イナズマイレブン! 脅威の転生者 ゴジョウ!! 作:ハチミツりんご
「______来た!!」
誰が言ったのか、その声は曇天の空に不思議とよく響いた。
王者帝国と同等以上の試合を繰り広げた東京の新鋭、雷門中。有名人である豪炎寺以外、校内で中々認められなかったサッカー部員たちだったが、あの帝国学園と見事な試合を繰り広げた為にダメサッカー部という印象は既に拭われていた。
そんな彼らは今日、《フットボールフロンティア出場権》という大切な夢への切符を手に入れる為に、とある学校との練習試合に臨む。並び立つ雷門イレブンの視線の先、校門付近からは、謎の霧と共に試合の相手が続々と足を踏み入れてきていた。
「______ここが雷門か」
薄紫色の霧の中から現れた、十一人の選手達。キャプテンである紫色のバンダナで瞳を隠した【幽谷 博之】を先頭に、物珍しげに周囲を見渡しながら歩いてきた。
「なーんかつまらなそうな学校じゃナーイ?ここが帝国に勝ったってマジなのかぁ?」
「幽谷君が言ってたので間違いないでしょうが………覇気はないですね」
「ぐふっ、ぐふふふふっ、なんでもいい……帝国に勝つためにも、こんなところに負けてられない……ぐふっ」
ゴールキーパー故に唯一明るいユニフォームに身を包んだ鉈や幽谷以外ではただ一人の一年生である柳田、大柄で怪しげに笑い声をあげる屍らが思い思いの感想を述べながら近づいてくる。そんな彼らを見ながら雷門のDF、影野がボソリと呟いた。
「______不気味だ」
「いやお前が言うなよ」
雰囲気としては似たようなものを纏っている影野が発した言葉は隣に立っていた半田によって即座にツッコまれる。実際、彼によく似た雰囲気を醸し出す八墓という選手がいるので彼のツッコミは正しいのかもしれない。
そんなやり取りをしているうちにコートまでやってきた彼らは、グラウンドの感触を確かめるために軽くアップを始める。その間に、やってきた集団の中で唯一スーツを着込んだ男性が前に出てきた。
「はじめまして、【尾刈斗中】監督の地木流灰人です。本日は練習試合を受けて頂き、感謝致します」
「え、えぇ……監督の冬海です……」
雷門中の監督______といっても名ばかりだが、名目上顧問を務めている【冬海 卓】が地木流と握手を交わす。
冬海の態度を見て彼が名ばかり監督だと見抜いたのか、挨拶が終わると地木流はさっさと選手たちの方へと目を向ける。その視線はエースストライカーたる豪炎寺と、キャプテンである円堂を中心に注がれていた。
「君たちが雷門イレブンですね!なんでもあの帝国学園を打ち負かしたチームだとか……いやはや、身近にこんな強豪が隠れていたなんて!」
「い、いえ………それに俺達、勝ったと言っても実際は引き分けですし……」
「ほう、引き分け!!あの絶対王者相手に引き分けるだけでも十分誇るべき事です!そんなチームの胸を借りられるとは……皆さん、今日はお手柔らかにお願いしますね?」
「は、はい……?」
冬海に挨拶した時とは打って変わってテンション高く話しかけて来た地木流。そんな彼のテンションにイマイチついていけてないのか、珍しく円堂が困惑しながら受け答えする。そんな選手たちと挨拶に満足したのか、地木流は一礼すると踵を返して尾刈斗の選手たちの元へと戻っていった。
「………どうです、監督?」
「君の言う通り、実力はありそうですよ幽谷。身体付きは鍛えられていましたし……何より帝国を打ち負かしたことを否定しなかった。やはり試合を申し込んで正解でしたね」
アップを終えた尾刈斗イレブンを代表して幽谷が尋ねると、至極満足気に地木流が頷いた。円堂が帝国に引き分けた、と言った為負けていることは無い。豪炎寺の【ファイアトルネード】や染岡の【ドラゴンクラッシュ】などの強力なシュートは伝手を駆使して確認した。それだけでも価値があるが、もう一つ。
「______映像で確認出来なかった、円堂くんの【ゴッドハンド】………帝国学園の【デスゾーン】を止めたという、伝説の必殺技………それを破れたのなら、帝国への勝機も充分ある」
そう、ゴッドハンドだ。円堂が覚醒させた、あの必殺技。全国でトップクラスの火力を誇る帝国学園のデスゾーンを止めた円堂を利用して、今の自分達の攻撃力を確認するのが最大の目的である。
口元に手を当てながら、地木流は作戦ボードを手に取って尾刈斗イレブンに指示を出す。特に念入りに出しているのは攻撃陣……ではなく、守備陣だ。
「まず最初は一本、フリーで打たせます。これはブロックをかけずに鉈一人に受けさせなさい、決められても大丈夫です。帝国の源田を突破した、豪炎寺君中心の攻撃……君一人で止められるならば、これに越したことはありませんので」
「オフコースッ!任しちゃってよカントクゥ〜!!」
「えぇ、任せます。逆に残りのメンバーは好きに動きなさい。特に木乃伊、八墓はFWと共に積極的に攻めて構いません。霊幻、君はその分カバーを意識して下さい」
「了解した………」
「………コクリ」
「任せるアルよ!」
次々と指示を出していく地木流。この一年間、打倒帝国の目標の為だけに努力を重ねてきた教え子達だ。僅かでも、勝てる可能性を上げてやりたいと熱も入る。
「月村、武羅渡、幽谷。君達は守備は考えなくていい。全力をキーパーにぶつけてきなさい。ただし単純な攻めを続けてはなりません。チェインや撹乱、ロングシュートなども意識して、ありとあらゆるパターンを試すんです。どの程度のシュートパワーがあればゴッドハンドを……帝国のデスゾーンを上回る火力を出せるのか。それの確認を」
「グルゥアゥッ!!」
「お任せあれ……ふっ、ふふふはは………!!」
三年生随一のシュート力を持つ月村、そんな月村とコンビのように連携を重ねてきた武羅渡が地木流の言葉に呼応する。あまり攻撃力が優れているとは言えなかった昨年時、帝国を打ち破る為に遅くまでシュートを磨き続けてきた2人だ。その攻撃センスは地木流も全幅の信頼を寄せている。
そんな攻撃陣で唯一の一年生にして、キャプテンを務める少年。地木流はそんな幽谷に目を向けた。
「ただし幽谷、君は______」
「分かってますよ監督。『アレ』は取っておくんでしょう?」
幽谷の言葉を聞いて、満足気に地木流は頷いた。
「えぇ。______どうやら彼らも、雷門中が気になっているようなので」
ちらり、と地木流は横目で盗み見る。その視線の先にいたのは______
「………ほう。気が付かれたか」
「いいのか鬼道、今日は隠れて観察するんじゃなかったのか?」
「別にバレても大差ないでしょう。気がついているのは尾刈斗側だけで、肝心の雷門は気がついていませんし……」
______因縁の相手。王者帝国の選手達。
類まれな指揮能力を持った司令塔、鬼道有人。
去年の試合にも出場していた、サポートの名手にして参謀役、佐久間次郎。
そして____________去年煮え湯を飲まされた、稀代の怪物、五条勝。
「お前ら、帝国が見てるんだ。去年俺たちをぶち負かしたあの帝国が、見に来ている。理由は言わずもがな、俺たちじゃない……雷門中だ」
自然と語尾が荒くなった地木流の言葉を聞き、2年、3年が拳を握り締める。去年の大敗を思い出したのが半分、帝国に警戒されていない悔しさが半分だ。
「そうだな、悔しいな。あれだけやってきても、帝国が注目しているのは俺たちじゃあない。………だがそれも、今日までだ」
力強く発した言葉。尾刈斗メンバーの視線が、眉がつり上がり、鋭い目付きとなって、顔にバツ印の浮かんだ地木流へと注がれる。
「今日の雷門戦で、尾刈斗の実力を見せつけるっ!!相手に不足は無い、全力で打ち負かして、いけ好かない帝国の選手たちの度肝を抜いてやれっ!!」
『はいっ!!!』
「よぉっし!!擬似帝国戦だ、気張っていくぞ!!!」
雷門フォーメーション
ーー豪炎寺ー染岡ーーー
宍戸ーーーーーーー少林
ーーー松野ー半田ーーー
風丸ーーーーーーー栗松
ーーー影野ー壁山ーーー
ーーーー円堂ーーーーー
尾刈斗フォーメーション
ーーーーー幽谷ーーーー
ーーー月村ー武羅渡ーー
ー八墓ー霊幻ー木乃伊ー
柳田ー不乱ー三途ー藤美
ーーーーー鉈ーーーーー
「………アレ?」
「どうしたの、音無さん?」
「おかしいですね……試合映像とかを見る限り、尾刈斗のDF陣は不乱さんがサイドバックで柳田君がセンターバックの筈なんですが……逆になってます」
事前に確認していた情報と異なる布陣に戸惑いの声を上げたのは、新しくサッカー部のマネージャーとして入部した【音無 春奈】。本来ならば4番の不乱と3番の柳田のポジションは逆になるはずだ、事前に手に入れていた試合ビデオでもそうなっている。
「ふっふっふ……甘いですねぇ音無さん」
「えっ!?目金先輩分かるんですか!?」
そんな中で、帝国との試合直前に入部して試合に出られなかった【目金 欠流】が自慢のメガネをくいっ、と上げながら笑う。自分にも気が付かないことに気が付いたのかと驚く音無と、何かを察して曖昧に笑う木野。
「DFはパワーが求められるポジション、そしてセンターバックは特にそれが強い!!ならばっ!!小柄な3番君と大柄な4番君が逆になるのは至極当然でしょうっ!!」
ふふん、と自慢げに考察を述べる目金。絶妙なドヤ顔をうかべる彼を見て「あはは……」と呆れた笑みを零す木野であった。
「いや、それは分かってますよ」
「えっ!?」
「不乱さんと柳田君じゃ、どう考えても不乱さんの方がセンターバック向きです。なので最初はそうかとも思いましたけど……じゃあなんで三途さんと屍さんはそのまんまなんですか?」
音無からの指摘を受けて目金が逆サイドの尾刈斗DF2人に目を向ける。目金が言ったパワーが求められるセンターバックについているのは顔色の悪い細身の2番、三途であり、大柄な5番の屍はサイドバックだ。
「………ご、5番よりも2番の方がパワーが強い、とか………?」
「強いように見えます………?今にも倒れそうですけど………」
苦し紛れに目金がそう呟くが、フラフラと揺れながらポジションにつく三途と『ぐふ、ぐふふふっ』と不気味な笑い声を上げる屍とでは明らかに後者の方がパワーがありそうだ。
「屍さんもセンターに来てるなら目金先輩の言う通りなんでしょうが、なんで不乱さんだけなのかが______」
「あーっ!!ほら試合始まりますよ!!応援しましょう応援!!」
「(あっ、話逸らした)」
いっそ清々しいまでに強引な話題転換に木野が心の中で小さく思う。しかしキックオフされたのは事実。豪炎寺からボールを送られた松野がしっかりキープし、走り出していた。
「半田ッ!」
「よしっ!」
松野からのパスを受けた半田が一気に加速。風丸ほどのトップスピードはないものの培ってきたドリブルを駆使して霊幻を突破する。
すぐさまDFの不乱、三途が前に立ち塞がるが、半田はさらに一歩大きく踏み込む。注意を引き付けられた2人がプレスをかけるために重心を前に傾けると、半田は横にパスを送る。
「っしゃあ!!いくぜ豪炎寺!!」
受け取ったのは雷門の点取り屋、パワーストライカーの染岡。右足を大きく振り上げて、既に飛んだもう1人のストライカーへと繋げようとした時だった。
「______【ゆがむ空間改】……ッ!!」
ゴールキーパーの鉈が、両腕でそれぞれ渦を描くように動かす。うっすらと紫色のオーラを纏っているそれを見た瞬間、染岡の中で何かが傾いたような錯覚に陥った。
「っ!?くっ………ドラゴンッ!!」
しかし既にシュート体勢に入っている。あの技はあまり強そうには見えない、無理矢理にでも豪炎寺に繋げてぶち抜いた方が良いと判断。蒼い龍の咆哮と共に空を切り裂き駆け上がるボールは、炎を纏いしエースへと繋げられる。
「______っ!?くっ……トルネードッ!!!」
一瞬顔を顰めた豪炎寺。しかし上手く回転を利用し、繋げられたボールを左足で打ち付けて一気に蹴り下ろす。炎に染められ、赤い竜となったそれらはゴールを燃やし尽くさん勢いで急降下、鉈へと襲いかかっていく。
「出たっ!!染岡と豪炎寺のドラゴントルネードだっ!!」
眺めていた観客が叫ぶ。帝国学園、キング・オブ・ゴールキーパーたる源田から点を奪った、雷門の必殺技の中でも特に高度な連携必殺技。一点貰ったも同然だと、観客の誰もが思った。
「ノンノンノンノン………そんなんじゃあまだまだ物足りないぜぇ!?」
しかし。不敵に笑いながら、ゴールキーパーの鉈は【ゆがむ空間】を解き、両腕に蒼いエネルギーを呼び起こす。
「一本?2本?ノンノン!まだまだまだまだたァりなぁい!!」
両腕に溜められたエネルギーは、左右の腕に蒼い刃を形作る。しかしそれだけには留まらなかった。
背中に流れていった蒼いエネルギーが、次第に鉈から離れていく。ゆらり、ゆらりと人魂のごとく揺れ動くそれらは一つ一つが次第に刃の形を作っていき、それが背後に10本……いや、11本出来上がる。
「______【サーティン・マチェッツ】ッ!!!」
そうして背後の11本の蒼い刃が、鉈の叫びとともに発射。ボールを針串刺しのように貫いていき、勢いが弱まったところを両腕の刃を大きく振りかぶり、ボール上部に交差させるようにして叩き付け、斬り裂いた。
『なっ……なんということだぁぁぁぁぁぁ!!?帝国学園、あの源田幸次郎から点を奪った我らが雷門のドラゴントルネードがっ!!13の刃に止められてしまったァァァァァァァァァァーッ!!!』
実況として同席していた角馬が叫ぶ。同時に観客達も、そして雷門イレブンにも衝撃が走る。帝国戦、始まりを告げるように決まったドラゴントルネード。豪炎寺と染岡が生み出した、最高火力の連携技。それがまさか、キーパーに単独で止められてしまうなんて想像出来なかった。
「ヒューッ………とんっでもねぇシュートだな………腕が壊れちまいそうだ………」
止めた鉈自身も、ホッケーマスクの下で冷や汗を流す。未だに腕がビリビリと痺れている。月村と武羅渡の同時シュートを受けた時も、ここまでは無かった。なるほど、帝国に勝ったのも頷けるシュートだ。
「だがまぁ______」
しかし。腕がひりつく様な、全身が震えあがるようなあのシュートを……あの源田幸次郎を打ち破った赤い竜を。
「______ゴールにゃ届かねぇな、Strikers?」
止めて見せたこの男は、獰猛に笑って2人を挑発してみせる。大多数の予想を裏切る展開を持って、試合の火蓋が切って落とされた。
雷門 0-0 尾刈斗
【サーティン・マチェッツ】
カテゴリ:キーパー・キャッチ
属性:風
習得者:鉈 十三
特徴:一人技
→習得者がキラーブレードを習得している
消費TP:35(無印3基準)
説明文
13の刃が襲い掛かる!
チェーンソーは違うんだ!
解説
鉈がキラーブレードを進化させ、より大多数を操ってみせるキーパー技。単純な威力の増幅もそうだが、11本は空中に浮かんでいるので意外にカバー範囲も広い。名前の由来は鉈のモデルであるジェイソンより。チェーンソーでの殺人はおこなってないからね!鉈が主流らしいよ!!