イナズマイレブン! 脅威の転生者 ゴジョウ!! 作:ハチミツりんご
「______戻ったか。もう試合が始まるぞ」
帝国学園控え室。既に殆どのメンバーが試合前の支度を済ませて移動している中で、扉の前で一人待つ男がいた。
扉の横の壁に背をもたれて、腕を組むゴーグル姿にマントを羽織った、帝国学園のキャプテン。そんな彼がふと気配を感じて顔を上げながら声を掛ける。
「………えぇ、遅れて申し訳ありません。作戦は?」
「スタートはいつも通りだ。それ以降は俺が指示を出す。お前ならば見逃しはするまい」
鬼道からの言葉に五条が頷いて了解の意を示す。何度も頭に叩き込んできた帝国の作戦だ、特別変わった指示が出ない限り対応は出来る。それに目の前の親友の指示は的確、かつ素早い。受け手側が見逃さなければ問題は無く、五条がそれを見逃すはずもない。
「………何があったかは聞かない。総帥と何を話したのかもだ。だが今は、目の前の試合に集中しろ」
「………心得ておりますとも。私達は、負ける訳には行きませんからねぇ……」
「あぁそうだ。雷門との決着をつける為にも………春菜の為にも」
勝たねばならない。両者それぞれに理由はあれど、勝利を掴み取りたいという意志は変わりはしない。離れ離れになった妹の為にも、そして自分を熱くしてくれたあの大馬鹿者達との決着をつけるためにも。地区予選の準決勝で躓く訳には行かなかった。
「あぁそうだ勝。一つ提案があるのだが」
「提案?何でしょう?」
「いやなに、久々に俺達が揃っての出場だからな。少しばかりワガママを言いたいだけさ。最初のシュートは、昔みたいにいかないか?」
勝たなければならないとはいえ、親友たる彼と試合に出るのは久々だ。相手の戦意を削ぐ為にも、味方の士気を高めるためにも。どうせならこの世に2人といないこの友人と、久しぶりにかましてみたいという鬼道の思いだった。
「……構いやしませんが、他のメンバーに言ったんですか?」
「もちろん言ってある。全員、俺たちのシュートを見たいと言っていたさ」
「なるほど……クククッ、大役ですねぇ……」
FWの寺門や佐久間を差し置いての初撃担当、それを大役だと笑う五条。しかしそんな彼を見ながら、鬼道も肩を竦めて笑っていた。
「なんだ、緊張するか?」
「えぇ、しますとも。………でも折角の貴方との試合だ、派手にいこうじゃありませんか」
「さすが、話がわかるな」
緊張するとは言っているが、鬼道から見たら少し心の荷が降りたかのように思える。折角だから派手に行こうと笑いかける友の姿を見ながら、やはり彼とはウマが合うと鬼道も笑う。そしてどちらともなく拳を持ち上げると、コツンっと軽くぶつけあった。
「いくぞ勝。王者として全力を尽くし、そして勝つ」
「えぇ有人。______彼らと、最高の試合を」
☆☆★
『さぁいよいよ始まりました、東京地区予選準決勝第二試合!王者帝国がその強さを見せつけるのか、はたまた古豪尾刈斗が意地を見せるのか!尾刈斗中ボールから、試合開始です!』
帝国学園フォーメーション
ーーー寺門ーー佐久間ーー
ー咲山ーー鬼道ーー洞面ー
ーーーーー辺見ーーーーー
ー成神ーーーーーー五条ー
ーーー大野ーー万丈ーーー
ーーーーー源田ーーーーー
尾刈斗フォーメーション
ーーーーー幽谷ーーーーー
ーーー月村ーー武羅渡ーー
ーー八墓ー霊幻ー木乃伊ー
柳田ー不乱ーー三途ー藤美
ーーーーーー鉈ーーーーー
何故か雷門の試合でもないのにめざとくやってきて実況の席に付いている角馬の声が響く中、試合が始まる。幽谷はボールを一度武羅渡に預けるとそのまま霊幻まで下ろし、攻撃陣が一気にあがっていく。
「頼むぞ霊幻!」
「任せるアル!」
「やらせるか!【キラースライド】っ!!」
「っ!甘いネっ!」
ボールを受けた霊幻が木乃伊にそう答えながら、ドリブルでまっすぐ上がっていく。当然帝国もそのままいかせるわけはなく、寺門が素早くキラースライドを仕掛けた。
並の選手よりも素早くキレのある寺門のブロック技。不意を打てば難なくボールを奪えるほど使い込まれた必殺技だが、霊幻は素早く跳んでそれを躱す。が、帝国もそれは織り込み済みだ。
「かかったな!【キラースライド】っ!!」
寺門の後に続くように、霊幻の着地タイミングに合わせて佐久間がキラースライドを時間差で仕掛ける。単純な技だが出が早くスピードもあるため、こうして仕掛ければ脅威となる技だ。佐久間のブロック技も、寺門のそれと遜色無いレベルのもの。
「それはもう知ってるのヨネっ!!」
「なにっ!?」
しかし尾刈斗中は、帝国のパターンを幾つも分析してこの試合に望んでいる。帝国メンバー全員がありとあらゆるプレーをこなせる万能さを持つという事実も、開始早々に時間差でFW2人がブロックを仕掛けてくることも。そしてさらに______
「【スピニングカット】ッ!!」
「八墓ッ!!」
______このあとすぐ、帝国の天才鬼道が詰め寄ってくることもだ。
鬼道がブロック技を使用するタイミングを見計らい、霊幻は横に思いっきりボールを蹴り飛ばす。キラーパスに近いスピードのボールだったが、八墓は上手くトラップして霊幻からのパスを受け取った。
「なるほど。パターンは把握済みというわけか………中々どうして、調べてきているじゃないか」
「王者帝国の天才さんに褒められて嬉しいネ!ついでに勝ちも頂戴ヨ!」
鬼道有人はキラースライドをあまり使用しない。基本的には隙が少なく、広範囲のブロックが可能なスピニングカットでこちらの出鼻を挫いてくる。この一年間、帝国を調べ尽くしてきたつもりだ。
素早くサイドのメンバーにパスを送った霊幻のプレーを見て、帝国の戦術を良く研究してきていると感心した様に鬼道が笑う。同じMF、世代トップの天才に褒められて悪い気はしない。どうせならそのまま勝ちを譲ってくれと、軽口を叩いて挑発する。
「ふっ……生憎だが、そんな安い挑発に乗るほどマヌケではないつもりだ」
しかし、そんな見え透いた挑発に乗るほど鬼道は甘くない。それは霊幻達尾刈斗中イレブンも重々承知だ。故に引っかかってくれるなんて思ってもいない。
そう思い次のプレーに素早く移ろうとした霊幻。そんな彼にマークしながら、鬼道はニヤリと笑って口を開く。
「あぁそれと、俺達帝国を研究してきた御褒美だ………いいことを教えてやろう」
「……いきなりなにヨ、気持ち悪いネ」
唐突にそんなことを言い始める天才ゲームメイカーに警戒心を顕にしながら、霊幻が僅かに動きを弛める。既にボールは八墓の元に送られている。彼の手助けとなるように、この天才を引き止めておこうと考えたのだ。そんな彼の思惑を見抜きながら、ゆっくりと鬼道は右腕を上げると……
「______昔の俺達と同じだと思わないことだな」
パチンっ、と指を鳴らした。
「______【真キラースライド】ッ!!」
「っ!?うわぁっ……!?」
瞬間、八墓が吹き飛ばされる。急加速したその影は、本来有り得ないほどの距離から地面を抉り、揺れ動くその足は分裂したのかと錯覚するほど。
八墓自身が、何が起こったのか分からないほどの早業。吹き飛ばされる彼の視界には、先程まで自分がキープしていたボールを悠々と奪って走る、背中に『5』の番号を背負う人物の後ろ姿だけが映っていた。
「八墓ッ!?」
「嘘だろ、いつの間に……!?」
突然の出来事に、パスを送った霊幻、そして逆サイドの木乃伊の足が止まる。あの選手はディフェンスラインから動いていなかったはずだ、それをあの一瞬で詰め寄ったのかと戦慄する。
そんな隙を見計らったのか、それとも偶然にか。足を止めた彼らの横を、鬼道が走り抜けていく。
「霊幻さん木乃伊さん止まらないで!!ディフェンスに戻って下さい、早く!!」
カウンターを仕掛けられている現状で止まるのはまずいと、最前線にいた幽谷が叫ぶ。後輩キャプテンの声にはっと我に返った2人が急いで踵を返して駆けていくが、既に鬼道達帝国学園攻撃陣は、尾刈斗コートの深くまで切り込んでいた。
「五条先輩!こっちこっち!」
「クククッ……洞面っ!」
五条の動きを先読みして前に走っていた洞面がパスを要求すると、素早く前にボールを送る。
「っ!いかせませんっ!!」
得意のドリブルで素早く上がっていく洞面。しかし尾刈斗側も、そう簡単には通してはくれない。
洞面の前に立った尾刈斗の一年生DF……柳田が両手を叩くと、彼の手元に古びた本が一冊現れる。それを柳田が手に取ると、彼の周りに妖しい風が吹き荒れ、独りでに古びた本のページが捲られていく。
「此より語るは日ノ本に語り継がれし百もの怪異、その末端に祀られしモノ______三上の山をも七巻にし天にも届くは大蛇の如きその体躯。龍神様すら喰ろうで見せると大顎鳴らせし、畏れ知らずの大妖怪_______ッ!!」
語り部の如く柳田がつらりつらりと言葉を並べる。舞い遊ぶ風が一層強く吹き荒れると、手元の本から一枚の紙が敗れて風に煽られ空へと踊る。それを柳田は手に取ると、地面に向けて叩きつけた。
「______【百物語・大百足】ッ!!」
叩きつけた紙が青白い炎によって燃えると、地面に亀裂が走り、そこから何かが突き破るようにして現れる。先程彼が語っていた存在______巨大な体躯を持った、大百足。呼び出されたその大百足は、洞面からボールを奪い取らんために彼へと襲い掛かる。
「うっわキッモォ!!!こっちくんな!!」
「ちょっと!!こう見えて繊細なんですよこの子!!」
巨大な姿のムカデを見た洞面がそう叫んで飛び上がる。そんな彼の言葉に怒りを覚えたのか、大百足がきしゃーっと威嚇の声を上げながら洞面を捕まえる為に、飛び上がった彼に追従するように襲いかかった。
「よし、取った!!」
ボールを奪えたと確信する柳田。空中では逃げ場はなく、この技から逃れることは不可能だと断言する柳田だったが………
「______引っかかったね?」
ニヤリ、と洞面が笑ってみせる。そして次の瞬間……大百足の動きが、
「!?こちらの必殺技を縛り上げた!?」
「これが新技!!【ハスタウィング】ッ!!」
「うわっ!?」
黄色の触手によって捕らえられ、身動きの取れない大百足。それを嘲笑うかのように、洞面は回転しながら両足にボールを挟み込み、一気に加速しながらその下を抜けて柳田を突破。五条や成神に相談し原型を作り、更にそこから形を整えた彼のオリジナルだ。
「良くやった洞面!そのままセンタリングだ!!」
「っ!やらせな………」
「おっと悪いな、邪魔はさせないぜ」
見事突破して見せた洞面に鬼道がボールを蹴りあげるように指示を出すと、尾刈斗のDFである不乱が妨害しようと動く。しかし、彼の進路を邪魔するように、洞面の手助けをするように、佐久間が不乱を自由にさせないようにマークする。見た目以上にパワーのある佐久間相手では、流石の不乱も動けなかった。
「デスゾーンか……!?」
「いいや、違ぇよ」
三途が帝国学園伝統の必殺シュートを警戒するが、そうじゃあないと近くにいた寺門が笑う。
「あぁそうさ………久々の二人揃っての試合だ。少しばかり派手に行こうじゃないか」
ゴーグルの奥で瞳を妖しく光らせながら、鬼道が笑う。練習試合を含めても、五条と並び立って試合に出るのは久々だ。相手もこちらに食らいつかんとする強敵で柄にもなくテンションのあがった鬼道は、この初撃は自分達に任せて欲しいと皆に伝えていたのだ。
「【歪む空間改】ッ!!」
「無駄だ!」
鉈が両手を動かし空間自体に歪みを発生させ、平衡感覚を失わせようとする。が、その技は鬼道も知っている。彼は一度飛び上がって洞面がキックしたボールをさらに高く打ち上げることで、歪む空間の範囲外へとボールを出した。
素早く判断した鬼道に、思わず鉈が舌打ちをする。そしてボールを目で追いかけると、その先に待っていたのはこの男。
「【ダークトルネード】ッ!!」
深く沈む闇の様に、不気味なまでに燃える炎。豪炎寺のファイアトルネードと似て非なる必殺技、彼が昔から会得してきた必殺の一撃。回転しながらパワーを溜めていた五条が、鬼道からベストタイミングで送られてきたボールを焦がし尽くす勢いで蹴りつけた。
「【ツインブースト改】ッ!!」
「っ、チェインかよ!?【サーティン・マチェッツ】ッ!!」
そして真下に蹴り落とされた黒い炎を纏ったボールを、ダイレクトで鬼道が打ち出す。帝国学園特待生による連続シュート、その威力は計り知れない。しかしただのチェインならば、ブロック込みでなくても止められる。
そう思い鉈が必殺技を発動、蒼色の刃が次々とボールへと襲いかかるが尽くが砕かれる。その威力に驚愕しながらも、鉈が両手を交差させて一際パワーを溜めた2本のブレードを叩きつけた。
「………っ!?くっそ……うわぁぁぁぁッ!?」
叩きつけた2本のブレードに亀裂が入り、砕け散る。まさかこんなに早く砕かれるとは思っていなかった鉈が咄嗟にボールを抱き込むように押さえ込み、ギリギリまでボールを止めようと粘る。
が、それで止められるほど甘くはない。勢いに押し込まれ、ボールは鉈ごとゴールネットに叩き付けられた。
『ご、ゴォォォォォルッ!!なんという帝国の速攻!!天才ゲームメイカー鬼道と、その親友にしてディフェンスリーダーの五条による一撃!!帝国学園、開始早々王者の実力を見せつけたァァァァァ!!』
尾刈斗 0-1 帝国学園
「………冗談だろ……!?雷門のドラゴントルネードを止めたんだぞ、鉈は……っ!!」
この一年間、鉈は特訓を重ねてきた。そんな彼の実力の高さはチーム全員がよく知っている。特にシュートを打ち込んできた月村からして見たら、今の鉈は源田幸次郎にすら匹敵するレベルのキーパーとなった。雷門のドラゴントルネードだって、全国区でも通用する火力を持ったシュートだった。それを超えるシュートを放って見せた帝国の2人に、戦慄にも似た感情が浮び上がる。
「………パワーが、倍増してる……!ただのチェインじゃない……!?」
「当たり前だ。俺たちを誰だと思っている」
ダークトルネードで打ち下ろされたボールに鬼道がツインブーストをチェインした……一見はそう見える先程のシュート。しかし、鬼道と五条の信頼関係が、僅かなズレすら生まれない2人の連携が、それをただのチェインではなく必殺技の領域にまで押し上げていた。【ツインブースト
そんなシュートを放って見せた五条と鬼道。五条が空から彼の隣に降り立つと、鬼道はマントを翻してそう告げる。
「確かによく俺達を研究している………それは褒められるべき点だ。今までのどの対戦相手よりも、お前達は俺達を調べてきたのだろう」
今まで帝国に挑戦してきたチームは、どこもこちらを真の意味で研究出来ていなかった。実力不足も相まって張り合える相手もいなかった上に、直近でこちらを脅かしてきた雷門はこちらの情報をあまり知らなかった。その上で考えれば、尾刈斗は正統にこちらを調べ対策を立ててきた、文字通り過去最高の挑戦者と言えるだろう。
「だが俺達は王者帝国………そして俺達にとって王者とは頂点で胡座をかいて手をこまねく者のことでは無い。常に高みを目指し続ける者のことだ。お前達が調べたデータを遥かに超える速度で、俺達帝国のサッカーは進化を続けている」
だがしかし。彼らが調べ、対策を立てているのは厳密に言えば『過去の帝国学園』だ。自分達は進化を辞めた愚か者では無い。毎日毎日、互いに高め合い、限界を超える。頂点を更新し続け、更なる高みを掴み取る。それこそが、今の帝国学園の姿だ。
特にココ最近では、五条が抜けていたり、特待生の2人がいなかったりと、スターティングメンバーが揃って試合に出ることも無かった。尾刈斗の知る以上の実力を、進化した帝国は保持しているのだ。
「俺達は【王者帝国】だ、こんな所で負けられない理由もある………そう簡単に捉えられると思わない事だな」
たかだか一年程度の努力で追いつかれる程、甘くはない。それ程までに絶対的なまでの差が、両校に存在していたのも事実だ。そう言ってのけた鬼道の言葉は、先程のシュートも相まって並の相手ならば戦意を失いかねないものであった。
「______ははっ!!」
………
「あぁそうだな、そうだよなぁ………簡単に越えさせてくれるほど、アンタらは甘くはねぇよなぁ!!」
歓喜にも似たような声を上げながら、ゴールネットに叩き込まれた鉈が立ち上がる。先程のシュートをもろに食らっておきながら、その戦意は欠片も衰えていない……むしろ、より一層燃え上がっているようにさえ思える。
「やっぱアンタらは強ぇよ。一年間アレだけやり込んできても、まだ上を行くとか馬鹿げてやがるよ、ホントにな」
彼らに負けてから………否、彼らより格下の二軍に負けてから、打倒帝国を掲げてサッカーに打ち込んできた。それでもなお高い場所にいる彼らには本当に心の底から笑いが零れてしまう。
だが。シュートを受けた鉈には確信出来るものがあった。確かに強力、確かに格上。王者帝国の名に相応しく、自分よりも高みに居はするが______
「______でも『
______決して、届かぬ距離では無いと。
「悪いなみんな!次はちゃんと止めるから許してくれよな!!」
ケラケラと笑いながらコート全体に響き渡るような、良く通る声で鉈が叫ぶ。そんな彼の明るい様子に、先程のシュートを見て驚愕で足を止めていたメンバーたちの緊張が少しずつほぐれていった。
「………次は俺達もブロックに入る……もう、点はやらない」
「鉈にばっかり、カッコつけさせる訳にはいかないですもんね………!」
シュートブロックを可能とする不乱、三途が鉈の言葉にやる気を滾らせる。もう油断はしないと、改めて王者の実力の高さを認識しながら、それでもなお食らいつこうと闘志を見せる。
「さっすがだぜお二人さぁぁーんっ!!後ろは俺に任せちゃってな!!」
「今決められたばっかだけどな………ぐふふっ」
「ンーッ!!それは言わないのがお約束って奴だぜ藤美ィーッ!!」
頼りになる守備陣に向かって鉈が背中は任せろと豪語すると、今しがた点を決められた彼をからかうように屍がぼそりと呟く。そんな彼の呟きに鉈がおどけて返せば、尾刈斗メンバー達の顔に笑みが戻った。
「______へし折るつもりでやったが……なるほど。これは中々骨が折れそうだな」
「こちとら一年前の負けをずっと引きずるほど執念深いンでね!そう簡単に折れちゃうほどヤワな精神してねぇんだよ!」
先程のツインブーストDの威力を目の当たりにしても折れない尾刈斗の精神力を見た鬼道が面白いと口角を上げる。今まで対戦してきたチームならば、雷門を除いて全てのチームの心が折れるだろうと予測出来る威力を持っていたはずだ。事実士気は下がっていたはずだが、そこから持ち直すとは。随分諦めの悪い連中だと鬼道が笑えば、当然だと鉈が笑いながら叫んだ。
「………それに俺達にも、アンタらと同じく負けられない理由があんのよ」
思い浮かべるのは、この場にいない人間。帝国に勝ちたいという自分達の無謀な挑戦を叶えるために、一緒に努力してきてくれた監督。不慮の事故で意識を失ってしまったあの人のいない間に負けるなんて、そんなの御免蒙る。
「ここで王者をぶっ倒し!!そんで雷門もぶっ倒す!!んでもって監督叩き起こして、辞めた連中引っ張り込んで、みんな揃って全国本戦!!最後の最後まで月村パイセンや不乱パイセンと一緒にプレー、そして優勝!!______パーフェクトなプランだろ?」
ニヤリと笑って鉈がそう言えば、鬼道も笑い返す。
「なるほど、確かにパーフェクトだな。……俺達に勝たなければ実現しないという点を除いて、な」
「ノープロブレムッ!!うちの攻撃陣なら2点以上取ってきてくれるんだから、後は俺が止めちゃえば良いだけさ!」
鬼道の遠回しの挑発にも鉈が笑って返す。幽谷や月村、武羅渡ならば、ディフェンスリーダー五条の守備をかいくぐり、キング・オブ・ゴールキーパー源田から点をもぎ取ってくれる。なら後は自分が守るだけだ、と鉈が豪語してみせる。本気でそう言ってのける彼と、そしてそれに同意する尾刈斗メンバー。王者帝国にも気圧されない彼らに、鬼道がゴーグルの奥の瞳を獰猛に燃やした。
「______面白い。お前達の本気を見せてみるといい………俺達はそれを超えて、勝利するだけだがな」
「足首掴んで引きずり下ろしてやるよ。覚悟はいいかい、Mr.King?」
片や世代最強。過去最強の布陣を揃えた磐石の絶対王者、帝国学園。
片や凡人。王者に叩きのめされて、それでもなお先に進みたいと亡者の如き執念で這いつくばりながら進んできた挑戦者、尾刈斗。
どちらにも負けられぬ理由がある中で。フットボールフロンティア東京地区予選準決勝、第二試合。雷門との決勝の試合を懸けて、自分たちの誇りを懸けて。両者の試合は未だ、始まったばかり_______