イナズマイレブン! 脅威の転生者 ゴジョウ!!   作:ハチミツりんご

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第五十条!! 未来を掴むため

 

 

 

 

「______影山総帥ッ!!」

 

 

 

荒々しく扉を開ける。下手をすればそのまま壊れてしまうのではないかと思うほどの勢いは、遠回しに彼の心情の焦りを露見しているが、そんなことを気にする余裕は無い。

 

大粒の汗を流し、目の前の椅子に背を向けて腰掛ける元凶を睨み付ける。その汗がここまで走ってきたことによる汗なのか、それとも別の意味を持つ冷や汗なのか。それは五条にすらも判別出来なかった。

 

 

 

「………おや、五条。試合前だと言うのに、どうかしたのかね?」

 

 

椅子に座ったまま、目の前の彼……影山零治が、五条の方に視線をやる。ニヤニヤと含み笑いを隠す素振りも見せずに、極めて優しい声音で己の最高傑作と同じだけの地位を持った少年に話し掛けた。

 

 

「どうもこうもない……!!何故こんな真似を……っ!!」

 

「こんな真似、とはどんな真似かな?察しが悪くて済まないが、是非教えて貰えると助かるよ………君の言葉で、ねぇ?」

 

 

 

普段の彼からは想像もつかないほど感情を表に出し、影山を糾弾する。先程親友から伝えられた情報が本当だったとしたら、こう言わずにはいられなかった。警戒を煽るにしても、これからに支障があるとしても。この世界の人々が、当たり前に笑う人間なのだと思えたが故に、悪手だと分かっていても噛み付かずにはいられなかったのだ。

 

影山からそう促され、あくまでシラを切るつもりだと心の中で舌打ちをする。そして後悔を滲ませながら、五条は影山へと要件を告げた。

 

 

 

 

「……今日の対戦相手の……尾刈斗中の監督である地木流灰人さんが昨晩交通事故にあった。生きるか死ぬか、ギリギリの瀬戸際だと聞いています………!」

 

「あぁ、その事か………いやはや実に残念だ、彼ほどの指導者が不幸な事故にあってしまうなど………同じ指導者として、私も無事を祈っているよ」

 

「御託なんてどうでもいい……!!なんでここまで………!?」

 

 

 

フットボールフロンティア、準決勝第2試合。既に秋葉名戸との一戦を制した雷門と決勝で戦う相手を決めるべく、第1シードとして勝ち上がってきた磐石の帝国学園。そして相手を務めるのが、打倒帝国を目標にこの一年間研鑽を積んできた古豪、尾刈斗だ。

 

 

その尾刈斗の監督………地木流灰人が、試合前日の夜に、大型トラックと衝突して大怪我を負った。未だに生死の境をさ迷っているとの情報が入ってきており、尾刈斗側はこの大事な一戦を前に痛恨の打撃を受けたことになる。

 

 

帝国学園との試合前日に、相手チームの監督が負傷。それもトラックによるものであり、事故現場も人通りは少なく車の通りも稀という、不可解な点も多数。となれば、この男を疑うのは至極当然の結論だった。

 

 

 

「こんな真似をせずとも有人達は………帝国学園は勝てるっ!!なんの罪も無い人を排除する必要なんて無いはずだっ!!」

 

「…………必要ない、ねぇ………それではひとつ聞こうか、五条」

 

 

 

まず間違いなく、チームとしての地力は帝国学園の方が上だ。その上尾刈斗側には控え選手がいない。スタミナを削るスピードサッカーに持ち込めば、有利なのはこちら側だ。いくら向こうが隠し球を持っていようとも関係ない。

 

それにこちらには、天才ゲームメイカー鬼道有人がいる。もし不慮の事態が起こったり、尾刈斗側の奥の手を出されても彼がいる以上必ずカラクリは見抜ける。勝ちはほぼほぼこちら側にあると言って過言では無い。

 

 

それなのに、影山は地木流を排除しようと動いた。イタズラに動けば鬼瓦刑事にしっぽを掴まれる可能性があると知っていながら、何故動いたのかと五条が叫ぶ。静かに腕を組んでいた影山は、鋭い眼光を五条へと向けた。

 

 

 

「______その『勝ち』は、100%だと断言出来るのかね?」

 

「っ………それは………」

 

「出来ないだろう?サッカーに絶対は無い、ましてや相手は必死の努力をしてきた相手、油断出来るはずもない………君の考えそうなことだ」

 

 

 

100%、確実に勝利出来るのかと言われれば五条はそう言えない。

 

幾ら帝国学園に有利であり、ありとあらゆる面で勝っていると断言しても………それが勝敗を決定付ける絶対条件にはなり得ない。

 

 

この世界のサッカーにおいて最も大切なものは、『諦めない心』だ。心の底から勝利を望めば、試合中にも関わらずパワーアップすることだってある………ようは気持ちが強ければ強いほど、勝ちを拾いやすくなるのだ。

 

そうなれば尾刈斗は間違いなく必死になって勝ちに来る。そんな相手に絶対勝てるなんて五条には言えない。彼らの必死の努力を、そこに至るまでに歩んできた険しい道程を、彼は身をもって体感しているのだから。

 

 

そんな五条の考えを当ててみせた影山は、ゆっくりと首を横に振ってそれを否定する。

 

 

 

「いいかね……優れた司令塔を有するチームは、試合前に勝っているのだ!コンマ以下の可能性すら残さない、定められた絶対の勝利ッ!それこそが私の求めるものだ」

 

 

 

五条に背を向けながら、影山はそう語る。もしもの可能性を排し、確実に自身の想定通りにことを進める。0.1%でも敗北の可能性があり、外的要因によってそれを消し去ることが出来るのならば、躊躇わずに消す。それこそ影山の求める勝利であり、彼のサッカーなのだと。

 

 

 

「おっと………これはほんの例え話だ、本気にしないてくれたまえ」

 

「っ!………失礼、します………っ!!」

 

「あぁ。試合、頑張りたまえ。期待しているよ、私の選んだ特待生………ふっ、ふはははは………!」

 

 

 

肩を竦めながら影山は笑う。今のはあくまでも例え話、自分が関与したという証拠はないと暗に言ってくる影山に、五条は握りこぶしを固めながらもその部屋を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「______君は『甘すぎる』。周りに情を移し過ぎて、不必要な人間まで引き上げようとする悪癖………それさえ消えれば、君はもっと高みへ登ることが出来るというのに…………いや、違うか」

 

 

 

 

「それは君の根幹だ………取り払えば存在そのものが潰れてしまう。あぁ惜しい、実に惜しい………だが見ものでもある。そんな君が、一体どこまで行けるのか…………あるいはどこで潰れるのか______」

 

 

 

 

 

☆☆★

 

 

 

 

 

「______くそっ……!!」

 

 

 

思わず口から悪態が飛び出てしまう。頭の中を占拠するのは、迂闊な行動をとった自分に対する嫌悪と罪悪感。それが少しでも薄れてくれればと無意識に漏れでる言葉も、大した意味は持たなかった。

 

 

 

「迂闊すぎた……大丈夫だと思って油断していた……っ!!」

 

 

尾刈斗中の監督に降り掛かった不幸。間違いなく影山が絡んでおり、鬼道からこの話を聞いた瞬間影山の元へ怒鳴り込みに行ってしまった。馬鹿だとは自覚しているが、ここまで考え無しに行動するなんて。自分で自分が嫌になる。

 

 

 

「どうすることも出来ない……俺じゃ、何も……」

 

 

犯人は影山だと分かっている。地木流が試合に参列出来ないとなれば、利益が有るのは帝国学園側だ。やり口から見ても、先程のやり取りから見ても、実行するよう命じたのは影山で間違いない。しかし、五条には何も出来なかった。

 

 

彼は帝国学園特待生という立場にいる上に、原作の知識も保有している。ここに至るまでに行ってきた努力もあるが、五条勝という器の才能もあって、DFとしてはトップクラスの実力も身に付けている。間違いなく、『イナズマイレブンの登場人物』として見てみれば破格の立ち位置にいることだろう。

 

 

______しかし彼は未成年、中学二年生の子供なのだ。影山が悪事を行っていることは知っていても、具体的な防止策を知らなければ止めることは出来ない。警察に言ったところで子供の戯言と一笑されるのがオチだ。サッカー協会副会長の影山と、名が知れているとはいえ一選手に過ぎない彼とでは信用の差が大き過ぎる。

 

 

 

「鬼瓦刑事に接触を……無理だ、何故自分なのかと聞かれれば答えられないしそもそもの接点が皆無だ。帝国の選手である俺からだと動いてくれる可能性もほぼ無い……!」

 

 

唯一、原作にも登場し、影山を追い掛けている円堂大介の親友だった鬼瓦。彼ならば話を聞いてくれるかもしれないが、間違いなく成功率は低い。彼や円堂大介、影山の関係性を知らなければわざわざ接触する意味も分からないので、五条からアプローチする事は出来ない。

 

 

とどのつまり彼は犯人が分かっていながら………罪の無い人を巻き込んだ男を知りながら、何も出来ず指を咥えて見ているしか出来ないのだ。

 

何も知らなければ調べるなりなんなりして気を紛らわすことは出来ただろう。しかし知っているが故に……そしてその犯人に近しい場所にいる為に、動くことは許されなかった。

 

 

 

「______俺の、せいだ………考え無しに行動したから、本来無事な人まで巻き込んでしまった……ッ!!」

 

 

 

歯を食いしばり、血が流れそうな程に拳を固く握る。

 

本来ならば、尾刈斗中はここまで関わってこないチームだ。雷門に練習試合を挑み、豪炎寺と染岡の間にあった蟠りを消し、フットボールフロンティアへ出場させる為の相手。その後も、猛練習したにも関わらず秋葉名戸に敗北するチームだ。まかり間違っても帝国学園に絡む学校では無い。

 

 

そんな彼らがここまで関わり、そして巻き込まれてしまったのは、雷門にも肉薄する程にパワーアップしたこと………つまり、五条が全ての元凶であると捉えることも出来るのだ。五条が1年前の試合に出てしまったから………さらに言えば、あの時豪炎寺の妹を庇ってしまったから。自分の迂闊な行動のせいで、無事であったハズの人を巻き込んでしまった。

 

 

 

豪炎寺夕香を庇ったことを、五条は後悔していない。確かにあの行動によって本格的なズレ込みが始まってしまったし、雷門の大幅なパワーアップにも繋がった。

 

だがしかし、彼が庇ったことによって豪炎寺夕香は昏睡状態に陥ること無く、兄の試合を健気に応援している。その事に後悔なんてあるはずは無い。本来無くなってしまうハズの彼女の時間……そして豪炎寺の時間を、生み出すことが出来たのだから。

 

 

しかしそれとこれとは訳が違う。同じく原作を変えてしまってはいるが、マイナスであるものをプラスに変えることと、プラスをマイナスに変えることは、全く別のものなのだから。あれ程真摯に生徒達に向き合い、共に練習してきたのであろう人を、自分のせいで、未来を閉ざしてしまうところだったのだから。

 

 

 

「迂闊な行動は慎むべき……?いやだが偶発的な行動で事態が好転する可能性だってある………考えろ、考えろ……っ!アツヤだって生きてる、春奈だって有人を恨んでいない、夕香ちゃんだって元気に笑っている……!より良い未来にすることだって出来るんだ……!!」

 

 

 

きっとこの世界に目覚めた当初の彼ならば、ここまで思うことは無かっただろう。悲しみこそすれど、次は絶対に失敗しないと決意を新たに前に進んでいただろう。

 

だが、知ってしまった。昔画面越しに眺めていた彼らが、どうしようもなく心熱くさせてくれた彼ら以外も、話に関わってこない、すぐにフェードアウトしてしまうような彼らだって、泣いて笑って当たり前に喋る、一人の人間なのだということを。

 

 

 

「出来る範囲内だけでも、最善を尽くす………最高の未来を……ハッピーエンドで、終わらせるんだ」

 

 

本来死んでしまう人間を生存させることが出来る。関わらなかった人同士が繋がって絆を育むことだって出来る。ならば、原作よりも更に良い未来に進むことだって出来るはずだ。そうしなければならない。それが彼の目指す場所であり、成すべき義務なのだ。どんな苦労があろうとも、どんなに険しい道程だろうと、やらなくてはならない。

 

 

 

 

 

 

______既に一人の人間(五条 勝)の人生を、奪っているのだから。

 

 

 

 

 

☆☆★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『______こっチ側には、彼来ナイよ』

 

「本当ですか……!?」

 

『ゥン。きット、大丈夫』

 

 

 

スタジアムの外、柱の影に1人立つ少年が、虚空に佇むの闇に向けて安堵の声をあげる。きっと彼はこちら側に来ないとその影が告げれば、ふっ、と掻き消えて姿をくらました。

 

 

 

「………良かった、監督は大丈夫……だけど、試合が………」

 

 

 

自分たちを率いてくれていた監督が無事だと知ることが出来て、一つ安心する幽谷。しかしフットボールフロンティアの規定では、監督がいないチームは無条件で敗退だ。監督が事故にあったのも今朝知ったばかりで、新しく誰かを監督にしようにもここは帝国。自分たちの保護者くらいしか応援には来ておらず、どうしようかと焦っていた。

 

 

 

「幽谷っ!!ここにいたか!」

 

「!月村先輩!」

 

 

そんな彼の元に、駆け寄ってくる気配が1つ。声からして、同じチームの三年生、月村だ。自分を探してくれていたのであろう彼の声は、喜色が滲んでいた。

 

 

「見つかったぞ、監督代理!」

 

「本当ですか!?誰かの保護者に頼んだとか……」

 

「いや、八尺先生が応援に来てくれてたんだ!自分から代理引き受けてくれたよ」

 

「あぁ、あの背の高い………」

 

 

月村の話によれば、監督代理を求めて彼も走り回っていたとのこと。保護者の誰かに頼もうかと思っていたのだが、見知った人影を見つけたので駆け寄ってみれば、尾刈斗中の教員である女性、八尺だったらしく。彼女は地木流の事故のことを聞くと、自分から監督代理を務めると買って出てくれたようだ。

 

 

「しかも、監督から作戦の事纏めた用紙も貰ってたらしい。………自分に何か起こった時に、監督代理になってくれって言われて」

 

「!………やっぱり監督、故意に事故に……!」

 

 

 

八尺にわざわざ作戦を纏めた用紙を手渡していたということは、少なからず不安があったという事だ。地木流は幽谷のように鋭い霊感を持っている訳では無いので、不安を感じるに足るだけの何かがあったのだろう。

 

やはり意図的に事故にあっていた監督。そして今日の対戦相手は、きな臭い噂の絶えない帝国学園………『彼ら』に聞かずとも、誰がやったのかは知れたところだろう。

 

 

「とにかく、俺らのコート練まで時間が無い!早く戻って、作戦頭に入れんぞ!」

 

「は、はいっ!」

 

 

月村に先導される形で、幽谷も走り出す。今日の試合前のコート練は尾刈斗が先であり、あまり時間は無い。手早く作戦を頭に入れてアップをし、監督のいない状況でも対帝国用の戦術を練らなければ。

 

 

 

「………あの、月村先輩」

 

「ん?なんだ?」

 

「………監督がいない状況で、俺達勝てるんでしょうか。ただでさえ、相手は……」

 

 

 

自分たちの控え室に向けて走る幽谷が、月村にそう呟いた。

 

今日の対戦相手は、王者帝国。40年間の公式戦無敗記録を持ち、今なおそれを伸ばし続けている、中学サッカー界における絶対的な存在。地力は間違いなく向こうが上だ。

 

 

その上尾刈斗中は、司令塔がいない。フィールドの中に司令塔をこなせる人材がいない分、外から監督が常に声を掛け続けて戦う……それがこのチームだ。八尺が代理を務めてくれるとはいえ、あの人は初心者。指示出しなんて望むべくもなく、正真正銘、選手たちだけで戦うことになる。

 

そうなれば自分たちでは勝ち目がなくなるのではと不安に思った幽谷。そんな彼の前を走っていた月村は足を止めて、幽谷の方を振り向いた。

 

 

 

「______幽谷。お前はキャプテンだ。他の奴らも、監督がいなくて不安な中……キャプテンのお前が暗くなってたら、それが伝染する。帝国に勝つためにも、キャプテンのお前がブレちまったらダメだ」

 

「っ……すみません、情けないこと言って……」

 

 

ただでさえ、頼りにしていた監督が不在の状況。メンバーの不安は相当なものだ、そこにキャプテンを任された幽谷が弱気な姿を見せれば、それは周りに伝染する。士気が落ちてしまえば、数少ない勝ち目さえ消えてしまう。それだけは避けなければならないと、月村は幽谷にそう言った。

 

情けない姿を見せたことを謝罪する幽谷だったが、月村は彼ににっ、と笑って見せた。

 

 

 

「ただーしっ!俺と不乱の前なら幾らでも言っていい!むしろ弱音吐け!」

 

「………え?」

 

 

自分と不乱、3年生の二人の前でならば弱音を吐けと言う月村。ぽかんと面食らった幽谷だったが、月村は笑いながら話を進める。

 

 

 

「お前はキャプテンだが、同時に一年だ。初めてのフットボールフロンティアなんだし、不安抱えんのが当たり前なんだよ。2年の奴らに負担かけんのはアレだが、俺と不乱なら大丈夫だ。ハーフタイムのときでも試合中でも、不安になったら言いに来い」

 

 

幽谷はその高いサッカーセンスと統率力の高さを見込まれ、そして帝国学園に対する突破口となると期待されてキャプテンを任された。だが一年生の幽谷にとって、これが初めてのフットボールフロンティアなのだ。監督がいない状況、相手は格上。抱え込むのが当たり前だと月村は言う。

 

 

 

「でも、月村先輩達だって……」

 

 

 

不安を感じているはず、と言おうとした幽谷。そんなことを言う後輩に、はぁ?と月村が訝しげな目を見せる。

 

 

 

「なーに言ってんだよ!お前より二年長くこのチームでやってんだ!大人しく最上級生に頼っとけよ、一年坊主!」

 

 

 

バシッ、と幽谷の肩を軽く叩く。月村や不乱にとって、これは3度目のフットボールフロンティア。彼らは最上級生、チームの選手で一番の年上なのだ。後輩の不安を拭ってやるのも、自分達の務めだと笑って言う。

 

 

当然、彼らにも不安はある。これが3度目、つまり最後の夏だ。負ければその時点で、月村と不乱の中学サッカーは終わりを告げる。しかも相手は因縁ある王者帝国。勝ち目が薄いこの戦いに、不安を感じない訳はなかった。

 

それでも月村は笑ってみせる。地木流がいない今、チームの最年長は自分と不乱だ。そこ2人がブレれば、全ての負担がキャプテンである幽谷へと向かう。それは絶対に、したくなかった。

 

 

 

 

それに、月村には負ける気なんてサラサラなかった。

 

 

 

「幽谷、勝つぞ。ここも勝って、雷門との決勝も勝って………みんなで全国だ」

 

 

 

まだ終わりたくない。終わらせたくない。このチームのまま、王者に勝って、あの雷門にも勝って______

 

 

 

 

 

「もちろん、監督も一緒にな!」

 

 

 

______お世話になったあの人に、全国の景色を見せるのだ。

 

 

 

 

「………っ、はいっ!!」

 

「よぉっしいい返事だ!気合い入れていこーぜ!」

 

 

 

そうして二人は走っていく。因縁の王者との決着をつける為、まだこの夏を終わらせないためにも。王者帝国と、古豪尾刈斗。フットボールフロンティア準決勝、試合開始まで、一時間を切っていた______。

 

 

 


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