イナズマイレブン! 脅威の転生者 ゴジョウ!! 作:ハチミツりんご
本来は一人称は俺で、二人称はお前ですが、この小説の五条さんはそんな度胸はありませんので、一人称は私で、二人称は貴方です。
「勝てましたか……。」
ホッと息を吐きながら、静かに呟く。
しかし、まさかこんなに大差で勝てるとは思ってなかったな。黒服が1つも必殺技を使えなかったのがラッキーだったな・・・。
「五条。」
ふと振り向くと、そこには鬼道が右手を掲げて立っていた。その意図を察した俺は、同じく右手を掲げて、ハイタッチをする。
「ナイスプレイだったな。」
「ククク……そちらこそ。」
互いを讃えながら笑いあう。
周りを見てみると、共に戦った子供たちは喜びのあまりはしゃいで走り回っていた。
まぁ、あれが本来の子供だよなぁ。俺や鬼道がおかしいんだよなぁ。
「ふ、ふざ、ふざけるなぁぁぁァァァァァァァァ!!!!!
あんなガキ共に負けやがって!!何のためにお前らを雇ったとおもっている?!このゴミクズ共がァァァァァァァァァァァ!!!!」
おおぅ、荒れてらっしゃる。
俺たちに負けた黒服達に対して、亜夜は汚い罵声を飛ばしている。目は真っ赤に血走っているし、両手で髪を掻き毟っている。
「何をボケっとしている!!!はやくそのガキ二人を捕まえろぉぉぉ!!!」
「なっ!!それでは約束が違うじゃないか!!!」
「だぁまれぇ!!!!そんなもの知るかぁぁぁ!!!!」
老夫婦が抗議するが、そんなもの知るか、とばかりに叫び続ける。
だが、黒服達は先ほどの試合で疲れきっている為に動けない。
それでも叫び続ける亜夜を見て、俺と鬼道は可哀想なものを見る目を向ける。
「クソ!!クソ!!もういい!!お前らなんぞいらんわ!!!こうなったら俺が・・・」
「・・・そこまでだ。」
静かに、しかし強く声が響く。
唐突に聞こえたその声に、誰ともいわず振り返る。
そこには、細身で長身の、サングラスをかけた男性が、護衛のような男達を連れて立っていた。
その男を見て、子供たちや老夫婦は誰だかわからず首を傾げる。
その男を見て、鬼道は敵の仲間かと警戒する。
その男を見て、五条勝は驚愕する。何故、この男がここにいるのかと。そして、同時に納得する。原作から考えて、この男がいるのはおかしくない、と。
「な、何故・・・ここに・・・」
絞り出すように、亜夜は疑問の声を上げた。その顔は青ざめており、全身が細かく震えていた。黒服達も同様に、蛇に睨まれた蛙のように固まっていた。
「事情は聞いていた。才能ある子供を手に入れるために試合をするとは・・・。サッカー協会の人間として、恥ずかしくないのか?」
どの口が言っているんだろうか。原作で、雷門を潰すために鉄骨を落としたり、『神のアクア』でドーピングしたりなど、非道なことをやっていたこの男が。
「近く、サッカー協会から罰則が下るだろう。ーーーおい、連れていけ。」
後ろにいた黒服が、ピッチで座り込んでいた黒服と亜夜を捕まえて、外に連れ出していく。
「お、お待ち下さい!!こ、これはなにかの間違いです!総帥!!総帥ぃぃぃぃ!!!」
亜夜の訴えも虚しく、俺達と戦った黒服と亜夜は外に連れ出されていく。
「お騒がせして、申し訳ありません。
よろしければ、お話を伺えませんか?」
その男ーーー『影山 零治』は、薄い笑みを浮かべながらそう言った。
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「やぁ、こんにちは。君が五条勝くんだね?」
「……ええ、はじめまして、影山さん。」
・・・どうしてこうなったし。
あの後、老夫婦と影山は施設の中に入り、これまでの事情と亜夜の暴挙ーーーといっても、十中八九影山が絡んでいるーーーについて話し合っていた。
その後、鬼道が呼ばれ、浮かない顔で帰ってきたので、恐らく原作のように鬼道家に行くことを勧められたのだろう。
そこまでは良かった。こちらの想像通りだった。問題はその後だった。
「緊張しなくてもいい。肩の力を抜いてくれ。」
そう言われてもあんたの前じゃ抜こうと思っても抜けねーんだよバーカ!!
そう、俺こと五条勝は、現在影山零治に呼び出されていた。ぶっちゃけ理由は分かっている。必殺技のせいだ。
よくよく考えれば、大人ですら扱いが難しい必殺技、それも帝国学園の必殺技である【キラースライド】を使った俺は、影山からすれば絶好のスカウト対象だろう。
「・・・という事だ。君の素晴らしいサッカーの才能を磨く為の環境は整っている。あの男ではないが、この施設への投資を約束しよう。」
ど、どうしようか。ここで影山の誘いに乗ると、練習内容はかなりハイレベルになるが、恐らく自由は利かない。逆に、誘いを断れば、自由は利くが、影山から狙われる可能性がある。
なんかどっちもどっちな気もするなぁ。将来的には帝国に行くつもりだけど、今から行くつもりは無いし、断ればワンチャン命狙われるかもだし・・・。
よし、ここは日本人的発想、折衷案で行こう。
「………いえ、お断りさせていただきます。」
「・・・ほう?」
「ただ、将来的には影山さんのいる帝国学園に進学する予定ですので、その時はよろしくお願いします。」
「っ!!・・・分かった、その時は歓迎しよう。」
どうだ!!!これぞ日本人力!!!
ついて行くつもりはありませんよー、だけど将来そちら側につきますよー、お役に立ちますよー、という意思を遠回しに伝えるこの技術!!!もはや芸術と言ってもいいレベルではないだろうか!?
「呼び出して済まなかった、もういいよ。」
ほら、影山さんも納得してるし。大成功じゃん。
そんなことを考えながら、意気揚々と部屋から出ていくのであった・・・。
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「良かったのですか?総帥。」
部下である黒服のひとりが、影山に疑問の声を投げる。そんな部下を一瞥しながら、影山は逆に質問を投げかける。
「・・・お前に、五条勝はどう映った?」
「はぁ。サッカーの才能に関しては高島有人と同等のものを感じます。あの歳にしては大人びていますが、総帥の誘いを断るあたり、まだまだ子供と言った感じです。」
上司の質問に、自分の思ったことを述べる部下の感想に、影山は静かに答える。
「・・・アレはそんな可愛いものではない。」
「どういうことですか?」
「気づいていないのか?私は今日、サッカー協会の影山としか名乗っていない。それなのに、アレは私が帝国学園の人間だと知っていた。」
「なっ・・・!!し、しかし、偶然ということも・・・。」
「それだけじゃない。アレは、私が姿を現した時に、私のことを警戒していた。下手をしたら亜夜達以上にだ。偶然知っただけの相手に、そんなことをする必要は無い。」
絶句する黒服から視線を外し、影山は車の外を眺める。視線の先には、先程まで己が訪れていた施設が映っていた。
「まぁいい。打てる手は打っておいた。」
「先程、あの夫婦と話していた内容ですか?」
「ああ。アレを、我々の監視下にある施設に移す。名目上は、信頼出来る指導者のいる施設を紹介する事、だがな。」
「乗ってくるでしょうか?」
「分からん。しかし、アレを戦力として使えれば、私の計画はより盤石のものとなる。」
影山は、黒服に聞こえないように、ポツリと呟いた。
「五条勝・・・奴は一体何者だ・・・?」
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「おーいおーい!重大ニュース、重大ニュースだぜー。」
「・・・うっさい、黙れ。口を閉じろ。そして死ね。」
「そんな邪険にするなよ〜〜。」
左目を眼帯のように覆い隠すという、特徴的な髪型をしたピンク髪の少女の暴言を、緑色の髪をオールバックで纏めた、ピエロのような少年がヘラヘラと受け流す。
「・・・で?何よ、ニュースって。」
「おっ!?聞いてくれるの!?忍ちゃん、やっさし〜〜〜!!」
「死ね。」
「ごめんって!!いやね、この施設に転入生が来るらしいよ?」
「はぁ?別に珍しいものでもないでしょ。」
「いやいや、これがなんと驚き!!なんとあの影山零治の紹介らしいんだよ、これが!」
「なんでそんなこと知ってんのよ。」
「ぬ・す・み・ぎ・き♡」
「キモ。死ね。」
ヒドゥイイ〜〜!!!などと言いながらクネクネと身体を揺らす少年に、少女はまるで汚物を見るような目を向ける。
「・・・でもまぁ、あの人の紹介なら雑魚ってことは無いでしょ?」
「だろうねぇ。面白いことになるんじゃない??」
ニヤリと笑った少女に対し、ヘラヘラとした笑みを崩さずに少年は答える。
愛媛に存在する、とある施設。そこは、表向きは身寄りの無い子供を引き取る施設で、地元で有名なリトルチームを有している。
だが、その本来の顔は、将来的に影山の役に立つ人材を密かに育成する訓練施設だ。
そして、この施設で、影山の為に育成されている子供はたった二人。
『おい、小鳥遊!!比得!!どこにいる!!練習再開だ!!』
「は〜いはいっと。めんどくさ・・・。」
「へいへーい!俺はここですよ、監督ぅ!」
少女と少年の名は、【
最後の2人は、とても好きなのですが、ぶっちゃけ比得君のキャラがあんまり分かってないです。すっごい変な子になった気がする。