トリップした先で天才漫画家に振り回されててとりあえず早く帰りたい   作:ミツホ

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私の中に何かが居過ぎる

「何で止めるべき2人も読んでるんだろうね! プライバシーに対する配慮は無いの!?」

「…すまなかった」

「……チコっと好奇心が…。 で、でも露伴の野郎がミヤコを読んで未来を知ろうとしないかの確認も兼ねてたんスよ! それに承太郎さんと出くわした部分しか読んでないんで!」

「君がもし敵の刺客なら承太郎さんを見て何らかの反応があるだろ? まどろっこしい確認も済んである程度疑惑が晴れたからこそ、承太郎さんも書いてある内容を確認する気になったんだぜ?」

 

こいつ絶対それっぽいこと後付けしただけで実際は好奇心の赴くまま読んで読ませただけだろ。

そこを言及したって何の実りも無いのが分かるからもう突っ込まないけどさぁ…。

 

そんでこれが初犯じゃないのは小一時間くらい前に気付いてるからな。

 

いやー、今日途中で気付いたんだよ…何で仗助君そんなナチュラルにこの場に交じって普通に話理解してるのってね!

まあ気付いたのは4部の話を始める切っ掛けに仗助君が水を向けてきたからなんだけどね!

 

そりゃ確かに外で露伴先生を盾にしようとしたときトリップの神様くたばれ的な気持ちで何か叫んだ覚えはあるけど、漫画読まない仗助君がそれだけでこんなに話を素直に飲み込むとは思えないんだよねー…。

そこに至るまで気付かなかったあたり私の頭がどれだけ混乱してたかがよく分かるし、気付いた瞬間は逆にすぅっと頭が冷えたよ…!

速やかに気付かなかったことにする程度に!

 

私の情報はどこからどこまで誰から誰まで流れてるのかな!?

康一君は絶対知ってるだろうね!

願わくば腐ってる部分は流出していませんように!!

 

 

「…そうであるなら、私の疑惑は多少なりとも晴れたのでしょうか? 空条博士」

 

人間混乱し過ぎるとむしろ冷静になるっていうのは、深く考えることをやめるからだと思う今日この頃。

というか早く2人に帰ってもらってちょっと落ち着く時間が欲しい切実に。

 

「現時点で君がDIOの刺客だという証拠は無い。 だがこちらの実状を知り過ぎて居ることと、その理由となる異世界についてすぐに信じることも難しい。 そして、未だに向こうから結果報告が無いのもおかしな話だ。 先程も催促の連絡を入れたが、返事が来ない」

 

わーい、これ絶対すぐには帰ってくれないよぉ~クソがぁ~…。

返事が来ないとかどういうことなの…?

 

「何らかのトラブルがあちら側に起きているのでは無く?」

 

というかそうじゃないなら私が原因だしそれってすごい怖いんですが…。

えぇー…。

 

私の住所や家族構成や過去の思い出話なんかが何を引き起こすわけ無いと思うけど、実はそれに該当する人間が存在して私がスタンド使いにその人の人格をコピーして創り出された存在で頭の中に爆弾が!みたいな可能性無いよね?

お許しください案件は私だった…?

 

空条博士を誘い出すために過去の出来事を漫画として記憶に植え付けられたにしても私が敵のスタンド使いならこんなやつ絶っっっ対コピーしないけど。

いやまあもし適当に選んでコレだったとかならオリジナルさんがとんでもない情報を次々と暴露されてて可哀想過ぎるしそうじゃなくてやっぱり私がオリジナルなら私がこの話は止めよう今すぐにだ。

 

「その可能性も有るだろうが、…電話だ。 少し失礼する」

 

立ち上がり部屋から出て行った空条博士を見送り、何となく詰まっていた息を吐いた。

今日は遭遇してからというもの台所に行ってお湯を沸かしてる間ぐらいしか離れてなかったんだから緊張しっぱなしで全身ガチガチにもなりますわー。

 

ピンと伸ばしていた背筋をそっと緩め、前方からのプレッシャーにピリピリしていた眉間を手の甲で軽くグリグリと解してみる。

ふと目を上げれば此方を見ていた仗助君と目が合い、気まずさを誤魔化すように苦笑が零れた。

 

「あー、ごめんね仗助君。 私があんな風に取り乱したから一緒に来ようと思わせちゃったよね。 ここに着いてからも全然落ち着きを取り戻せなくって、居たたまれない思いばかりさせて本当にごめんね。 あんまり今の私に出来ることって無いんだけど、機会があったら何らかの形で埋め合わせさせてね」

「や、別に良いッスよ。 ミヤコのことも心配だったから、俺の勝手っつーか」

「ううん。 居てくれて本当に助かったよ。 ありがとう」

 

空条博士や露伴先生だけじゃなく疑惑の晴れない私のことも心配してくれていたなんて、本当になんて優しい子なんだろうか。

例え金を巻き上げようと露伴先生にイカサマ仕掛けたり髪型を貶されただけでバーサーカーになるとしても、私の中で君はすごく良い子だよ!

でも身内にはいなくて良いかな!!

 

「待たせたな。 あちらからの電話だったのだが、どうやら何らかの通信トラブルでデータが送れないらしい。 そのかわりに先程スタッフが1人こちらに向かって出立したらしく、明日の夕方には着くそうだ」

 

通信トラブル~?

ハッキングとか電波傍受とかそういうレベルの話だったりするの?

データを送ることで空条博士の居場所が敵にバレるからとかそういうこと?

この世界のセキュリティーや追跡技術がどんなのかわかんないけど、それぐらいの危険が有るからデータ送れないんだよね?

そうじゃないなら無理矢理にでもデータ寄越して空条博士を速やかに帰還へと誘ってくれませんかね?

私の心臓いくつ有っても足りないんですけど。

 

 

だいたい私の中のマンボウがこの数時間で何匹ストレスで死んだと思ってるの?

正直目の前に座られた時点でどれだけ逃げたいと思ったことか!

後ろめたいことなんて何1ついや私が腐っているということを除いてなんだけどDIO信者なんかじゃ微塵も無いから恐れる必要が無いというのに圧がすごいんだよ!

 

私の中の天使と悪魔が

『怖いのなら逃げても良いんですよ。 貴女がDIO信者では無いのは確かなんですからね』

『後のことなんて今考えてどうすんだよ。 逃げちまえ逃げちまえ。 向こうにだって証拠は無ぇんだぜ?』

って逃げることを推奨してる中で某中学生がずっと

『逃げちゃ駄目だ…逃げちゃ駄目だ…逃げちゃ駄目だ…逃げちゃ駄目だ…逃げちゃ駄目だ…』

って言うから我慢してたんだよ!?

 

「明日の夕方、ですか。 空条博士はご予定は大丈夫ですか?」

 

混沌とした内心をおくびにも出さず、これでもかと八つ橋に包んだ『帰って欲しい』という言葉を理解してくれる京都の方ー!

今すぐ空条博士の中に御来訪くださいませー!

 

 

「ああ、来日が決まった時点である程度予定の調整はしてあるからな。 余程のことが無ければ明日の日中はこの近場の海でフィールドワークをする予定だった」

 

どう足掻いても明日は結局この町に滞在する定めだったんですねクソが。

 


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