イナズマイレブン! 脅威の転生者 ゴジョウ!!   作:ハチミツりんご

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第四十二条 完璧なるサッカーサイボーグ

 

 

都内某所、とあるサッカーコート。人工的な光に包まれた、完全室内のコート上で22人の選手達が走り回る。

 

 

「豪炎寺っ!」

 

 

雷門の2番がドリブルで上がり、10番を背負うエースストライカーへとボールを送った。それを確認した相手チーム……半透明の液晶板が取り付けられたメガネ型の機械を装着するGKが、コンピュータによる演算補助を受けながら緻密に分析する。

 

 

「キッカー、豪炎寺修也。状況、体勢、跳躍、足の角度から計算……ファイアトルネードの可能性、96.75%……」

 

 

「【ファイアトルネード】っ!!」

 

 

パスを送られた豪炎寺の様々な情報から瞬時に計算。豪炎寺の得意技、ファイアトルネードだと導き出した通りに、豪炎寺は回転しながら炎を纏った左足を振り抜いた。

 

 

 

「シュートポケットのみでは突破される可能性46.28%……パターンDに移行」

 

 

分析を続ける、スキンヘッドに紺色の髪を複数のトゲのように纏めた髪型のキーパーは拳を真っ直ぐボールに向けて構える。すると、黄色のエネルギーが巨大な拳として具現化した。

 

 

 

「【ロケットこぶし】!」

 

 

その名の通り、ロケットのように発射、加速した拳状のエネルギーがファイアトルネードに激突。しばらくはギリギリと拮抗していたものの、炎のエースストライカーの実力が上回ったようで。拳は弾き飛ばされるが、それすら全て計算のうちだ。

 

 

 

「ロケットこぶし使用後のファイアトルネードを止められる確率……100%……!【シュートポケットV2】っ!!」

 

 

両手を交錯させながらエネルギーを空気と織り交ぜる。エネルギーの力によって圧縮された空気の塊を広げるように両手を解放すると、密度の高まった空気の壁が彼の目の前で円状に広がる。威力の落とされたファイアトルネードは、その空気の壁に阻まれて失速。ただの棒球と化したボールを、キーパーは悠々とキャッチした。

 

 

 

その後、キーパーのパスを受けた選手達が緻密な連携でパスを回す。雷門の選手達もそれぞれがディフェンスに向かうが、全て計算によって必殺技すら無しに躱されていった。

 

 

「………ふっ!!」

 

 

そして10番を背負った、後ろ髪をカールさせた紅色の髪の毛の選手がタイミングを見極めてシュート。すると雷門のDF達の足の間を抜けるようにして飛んでいき、DF達の身体が目隠しとなって反応が遅れた雷門の守護神、円堂も止められずに得点。これで、彼の得点は4点目だ。

 

 

その点が決まった瞬間、部屋全体の明かりが灯る。グラウンドのみを照らすようにしてあった光が、おびただしい量の精密機器を照らし出した。

 

 

『______試合が終了しました。シミュレーションのデータを保存してください。試合が終了しました。シミュレーションのデータを______』

 

 

無機質なアナウンスが響く中、雷門中の面々は時が止まったかのように静止した。円堂に至ってはボールを止めようと飛び上がった状態で止まっているのだが、対するチームの面々はそれを気にした様子もなくコート端に一列に並ぶ。

 

 

 

そんな彼ら………ホログラムの雷門中を相手に快勝を収めた『御影専修農業高校附属中学校』、通称【御影専農】のサッカー部を上から眺めながら、怪しげな男が隣に立つ絶対的上位者に自慢気に語る。

 

 

「ひっひひ……素晴らしいでしょう総帥!我が校の誇るコンピューターシステムで管理されたサッカー選手達は……!」

 

「なるほど。プログラムデータ相手とはいえ、よく仕上がっている」

 

 

コンピュータを操作して選手たちに指示を送っているのは、巨大な単眼のような機械を身に付けた富山という御影専農サッカー部の監督。その隣で、起伏の無い声で呟きながらロボットのように規則正しく並び立つ御影専農の選手たちを見つめる男。帝国学園総帥である影山零治と、帝国サッカー部主将の鬼道有人。それに、鬼道の親友にして特待生の五条だ。

 

 

「このプログラムは相手チームを完璧に分析しているのですよ…!サッカーサイボーグとも呼ぶべき私の選手達が、本番でも完璧な勝利をお見せするでしょう……!!」

 

「ふっ…勝利。完璧な勝利、か………あぁ、期待しているとも」

 

「は、ははぁ!!ありがとうございます!!」

 

 

権力者である影山からの期待に、にやけるのを堪えながら富山が素早く頭を下げる。これで上手く雷門を排除すれば自分はさらに上の地位にいける。そう確信し、プログラムの強化に熱を入れる富山を横目に見ながら、影山は二人を連れてその場から立ち去った。

 

 

「ふ、ふふ……!!これで、私の地位はさらに盤石なものに……!!いずれこのプログラムとサッカーサイボーグで、帝国すら打ち破り、私がサッカー界に君臨するのだ……!ひひっ、ひっひっひっひっひぃ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前達、アレは雷門に勝てると思うか」

 

「無理でしょう。期待をかけるだけ無駄です」

 

「同じく……お粗末もいいところですねぇ」

 

 

多数の機械が混在する廊下を進みながら、影山が鬼道と五条に問う。すると彼らは揃って雷門に勝つことは不可能だと断言、影山もその言葉を聞いて小さく頷いていた。まず間違いなく、御影専農では雷門には勝てない。

 

 

「アレは雷門を完全再現したんじゃない……雷門のステータスを持つ木偶人形だ。動きも何もかも直線的、模範通りのつまらないプレー……雷門の長所を完全に殺している」

 

 

先程のプログラムを眺めていた鬼道がつまらなそうにそう言い放つ。雷門は効率度外視、その場の感情に任せた予測不可能の動きこそが最大の持ち味だ。全員の長所を活かしつつも型に嵌らない不可思議さ……常に最善の行動をとるプログラムでは、その長所は消えてしまう。そうなれば、データ上の雷門なんぞ相手にもならない。

 

 

 

「もう少し使える男だと思っていたのだがな。私の買い被りだったようだ………五条、お前はどうだ?何か感じたか?」

 

「特には何も。随分とつまらないサッカーをすると思った程度です」

 

「つまらないサッカーか………あぁそうだな。酷くつまらない。勝ち目の無い戦い程、見ていてつまらないものは無いからな」

 

 

五条がつまらない、と表現すると、影山は嗤いながらその意見を肯定した。

 

 

「優れた司令塔というものは、試合の前に勝っているものだ。何が起ころうと、不変の勝利をもたらす事………それこそが強者の存在意義。飽くなき完全な勝利こそが、最高の楽しみというもの。現実を見極められず架空の勝利の上で踊る三流役者なんぞ、存在する意味は無い」

 

 

影山からしてみたら、富山は酷く滑稽だ。言葉の真意を読み取れず、表面しか見ていないから影山の遠回しの侮蔑にすら気が付かずに踊り狂う。あんな人材はこれから先で毒にはなれど役に立つことは無い。試合の結果に関係無く、処分を下すことを影山は心の中で決定づける。

 

 

「お前たちはどう思う?全てを見透かす完全な道こそ、勝者に相応しいと思わないかね?」

 

「………俺は………」

 

 

影山が背後の二人にそう尋ねる。本来の鬼道ならばここで当然の如く肯定していただろうが、今この時の鬼道有人は、影山を肯定する言葉が即座に出てこなかった。

 

 

「______ふむ。五条、君はどうだ」

 

「決まった結果の上に成り立つものが強者ならば、それこそ酷くつまらない。どちらに転ぶか分からないからこそ、面白いのだと思いますがねぇ………」

 

「おや、意見が合わないな。残念だ」

 

「ええ、残念です………本当に。クククッ」

 

 

 

その言葉を最後に、3人は会話を辞める。カツカツと響く3人分の足音のみが、数多の機械音に掻き消されていた。

 

 

 

☆☆★

 

 

 

 

 

「勝。試合の方は連絡は来たか?」

 

「先程佐久間から報告がありましたよ。前半10分時点で17得点、北斗星学園側が試合放棄したため帝国の勝利に終わったようです」

 

「ふっ……流石は寺門達だな。まぁ、そんな雑魚共相手に手こずるわけもないか……」

 

 

 

影山と別れた後、彼の用意した車には乗り込まずに御影専農の正門前にやってきた鬼道と五条。本日はフットボールフロンティア東京地区予選の二回戦、帝国学園にとっての初戦がある日なのだが、この2人抜きでも負けるわけは無い。

 

実際、実力差に心を折られた相手チームの棄権によって、既に勝敗は決していた。危なげない、帝国学園の準決勝進出だ。

 

 

 

「………それにしても、お前は相変わらずとんでもないな……総帥に真っ向から違う意見をぶつけるか、普通……」

 

「と、言われましても……嘘ついてもバレそうですし。それより印象良いでしょう?クヒヒッ……」

 

「そういう意味ではないが……まぁいいさ」

 

 

呆れ混じりに鬼道が親友へと小言を投げる。帝国学園にとって影山零治は絶対だ、それは長年彼の元でサッカーを教わっている鬼道有人だって例外では無い。

 

そんな影山に真っ向から意見出来る親友の胆力を褒めたつもりだったが、彼ははぐらかすように笑った。

 

 

 

「…………ほんっと、未来なんか知らない方が幸せなんですよ……」

 

「ん?何か言ったか、勝」

 

「いえ、何も。………来ましたよ」

 

 

 

ポツリと五条が何かを言ったような気がしたが、首を振って何も無いと言う。そんなやり取りをしているうちに、目的の人物たちがやってきた。

 

 

「______ん?」

 

「よう、サッカーサイボーグ共」

 

 

 

練習を終えて、御影専農の制服に身を包んだ4人の人物達。

 

GKを務める、三年生でキャプテンの【杉森(すぎもり) (たけし)】。二年生でエースストライカーを務める【下鶴(しもづる) (あらた)】。チームの要である2人に加えていたのは、杉森と同じく三年生でレギュラーの【寺川(てらかわ) (いわお)】と【山郷(さんごう) (ばく)】だ。

 

五条があまり見覚えのない2人もいることに首を傾げるが、特には気にならない。原作ではこのシーンにいなかった気もするが、自分の勘違いかもしれないからだ。

 

 

 

「………帝国学園の鬼道。それに五条」

 

「はじめまして、ですねぇ。貴方達は雷門へ偵察などはしないでいいのですか?次の対戦相手でしょうに」

 

「必要無い。我々は既に雷門のデータに勝利している」

 

 

 

本来いるはずのない相手の登場だが、御影専農の選手達は訝しがることも狼狽えることもしない。五条から偵察はいいのかと聞かれれば、データ上の雷門に完全勝利を収めているため時間の無駄だと告げる。

 

 

「ふっ…シミュレーションは完璧、とでも言いたげだな。所詮はデータの再現に過ぎないのに」

 

「シミュレーションのデータは完璧だ。雷門の能力は、我々全員に情報として完全にインプットされている」

 

「更に我々には帝国学園選手の身体能力、必殺技データもインプットされた。雷門に負ける可能性は0%だ」

 

「……俺たちのデータだと?」

 

 

データ上に過ぎない雷門へ勝利しただけで本番の勝利を確信している御影専農に嘲りの表情を浮かべる鬼道。しかし、寺川と山郷の……特に山郷の言い放った帝国学園のデータに、訝しげな表情を浮かべた。

 

 

「なるほど。あの富山という男、間抜けだと思っていたがここまでとはな」

 

「にしてもそんなこと漏らしていいんですかね、貴方達……」

 

「帝国学園総帥、影山零治への発言は認められていない。が、帝国学園の選手達に発言してはならないというデータはインプットされていない」

 

「あ、そう……」

 

 

これは富山の歴とした反逆の証拠だ。そんな情報漏らしていいのかとも思うが、帝国の選手に喋ってはいけないという指示が出ていないので問題ない、という事。御影専農の選手を責めるというより、反逆を起こそうとしているのに詰めが甘すぎる富山へ呆れの感情しか湧き上がってこない。

 

 

 

「……まぁいい。とにかく、お前達の持っていないデータを提供しよう」

 

「……目的はなんだ」

 

「せめて雷門といい試合して欲しいだけさ。軽々と超えられてもつまらないのでな」

 

 

肩を竦める鬼道。

 

彼は誇りあるサッカー選手だ。雷門との決着は自分で付けたいし、決勝戦にあがってくるのは間違いなく彼らだと思っている。しかし、どうせやり合うならあの時のように……あの練習試合のように、手に汗握る戦いをしたい。

 

 

「とにかく奴らは普通じゃない。奴らはな………馬鹿なんだ」

 

「馬鹿?」

「それがデータか?」

 

「あぁ、実のところ、俺達も上手い説明が見つかっていない。自分の目で、真実を確かめることを勧めるよ……」

 

 

そう言って、鬼道はその場を立ち去ろうと背を向ける。五条もそれに追随するが、鬼道は思い出したかのようにくるりと振り返って笑いながら彼らを見る。

 

 

「そうだ、GKの円堂……やつはとびっきりの大馬鹿だ。是非、確かめてみてくれ」

 

「馬鹿と、大馬鹿………」

「確かにインプットされていないデータだ」

 

 

 

鬼道の言葉を、大真面目に受け取る御影専農サッカー部。そんな彼らを横目に見ながら、鬼道と五条はその場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………有人。貴方御影専農に偵察に行かせるためにあんなこと言ったんですか?」

 

「まぁな。あぁ言えばきっと動くだろう……それに」

 

「……それに?」

 

「あの大馬鹿軍団を見れば、少しは人間らしくなるんじゃないか?」

 

「……人がいいですねぇ、貴方も」

 

「お前ほどじゃないさ」

 

 

 

その会話を最後に、2人は帝国学園へと戻っていった………。

 

 

 

 

 

☆☆★

 

 

 

 

 

「俺はここで。杉森さん、寺川さん、山郷さん。失礼します」

 

「あぁ」

 

 

短く礼をした後輩は、表情を変えぬまま自分たちと別方向へと歩いていく。それについては何も思わない。御影専農のサッカー部ならば皆そうだからだ。

 

 

 

「………馬鹿と大馬鹿か……」

 

「どうした、杉森」

 

 

三年生の3人で帰路を進みながら、キャプテンの杉森が呟いた。普段は家が近い故に帰り道が同じになっている3人の中でも会話が起こらないからか、その呟きを珍しいと山郷が拾った。寺川も、視線を彼らへ向けている。

 

 

「いや。なんの意味を持つデータなのかと思ってな」

 

「大きな意味は持たないだろう。我々の勝利は揺らがない、考えるだけ無駄だ」

 

 

鬼道有人と五条勝。規格外の実力を持つ、帝国学園の特待生達。そんな人物たちがわざわざやって来て言い放った馬鹿と大馬鹿という意味を考える杉森だったが、寺川が冷酷に意味は無いと告げる。どうせ数日後には意味の無くなるデータだ。

 

 

「それもそうだな」

 

「あぁ」

 

 

 

納得した杉森と、頷いた寺川。それを最後に、3人の間で会話が途絶える。レギュラーメンバーでは3人しかいない最上位学年だが、富山が監督に就任してからは話すことも減った。昔はもっと馬鹿話をしていた気はするが、今となっては意味の無い会話は不要だ。

 

 

 

「…………そういえば」

 

「なんだ、今日は随分喋るな」

 

「お前にしては珍しいな、威」

 

 

ふと思い出したかのように杉森が声を発すると、普段に比べて随分とお喋りな同級生に山郷と寺川が物珍しい視線を向ける。そんな二人の視線を受けながら、杉森は事も無げに呟いた。

 

 

 

「………考えれば、最後の大会だなと思ってな」

 

 

最後。杉森にとって、山郷にとって、寺川にとって。このフットボールフロンティアが、自分たちの中学サッカー最後の大会になることは目に見えていた。それを思い出した杉森だったが、2人は表情も変えずに前を向く。

 

 

 

「関係ない」

 

「データに従い、勝つだけだ」

 

「………そうだな。俺達は強くなった。負けることは無い。負けることは______」

 

 

 

何故あんなことを考えたのだろう。杉森は余計な情報を記憶の奥にしまい込み、そのまま黙って帰路を進んでいった……。

 

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