イナズマイレブン! 脅威の転生者 ゴジョウ!!   作:ハチミツりんご

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第三十八条 野生戦に向けて/木戸川清修の今

 

 

 

「______フロンティア!!!」

 

「わぁっ!?」

 

 

 

「フットボールフロンティア!!!」

 

「うおっ!?」

 

 

 

「フットボールフロンティアだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「円堂君、カバン、カバン〜!!」

 

 

 

朝っぱらから雷門中に響き渡る、フロンティアという珍妙な鳴き声。夏にセミ達と共にやってきて風のように去っていく謎の生き物、『フロンティア烏』という学会でも研究されている謎多き鳥の声______なんぞではもちろん無い。

 

 

先日の尾刈斗中との練習試合で見事に勝利を勝ち取った我らが雷門イレブン。その中心人物であり根っからのサッカー馬鹿、円堂は、憧れの大会に出場出来る喜びから元気が弾け飛んでいるのだ。

 

 

所構わずフロンティア!と叫んで走り抜けていく円堂。その後ろで、彼とご近所であり創部当時からマネージャーを務める木野が、彼が自宅に置いてきたカバンを持って追い掛けていた。

 

 

 

「………木野先輩も大変っスねぇ」

 

「キャプテン、燃えるのはいいけど……まぁでもフットボールフロンティアだからね」

 

 

そんな自分たちのキャプテンと苦労人のマネージャーの姿を眺めながら談笑する、一年生の壁山と少林寺。体格差の著しいコンビではあるが、基本気性の大人しいこの2人は学校生活で一緒にいることも多い。

 

多少サッカーバカ過ぎるところはあれど、試合においては確かなセーブ力と何があっても諦めない精神力でチームを牽引する頼れるキャプテンだ。それを分かってはいるものの、こうも一直線過ぎる様子を見るとマネージャーの木野のことを不憫に思うのは仕方ない。

 

 

「でも俺もなんか楽しみになってきたんだ!宍戸みたいに、早く必殺技を作りたいなぁ」

 

「俺もっす!お互い頑張ろうぜ、少林!」

 

 

この短期間で、豪炎寺の手助けや円堂の引っ張り、染岡達先輩陣の丁寧な指導もあって本来よりも強くなっている1年生達。先日の練習試合で、宍戸が染岡のドラゴンクラッシュを真似て考案した【グレネードショット】を見事成功させている。同級生の必殺技を見た故に、次は自分もと奮起する燃料になっていた。

 

 

 

「チィーッス、そこのおふたりさん!ちょっといいか?」

 

「?」

「はい?」

 

 

そんな2人に声を掛ける人物。随分高い位置から降り掛かって来た声に少林寺が振り向くと、そこに立っていたのは背の高い男子生徒だった。

 

真新しい雷門の制服に身を包んだ、浅葱色の髪の男。細身で長身、褐色気味の肌が特徴的で、一年生……というか、サッカー部で群を抜いてでかい壁山に身長だけなら並び立つ程だ。

 

 

「いやー、ちょうどいい所にいたからさ。俺、土門!よろしくなっ!」

 

「よ、よろしく……」

 

 

 

ノリ軽く話しかけて来た男につられるようにして挨拶する少林寺。どうにも見覚えの無い顔だ。少なくとも話しかけてくる程親しい友人に彼のような人物はいなかった。

 

土門と名乗った青年は、人好きされるような笑みを浮かべて後ろ手で頭をポリポリと掻く。

 

 

「んで、悪いんだけど………校長室ってどっち?」

 

「あ、転校生ですか?」

 

「そ!ピッカピカの転校生!」

 

 

真っ先に校長室の場所を尋ねてきた事と、見覚えの無いことが相まって土門が転校生である事に思い至る少林寺。そんな小柄な彼の問い掛けに、土門はにひっ、と笑みを浮かべて答えた。

 

 

「校長室なら、あそこの入り口入って、階段登って三階にいったら、そこから右っスよ!」

 

「おっ、まじで?サンキュー、お二人さん!んじゃなー!」

 

 

壁山が指さしながら目的の場所を教えると、土門は顔の前で手を合わせて感謝を述べる。そのまま足取り軽く、2人に手を振ってその場を去っていった。

 

 

 

「………なんだか……」

 

「ノリの軽い人だったね。悪い人じゃなさそうだけど……」

 

 

急にやってきて、急に去っていった土門。それでも挨拶や礼を欠かさないその姿は、決して2人の目に悪く写ってはいなかった。

 

 

 

 

 

 

「_______さーってと!!俺自身を見失わない様に。始めますかね、新生活!!」

 

 

大きく伸びをしながら、新天地における任務を果たす為。そして友人と本気で試合が出来ることを願いながら、土門飛鳥は雷門中へと、足を踏み入れた。

 

 

 

 

☆☆★

 

 

 

 

「みんなーっ!!わかってるなーーっ!!」

 

『おおーっ!!』

 

「とうとうフットボールフロンティアが始まるんだ!!」

 

『うおおーっ!!』

 

 

 

時は過ぎて放課後。部活の無い生徒達は足早に友人達と帰路に着き、外では本日コートを使う予約をしていた女子テニス部の声が響き渡る。

 

 

そんな中で、雷門中の片隅にあるオンボロ部室……サッカー部の部室では、円堂の大声とそれに合わせた部員達の声が響いていた。理由は至極単純、フットボールフロンティアへの出場権を獲得した喜びが爆発したのである。

 

 

やる気に満ち溢れた部員達と、出場の喜びを分かち合う。去年は部員数の関係上出来なかった円堂の夢の1つが叶い、ジーンとした気持ちの余韻を味わっていた彼に向けて幼なじみの風丸が声を掛ける。

 

 

「んで、相手はどこなんだ?」

 

「……相手は………!!」

 

「あ、相手は……!?」

 

 

やはり気になるのは初戦の対戦校。やはり最初の相手は大切だ、これで初戦に帝国学園と当たるなんて言われた日には目も当てられない。

 

円堂の鬼気迫るような気迫に押され、宍戸がゴクリと唾を飲む。みなの視線が集中する中、円堂はかっ!と目を見開いて______

 

 

 

 

「…………知らんっ!!」

 

 

部員の大半がずっこけた。

 

 

 

「………やっぱりな……」

 

「たははは……」

 

 

 

どうせそんなことだろうと思っていた豪炎寺がため息混じりに呟くと、誤魔化すように円堂が笑う。

 

そんな時に、思わぬところから次の対戦相手の情報が飛び込んできた。

 

 

 

「野生中ですよ……」

 

「ん?」

 

 

円堂が後ろを振り向くと、そこに立っていたのはサッカー部の顧問である冬海。ちょうど昨日、各学校のサッカー部監督は抽選会を行ったのだ。それ故に、基本部の活動に興味の無い冬海も知っていたのだろう。

 

 

「野生中は、確か………あっ!昨年の地区予選決勝で、帝国と戦っています!」

 

「すっげぇ!そんな強いチームと戦えるのか!」

 

「初戦から大差で敗退……なんてことは勘弁して欲しいものですがね」

 

 

音無が手元の資料を覗きながら野生中の名前を探す。すると昨年の東京地区予選において、野生中は古墳中や北斗星学園、暴走学園などを下して見事決勝に駒を進めている。そんな実力ある学校と初戦から戦えることに円堂が喜びをあらわにするが、そこに冬海が水を差す。

 

 

 

「あぁ、それと……」

 

 

冬海が何かを言おうとしたのでみながそちらに注視すると、彼の後ろ、ドアからひょっこりと顔を出して一人の青年が現れた。

 

 

 

「チィーッス!!俺、土門飛鳥!一応、ディフェンス希望ね!」

 

「あぁーっ!」

「今朝の転校生っス!」

 

「おっ、お二人さん奇遇だな!サッカー部だったのね」

 

 

軽いノリで現れた男こと、土門飛鳥。今朝見かけた転校生がサッカー部入部希望と知って驚く壁山と少林寺だったが、土門も偶然声を掛けた2人がサッカー部だったことに驚きながらも気さくに声を掛けた。

 

 

「しかし、君も物好きですね。こんなうだつの上がらないオンボロ部室のサッカー部に入部したいだなんて…」

 

 

 

自身が担当する部活動にも関わらずそう吐き捨てた冬海は、そのまま興味も無さげにその場から去っていく。いくら何でもあんまりな担当顧問の態度に、思わず眉間にシワを寄せながら土門が後ろ姿を指さすが、半田が無理無理と言わんばかりに手を横に振る。冬海の態度はサッカー部が創設されてから変わったことは無い。

 

 

 

「土門君!」

 

「ん?………あれぇ、秋じゃない!!お前雷門中だったの!」

 

 

冬海が部室から去った後、椅子に腰かけていたマネージャーの木野が土門へと声を掛ける。彼女の姿を認識すると、土門も彼女を下の名前で親しげに呼ぶ。円堂が二人に知り合いかを尋ねると、「うん、昔ね」と木野が曖昧に笑った。

 

 

「とにかく!!歓迎するよ、土門!!一緒にフットボールフロンティアに向けて頑張ろうぜーっ!!」

 

 

円堂ががっしりと土門の手を握ると、嬉しそうにブンブンと握手を交わしながらそう言った。この時期にわざわざDFという守りの選手が仲間になったこともだが、単純にチームメイトが増えることを喜んでいるようだ。控えの少ない雷門にとって、新加入の選手はありがたい。

 

 

「うおわっと……でも相手野生中だろ?大丈夫かねぇ?」

 

「んだよ、新入りが偉っそーに」

 

 

円堂の喜びように困惑しながらも、土門がそう呟く。いきなり雷門の実力も知らない、新加入したばかりの彼がそんなことを言ったので切り込み隊長である染岡が反発した。

 

 

「前の中学で戦ったことあるけど、瞬発力、機動力共に大会屈指だ。特に、高さ勝負には滅法強いのが特徴さ。このチーム、あいつらに対抗出来る必殺技あるの?」

 

「あぁ!俺たちにはファイアトルネードにドラゴンクラッシュ、ドラゴントルネード!クロスドライブやローリングキック、アスタリスクドライブだってあるし、宍戸のグレネードショットだってあるもんな!!」

 

 

 

土門が尋ねると、円堂が現段階で雷門メンバーが使えるシュート技を列挙していく。宍戸が新たにシュートを習得したことで、雷門でシュート技が使える選手は5人。手数が増えれば、それだけ得点源である豪炎寺や染岡が動きやすくなるので攻撃力は格段に上がっていた。

 

しかし、土門はそれに否定的な言葉を述べる。

 

 

「どうかなぁ……その必殺技って、殆どが地上で放つシュートだろ?高さがあるのは、豪炎寺が関連する技のみ……豪炎寺だって、上から押さえ込まれちゃうかも」

 

「んなわけねぇだろ」

 

「俺たちゃ帝国とも互角にやり合ったんだ、今更そんなチームに負けるわけ______」

 

「いや。土門の言う通りだ」

 

 

土門の知っている範囲では、今円堂の述べた技の殆どは飛びあがらずに地面に足をつけて放つものばかり。具体的にはアスタリスクドライブも空中から放つが、あれは豪炎寺ほど高いジャンプを必要としない。

 

現時点で雷門最高の高打点シュートを持つ豪炎寺ですら押し込まれるという言葉に、染岡と半田が噛み付く。なまじ帝国にも勝てそうだった故に、そんなチームに負けるわけがないと述べようとした時に、彼らの後ろから土門を肯定する声が響いた。

 

 

 

「俺も奴らとは戦ったことがある。空中戦だけなら帝国をも凌ぐ……あの高さで上を取られたら、ファイアトルネードは使えない」

 

「で、でも、尾刈斗の時みたいに何か方法があるかも……!」

 

「アレは感覚狂わせるのを防いだってだけじゃん。物理的に抑えてくるのを、空中で躱すのは無理でしょ」

 

 

雷門メンバーでも試合経験豊富なエースストライカー、豪炎寺からの言葉に、染岡達も黙り込む。それでも何か方法があるのではと宍戸が問うが、マックスがそれを否定。いくら豪炎寺でも、自分より高い位置にいる相手を躱してファイアトルネードを放つ事は不可能だ。仮に出来ても体勢を崩して、地面に激突する恐れすらある。そんなことを彼にさせられない。

 

 

「そんなぁ……」

 

「必殺シュートが抑え込まれるかもしれないなんて……あっ、でも地上でチェインすれば!」

 

「野生は瞬発力も高いんだ、チェイン前にブロックかけて切られちまうよ」

 

「打つ手がないじゃないですかーっ!!」

 

 

新加入の土門だけでなく、自分達のエースまで同意して野生の強さを述べる。頼りのエースストライカーの代名詞である必殺技が使えないと知った宍戸が、それならば地上から攻めればと提案。しかし機動力の高い野生相手に地上戦を挑めば、余程のスピードがないと潰される。打つ手がないと、宍戸が頭を抱えた時だった。

 

 

 

「______新っ!!必殺技だ!!」

 

 

唐突に叫び始めた円堂に視線が集まる。いきなり新技と言い出した円堂に、染岡がため息を混じえて聞き返す。

 

 

「新技だァ?試合まで大して日にちもねぇのに、作れんのかよ?」

 

「俺達ならやれる!!空を制するんだ!!」

 

 

打つ手が無いのなら作ればいい。前向きな円堂らしい言葉にみんなが面食らっていると、ボールを持って、率先して部室から出ていった。

 

 

 

 

 

 

☆☆★

 

 

 

 

 

「行くぞーっ!!」

 

「お前そんな馬鹿でけぇ車どっから持ってきた!?」

 

「雷門に頼んだら貸してくれた!!」

 

 

 

円堂は理事長の娘である雷門夏未から借りて来た高所作業車の上に乗り上がり、真上からボールを落とす体勢を整える。高さに対抗する為の必殺技を身に付けるために、上から落ちてくるボールをキックする特訓に入るようだ。

 

 

 

「え、部室前でやんのか?サッカーコートとかないのこの学校」

 

「グラウンドは今日はテニス部が使ってるよ」

 

「明日はラグビー部」

「明後日は相撲部っス」

「その次はバスケ部の外練でやんす」

 

「………立場ねぇのな、このサッカー部……変なとこ来ちまったなぁ……」

 

 

帝国時代は十数にも及ぶサッカー部専用グラウンドに、大勢が浴びられる専用シャワー室。果ては設備の整った寮すらも存在した。

 

対して雷門は、豪炎寺がいるものの未だに大会で結果は残せていないので学内の立場は変わらず。グラウンドの使用権すら貰えないよわよわサッカー部だ。環境のギャップに思わず土門がため息をつく。

 

 

「行くぞ染岡ーっ!!………あっ」

 

「あっ、じゃねぇよてめぇ!!どこに投げてんだ、俺はボール拾いかゴラァ!!」

 

 

 

イマイチ狙いの定まらない円堂に染岡が拾い岡と化してる状況を横目に見ながら、土門は近くの木陰に立っていた旧友に話し掛ける。

 

 

「よっ!どう?似合ってる?」

 

「ふふっ……うん。似合ってるよ」

 

 

新しい雷門のユニフォームを着た土門は、それを見せるようにポーズを取ってみせる。昔とノリの変わらない友人に小さく笑いながら、木野は土門の言葉を肯定する。

 

 

「……秋。お前、またサッカーに関わってたんだな」

 

「……うん。やっぱり、私もサッカーが好きだから。______みんな、頑張ってー!」

 

 

 

未だに上手くボールを落とせない円堂に、染岡が「そこ変われてめぇ!!」と大声で叫ぶ。そんな彼らに向けて応援の声をかけるように……土門との会話を切るようにした木野。その様子を見て、やはり吹っ切れては無いのだな、と密かに思う土門だったが、そんな彼の方にポン、と手が置かれる。

 

 

「ん?……ちょおっ!?」

 

 

ふと振り向けば、そこにいたのはもう一人のマネージャー。元新聞部で、帝国との試合後に加入した音無だった。キラッキラに目を輝かせた彼女は、土門が驚くほどの力で彼を引っ張っていく。

 

 

 

「ちょっとちょっと土門さん!!木野先輩と、どういうご関係なんでしょうか!!やっぱり昔の、深い仲とか!?」

 

 

 

メモとペンを準備して、そう尋ねてくる音無。どうにも年頃の彼女は、親しい様子の木野と土門のことが気になった模様。ずずいっ、と土門に迫りながらその仲を掘り出そうと目を輝かせる。

 

 

「ちょちょっ、そんなんじゃねぇよ。昔、アメリカにいた時の幼なじみってだけで……」

 

「幼なじみですか!!幼なじみですか!!」

 

 

幼なじみということを聞いた音無が、より一層興味を深めたようにペンを走らせる。帝国では影山の方針により、校則で恋愛禁止。そもそもサッカー部のマネージャーになれるのは男子のみだったので、女子のいる雷門の方が華やかじゃん……と、思っていたのだが。こうも興味津々でこられると辟易してしまう。音無というよりやかまし、かしましである。

 

 

 

「…………ほんとに、そういうのじゃねぇよ」

 

「……?」

 

 

少し暗い顔を見せた土門に、音無が首を傾げる。唐突だった故になぜかと思った彼女だったが、はっと察したような表情を浮かべると至極申し訳なさそうな顔を見せて謝罪する。

 

 

 

「……すみません、フラれたんですね……」

 

「だから違うって言ってんでしょお!?ほんっとに昔仲良かった4人組のひとり!そんだけ!!ったく、元新聞部だかなんだか知らないけどやめてくれよそういうの……」

 

「えへへー、木野先輩が頼りになるって言ってたからつい……ごめんなさーい」

 

 

可愛らしく両手を顔の前で合わせる音無に、調子良いんだから……と呟きつつ頭を搔く。

 

そんな土門は、ふとアメリカ時代のことを思い出した。

 

 

 

自分と木野。今は亡き親友、フィールドの魔術師と呼ばれた生粋のファンタジスタ、【一之瀬(いちのせ) 一哉(かずや)】。そして、もう一人の大事な友人。

 

 

 

「………西垣の奴、元気かなぁ」

 

「?どうしました、土門さん」

 

「んにゃ、何でもないよ。俺も練習頑張るかね!」

 

 

一之瀬にはもう会えないけれど、木野と自分と、中学進学を機にアメリカで別れた彼も交えて。またサッカーをやってみたいと、密かに思う土門なのであった。

 

 

 

 

 

 

☆☆★

 

 

 

 

 

「ぶち抜いてやるっしょーっ!!」

 

「おら、かかってこいタラコグラサン共!!」

 

 

 

ボールを足元に置いた、紫色のリーゼントにグラサンを掛けたタラコ唇というなんとも形容しがたい容姿をした選手がシュートする旨を伝える。それを受けたゴールキーパーの少年が、キーパーグローブを嵌めた両手を鳴らして挑発。

 

 

「誰がタラコグラサンだこらぁ!!行け、努!!」

 

「よっしゃぁ!!友っ!!」

 

「せぇいやぁぁぁ!!」

 

 

容姿を的確に捉えたあんまりな呼び名に憤慨した紫色のリーゼントが、前方にいた同じ顔の緑色のモヒカンへとシュート。努と呼ばれた彼は、それを蹴り返すように斜め上へとキック。すると最初のリーゼントを踏み台にして、これまた同じ顔のピンク色の七三分けが大きくジャンプ。渾身の力を込めてシュートしたボールの軌道は、横から見たら綺麗にアルファベットのZを描いていた。

 

 

「「「【トライアングルZ(ゼェーット)】!!」」」

 

 

2人が土台となり七三分けがその手の上に乗るという、奇抜な決めポーズを見せるタラコグラサン共。しかし侮るなかれ、そのシュートは帝国のデスゾーンに匹敵……下手したら超えるレベルの威力を誇る。

 

 

「行くよ、西()()!」

 

「おう!」

 

「「【スピニングカットV2】ッ!!」」

 

 

 

そのシュートの前に立ちはだかったのは、2人のDF。そのうちの一人が、もう一人のドレッドヘアーにバンダナを巻いた友人に合図すると、タイミングを合わせて同じ技を発動。二枚重ねられた青色の衝撃波が、シュートを通すまいとブロックをかける。

 

 

 

「【ロックアーム=ゴング】っ!!」

 

 

 

2枚の壁に阻まれたトライアングルZは、彼らのブロックをぶち破るものの威力が落ちてしまう。いくら強力なシュートといえど、こうなれば止めるのはそう難しくない。

 

ゴールキーパーの少年が全身に力を込めると、大気が揺らめくほどの圧が迸る。その膨大なエネルギーの余波で地面が抉れていくと、行き場をなくした岩塊が引き寄せられるようにして彼の右腕へと集まった。

 

腕と岩、岩と岩が互いに密着するように集結していくと、彼の右腕は次第に巨大な石腕へと変化。大きく振りかぶり、まるでゴングがなった瞬間のボクサーのように、渾身の右ストレートをボールへと叩き込んだ。

 

 

「っらぁ!!!」

 

「ぶべおっ!?」

 

 

 

気合を入れた声と共に少年が腕を振り切ると、ボールはあえなく弾き飛ばされ、ポージングをしていたタラコグラサン一号の顔面へと衝突する。

 

 

「あっ、悪ぃ勝」

 

「悪ぃ、じゃねぇっしょ!!ふざけんな佐藤てめぇ!!」

 

「変なポージングしてたお前が悪いんだろ〜?俺止めただけだし」

 

 

 

ギャーギャーと騒いだタラコグラサン一号こと、【武方(むかた) (まさる)】。とある帝国学園の特待生と同じ名前をしているが、特に関連性は無いという悲しい男。だが、この名門木戸川でレギュラーを掴み取っている実力者でもある。

 

 

「トライアングルZが止められるなんてーっ!!」

「信じられないんだぜーっ!!」

 

「……割と頻繁に止められるけどね、クソダサZ」

 

「ははっ……流石にあのポーズはなぁ」

 

 

三つ子の三兄弟で編み出した渾身のシュート技を止められたことに、次男の友、三男の努が頭を抱えて叫ぶ。だが実際にはブロック込みならば練習でもそこそこ止められているのが現状だ。仮にゴールキーパーの少年だけなら、三兄弟の技は決まっていただろう。十分に強いのである。

 

 

……といっても、この三兄弟はチームのいじられ役。それを素直に口にすることはなく、ポージングのダサさに苦笑するDFの少年。隣に立つ西垣と呼ばれた彼も、それに同意するように笑っていた。

 

 

 

「おーい、お前らーっ!!休憩だってさー!!」

 

 

そんな彼らの元に、一人の少年がやってきて休憩の旨を告げる。先程のDFやGKの昔馴染みである、木戸川清修のMFを務める人物だ。

 

 

「おうバカ本。ご苦労っしょ」

 

「なんで上からなんだよ変態タラコ」

 

「そうですよ、勝は変態だったとしても変態という名の紳士ですよ!」

 

「友、フォローになってないっしょ」

 

「冗談ですよ、冗談」

 

 

 

バカ本と呼ばれた少年が顔を歪めながら長男の勝に突っかかると、彼に注意する様な口調で勝をからかう次男の友。いじられ役の三兄弟といっても、こだわりの強い長男と口調の荒い三男に比べて、人当たりのいい次男はみんなの相談役として慕われているのだ。

 

 

 

「まぁいいからさ、休憩しようぜ。トライアングルZ何回打つつもりだよ」

 

 

そんな中でマトモな西垣が休憩するように三兄弟と三馬鹿を促す。疲れているのは事実、さっさと休憩に入ろうとボールを置いた、その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「______すんません、佐藤サン。シュート受けて貰えないっすか」

 

 

のそっとその場に現れた、小柄な人物。小太り気味であり、この間入部してきたばかりでレギュラーチームに加入した一年生。勝たち三兄弟と同じFWの彼は、GKを務める佐藤に声を掛けた。

 

 

「ん?おう!いいぜ」

 

 

佐藤が快く了承すると、軽く頭を下げてシュート体勢に入る。その傍では武方三兄弟にバカ本と呼ばれたMFの坂本、先程のDFの田中、西垣も見守っていた。

 

 

 

 

「______フッ!!」

 

 

小柄な少年は、その小太り気味の体型からは想像もつかないほど素早くボールをカカトで蹴り上げる。そして力を溜めると、彼の周りに炎が湧き上がってくる。

 

その炎を纏って、彼が跳躍。螺旋状に付随した炎を足に纏うと、彼はカッと目を見開いて右足でボールを蹴りつけた。

 

 

 

 

【ファイア______トルネード】ッ!!

 

 

 

憧れのストライカーと同じ必殺技。何度も特訓し身に付けたその爆炎のシュートを放つ。一年生、しかも小柄な体型とは思えないほど高い威力を持って、ゴールを燃やし尽くさんがために飛来する。

 

 

「【ロックアーム=ゴング】っ!!」

 

 

今一度佐藤が必殺技を放ち、その石腕で炎のシュートを殴りつける。極大の岩塊すらも燃やし尽くさんと炎が躍動するが、流石に及ばなかったようで。しばらく拮抗していた両者だったが、軍配があがったのはGKの佐藤にだった。吹き飛んだボールを足で受け止めながら、小柄な少年が「ちっ」と舌打ちする。

 

 

 

「はぁ〜、まだまだ甘いっしょ」

「豪炎寺には遠く及ばないですね」

「所詮模倣品って感じ?」

 

 

同じFWの三兄弟がやれやれとでも言いたげに同じポーズで後輩を煽る。普通ならば名門のレギュラーである先輩にそんなことを言われたら意気消沈するものだが、小太り気味の少年はギッ、と睨みつけて3人に食ってかかった。

 

 

「うるっせぇタラコ共!!豪炎寺さんに負けてるなんて俺が一番わかってるんだよ!!てかお前らの個人シュートよりマシだわ!!」

 

「なんだとてめぇ小デブ丸!!先輩に向かってなんて口の聞き方だっしょー!!」

 

「俺は豪炎寺さんに憧れて木戸川に来たんだよ!!蓋開けてみればとっくに転校してていたのはタラコとタラコとタラコ!!このチームのFWで認めてるのは『あの人』だけだわ!!」

 

「なんだとーっ!?確かに『アイツ』はすげぇけど、()()()()()()()()豪炎寺はもっとすげぇんだからな!!お前なんて遠く及んでねぇっしょ!!」

 

「んだとやるかタラコ一号………」

 

「上等っしょ、今日こそ先輩の威厳ってもんを教えてやらぁ………」

 

 

 

そこら辺のチンピラのごとくガン飛ばし合う後輩とグラサンの先輩。そのままお互いに睨み合いながら、もう片方のゴールの方へと並んで歩いていく。恐らく控えに回っている三年生のキーパー、南山に相手を頼むつもりなのだろう。

 

 

「まーたやってんのかあの二人……」

 

「この間はどっちがより豪炎寺のこと知ってるか勝負やってましたよ、うちで」

 

「仲良しじゃねぇか………」

 

 

 

険悪な雰囲気漂うように見えるが、お互い同じストライカーに憧れているので実際のところそれなりに交友のある2人。先日も武方三兄弟の家に遊びに来て豪炎寺の出ていた去年の試合を観戦したりしていた程だ。それを聞いた坂本がなんだかんだ仲良しな問題児ふたりに苦笑する。

 

 

 

「おい、勝、小僧丸。二階堂監督が呼んで……って、いないのか?」

 

 

 

熱狂的豪炎寺ファンの2人と入れ替われるようにして、一人の青年がやって来る。どうやら自分たちの監督からあのアホ二人が呼び出された様だが、シュート勝負に行ってしまったのでこの場にはいない。

 

離れた場所で三年生相手にギャーギャーと喧嘩しながらシュートを放つ目的の二人を見て、やってきた白髪の青年がため息をついた。

 

 

 

「………また()()関連か」

 

「いつものやつらしいよ」

 

 

 

あの一年生が入部してからというもの、元々うるさかった長男が更に騒がしくなった。実力はあるのだが、監督から呼び出された時もああやって勝負するのは辞めて欲しいと思う青年。その隣で、同じ時期にチーム入りした西垣が変わらぬ彼らに向けて笑っていた。

 

 

 

「そういや、あいつらが言ってる修也ってそんなに強いのか?お前、【従兄弟】だろ?」

 

「ん?あぁ、強いぞ。昔は会ったらよくサッカーバトルしていたが、勝てた試しは無かったな」

 

「げぇ、お前が勝てないって相当だろそれ……」

 

 

 

目の前の彼は、現木戸川清修の切り札だ。そんな彼が幼い頃とはいえ勝てなかった相手なんて想像つかない。三兄弟や後輩が……いや、木戸川清修全体からその強さを語られる豪炎寺修也という男の存在に、西垣が頬をひくつかせる。

 

 

 

「まぁ、今戦ったら分からないさ。俺も練習してきたし、チームのみんなもいる。それにお前だって、帝国の友達に会うまで負けられないんだろ?」

 

「まぁね。あんまり名前聞かないけど……あいつなら大丈夫だろ!きっと、フットボールフロンティアで会える」

 

 

仲の良かった4人組。そのうち、リーダーであった彼はもうこの世にはいないが、他のふたりはきっとどこかで元気にやっているはずだ。今となっては連絡先も知らないが、みんなサッカーが大好きだった。あんなことがあっても、きっとサッカーを通じてどこかで会えるはずだ。

 

 

 

「その為にも、負けられないな。やってやろうぜ、西垣」

 

「……おう!」

 

 

かくして、彼らは決意を新たにする。

 

フットボールフロンティア決勝常連、去年の決勝で帝国学園から得点を奪って見せた強豪、木戸川清修。そう遠くない未来、『彼ら』の目の前に立ちはだかる、大きな壁。

 

 

「どぉーっだ!!俺のシュートの方がすごいっしょー!!」

「いいぞいいぞ勝ー!!」

「やってやれー!!」

 

 

成長した自分たちを豪炎寺へと見せる為に躍動するFWの武方三兄弟。

 

 

「あいつらほんっと変わんねぇな……まぁ強いし、いいか」

「そーそー、頼りになるからいいじゃん。帝国相手にするなら、FWが強いに越したことないし」

「五条のやつ元気かなぁ……小鳥遊や比得にも会えたりして!!」

 

 

本来はいないはずの彼ら。かつてのチームメイトに会うために、頼りきりでは無い己を見せるために突き進む坂本、田中、佐藤のリトルエンペラーズの三馬鹿。

 

 

「にしても二階堂監督怒ってねぇかなぁ……練習メニュー増やされるの勘弁だぜ……」

 

 

縁の下の力持ち。アメリカのリトル時代に、一之瀬や土門と共にその名を轟かせた日本人プレイヤー、西垣守。

 

 

 

…………そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

「てめぇ今のは俺より前から打ってただろうが!!仕切り直しだ仕切り直し!!」

 

「はっはは………負けず嫌いだなぁ。そういうとこは、結構修也と似てるかもな」

 

 

 

 

______憧れの背中を追って。いつか会うはずの恩人への感謝を胸に走り抜ける、【小僧丸(こぞうまる) サスケ】。そして炎のエースストライカーの血脈を持つ木戸川の切り札、【豪炎寺(ごうえんじ) 真人(まさと)】。

 

 

過去最高の布陣。歴代最強の木戸川清修が観客を湧かせる日は、刻一刻と近づいていた。

 




土門・西垣「あいつ死んじゃったからなぁ」

謎の帰国子女「俺だよっ☆」


土門と西垣と秋ちゃんは彼をジャイアントスイングしても許されると思う
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