イナズマイレブン! 脅威の転生者 ゴジョウ!! 作:ハチミツりんご
影山が去っていった日の夜、俺は机に向かって、広げたノートにペンを走らせていた。
「……【ぶんしんフェイント】に【スーパースキャン】、【シグマゾーン】と【ディメンジョンカット】……あ、【バニシングカット】もあるのか。」
とりあえず、原作で五条さんが覚える必殺技を書き出し、具体的なイメージ図を書いていく。円堂のじいちゃんのノートを参考に、自分である程度の必殺技ノートを作成中だ。
他にも、俺が思い出せるだけの必殺技を書き連ねていく。いつ思い出せなくなるか分からないからね。
「……とりあえずはこんなものか。」
走らせていたペンを置き、ノートを閉じてホッと息を吐いた。
・・・これからどうしようかなぁ。実は影山が去った後、俺は老夫婦から施設の移動を勧められた。
何でも、影山から「勝くんのサッカーの才能を腐らせるのはあまりにもったいない。どうか、前向きにご検討いただけませんか?」と言われたそうで。
サッカーの素人である老夫婦から見ても、俺と鬼道の実力はずば抜けていると分かったらしく、影山に完全同意。
「こっちの心配はしなくていい、頑張ってきなさい。」との事だが、余計なお世話である。
いや、純粋な善意で言ってくれているのはわかっているのだが、俺は影山に近づきたくないねんな。
やだなぁ、マジで。
「・・・五条、ちょっといいか?」
唐突に部屋のドアが開き、鬼道が入ってくる。めちゃくちゃ深刻な顔してるけど、まぁ多分引き取りのことだろう。そりゃ悩むわな。
「実は、相談したいことがあるんだ。・・・少し、時間をくれないか?」
「ええ、構いませんよ。」
そう言うと、鬼道は俺の隣に座り、ポツリポツリと話し始める。
まぁ、要約すると影山からの紹介で鬼道家に引き取られることになったが、それは自分だけで春奈は違うこと、春奈を引き取る為にはフットボールフロンティアで3年間優勝し続ける事、その間一切連絡は取らないことが条件、ということだった。原作通りである。
「春奈も、別の家庭に引き取られるらしい。だが、あの子からすれば俺に見捨てられたようなものだ。・・・俺は、春奈のことが心配でたまらないんだ。」
こぶしを強く握り、泣きそうな表情でそう言った鬼道。心の底から心配しているんだろう。引き取られた先で馴染めなくて辛い思いをするなんて良くあることらしいし。
まぁでも、音無さんの家なら大丈夫だろう。原作でもすっごい明るい子になってたし。
「……貴方の気持ちは分かりますが、心配し過ぎな気がしますねぇ。高島さんはとても強い子だと思いますが?」
「それは分かっている!!だが、親がいなくなって、兄にも連絡が取れずに新しい環境に身を置くんだ!どれだけあの子に負担がかかるか・・・!!」
「それは、貴方も同じでしょう?それに、彼女を引き取るご夫婦は、とても温厚そうな人達でしたよ?」
「だが・・・!!」
「…………はぁ、分かりましたよ。なら、私が連絡を取りましょう。」
「っ!!本当か!?」
「ええ。私なら、連絡を取っても何も言われませんしね。それなら、彼女も少しは安心出来るでしょう。」
「すまない!!本当に感謝する!!」
頭を下げながら感謝の言葉を述べる鬼道を見て、俺はため息を吐きながら話しかける。
「何言ってるんですか、貴方もですよ。」
「・・・なに?」
「貴方も、私に連絡しなさい。相談事でも、愚痴でも、何でもない世間話でも構いません。見知った人間と話した方が心が休まるでしょう?
………私からすれば、貴方の方が心配ですよ。少しは自分を大切にしなさい。」
「・・・すまない。ありがとう、五条。」
自然な笑みを浮かべた鬼道の顔は、6歳児とは到底思えないほどイケメン力に溢れていた。でもこれ、将来マントとゴーグル付けるんだよなぁ。ゴーグルに至っては大人になっても付けてるもんなぁ。
「五条は、これからどうするんだ?お前も、影山さんのところに?」
え?影山のところなんて絶対嫌ですけど?
じゃあなんで帝国に行くのかって?
俺が五条さんだからだよ。(暴論)
「いえ、その話はお断りさせていただきました。」
「そう、か・・・。お前と一緒なら、心強かったんだが・・・。」
鬼道は俺と離れることを知るとあからさまにシュンとなる。やっぱり心細かったんじゃねぇか。もっと子供らしくしてもいいと思うんだけどなぁ。
「………影山さんから、施設の移動を勧められました。愛媛に優秀なサッカープレイヤーが集まる場所があるから、行ってみないか、と。」
「そうか。まぁ、お前ならどんな奴らとプレーしても負けることなんてないだろうな。」
「買い被りすぎですよ……。
そこで練習を重ねて、私は帝国学園に進学します。」
「っ!!」
「………その時はどうぞよろしくお願いしますね、未来のキャプテン?」
「ああ!!お前が居てくれるなら、こんなに頼もしいことは無い!!」
俺たちは、互いに力強く握手する。
・・・行きたくはないけど、どうせここにいても影山から接触はされると思うんだよなぁ。
それなら、早い段階で影山の元に行って、ある程度は信用される方がお得じゃないかと思い、俺は愛媛に行く決意をした。
「……それじゃ、そろそろ寝ましょうか。早く寝ないと成長出来ませんよ、高島くん。………それとも、これからは鬼道くんの方がいいんでしょうか?」
「・・・有人だ。」
「?」
「有人と呼んでくれ。向こうに行っても、この名前は変わらないからな。」
「……なら、私は勝で構いませんよ。」
「ああ、分かった。おやすみ、勝」
「ええ。おやすみ、有人」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌日、俺は老夫婦経由で影山に愛媛の施設に移動することを伝えた。すると、影山から即座に連絡が入り、すぐに迎えをよこすので、準備しておくように言われた。
・・・何故にそんなに急ぐのだろうか。おかげで俺は大急ぎで荷物をまとめなければならなかった。
「・・・もう行くのか?」
荷物をまとめ終えたところで、後ろから声が掛かる。振り返ると、有人と春奈を筆頭に、施設の子供たちが集まっていた。
「もうすぐ迎えが来るそうなので。しばらくみんなとも会えなくなりますね。」
「・・・お前には、本当に世話になった。特に、俺達兄妹は感謝してもしきれないよ。」
「まさるくん、向こうに行っても元気でね!!絶対連絡ちょうだいね!!」
「ええ、分かってます。」
他の子供たちからも、様々な言葉をもらった。頑張ってね、げんきでね、寂しくなるね、などなどなど・・・。
そんな話をしているうちに、施設内に大きな車が入ってくる。黒光りするそれは、つい先日影山が乗ってきていたものと同じものだった。中から黒服が降りてきて、俺を視界に捉えると近づいてきた。
「五条勝くんだね?影山副会長からの指示で、君を愛媛まで送る。さあ、車に乗ってくれ。」
「わかりました。お願いします。」
荷物を手に持ち、黒服の後についていく。
「勝!!」
不意に、有人から声が掛かる。
「・・・またな。」
「……ええ、また会いましょう。」
その言葉を最後に、俺は車に乗りこんだ。