トリップした先で天才漫画家に振り回されててとりあえず早く帰りたい 作:ミツホ
このまま見張るためにここに泊まる…なんてことは無かったんだぜ!!
やったぜ!
やったぜ!!!
とまあこんな感じで空条博士と仗助君が帰ってからというもの私のテンションは有頂天の鰻登りだ。
なんせ見張られなかった=空条博士の中では報告を見るより先に白寄りのグレーってことじゃないですかやったーっ!!
「君ってやつは、なんというか……幸せな人間だな」
あからさまに(頭が)っていう副音声がありきの言葉だけど今の私は寛大だから気にしないよ!
そんなことより今この解放された幸せをゆっくり噛みしめようぜ!!
「ああ、そうだ。 明日の昼まで僕の食事は用意しなくて良いし声もかけないでくれ。 あと金はいつものところにあるから後でコンビニに行って最低3種類のサラダを買って来ておいてくれよ。 君も何でも好きに買って良いからさ」
露伴先生も籠もるみたいだし万々歳!
でも出来るならもう外出したくない…。
外でばったりとか無いって言い切れないし…。
「サラダぁ? 家で作っておくのでも良いんならすぐできるけどなんでそんなややこしい注文を…」
買い物に行かなくっても種類が欲しいなら生野菜でもポテトでもドレッシングと和えてあるタイプでも和風のでもいくらだってバリエーションを揃えられる。
ドレッシングだってこの家に有る調味料で3、4種類はすぐに作れる。
だから外には行きたくない!です!!
「近く短編を1本描くんだが、登場人物の1人をベジタリアンにする予定なんだ。 自炊をしないタイプの人間にするつもりだから既製品じゃないと意味が無い。 容器の形なんかもしっかり見たいからな」
あー、はい…。
仕事の資料なら仕方ないね。
ちゃんとした理由が有るのに雇い主相手にごねるほど厚顔じゃないからね。
…はぁ、リアリティの追求者ってのも大変だなぁ。
「別にチキンやハムが入ってても良いから最低3種類だけは守れよ」
「ベジタリアンなのに?」
まあ、ベジタリアンと一口にいっても完全に動物性タンパク質を受け入れない人から少しなら食べる人までピンキリらしいけどね。
でも露伴先生がわざわざベジタリアンって言うんなら、それなりにしっかり?したベジタリアンだと思ったし意外性な感じがする。
「分かって無いナァ。 入ってるのをどうやって避けて食べるかまでをシミュレーションするんだよ。 とにかくそれだけやっといてくれたら後は好きにして良いから、邪魔だけはしないでくれよ」
なるほどー、そういうのがリアリティなんだなぁ。
よく分からんけど。
「りょーかいでーす」
まぁ、日が明るい内に洗濯物を干しておきたいしそれが片付いてから買いに行こうか。
そんなこんなで家事を終わらせると外はすっかり西日になっていた。
とりあえず行った覚えのあるコンビニ、オーソンに向かう。
バスを待つのがかったるいのでそのまま歩いて行くと、ちょうどオーソンの前で康一君とはち合わせた。
「あ、京さんあれから大丈夫でした?」
「やあ、康一君。 私はまぁ、なんとか致命傷で済んだよ」
「…………、全然大丈夫じゃなかったんですね」
流石康一君飲み込みが早い。
「1番の問題は大丈夫だよ。 私が敵のスタンド使いの刺客じゃないとは思ってもらえてるみたいだから」
「それなんですが、何故そんな事態に? 怪しまれるだけならともかく、明確に敵と思われていると京さんが思ったからこそあそこまで取り乱したんじゃないですか?」
康一君鋭過ぎるわー。
そりゃ承太郎も康一君だけは君付けになるわけだね。
「うん、それにはかなりの深い事情があるんだけどね。 まず康一君はどこまで私の事情を知ってるのかな? 仗助君と同じぐらいだとは思うんだけど」
「えっと…それはどういう…」
「君達、私がここをどう認識してるか知ってるよね?」
「……はい」
誤魔化しても仕方がないと観念したのか申し訳なさそうに頷く姿を見て露伴先生は康一君の爪の垢を煎じて毎日飲めと思った。
わりと真剣に。
「聞いたのか……読んだのかはあえて聞かないけど…」
「すみません…」
「いや、どうせ悪いのは露伴先生だと思うから気にしないで。 まぁ、それでね…」
軽くDIO様の件を説明したら沈痛な面持ちで
「それは…ご愁傷様でした…」
と労われた…。
優しさが…沁みる…。
「そういえば京さんは何でこんな時間から外に?」
立ち話の間にも影は伸び、空の色が朱くなってきた。
確かにどこかへ行こうなんて時間じゃあ無いね。
まあ用が有るのはそこのコンビニなんだけど。
「露伴先生のおつかいでね、漫画の資料にコンビニサラダを最低3種類買って来いってね」
「へえ、資料ですか」
何となく流れで一緒にコンビニに入りサラダコーナーに行くと、運悪く棚はスカスカ…。
有ったのは1種類だけだった。
私的にはコーンサラダという名の容器に詰まったコーン粒だけのこれをサラダにカウントするのは微妙なラインだけど商品名にサラダが含まれてるからこれはサラダで良いよね露伴先生にはそれでごり押そう。
並んだレジで店員に声をかけて仕入れ時間を聞くとまだだいぶ先の時間だった。
待ってられる訳もなく、とりあえずコーンを買って外に出る。
「コンビニハシゴ決定かー…」
「京さんこの辺りの地理は大丈夫ですか?」
「遠くなるけど駅の方に行けば有るでしょ」
「でも駅の方が商品が無くなるの早そうじゃないですか?」
「うーん、仕入れ数が勝るか客足が勝るか…どうだろう」
付き合って一緒に考えてくれる康一も良い子だなぁ…。
たださぁ…、刻々と傾いていく日に照らされる康一君は少なくとも高校生かそれ以上なはずなんだけど、なんか…見た目的なアレで、いやねカッコ良くて頼りになるのは分かってるんだけどさぁ…
「駅とは方向が少し違いますが、あっちにもオーソンが有りますよ。 案内しましょうか?」
「いやいや、もう遅い時間だから康一君は帰りなよ」
これ以上遅い時間まで連れ回すのが憚られる見た目なんだよねぶっちゃけると!
頭では分かってるんだけど視覚的情報が夕日と相俟った相乗効果で気持ちがアウト!
小さ…小さいんだよ康一君!
一瞬躊躇ったけど小さいんだよ!!
器も背中もでっかいのは理解してるんだけどそれはそれこれはこれなんだよ!!
「でも女の人が1人で慣れない場所を」
「康一君。 君は男女で考えるけど、私は大人と子供で考えるから平行線を辿るしか無いよ。 君は未成年だし、一緒に来て遅くなった結果家の前まで送られるのは嫌でしょ? 帰りはバスを使うし、簡単に場所を教えてくれたら大丈夫だから」
「そう、ですか。 わかりました。 この道を真っ直ぐ行って…」
矜持を傷付けないようにやんわりかつ断固として引かない姿勢で構えれば、康一君はすんなりと道を教えてくれた。
こんな良い子息子に欲しい。
相手も予定も微塵もないけど。
……なんか宝くじ買わずに宝くじ当たらねーかなーって言ってるようなものだねこれ…つらたん…。
くだらないことはさておきそのままお礼を言って別れ、教えてもらったオーソンに向かう。
もしそこにも無かったら駅に向かおうと思ってたけど、幸いそこにはさっきのオーソンには無かったサラダがちょうど3種類有ったので3個のサラダと適当に食べたくなったおにぎりやサンドイッチ、炭酸のペットボトル、ついでに食べながら帰ろうとアイスも買って外に出た。
横着して歩きながらアイスの袋を剥いて腕に通した袋にゴミを入れようとしたらスルリと逃げられ、しかもうまい具合に風に乗り逃走を続けたそれは脇道に入っていく。
やけにスルスルと地面を滑る袋を追い掛け、足で捕まえたそれを拾おうと屈んだ瞬間。
後ろから、私を呼ぶ、声がした。