イナズマイレブン! 脅威の転生者 ゴジョウ!!   作:ハチミツりんご

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第四十五条!! 雷門vs御影専農 前半

 

 

「……結局、新必殺技は完成しなかったんですね。どうやって勝つつもりです?」

 

 

御影専農コート。雷門側のベンチ前で、監督の冬海が興味無さげにそう呟く。

 

イナビカリ修練場での特訓を経た雷門中イレブン。しかし、結局新必殺技はひとつも完成しなかった。御影専農を破るシュートは勿論、宍戸が考案した連携技、栗松と少林の個人技もだ。

 

 

「確かにあの時は俺の負けでした……でも、試合はチーム同士の戦いだ!みんなで力を合わせれば、絶対にチャンスはある!ガンガン攻めていこうぜ!!」

 

『おおーっ!!』

 

そんな冬海に向けて、円堂がハッキリと言い切った。確かに新必殺技は無く、この間の勝負は完全敗北を喫した。しかしだからといって試合に負けるとは限らない。攻めていけばチャンスはあると、円堂がみなの士気を高めていた。

 

 

 

「両校整列っ!」

 

『さぁー!!フットボールフロンティア2回戦、試合開始です!!本日は雷門中対、御影専修農業高校附属中学校との対戦!その強さは、あの帝国学園に匹敵すると言われる御影専農!雷門中はどう対応するのか!実況は私、角馬圭太でお送りします!』

 

 

もはや雷門の試合には当然のように顔を出し実況をしている角馬の声が響く中、審判により試合開始のホイッスルが吹かれる。

 

 

雷門フォーメーション

 

ーー豪炎寺ーー染岡ーーー

ー宍戸ーーーーー少林寺ー

ーーー松野ーー半田ーーー

ー風丸ーーーーーー土門ー

ーーー壁山ーー影野ーーー

ーーーーー円堂ーーーーー

 

 

御影専農フォーメーション

 

ーーー山岸ーー下鶴ーーー

山郷ーーーーーーーー藤丸

ーー大部ーーーー寺川ーー

ーーーーーーーーーーーー

花岡ー室伏ーー稲田ー弘山

ーーーーー杉森ーーーーー

 

 

 

 

まず雷門は染岡が豪炎寺、そしてマックスへとボールを繋ぐ。そのままFWの二人、それに中盤の4人が一気にあがっていく。雷門お決まりのパターンだ。

 

ボールを持つマックスの前に、御影専農のFWである下鶴、山岸の2人が立ちはだかる。

 

 

「抜いちゃうよ………って、ホントに抜けちゃった」

 

 

ディフェンスに来ると思い必殺技の体勢を整えたマックスだったが、下鶴と山岸はそのままスルー。簡単に行かせたことに疑問を覚えながらも、そのままドリブルで切り込んでいく。

 

 

『ディフェンスフォーメーションΔ-4、発動!』

 

「______ディフェンスフォーメーションΔ-4、発動っ!!」

 

 

監督の富山からの伝達を受けた杉森が叫ぶ。すると、御影専農の選手達が弾かれたように素早く動き始める。

 

 

「っうわぁ!?」

「急に出てきた!?」

「なんだ、コイツら!?マックス気を付けろ!!」

 

 

FWの下鶴と山岸、更にMFの山郷が宍戸や少林、半田を素早くマーク。引き剥がそうとフェイントを混ぜて動くが、それすら見透かす御影専農の守備に完全に抑え込まれていた。

 

半田からの忠告を受けたマックスが警戒しながら切り込んでいくと、相手のMF、10番の大部と7番の藤丸がダブルマーク。必殺技を使おうにも瞬時に距離を詰め、好きに動かせてくれない。

 

 

 

「ダメか……!!」

 

「こっちだ、マックス!」

 

「豪炎寺っ!!」

 

 

ドリブルでは抜けない事に悔しさを覚えながら、マックスはフリーだった豪炎寺にパス。しかしそれも御影専農は承知の上。パスを受けた瞬間、豪炎寺は背後にMFの寺川、前方に弘山と稲田のDF二人の計3人に囲まれた。

 

 

『おおーっと!!豪炎寺囲まれた!!まるで先を読んでいるかのような御影のディフェンスーっ!!』

 

 

「こっちだ、豪炎寺!!」

 

「っ、染岡っ!!」

 

 

 

マックスが豪炎寺にパスを出すのを予測していたかのように取り囲む御影専農。わざとパスコースを作られたのだと気がついた豪炎寺は、即座にあがってきた染岡にパス。

 

 

「へっ、貰ったぜ!!【ドラゴンクラッシュ改】ッ!!」

 

 

ドラゴントルネードすら止めてみせた御影専農の杉森だが、この距離でシュートすればあのロケットこぶしは使えない。シュートポケットという広範囲カバー技単体なら、ぶち抜ける自信が染岡にはあった。

 

 

しかしそう簡単にはいかない。御影専農の残りのDF、花岡と室伏が杉森の前に立つ。

 

 

 

「______【スピニングカット】」

 

「______【ザ・ウォール】」

 

「っ!?なんだと!?」

 

 

花岡が右足を振るうと青い衝撃波の壁が発生。そしてその後ろで、室伏が背後に巨大な壁を出現させる二重ブロック。前者はマックスや鬼道の、後者はこの間披露したばかりの壁山の技だ。

 

染岡だけでなく、雷門側が驚いているうちに、シュートはブロック2つによって大きくパワーを削ぎ落とされる。杉森まで到達した頃には、最早片手で止められるまでになっていた。

 

 

「驚くことは無い。我々は君達の必殺技データも完全に解析済みだ。そして攻撃パターンもデータ通り………従って、完全に予測出来る」

 

「ちっ……データ通りだと!?」

 

「どんまい染岡!早く戻って、攻撃に備えるんだ!」

 

 

データデータと、狭っ苦しいサッカーをやる御影専農の理論に染岡が舌打ち。雷門ゴールを守る円堂から声を掛けられ、ディフェンスの為に他のメンバーとともに自陣へと戻っていく。

 

 

「………しかしデータだと俺が止めるまでもなく止まっていたはず………キックポイントやタイミングによる誤差か……?」

 

 

そんな中、杉森にはなにか引っかかることがあったらしくブツブツと呟いているが、監督からの指示を受けボールをパントキック。一気に前線のFW陣へとボールを繋いだ。

 

 

 

『凄いぞキーパー杉森!ナイスセーブで、御影専農のピンチを救った!』

 

 

「……なるほど、各選手に雷門の必殺技をコピーさせてあるのか。データを取る上でも戦略という面でも、確かに有効な手段だ」

 

「雷門からしたら自分たちの技がコピーされたという事実の再認識で動きが鈍る……恐るべきは御影の解析力ですかねぇ」

 

 

 

角馬の実況響き渡る中でコート外から見守る、帝国学園の鬼道、そして五条。既に北斗星学園との2回戦を終えて準決勝進出が決定している彼らは、御影専農の纏まった動きと解析力に関心していた。

 

 

「オフェンスフォーメーションβ-2、スタンバイ…実行!」

 

『いや、待てっ!!』

 

 

 

杉森からの指示を受け、下鶴からパスを受けた山郷がドリブル。そのまま突破していこうとした時に、富山から待ったが掛かる。何事かと山郷が耳を傾けようとした時。視界に映り込む風があった。

 

 

 

「【サイクロン】っ!!」

 

「何っ!?うおおおっ!?」

 

 

山郷の視界の外にいた風丸が自慢の快足を飛ばして距離を詰め、ブロック技による奇襲をかける。このタイミングで風丸がブロック参加するのは不可能だとデータが出ていたにも関わらず、彼はこうして見事な守備を見せた。データとは違う結果に山郷が驚きながら吹き飛ばされ、ボールは雷門へと渡る。

 

 

「ナイスだ、風丸!!」

 

「あいつ良く間に合ったな!!」

 

「凄い、風丸先輩ったらあんなに足が早かったっけ……?」

 

 

見事な風丸の疾風ディフェンス。円堂や土門が感嘆の声を上げていると、ベンチに座る音無が彼のスピードに思わず首を傾げる。明らかに、野生中やココ最近の練習中に比べて動きや身体能力が向上しているように思える。

 

 

 

「宍戸っ!」

 

「よーし、俺だって!!」

 

 

宍戸にパスを送る風丸。彼の活躍に触発され、宍戸もドリブルでコートを駆け上がっていく。だが、それを容易く行かせる御影専農ではない。

 

 

「暴っ!」

 

「了解、【キラースライド】っ!」

 

「うわぁぁっ!?」

 

 

同学年のキャプテン、杉森からの指示を受けたのは、先程風丸にボールを奪われた山郷。帝国学園のメンバーが使用するキラースライドをコピーした彼は、即座に宍戸からボールを奪って見せた。

 

 

「風丸からボールを奪われたのに……もうあんな位置に戻ってる……!」

 

 

先程ボールを奪い取られたにも関わらず、即座にディフェンスに向かっていた山郷。これも、御影専農のデータサッカーによるものなのか。影野が末恐ろしいものを感じていると、山郷は大部にパスを出した。

 

 

「っ、行かせないよ……!コイルタ______」

 

「無駄だ」

 

 

 

大部に向けて自身の必殺技を食らわせようとした影野だったが、彼のコイルターンの情報は先の試合で解析済み。大部はまるで全ての動きを予測しているかのように影野を躱して見せた。

 

 

「来るぞ!こいつは俺に任せろ、みんなは11番をマークしてくれ!!」

 

 

迫り来る大部を見据えながら、御影専農のエースストライカーである下鶴をマークするようにディフェンスに指示を出す円堂。それを受けた土門と風丸が下鶴へとマーク。

 

 

「迫っ!」

 

「何っ!?逆か!!」

 

 

しかし大部はフェイントを織り交ぜて、下鶴……ではなく。もう一人のFW、逆サイドの山岸へとパスを送る。エースストライカーにボールを渡すと思っていた円堂は、完全に虚を突かれる形となった。

 

 

山岸が大きく足を振り上げる。その形は円堂が何度も見てきたフォーム……杉森がコピーしていた、あの技だ。

 

 

「【ドラゴンクラッシュ】!」

 

「あいつも俺の技を!?」

 

 

杉森がほかの選手も使えるとは言っていたが、こう目の当たりにすると驚くのも仕方はない。山岸の放ったドラゴンクラッシュががら空きの逆サイドに向かって突き進み、円堂も間に合わない……と思った時。

 

 

 

「うおおおお!!【ザ・ウォール】っス!!!」

 

 

ギリギリのタイミングで走り込んできた雷門一の巨漢、壁山が必殺技を披露。巨大な壁が背後に現れゴールを覆い隠し、山岸のシュートをせき止め、弾き飛ばした。

 

 

 

「壁山っ!!サンキュー、助かったぜ!」

 

「ザ・ウォールは俺の必殺技っス!コピーなんかには、負けないっスー!!」

 

「……この男が間に合った?データにはない……計算機の故障か?」

 

 

 

あわや失点の危機を救った後輩に、円堂が感謝を述べる。先程相手DFの室伏に必殺技をコピーされたのが闘志に火を付けたらしく、心優しくどちらかと言えば臆病な彼がふんすふんす、とやる気を滾らせていた。

 

本来ならば壁山のシュートブロックは間に合わず、円堂の熱血パンチを弾いてゴールが決まるはずだった。それが円堂どころか壁山に妨害された事実に、キックした山岸が訝しげな表情を浮かべる。

 

 

弾かれたボールを確保したのは、近くにカバーに来ていた影野。ボールを確保し、パスコースを探すが………

 

 

 

「………塞がれてる、ね……」

 

 

恐るべきは御影専農の切り替えの速さ。シュートが決まらなかったと知ると悔しがるでも無く、全員が近くにいた相手選手にマーク。徹底的にパスコースを塞ぎ、影野には大部がディフェンスについていた。

 

 

 

 

 

 

「……やっぱり、動きが違いませんか?」

 

 

そんな中で雷門ベンチ。ビデオを回していた音無がぽつりと呟くと、隣にいた木野が同意するように頷いた。

 

 

「うん。精密な機械が相手って感じね……」

 

「これほどの精密な連携……もしかしたら帝国を超えるのでは……」

 

「あっ、いえ、そうじゃなくて!雷門のみんなです!」

 

 

帝国も相当な連携を見せていたが、御影専農のはそれを上回ると評する目金。そんな2人に音無が慌てて違うと告げ、注目して欲しいのは御影専農ではなく雷門だと言う。

 

 

「みんながでやんすか?」

 

「そうです!ほら、ほら!!」

 

 

音無がコートを指す。ちょうど今、影野が動き出したところだった。

 

 

 

「風丸!!」

 

「通さない」

 

 

マークを外してフリーとなった風丸に向けて、影野がパスを出そうとする。しかしその動きは予測済みと、影野にマークしていた大部が先回りしてコースを塞いだ……と、思った瞬間。

 

 

「……なっ!?」

 

 

大部が驚きのあまりそのポーカーフェイスを崩した。何故ならば、今彼がマークしている影野の足元には、()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「いっけぇ!!少林!!」

 

 

『なんということだ!!ボールを保持していた影野、身体を使って隠しながら円堂へ静かにパス!!完全に影野の挙動に騙された御影専農、パスを通してしまったーっ!!』

 

 

「ゴメンね……気配を消すのは得意だけど、こういうのも得意なんだ……ふふ」

 

「こんなパターン、データにはない……!」

 

 

完全に大部を……否。前線でプレスを掛けてきていた御影専農のメンバー全員を騙してみせた影野。不敵に笑う彼の行動はデータに無い。こんなプレーが出来るなんて、御影専農のデータ内には存在しない。

 

 

 

「アチャーっ!!風丸さんっ!!」

 

「ナイスだ少林!!」

 

 

ボールをパスされたのは、チーム一小柄な少林寺。しかし彼はマークについていた山郷より高く跳躍。空中でトラップすると、そのまま身体を上手く動かしてオーバーヘッドのように風丸へと繋いだ。

 

 

「攻撃パターン、Ω-6!ソニックショットの確率、59.82%……巌、啓!!」

 

「あぁ」

「了解」

 

 

風丸がボールを持った瞬間、計算プログラムが作動。現時点で最も高い確率を表示するが、これではまだ確実とは言えない。

 

故に杉森は、MFの寺川と藤丸に指令を飛ばす。受けた2人は即座に動くと、それぞれマックス、半田をマーク。パスコースを塞いだ。

 

 

 

「なにっ!?」

 

「ユニット9、松野空介。及びユニット6、半田真一。両ユニットへのルートを遮断した結果、ソニックショットの確率……96.57%!!」

 

 

雷門メンバーの中でも、シュート、ドリブル、パスと選択肢が多く、中盤の要を担う2人。そのマックスと半田へのコースを塞ぎ、今の風丸のポジションから考えれば、シュートを打ってくる確率が殆どだと計算が証明してくれた。

 

 

「くそっ………やるしかないっ!!【ソニックショット】ッ!!」

 

「【ロケットこぶし】っ!!」

 

 

パスコースを切られた風丸は、一か八かシュートスピードでぶち抜こうと必殺シュートを使用。しかし杉森は冷静に拳を構えると素早く具現化した拳型エネルギーを発射。ソニックショットが加速するより早く、ボールを弾いた。

 

 

「なにっ!?」

 

「ソニックショットが!!」

 

「ソニックショットはキック後に加速し緩急差で敵ユニットを翻弄、タイミングを狂わせることを主たる要素として持ち合わせる。が、軌道が直線であることには変わりない……加速するより早くロケットこぶしを打ち込めば、止められる確率は99.54%だ」

 

 

 

まさか加速するより早く止められるとは思わなかった風丸が驚きの声を上げる。野生中との戦いでチームを救った一撃が容易く止められたことに少林が声を上げるが、杉森は計算通りだと確信を持って挑んで来ている。ロケットこぶしとの相性が悪すぎた。

 

 

「まだだっ!!」

 

「なに……?」

 

 

しかし、雷門はそこで終わらなかった。藤丸にピッタリとマークされていたはずの半田が藤丸を振りほどき、弾かれたボールを確保。素早くシュート体勢に入った。

 

 

「【ローリングキック】!!染岡!!」

 

「ナイスだぜ半田!!行くぞ豪炎寺!!」

 

「あぁっ!!」

 

 

半田のローリングキックが炸裂、御影専農がカバーに入るより早くディフェンスの間をぬけて染岡へとボールが繋がれる。染岡は大きく足を振り上げると、半田のパワーを損なわないようにダイレクトで蹴り上げた。

 

 

「「【ドラゴントルネード】っ!!」」

 

「それは通用しないと先日証明した。【ロケットこぶし】!」

 

 

豪炎寺の炎を纏ったシュートにより蹴り下ろされる、雷門最高火力。しかしそれはつい先日、彼ら自身が河川敷で通用しないという証明をしたはずだ。

 

杉森は冷静にロケットこぶしを打ち出す。しばらく拮抗した後弾かれる………筈が、杉森の計算よりも早くロケットこぶしが砕け散った。

 

 

 

「なにっ!?くっ……【ロケットこぶし】っ!!【シュートポケットV2】っ!!」

 

 

 

想定外の事態に動揺しながらも、流石は御影専農を率いる者。即座に二発目のロケットこぶしを打ち出し、計算よりも早く砕けると想定。早い段階で空気とエネルギーを織り交ぜた障壁を生み出してドラゴントルネードをガードした。

 

空気の障壁を抜けたドラゴントルネード。未だ炎の灯るそれを杉森は両手で受け止め、なんとか弾いてみせた。しかし雷門は攻撃の手を緩めない。

 

 

「豪炎寺さーんっ!!」

 

「っ!ナイスタイミングだ、壁山!!」

 

 

ゴール前から走り込んできた壁山が跳躍すると、豪炎寺も飛ぶ。野生中戦で身につけた、二段ジャンプによる超高所からの蹴り下ろしが、今一度杉森を襲った。

 

 

「「【イナズマ落とし】ぃぃぃぃっ!!」」

 

 

「(ドラゴントルネードの影響で体勢が不安定、ロケットこぶしを打ち出しても対象にヒットする確率は42.69%、コンマ24秒以内に当たる確率は4.82%……ならば!!)」

 

「【シュートポケットV2】っ!!おおおおおっ!!」

 

 

 

うち下ろされたイナズマのごとき高速シュート。河川敷の時は打ち出した瞬間にロケットこぶしを当てることで容易く対処したが、今の体勢から同様の対処を行うことは確率的に難しい。

 

ならぱ、と杉森はシュートポケットを使用。超高所からうち下ろされたシュートが障壁に阻まれると、杉森はその()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「なんだと……!?」

 

「うおおおおっ!!!………ぐぅ……!!」

 

 

圧縮された空気の圧力が杉森の手をギリギリと縛り上げるように締め付ける。しかし杉森はそれに耐え、うち下ろされたボールを両手で押さえることで障壁内に収める作戦に出たのだ。それが功を奏し、杉森は見事イナズマ落としすらも防ぎ切った。

 

 

『ななな、なんという気迫のディフェンス!!御影専農キャプテン杉森、雷門の三度にわたる猛攻を一人で凌ぎきった!!御影の守護神ここにありぃぃぃぃっ!!』

 

 

「………シミュレーションでは体勢を崩されることは無かった。ドラゴントルネードのシュートパワーも先日より上昇している……これは、センサーのトラブルか……?」

 

 

雷門の猛攻を防ぎ切った杉森に、観客である御影専農の生徒達から歓声が送られる。しかし杉森はそれすら耳に入っていない状態で、データよりも一回り成長した雷門に疑問を感じていた。

 

 

「オフェンスフォーメーション、Δ-5だ!」

 

 

しかしプレーを止めるわけには行かない。チームに指示を出した杉森は素早く寺川にボールを投げると、寺川から藤丸、そして大部へとボールが送られる。

 

 

「いかせないよ!【スピニングカット】!!」

 

「それは予測済みだ」

 

「はぁ!?」

 

 

マックスが青い衝撃波の壁を生み出し大部を妨害。しかしそれはデータに入っている必殺技だ、大部はループ気味にパスをして衝撃波を躱すと、近くに来ていた山郷の元に落とす。そして自分は大回りをして躱すと、再び山郷からボールを受け取った。

 

 

 

「ちょっとちょっと、風丸も壁山もあがってんじゃねぇか!!」

 

「止めよう、土門……!」

 

「頼んだぜ、二人とも!!」

 

「はいよぉ!!お仕事しますかねっと!!」

 

 

 

攻撃のために風丸と壁山、二人のDFがいない状態に悪態をつく土門。しかし影野と円堂からそう言われた彼は、任せとけと笑みを浮かべて大部に仕掛けた。

 

 

「くらえっ!!【キラースライド】っ!!」

 

「……!」

 

 

帝国学園時代からの素早いスライディングで大部からボールを奪い取った土門。

 

 

「へへっ、どうよ!!」

 

「残念だが、想定済みだ」

 

「なにっ!?」

 

「【キラースライド】!!」

 

 

 

しかし土門が奪うことも想定内。大部はわざとボールを奪わせ、背後の山郷に同じキラースライドを使わせる事で回収。結果的に土門を躱し、ゴール前には影野と円堂しかいない状況に。

 

 

「改っ!!」

 

「そっちか!!」

 

 

大部はエースストライカーの下鶴へもボールを送り、今度こそ下鶴が打ってくると思った円堂はそちらに飛ぶ。

 

 

「……迫っ!!」

 

「【サイコショット】!!」

 

「なにっ!?くそっ、【熱血パンチ改】!!」

 

 

しかし下鶴はタイミングを見極めて山岸へとパス。フリーになった山岸は緑色の波動を纏いながら浮かび上がると、そのままテレキネシスのようにしてボールを操作、両腕を振り下ろすことで放った。

 

しかしイナビカリ修練場でパワーアップした円堂はその程度では突破出来ない。熱血パンチを横から叩き込んだことで大きく弾き、クリアした。

 

 

 

「やったでやんす!!」

 

「流石は円堂君!!」

 

「……待って!!違うわ!!」

 

 

ベンチに座る栗松と目金が円堂の活躍に歓声を上げる。よく左右に揺さぶられながらも止めたものだと感心していたが、ふとボールの違和感に木野が気がついた。

 

緑色の波動を纏ったボールはそのまま飛んでいく……ことはせず。なんと、空中で方向転換。下鶴の足元へと送られた。

 

 

「なにっ!?」

 

「ぼ、ボールが勝手にぃ!!」

 

「ドラゴンクラッシュより威力の低いシュートだとは思ったが……まさか、円堂の体勢を崩しつつパスを出すのが目的だったのか!!」

 

 

ありえないボールの軌道に宍戸が悲鳴を上げるが、風丸が山岸の思惑を察する。

 

 

そう。サイコショットという必殺技は、正直『それええの?』と言われんばかりの必殺技だ。その上、弱い。正直いって円堂ならば簡単に止められる威力だ、山岸自身も円堂をぶち抜けるほどのキック力は持ち合わせていない。

 

しかしサイコショットはボールを操作するという特性上、短い時間なら空中での軌道を修正する程度のことは出来る。故に円堂を右サイド側に誘導し、戻れなくしてから逆サイドのエースへとボールを送ったのだ。

 

 

「【パトリオットシュート改】っ!!」

 

 

下鶴がボールを素早く蹴り上げると、ボールが空中で静止。なんと炎を吹き出し加速しながら、がら空きのゴールネットを揺らさんと迫っていく。

 

 

「させないっ!!」

 

「っ!影野!!」

 

 

キーパーの円堂は間に合わず、シュートブロックの出来るメンバーもこの場にいない。そのまま揺らされると思ったが、なんと影野が体を張ってパトリオットシュートをブロックした。

 

 

「うっ…ぐっ………うわぁぁっ!!」

 

「影野!!」

「影野ぉ!!」

 

 

しかし、幾ら鍛えたからといっても細身でパワーが長所ではない影野では止めることは出来ず。そのまま押し込まれ、彼ごとゴールネットを揺らされた。

 

 

『決まった、決まってしまったァ!!これで御影専農、一点先取!!』

 

 

雷門 0-1 御影専農

 

 

 

 

「影野、大丈夫か!?」

 

「うっ……だ、大丈夫……」

 

 

円堂が影野を抱き起こしながら大丈夫かと問えば、影野は力なく笑う。大丈夫ではなさそうだが、本人の意思により前半はこのまま影野がピッチに立つこととなった。

 

 

 

 

 

雷門ボールから試合再開。ボールを蹴った豪炎寺が染岡に渡し、戻そうとしたところで走り込んできた山岸がカット。下鶴へと送り、下鶴が大きく後ろに蹴った。

 

 

 

「バックパスだと!?」

 

「まさか……アイツら!!」

 

 

 

染岡が謎の行動を訝しがるが、円堂には御影専農のやろうとしていることに察しが着いた。

 

なんと御影専農は一点をとった後にそのまま自陣でボールを回し始める。雷門にボールを触らせることなく、パスを繋いで時間を消費していく作戦に出たのだ。

 

 

 

『あぁー!!戦わない、戦わない!!御影専農はゆっくりとパスを回し、前半の残り時間を使い切ろうという作戦かァー!?』

 

「くっそぉ……いいのかよ、こんな試合で………!?いいのかよ、杉森……!!」

 

 

あまりに露骨な御影専農の作戦。スポーツマンシップの欠片も感じられない同じ学校の生徒達の行動に、観客である御影専農の生徒達も眉を顰める。

 

 

そして下鶴が杉森にボールを渡したところで前半終了のホイッスル。あまりに後味の悪い展開にぼうぜんとなりながら、両チームはそれぞれ控え室へと戻っていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ………吐き気がするようなサッカーだ」

 

 

観客席に仁王立ちする初老の男。くたびれたコートに口元を覆うほどの髭を生やした彼は、目の前で繰り広げられたサッカーに舌打ちをする。彼の親友が愛したサッカーとはまるで違う。影山の手の内にあるサッカーはこうも汚いのかと怒りが湧くほどだ。

 

 

 

 

「………前半は御影専農の先制で終わったか」

 

「ですねぇ……まぁ、このまま終わるとは思えませんけど」

 

「ふっ、同感だな」

 

 

 

別の場所で観戦していた二人は、御影専農のリードで終わったもののこのまま彼らが終わるはずはないと確信を持っていた。

 

 

「最後のあのプレーで、あの大馬鹿キーパーに火を付けたのは明らかだ。後半は御影のデータは役に立つまい」

 

「予想よりも杉森が良いキーパーだったことが誤算ですかね。計算の補助を受けていることを加味しても、なお強い……あんなサッカーをさせることが勿体ないほどに」

 

「あれだけ正確なサッカーをこなせる御影の選手達もそれなりにハイレベルだ………まぁ、帝国の奴らには劣るがな」

 

「それは同感ですねぇ」

 

 

幾ら御影専農が精密な機械のごときサッカーをやったとしても、自分たち帝国には適わない。100回やって100回とも、二桁以上の得点を決めて圧勝する自信が二人にはあった。

 

 

「……それにしても、愚かだな」

 

「?どうかしましたか、有人」

 

「なに、あの富山という男だ。一点先取したら即座に時間稼ぎ………俺だったら______」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「______崩れているあいだに2点目を取りに行かない、か。愚かだな、富山」

 

 

帝国学園総帥室。そこに座して、空中に浮び上がる映像を眺めながら一人つぶやく影山。

 

 

「一点では不測の事態に陥った場合に崩れやすい……余裕があるうちに2点目を確保し、万全を期する。それをせず、すぐに逃げに徹するとは………くだらん男らしい、実にくだらんサッカーだ」

 

 

やはりあの富山という男は役に立たない。これだけ時間を与え、影山自身がわざと情報共有を最小限にし、予想外のことでもやってくれるかと思ったら……子供ですら思いつくほどに陳腐な回答。無能な部下は、有能な敵よりも厄介なものだ。

 

 

「まぁいい。これで雷門を排除出来るとは思えんが………帝国との試合までに排除出来れば良し。出来ずとも、私が手を下す。それすら潜り抜けたのなら………くくっ、面白いものが見れそうだ」

 

 

帝国の勝利を万全なものとするため、厄介な雷門が勝ち上がる可能性はなるべく潰す。しかし、勝ち上がってきてもそれはそれで楽しめそうだ。そんな笑みを浮かべながら、影山は腕を組んで映像へと目をやった。

 

 

 

「さて、雷門はどう動くかな。そしてお前は………五条、貴様はどう動いてくれる?私を楽しませてくれるのだろうな………くくっ、はっはっはっはっ______」

 

 

 

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