イナズマイレブン! 脅威の転生者 ゴジョウ!!   作:ハチミツりんご

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今回長くなったので分割。こちらは同時投稿のうちの前半部分です。第三十四条を読む前にこちらをお読み下さい。


第三十三条 帝国にて

「______シッ!!」

 

 

足元に置かれたボールを、助走もなしに蹴りつける。ただ蹴るのでは無い。身体に捻りを加え、つま先から手先に至るまで全ての部位の力を集結させる。身体中のありとあらゆるバネを総動員し、鞭のようにしならせた右足が蹴り慣れたボールを打ち付けた。

 

強力な衝撃を受けたソレは、彼の思い描いていた通りのコースを走り、ネットを突き破らん勢いを持ってゴールに叩きつけられる。もう何本打ったかも数えていないが、一本目から変わらぬ威力だ。下手なキーパー技ならばゴールキーパー諸共吹き飛ばせる自信はある、そんなシュート。

 

 

 

「………これじゃ、ダメだっ!!」

 

 

 

あぁダメだ、これではダメだ。

 

 

自分の思い描いていた通りではダメなのだ、想像すら超えるものでなければ。

 

突き破らん勢いではダメなのだ、実際に突き破る程でなければ。

 

変わらぬ威力ではダメなのだ、打つ度に成長していくほどでなければ。

 

凡百のキーパーを打ち破る程度ではダメなのだ。どんなキーパーだろうと、それこそ源田やあのバンダナ男であろうと打ち破る程でなければ。

 

 

満足してはいけない。満足出来ない。これでは自分は、彼らに並ぶ資格はない。一人そう思いながら、彼は再びボールを蹴る______。

 

 

 

 

 

 

☆☆★

 

 

 

 

 

「……もう1時間近くやってるよ、寺門先輩」

 

 

 

物陰からぽつりと声が毀れる。1つ上の学年の先輩が行う、鬼気迫るような練習風景を覗き見ながら呟かれたその言葉。それに同意する様に、うんうんと頷く人物達の姿があった。

 

 

「まぁだ朝の6時じゃん………しかも今日って、珍しく学校も部活休みだし」

 

「なーんか音がするから来てみれば……あんな必死な寺門先輩初めて見たわぁ」

 

 

 

学業においてもスポーツにおいても、日々学ぶ事が多量にある帝国学園。自由時間もほとんど無く、気を抜けばすぐにでも追い抜かれるほどの過酷な環境下。そんな気の抜けないこの学校には珍しく、今日は完全なるフリーの日だ。

 

明日からまた学校と部活が再開されるとはいえ、休みには違いない。久しぶりのストレスフリーな時間だ、日々の疲れを癒す為にゆっくり睡眠をとる者もいれば、苦手な科目の予習復習に充てるもの。他校の有力選手の対策を練る為に個人でミーティングを始めるものがいれば、個人スキルのレベルアップの為に愚直に練習を重ねるものだっている。

 

 

しかし、まさかこんな朝早くから黙々とシュート練に打ち込んでいるとは思いもしなかった。そんな寺門の姿を見ながら、驚いたように呟く少年こと【洞面 秀一郎】。そんな彼に同意するように、柱に寄りかかった【成神 健也】が言葉を重ねた。

 

 

「必殺技も使わずにずーっと基礎のシュート練習って………地味にキツくない?フォワード的にそこんとこどうなの、椋本」

 

 

この世界のサッカーにおいて、試合の大部分を決定するのは『必殺技』と言っても過言では無い。当然、実力が拮抗した者同士が戦う際には細かなテクニックや仲間との連携、咄嗟の閃きや判断能力が勝利の決め手となる事もある。しかし、実力に差があるのならば必殺技のゴリ押しでも勝利可能なのがこの世界だ。

 

故に得失点に直結するFW、GKは練習の多くを必殺技に割く。まずは他者に負けない程の必殺技を身に付けそれを磨く。ボールテクニックなども大切だが、まずは必殺技。一にも二にも必殺技なのだ。

 

 

そんな中で寺門は必殺技ではなく、ノーマルシュートを打ち続けている。それは効果があるのか、と言う意味を暗に込めて洞面が幼い頃からの付き合いである帝国一軍FW陣唯一の一年生、【椋本 圭】へと尋ねた。

 

 

「普通にキツいよ。必殺シュートの練習って、自分の中でエネルギー量の変化とかが結構如実に出るんだ。だから止め時がわかるって言うか、限界以上にはあんまり出来ないんだけど………ノーマルシュートはそうもいかないし」

 

「必殺技だと消耗激しい分止めなきゃってなるけど、ノマシュじゃそうもいかないって事ね。気が付かないうちに真綿で首をジワジワ締め付けられてる的な〜?」

 

 

 

首を振りながら洞面の言葉に答える椋本。それを聞いた成神が、彼の頭上でぐぇ〜、とでも言いたげな表情を見せながらおどけてみせる。

 

 

「にしても、なんで寺門先輩そんなキツい練習してるんだろね。僕なんか普段から死ぬ思いなのに」

 

「闇雲に必殺技やるより、基礎から固め直して新しい技作りたいんじゃない?寺門先輩の個人シュート技って、百烈ショット以外あんまり見ないし」

 

「そりゃまぁ寺門は今まで個人技の特訓時間は少なかったですからねぇ……連携技に重きを置いてましたし、ある意味当然でしょう」

 

「そっかー………ん?」

 

 

普段の練習のキツさを考えればゆっくり過ごしたいのが本音だろうに、普段以上に早く起きて特訓に励む寺門の姿を眺めながら洞面が呟く。それに成神が反応して言葉を重ね、更に解説を重ねる声が響いた。

 

 

納得したように頷いた洞面だが、ふと疑問を覚える。話の流れ的に発言したのは椋本なのだと思ったが、今響いたのは結構低い声だ。椋本は洞面と同じく声が高い。つまり椋本では無いはずだ、産まれた時から一緒に過ごしてきた幼なじみの声を忘れるはずは無い。

 

成神と椋本も同様に疑問が浮かんでいたらしく、揃って顔を合わせて首を傾げた。何事なのだろうかと、3人が声がした方向を振り向くと______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

覗き見とは趣味がいいとは言えませんねぇぇぇぇぇぇぇぇ????

 

 

「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」」

 

「うっわビビったァ!!!何してんすか顔面ホラーゲーム先輩!?」

 

「誰が顔面ホラゲですか、誰が」

 

 

 

呆れたような声を上げながら、声の主は肩を竦める。半泣きになって一気に10メートル近く後ずさった小柄な後輩2人と、おおよそ先輩を敬ってるとは思えない妙ちくりんな名で呼んできたヘッドホンを愛用する後輩の姿は幾分か面白いものではあった。

 

そんな後輩達を恐怖させた顔面ホラーゲーム男______五条は、コートで自主練に励む寺門の姿を見て納得したような声を上げた。

 

 

 

「何をしているのかと思えば、こんな時間から自主特訓ですか。いくら音が響くとは言え、あまり覗き見るもんじゃありませんよ?」

 

「す、すみません……」

 

 

こんなに朝早くから特訓をやっている寺門は、それなりに強い感情を持って取り組んでいるはずだ。それが強力なキーパー出現に対する興奮なのか、それとも焦りなのか。それは五条に察することは出来ない。

 

しかし、あれだけ必死に特訓に励んでいるのだ。強面ながら他人を気遣うことの多い寺門は、後輩達が覗き見ていると知れば「悪い、騒がしかったか?」なんて言いながら練習を一時止めるだろう。せっかく集中出来ているのだ、邪魔するのも悪いだろう。

 

 

 

「…………にしても五条先輩、こんな朝早くからどこいくんすか?」

 

 

そんな時に、ふと成神が五条に尋ねる。先程も言ったが今日は完全オフ、久しぶりの休み。理由はどうあれ外に出ようとするものは稀であり、快適な一軍寮で過ごそうとする選手が大半だ。

 

しかし五条は、身軽そうな服装でその場に立っている。帝国の制服やユニフォーム、ジャージの印象が強い1年生たちは、この人私服持ってたんだ、なんて場違いな感想が脳裏に浮かんでくる。

 

 

 

「ん?あぁ、有人に呼ばれていましてね。例の学校、本日練習試合の様なので…………まっ、偵察といったところですかね……ククク……」

 

「うっわぁ……鬼道さんと五条先輩の偵察とか絶対ヤバいやつじゃん………怖っ」

 

 

 

鬼道有人と五条勝。帝国学園2年特待生二人による偵察なんて豪華過ぎる。必殺技から戦術まで全て丸裸にされるであろう雷門とその練習試合の相手に向けて、洞面が密かに合掌する。当然だ、帝国学園が誇る二大巨頭、それが揃って偵察に赴くなんて、どんな学校相手でも過剰戦力過ぎるのだ。

 

 

 

「まぁそういうわけですよ。試合も近いですし、取れる情報は取っといた方が良いですからねぇ………貴方達はしっかり休みなさいな。一日フリーなんて、帝国じゃそうそうありませんので………それでは、失礼しますね」

 

 

 

 

軽い調子でヒラヒラと手を振りながら、五条はその場を去っていく。集合予定は現地である雷門中だ、運動がてら走って行こうか、なんて思いながら帝国学園の入口方面へと足を進めていった。

 

 

 

「………あの人も真面目だよねぇ。折角の休みを偵察に使うなんて」

 

「普段の練習中も気遣い上手だし、他の人の特訓にも付き合ったりしてるもんね、五条先輩。鬼道さんもだけど、ああいう人が【天才】って奴なんだろうなぁ」

 

 

 

貴重な休日を使ってまで、キャプテンたる鬼道に付き合って偵察に赴く五条。そんな真面目な彼を眺めながら、洞面が後ろ手を組んで呟く。自分なら間違いなく行かないという感慨も籠っている。そんな洞面に反応するように、椋本が感嘆の声を交えてそう話した。

 

 

 

「………まぁ天才なら身近に1人いるけどね。ねぇ〜成神?」

 

「やっだぁ〜!僕なんてぇ、先輩達にはぁ、ぜぇ〜んぜん及ばないですぅ〜尊敬しちゃ〜う!!」

 

「うっわーウザさと気持ち悪さ極めてるわぁ」

 

 

 

両拳を口元に当てて女子のような口調を真似る成神の姿に洞面が呆れたような半笑いを浮べる。同じ特待生であるのに、何故先輩たちとこの親友はこうも違うのだろうか。才能は並び立つだけのものを持っているがノリが綿毛のように軽い。と言っても、そんな彼だからこそ洞面も椋本もここまで仲良く並んでいるのだが。

 

 

 

「………まぁ真面目な話、凄いとは思うな。総帥からの扱いも、俺とあの二人じゃ別格だし〜?」

 

「それは仕方ないんじゃない?鬼道さんは小さい頃から総帥に指導受けてるわけだし、五条先輩はその鬼道さんの一番の親友なわけだし……」

 

 

 

両手のひらを上に向けて首を横に振る成神は、自分とあの二人は違うと発言。絶対的信頼を勝ち取っているキャプテンの鬼道と、謎に満ち溢れながらも高い実力で認められている五条と比べれば自分はまだまだ、と言うように表向きは聞こえる。

 

 

 

 

「(______実際は三者別々なんだけどねぇ)」

 

 

 

成神は知っている。実際のところ、【天才】と呼ばれているあの二人にも差があるということを。

 

鬼道有人は紛れもなく天才だ。無から何かを生み出せる、ひと握りの限られた人間にしか持ち合わせていない能力を有している。これから先においても重要人物に位置付けられているのも納得が行くほどの万能ぶり、多才ぶりだ。彼を凡人だという者は、この世にはいないだろう。

 

 

だが五条は______いや、《彼》は厳密には天才ではない。たしかに高い身体能力、頭の回転を持ち合わせてはいる。 だがそれは未来を知るが故の努力の結果だ。将来起こる事柄を擬似的に知っている為に、『努力しないとまずいことになる』という自覚があったからこそ、相応の努力を重ねてあの位置に座している。

 

 

 

「(______それにしたって気負い過ぎな気はするけど)」

 

 

 

そして成神が彼を【天才】ではないと思う最大の理由。

 

……心だ。彼は心が平凡過ぎるのだ。

 

 

 

【天才】と呼ばれる者たちは、基本的に凡人達とは精神的な構造が違う。こういうと悪口のようにも聞こえるかもしれないが、例えば『どんな苦境だろうと笑ってのける精神力』なんかがいい例だ。雷門のキャプテンは、まさしくこれに当てはまるだろう。敢えて言うならば【努力の天才】………いや、【天才的なバカ】だろうか?

 

 

 

鬼道もそうだ。鬼道は長年影山の教育を______上位者として、支配者としての教育を受けながらも、それに染まりきっていない。確固たる意思を、純然たる自分を心のどこかに持っておける人間なんてそうはいない。同じ状況に置かれたら、大多数の人間が影山の思想に完全に染まるであろう。そういった点でも、実力面でも。やはり鬼道は天才なのだ。

 

 

 

だが《彼》は違う。

 

 

彼は人並みだ。表情を動かさず、常に余裕を持って落ち着いた態度を崩さない。誰からも信頼されて、密かに誰かを助けられる______そんな【五条 勝(本来あるべき姿)】を演じてこそいるものの、至極平凡なのだ。

 

人並みに笑い、悲しみ、努力し、怒り、傷つき、苦悩し、押し潰されそうになる。

 

それでも歩みを止めない。否、止まらない。だって()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「まっ、一人で抱え込んで潰れるんなら、そん時はそん時っしょ……」

 

「?成神、なんか言った?」

 

「いんや、なーんにも?」

 

 

 

だが成神には関係ない。例えどれだけ五条が悩み苦しもうと、抱え込んでいる内は……助けを求められない限りは、自分から助けに行くことは無いだろう。あくまで自分達は《協力関係》、余計なことをする程仲の良い関係では無い。

 

 

 

 

「ねぇ成神、洞面、これからどうする?」

 

「僕はちょっと特訓したいかなぁ……」

 

「おっ?普段から死にそうなんじゃないの?寺門さんに触発されたか〜?」

 

「別にいいじゃん!僕も新技の練習したいだけだしーっ!!付き合えよ、成神!!」

 

「はいはい、他ならぬお前の頼みだし喜んで〜ってか?」

 

「あっはは………僕も付き合うよ」

 

「サンキュー椋本ーッ!んじゃ、さっそくいこうよ!第5コートなら近いし!」

 

 

 

彼が偵察に行くのなら自分が行く必要は無いだろう。鬼道さんもいるのなら、万が一の取りこぼしも有り得ない。パワーアップしているらしいが、所詮は去年二軍に惨敗したらしいチームだ。同年代で面白いうわさのあったFWが加入しているらしいが、帝国学園(このチーム)が負ける程とは思えなかった。

 

 

走り出した洞面と、それを追いかける椋本。そんな2人を眺めながら、成神はゆっくり歩き始める。

 

 

自分は天才なんかではない。神様から他人よりも才能を貰っているとは思っているが、鬼道の様にゼロからイチを生み出せるような男では無い。ただの凡人、いっても秀才が良いところだろう。それでも歩みは止めない。せいぜい食らいついてみせようか。

 

 

 

 

「______絶対、置いていかれない」

 

 

 

置いていかれてなるものか、こんなに面白そうなことからフェードアウトするなんて勿体ない。フットボールフロンティアを制して、これから来るらしいエイリア学園とやらを打ち倒して、日本代表となって世界の舞台に立って楽しむのだ。

 

 

 

 

 

 

「成神、早くいこーよ!!」

 

「早くしないと先輩たち起きてくるかもだし、急ごう。成神!」

 

 

 

 

 

 

………『親友』達と、3人で。

 

 

 

 

 

 

 

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