トリップした先で天才漫画家に振り回されててとりあえず早く帰りたい   作:ミツホ

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白クマとかギリシャ彫刻とかそんなもんじゃなかった

街中で歩いてる人を見て『ゴリラ!!!!!』って思う日が来るとは…。

仗助君見た時はそんな事全然思わなかったから多分歴戦のオーラが威圧感的なのを発しててそれがサイヤ人みたいな戦闘民族ゴリラ感を漂わせてるんだと思うけどそう考えると仗助君には杜王町のゴリラにはなって欲しくないからそれなりに平和に育って欲しい切実に。

 

何でそんな状況になったかって今日はてっきり空条博士待ちで家にずっと居るのかと思ってたんだけど露伴先生が

『2ヶ月も前から今日発売の画集を予約してるんだ。 取りに行くから君も来いよ』

って言い出して本屋の前に着くなり

『あそこの行列見えるかい?』

『あー、気にはなってたけど…』

『最近できたジェラートの店だ。 僕のは適当に君が選んどいてくれ』

と、万札を私に握らせ本屋に入っていきやがったからである。

 

すぅーっと足元を一瞬撫でる涼しい空気が満ちた本屋で欲しい物を手に入れられる露伴先生と炎天下で行列に並ばさせられる私を隔てて自動ドアは閉まった。

そして順番が来て漸くジェラートを購入して本屋近くの街路樹の木陰に入り自分用の分を食べながらふと周囲を見渡したらゴリラを発見した次第ですねはい。

 

 

そのゴリラが急に立ち止まり周囲を見渡した後にこっちを見て近付いてきたんだけど顔面を視認した瞬間思わず目を逸らしたよね。

 

 

仗助君の時はイケメン具合にむしろガン見したけど、空条博士の場合はイケメン過ぎてなんかもう直視できないわ。

歴代最強主人公は伊達じゃない何だこの世界一かっこよくて美しいゴリラ…。

4部と5部は衣装が白いから白熊とかってよく比喩されてたけど白熊っていうより白いゴリラだよこれ。

川で鮭よりジャングルでバナナがしっくりくる霊長類最強の風格がある。

 

よく見る承太郎描写にギリシャ彫刻だの芸術品だのあるけど私に芸術センス皆無なのか結局は2次元キャラへの描写で済むのかどっちだ!

 

 

っていうかこんな人に私が腐女子で故人と貴方を辱めて楽しんでましたとか言えねぇえええええええええ!!!

バイオゴリラが優しく思えるような恐ろしい終わりしか見えないよ!!!!

サマンサタバサの如く粉砕される!!

 

右ですか左ですかもしかしなくともオラオラですね!!

何で振り向いたの最強のスタンド使いの勘なの!?

 

このまま脇を通り過ぎてどこか行かないかなー…とか淡い希望を抱いてたんだけどやっぱりそんなことは無かった。

 

「お前が渡利京だな」

 

こ え が ヤ バ イ !!

顔面体躯声音の3アウト!!

 

ああああこれは無理だよ駄目なヤツだよ怖いよぉおおおおママーッ!!!!

 

どうすりゃいいの!?

DIO信者疑惑を持たれている私が今するべき行動は!?

①トリッパーである渡利京は時間差でスタンド能力に目覚めこの窮地を脱する。

②仲間はいないけど共通の知り合いはいるから誰かが登場して執り成してくれる。

③どうにもならない。 現実は非情である。

 

「ぅおわっ! じょ、承太郎さん!?」

内心ガクブルしながら固まっていたら空条博士の後ろから仗助君が登場!!

「あっ、京もいるじゃん。 え、どしたんスか?」

②を連呼する前に来たああああああ!!

でもよく考えたら共通の知り合いイコール空条博士と親しいんだから空条博士をスルーして私がそっちに近付いたら『こいつまさか人質を…』とか思われるような気がしてきたぞ…。

 

 

……露伴先生いいいぃぃぃーっ!!

助けてええええええええ!!

っていうかジェラートも溶けてきてるし!

自分用のチョコとピスタチオは何とか食べ終わったけど露伴先生のミルクとココナッツパッションが手をベタベタにしてきてるから!

こんなん絶対もう露伴先生食べないじゃん何で買いに行かせたのさ!

 

「お前達を信用してない訳じゃ無いが、この目で確認しなければ納得できない質でな。 真偽を確かめに来た」

「あー…、まあ事情が事情ですからしょーがないっスね」

幸いな事に仗助君の立ち位置は空条博士側。

下手に動かなければ疑惑を持たれることも無いと信じて現在マナーモードになってるけど手ぇめっちゃ震えてて恐怖で震えるっていうの初体験!!

 

露伴先生早く本屋から出てきて!

こっちに気付いて!!

あいつウィンドウ越しに全然姿見えないけどどこにいるんだよ馬鹿!!

 

「仗助君も承太郎さんもどうしたんで…す、か…。 あー…、京さん…」

 

これがスタンド使いは引かれあうってやつか超集まるじゃん!

 

唐突に背後から現れた康一君は目立つ2人を見つけてこっちに来て、この距離で私に気付いてついでに状況も察してくれたらしい。

流石康一君!

 

しかも私の心情を察して私と空条博士の間にすっと入ってくれる優しさ!!

小さな背中がめっちゃ頼りになるよ!!

康一君素敵!! かっこい

「康一君、後ろの女は……だ ぁ れ ?」

「あっ、由花子さん! えっとこの人はみや」

「露伴先生の下僕でございます露伴先生が親友を自称する康一様とは4日ほど前に初めてお会いしました直接会話をした事は3度あるかないかという程度の他人でございます後ろに立っているのも深い意味はございません!!」

ぴゃっと飛びのいて距離を取った私の俊敏さオリンピック級。

 

 

全員が何だこいつみたいな目をしてるけどだって声も雰囲気もめっちゃ怖かったからな!!

康一君が京さんなんて名前で呼んだ時点で弁明の余地なく髪の毛でキュッてされると思ったんですぅ~!!

由花子さんの情報は髪の毛でキュッてしてくるヤンデレって事ぐらいしか知らないしその上であんな声聞いたらキュッてされるとしか思えないんですぅ~っ!

 

ホールドアップのポーズになったせいで肘までジェラートが垂れてくるし踏んだり蹴ったりだよ!

そもそも空条博士でビビってるところにこんなコンボ畳み掛けられたら誰だってこうなる私だってこうなった露伴先生はやく来て!!

 

「オイオイオイオイ、何集まっ」

「露伴先生えええええええええええええええええええええええ!!」

「なん…オイコラやめろ! ベタベタしてキモチワルイぞ!!」

 

漸く現れた露伴先生の背後に回りしがみつこうとしたら腹出しスタイルのせいで汗ばんだ手が薄い腹にペトリと触れたし気持ち悪いとか言われて私もそんなもん触りたくなかったよ!!

 

「そんなお腹出した服着てる露伴先生が悪いっていうか何でそんなつんつるてん着るの似合ってるけどぉぉぉっ! 掴むところ無いし盾にしにくい!!」

「うわっよせ…ッ!」

 

仕方がないからそのままつまめる肉の無い腹に腕を巻き付け腰のあたりに頭をグッと押しつけ腰を落として足を踏ん張り絶対に逃がさないように力を込める。

 

炎天下で汗ばんだ腕と手がひんやりとした肌にぺっとりと密着して気持ち悪いけどかまうもんか!!

最強のスタンド使いに怪しまれて絶体絶命のピンチだけどうどんとそばどっちが好きとか聞かれなくってももうどんなことがあってもきみのそばをはなれないよ!!

 

 

 

 

……今思えばもう片方の腕は垂れるジェラートが服に付かないようピンと伸ばしていたから端から見ればとんでもなく珍妙な状態だったと思うけどそんな事を考える余裕なんて無かった。

正直あの辺りから記憶が定かじゃ無いけど露伴先生宅のリビングで対峙する面々の顔から察するに禄な事は言ってないってのは分かるよ!

 

分かるよ!!!!


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