トリップした先で天才漫画家に振り回されててとりあえず早く帰りたい   作:ミツホ

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私の握力は53です

漸く全員が座って話が進むかと思いきや、無言で資料に目を通し始める協調性の無い空条博士。

 

そういうとこやぞ。

せめて一言『おれっち資料確認しとくから状況確認よろしくおっぱっぴー』的なことを仰々しくでも淡々とでも良いから言うのが大人としての最低限のコミュニケーションだと誰か教えてあげるべきでは?

 

私は無理。

だって怖いもん。

 

こういう経緯で空条博士のコミュニケーション能力が伸びなかったってはっきり分かったね。

現実は残酷だ…。

 

 

何はともあれ空条博士が幸の出した資料にざっと目を通すのを待つ間に簡単な自己紹介と端的な情報交換をしたところ、幸はこっちの世界に来てからSPWの超常現象調査部というところで身元預かり的な状況で、仕事の斡旋もしてもらいつつ帰る手掛かりを探していたということが判明した。

というか今までの生活全部アメリカで今回トリップ後初の日本らしいんだけど日本の海水浴場で溺れてアメリカにトリップって世界を越える過程でどんな事故があったの?

あと戸籍とかパスポートどうなってるの?

 

漫画の世界に野暮なツッコミかもしれないけど色々ぶっ飛び過ぎで白目向きそうになったわ…。

 

そして私の場合はテーブルの上に乗せたコンビニ袋から出したサラダが真夏に外気温でほぼ丸1日経ったと思えない新鮮さだったことから、この家を出てから体感2時間ちょっとという説明があっさり認められた。

それはともかくとして露伴先生が嘗め回すようにサラダを観察しだしたのはちょっと引いた。

 

あと空条博士の隣でふんふんと頷きながら聞いてた幸が幽霊の小道でねーちゃんと呼ばれた件の所で『幽霊すげー!』みたいな顔になって遺憾なく我が家のクソガキ幸っぷりを発揮してて疑うのも馬鹿らしくなってくるっていう。

こんなの世の中に2人もいらん。

 

「それにしてもお前、よく空条博士にあんな絡み方できるね。 立場とか人柄とかどれを取っても普通無理だと思うんだけどそもそも絡む機会があるのが驚き」

「だって日本語使えるってだけで話し掛けたくなるじゃんか。 スタンドって人災?を扱ってる部署のド偉い人ってのは知ってるけど、俺のいる超常現象調査部の直属上司でもないしそこまで畏まる必要性無さそうだったからさー。 俺が日本人来たって聞いて話しかけに行ってからは何でか俺が承太郎さんの対応任されるようになったし、そっからは順調に仲を深めたっつーか?」

 

……想像するにお前は仲良くなったつもりかもしれないけどたぶん空条博士はスルースキルの成長ないし諦めることにしただけだと思うよ。

あと超常現象調査部の職員ちょっと待て。

 

「それ他の職員が怖くて対応できないからお前の不敬を見逃して対応ぶん投げたんじゃない?」

 

私が言えたことじゃないけどそれでいいのか…?

私の読んできた2次創作だとSPWってジョースター家クラスタとか過激派とかバリバリ研究員っていうか承花の仲を引き裂こうとしてるか花京院をジョースター家の依頼もしくは内密で生き長らえさせてるか……よく考えると結構振り幅広いな。

スタンド関係無かったら触らぬ神に祟り無しというか畏れ多くて下手に対応できないとかなのかね。

 

「えー? 別に承太郎さん怖くなくね? 俺は承太郎さんとねーちゃんのどっちが怖いって聞かれたら迷い無くねーちゃんなんだけど。 うちのねーちゃん怒るとすげー怖いから君らも気ぃつけろよー。 言ってもわかんねーと思うけど笑顔に敬語で淡々と詰め寄ってくるのマジでヤバいから。 顔はすげー笑顔だけど背後に魑魅魍魎悪鬼羅刹背負ってっから。 例え承太郎さんでもあのねーちゃんには勝てねーと思うわ…」

 

勝てるわけねーだろ例え私が平将門だったとしても空条博士の一睨みで速攻成仏するわ。

 

「お前はねーちゃんを何だと思ってるの。 常識的に考えて空条博士に私が勝てる要素なんて何一つ無いからね。 普通に怖いわ」

「いやいや承太郎さんはちょっとでけーけど別にそこらの人と変わんねー普通のおっさんだから」

 

……言ってる事が分からない…イカれてるのか?

 

「弟が乙女ゲームに転生トリップ成り代わりの何れかをして本来の主人公を押し退けて無自覚に最難キャラを落とす女の子みたいなこと言い出した……無理…怖い…」

 

いやもう冗談抜きで今の幸の発言今年の戦慄したオブザイヤーナンバーワン確定なんだけど世界広しといえども空条博士を普通のおっさん呼びできるのコイツぐらいなのでは?

 

頭は前からアレだったけど空条博士の外見を認識した上で普通のおっさん呼びはもしかしたら私と違う世界を見てるのかなって心配になるから勘弁して欲しい。

……怖いからちょっとあとで確認しよう…。

 

「ちょっ、やめろよ気持ち悪ぃ! 例えが嫌過ぎる! 俺にそういう系の変な冤罪かけるんなら住み込み家政婦やってるねーちゃんだって『俺の槍を磨け』的な展開が有りそうじゃんか! エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!」

「誰がアルゴニアンじゃボケ」

「問題はそこじゃねぇぇぇーっ!!」

 

ならアルゴニアンメイドで例えるなよというか予想外の所から刺されてこっちも吃驚したから変な返事になったんだよ!

どこをどうやっても私と露伴先生がどうこうなるわけが無いしその発想は無かった!

目から鱗が100枚ぐらい落ちた気分だわ…。

 

「露伴先生もこんなのに手を出すほど好色家じゃないし失礼だからそういう発言はやめなさい。 康一君と仗助君に露伴先生が変な目で見られるようになったら責任とれるの?」

「あ、いや、大丈夫ですよ? 僕達おふたりがそういう関係じゃないって分かってますから…」

「そうっスよ! 普段の姿見てりゃあそういうのじゃねえって分かりますから!」

 

うん、あの遣り取りを知ってたらそうだよね。

ちょっと安心したけど世間の目について後で露伴先生と話し合わないとなぁ…。

まあ露伴先生は漫画に関係しなければ下らない噂だって一蹴しそうだけど。

この2人からの変な誤解が無くて良かった良かった…

 

「いやいやいやいや待った。 君達のご両親は君達の前では親の顔かもしれないけど君達が居る時点で男と女の顔も持ってるわけでつまりこの2人が夜は君達の知らな」

「幸 ち ゃ ん」

「ちょ、何で急に怒っ」

「ち ょ っ と 静 か に し ま し ょ う ね」

「あ、ちょ、まっ、承太郎さん助け、てかほらやっぱねーちゃんの方が怖…き゛ゃ あ゛あ゛ー っ ! 痛い痛い痛い痛い! 当たって…ちょっ、骨! 骨! 肩がもげ…っ、握力ゴリあ゛あ゛あ゛ー っ! 鎖骨やめろ!!」

 

ヘぃちょーが ゅってた 躾にきくのゎ ぃたみだって

このバカマヂ無理…躾ιょ


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