれば頷くことが出来ない。今までの鬼道なら、迷わず頷けていたというのに、だ。

 

 

そんな親友の心の声を伝えられた五条は、腕を組み、少し考えてから呟いた。

 

 

 

 

 

「………私からはなんとも言えません。それは貴方自身の思いであり、課題です。私から何か言われたところで本当の解決には至らないかと」

 

「………そうか」

 

「ただ、一つだけ」

 

「?」

 

 

 

五条はしっかりと、悩み揺らいでいた鬼道の目をじっと見つめながら、確信を持って彼に自分の思いを投げる。

 

 

 

「______貴方がどの道を選ぼうと、私達帝国学園サッカー部はついて行きますよ。なので存分に悩んで下さいね………鬼道キャプテン?」

 

「______!………フッ、そうか………そうだな。お前達が一緒なら、こんなに心強いことは無い。行こう勝、ミーティングだ。コート外から見た俺たちや雷門の動きについて、みんなの前で教えてくれ」

 

「お安い御用で…………クククッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▼

 

 

 

 

 

『そういえばお前は何処で試合を観戦していたんだ?』

 

『あぁ、実はバスの屋根が開いてそこで総帥と二人で______』

 

 

 

 

目の前のディスプレイに映し出された二人の少年の会話を聞き流しながら、ゆっくりと映像を切る。自身の最高傑作である鬼道にも、学園内で右腕として動いている安西にも伝えていない隠しカメラ。そこから拾った映像と音声を確認して、彼は背もたれに自分を預けた。

 

 

 

 

「やはり五条勝の存在は毒となった、か………」

 

 

 

今までなんの迷いも無く自分の指示を完璧にこなして見せた鬼道有斗という稀代の天才児。間違いなく自分の手がけた素材の中でも群を抜いた才能を持つエリート中のエリート。そこに親友である五条勝を加える事で対抗心による爆発的な成長を促したが、それ以外の面でも影響が出てしまった。

 

 

影山はそんな教え子のことをうっすらと脳裏に浮かべながら、目の前の端末を操作する。

 

 

 

『______ハッ。お呼びでしょうか』

 

 

ワンコールもせぬうちに通話が繋がり、とある秘薬の研究を進めさせている配下の研究者達、そのリーダーを担う男の緊張混じりの声が鼓膜を揺らす。

 

 

 

「私だ。研究は進んでいるか?」

 

『ハイ、もうまもなく完成致します。終わり次第ご報告、そして伝えられていた【濃縮】の研究を急ピッチで進めていきたいと……』

 

「ならば良い。どうやら猶予はあまり無いようだ、急げ」

 

 

 

自身の雇い主である影山からの叱責にも似た言葉に、言葉を硬くしながらも了承の意を示す。ここでもしヘマをやらかせば自分はどうなるか分からない。国から認可されていない薬物などを使い研究している自分のチームが警察に叩き出されれば御の字。下手をすれば存在ごといなかったことに………ともなりかねない。

 

 

 

『し、しかし……この少年はとんでもないデータですね。ありとあらゆる能力値が、歴代帝国のディフェンスリーダーを上回る………いや、比べるのも烏滸がましい程の高さだ』

 

 

 

そんな中、研究リーダーである男は手元にある資料を眺めながら素直な感想を影山へと伝える。影山から直接送られてきた、一人の選手の身体能力データ。一般の選手は勿論、帝国学園でも類を見ない程の逸脱っぷり。影山の教えを受けていた鬼道ではなく、監視対象である少年が、だ。

 

 

 

「無駄口を叩くな。貴様は研究さえ進めていればよい」

 

『は、はっ!失礼致しました!そ、それでは、私はこれで………』

 

 

 

プツリ、と通信が途切れる。影山はそのまま端末を操作し、1つのファイルを開きその中に羅列された文字を眺める。

 

 

 

 

 

「______万物は薬にも毒にもなりうる。使い方次第で益をもたらす事もあれば、害を招く事もある………それを理解していたつもりだったが、甘かった様だな」

 

 

自嘲するかのように呟いた影山。しかし、次第に影を帯びた笑みを浮かべて背にもたれる。

 

 

 

 

 

「だが、これが完成すれば………恐れるものは、文字通り消え去ることとなる」

 

 

 

 

そう言って、彼は見やる。端末に表示された文字列を______

 

 

 

 

 

 

「もし、お前達が私に逆らうのなら………未来は、無い」

 

 

 

 

______【プロジェクトZ・NEO】と書かれた、ソレを。

 

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