トリップした先で天才漫画家に振り回されててとりあえず早く帰りたい 作:ミツホ
……フェスティバルが開催された…ヘルフェスティバルが…。
カフェ・ドゥ・マゴのテラスに座っているのは私、露伴先生、そして…
「何スか?」
「……ナンデモナイデース」
仗助君ですねどこからどう見ても立派なリーゼントが『じょ~お~す~け~く~ん…ですよぉぉぉーっ!』って主張してる…。
おっかしいなぁ…。
露伴先生に誘われて『舞台』である社王町の散策をしてる最中に仗助君を見かけた時は生のリーゼントとその下の超絶イケメン具合と近付くに連れて(え…っ、デカくね…?)っていう若干の恐怖が綯い交ぜになりつつもワクワク感が止まんねーぜぇ!ってなってたのに何で今こんな地獄になってんだろう…。
私の想像では露伴先生と仗助君は馬が合わないからちょっとの嫌みの応酬が有ってそのままさよならだと思ってたのになァーっ!
なぁんで今こうやって3人でお茶してんのかなァーっ!
アタシ今体温何度あるのかなーッ!?
私さっきの露伴先生の発言で死んでるからだいぶ冷えてきてると思うんですがチーズ蒸しパンって常温だと何度なんですかね水分あるし気温よりは低いと思うんですけど。
「僕は腐女子ってのを実際に取材した事は無いんだ」
「先生」
「そもそも僕の書きたい少年漫画に必要じゃあ無かったしね。 でも今回みたいな状況は2度とお目にかかれないだろ?」
「先生」
「せっかくだからと思ってこうやって君の喜びそうな状況を作ってやったのに当人は全然分かってないしサア。 どういう事なんだい? 何で君は目の前に妄想源が有ったのに何一つ感じ入ること無く僕に無駄な時間を浪費させたんだ?」
「先生、もう許してください。 本当にもう生きててごめんなさい」
「君ナァ、何を勘違いしてるんだい? 僕は純粋に興味を持っただけで別に君を辱めたいワケじゃあ無いんだよ? 日本人なんて1000年以上前から筋金入りの変態なんだ。 堂々としてりゃあ良いじゃないか」
「余計に質が悪いです流石露伴先生。 そういう話を外でするのやめてくださいお願いします」
「君がさっさと答えりゃあすぐに終わる話だぜ?」
「3次元になった時点でその発想は微塵も起こらなかったというか何で私は萌えなかった事を怒られてるんです? 普通萌えて怒られるところじゃ無いですか? こんなの絶対おかしいよ」
「ふうん、なるほど…。 そういうもんなのか…」
頻りに頷きながらスケッチブックにメモを取る露伴先生の横で話について行けないながらも私がダメージを受けている事は察してくれているらしい仗助君に曖昧な微笑みを返す。
(何も聞かないで…)
(おう…)
というような感じのやり取りを雰囲気だけで行う。
初対面だというのにこの時だけは心が通じ合ってた。
外国の血が強そうな面立ちだけどこういう所は日本人感覚で良かった…。
ここでぐいぐい聞かれてたら私は羞恥のあまり憤死したかもしれん。
というか聞かれて理解されたらドラられてた可能性の方が高い気がする。
「あー、俺は東方 仗助っつーんだけど、アンタは?」
「ドーモ、ジョウスケ=サン。 渡利 京デス」
「あのよぉ…ミヤコは露伴に何か弱みでも握られてんのか?」
口ごもっておきながら放つ言葉がドストレート!
真横に露伴先生いるのに若さって怖い!
まあ弱味というか逆らえないっちゃ逆らえないけど…
「人聞きの悪い事いうんじゃないよ。 対価を受け取ってるだけで嫌なら断ってくれて良いんだぜ?」
「頭が上がらないのは確かですが何の不満も不平もございません」
露伴先生は自ら約束の反故はしないだろうけど揚げ足取りで『君の方から反故したようなものだろう』とかネチネチきそうだから速やかに頭を下げる。
こちとら衣食住も帰る頼みの綱も露伴先生だけだから仕方ないね。
イニシアチブは常に露伴先生のものです。
「露伴…お前…」
「なんだよ仗助。 本人がこう言ってるんだしお前は関係無いだろう」
結局何でこんな状況になっていたのかも分からないまま途中から現れた康一君と3人で適当な話をし、露伴先生は時々康一君に話しかけたもののそれ以外はスケッチブックを相手にしていた。
「良いですか露伴先生私は2次元のジョジョキャラで萌えていましたそれに嘘偽りはありませんですがこの世界は3次元なんです例えば私が2次元に入って目の前に3Dになったキャラがいるトリップだったら最高にハイってやつになってたかもしれませんが3次元は違うんですよ岸辺露伴というキャラクターがそのお腹の出た服装で描写されていればちょっと不埒な妄想が捗りますけど今の私には『露伴先生イカレた格好してるな似合ってるけど』ぐらいの感想しか無いんですよ分かってください!」
「そうか。 それよりも帰ってきて人目を憚る必要が無くなったんだ君が何故男同士の創作恋愛を好むようになったのかを取材させてもらおうか」
「最低の向こう側って存在するんですね」