やはり俺の○○委員会はまちがっている。   作:フリーダムrepair

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2話目

ご意見ご感想、好きな告白実行委員会キャラや出して欲しいキャラクター等ありましたら、お気軽にコメント頂ければ幸いです。


やはり俺の〇〇委員会はまちがっている。2

この桜丘高校の校舎は少し歪な形をしている。

上空から見下ろせば、ちょうど漢字の口、カタカナのロによく似ている。ちょうど視聴覚室の部分を付け足してあげれば我が校の俯瞰図が完成する。

この視聴覚室だが割と普通の高校より機材が揃ってる、なんて入学案内のパンフレットにも書かれていた。

なんでも、桜丘高校は映画研究が盛んに行われているのか映画のナントカ賞を取った先輩もいるらしく、映画研究部、なんてのもある。

道路側に教室棟、それと向き合うように特別棟がある。それぞれは二階の渡り廊下で結ばれており、加えて三年生の教室は教室棟より特別棟の方に密集する為、新入生は三年の教室に行くと大抵迷うと誰かが言っているのを聞いた。

他に、特別棟は最上階まで行くと高校にしては珍しく花壇に花が咲き乱れた屋上がある。

校舎で四方に囲まれた空間がリア充どもの聖地・屋上だ。

彼らは昼休みになると男女混合で昼食をとり、放課後には暮れなずむ校舎をバックに愛を語らい、夜風を浴びて星を見る。

なめとんのか。

傍から見ると青春ドラマの配役を頑張って演じてるような、そんなうすら寒さしか感じない。そこでの俺の役は『木』とかそんな感じだ。

明智先生がリノリウムの床をかつかつ言わせながら向かうのはどうやら特別棟のようだ。

…嫌な予感がする。

そもそも部活というのがロクなモノじゃない。

ここは一つ予防線を張っておこう。

「俺、腰に持病がありましてね…あの、ヘル、ヘル、ヘルパス?あれなんですよ…」

「ヘルニアと言いたいんだろうが、その心配は無用だよ。君に入ってもらいたいのは運動部じゃない」

明智先生は馬鹿にしくさった表情で俺を見た。

ふむ、ということは、文芸部とか文化系の部活か。そうした運動部以外の文化系の部活はある意味で大学のサークルくらいのノリが必要とされる場合もある。

「俺、教室に入ると死んでしまう病が」

「…どこのながっぱな狙撃手だ。麦わら海賊団か」

あんたマンガ読んでんのかよ。

まあ、文化系の部活とは言え俺を入れようとするくらいだ。そんな活動的な部活ではないだろう。なら、心のスイッチを切って「俺は機械だ」と割り切れば何の問題もない。

こうなったら最終的には機械の身体を求めてネジになる勢いだ。

「着いたぞ」

先生が止まったのは視聴覚室から大分離れた何の変哲もない教室。

プレートには何も書かれていない。

俺が不思議に思って眺めていると、先生はからりと戸を開けた。

その教室は椅子が数個と長机が一つポツンとあるだけだった。空き部屋として使われているのだろうか。他の教室と違うのはそこだけで、何も特殊な内装はない、いたって普通の教室。

けれど、そこにいた一人の少女のおかげか、かつての嫌な記憶がフラッシュバックして脂汗か一筋背から流れた。

少女は窓の外を眺めていた。

彼女は来訪者に気がつくと、窓に向いていた身体をこちらへ向けた。

「明智先生、何か御用ですか?…って、貴方は」

端正な顔立ち。流れる黒髪は左右二つに結ばれて所謂ツインテール状になっている。

「ん?君たち知り合い?」

それは明智先生の予想外の反応だったのか、先生は俺と彼女を見渡した。

が、まあ、この目の前にいる少女が知り合いかどうかと聞かれると、特に話したことがある訳でもないからなんとも反論できない。

だが、俺はこういった場合のベストアンサーを知っている。

「中学の同級生です」

そうそう、これで正解のはず。だって、俺が友達だと思ってた奴も、人に紹介する時、俺のことこう言ってたもん。

俺が答えると彼女も苦笑いをしながら頰をかいた。

そう、俺はこの少女を知ってはいる。

高見沢アリサ。

俺と同じ中学にして元クラスメート。

無論、名前と顔を知っているだけで会話をしたことはない。仕方ないだろ、学校で人と会話をすること自体が稀なんだから。

ただ、俺が中学の時強制入部として入れられていた変な部活の活動内容の一環に、依頼主の手助け、というものがあった。

その際、彼女と俺が元いた部活''奉仕部''の依頼主の関係がちょっと色々あって、彼女の名前を知っているに過ぎない。

「そう、知っているなら話は早い。高見沢、彼は入部希望者だ」

明智先生に促され、つい会釈してしまう。…いやいや、会釈とかしてる場合じゃねえ。

「え?は?」

入部希望ってどこへだよ。ここ何部だよ。

俺の言葉の続きを察してくれたのか、明智先生が口を開いた。

「君には今回の課題のペナルティとしてここでの部活動を命じます。異論反論抗議質問口応えは一切受け付けません。しばらく頭を冷やせ。反省しなさい」

俺の抗弁の余地を許さず、明智先生は怒涛の勢いで判決を申し渡す。

「というわけで、高見沢、後よろしく。俺は映画研究部の方をちょっと見てくるから」

とだけ言うと、先生はそのままさっさと帰ってしまう。

ぽつんと取り残される俺。

正直、独りぼっちで取り残されるほうがよっぽど気が楽だ。いつもと同じ孤独という環境の方が心が安らぐ。

カチカチカチという時計の秒針の音がやけにゆっくりやたら大きく聞こえる。

おいおい、マジかよ。美少女と二人きりの教室とかいきなりのラブコメ展開?すっごい緊張感が降りかかってきたよこれ。

シチュエーションとしては文句がない。

ふと中学時代の甘酸っぱい思い出が蘇る。

放課後、二人きりの教室。

そよ風でカーテンが揺れ、傾いた日差しが降り注ぎ、そして勇気を出して告白した一人の少年。今でも克明に思い出すことが出来るあの子の声。

『友達じゃダメかなぁ?』

あーいや、これダメな思い出じゃん。しかも友達どころかそれ以降一度も話さなかったし。

おかげで友達って会話もしない仲のことかと思っちゃったからね俺。

まあ、要するに俺に関しては、美少女と密室に二人きりになろうがラブコメなんて現実には起きないのである。

高度に訓練された俺が今さらそんなトラップに引っかかるわけがない。女子とはイケメン(笑)やリア充(笑)に興味を示すものであり、またそれらの連中と清くない男女交際をする輩である。

つまり俺の敵だ。

二度とあんな思いをしなくて済むように俺は努力を続けてきた。ラブコメ展開に巻き込まれないためには嫌われてしまうのが1番早い、幸いにして高見沢は中学からの俺を知っている。すなわち、初見にして好意度は最下位下回ってマイナス!!

肉を切らせて骨を断つ。自らのプライドを守るためなら好感度など必要ないのだっ!

なので俺は挨拶代わりに高見沢を睨み付けつつ威嚇しておくことにした。真の英雄は目で殺す!

がるるるるーっ。

すると高見沢は先程の苦笑の表示を再び浮かべこちらを見る。そして、清流のような声で俺に言葉をかけた。

「…まあ、そんなところで立ってないで座りなよ」

「え、あ、はい」

あまりにも大人な対応を取られてしまい、逆に恥ずかしくなった。

穴があったら入りたい!俺は手で顔を覆うと空いている席に腰かけた。

「それで、入部希望って聞いたけど?」

高見沢は自身のツインテールをふりふりと揺らして、聞いてくる。

「あ、ああ、何か成り行きでな…ところで、ここ何部なんだ?」

「?明智先生から聞いてないの?」

「いや、だってわけわからん説明しかなくてここへ連れてこられたもんだから」

俺がそう言うと、高見沢は何やら考慮するポーズを取る。いやいや、お前ここの部員なんじゃないの?

「…そういえばここ、何部なのかしらね?」

「ええ…」

お前も知らねえのかよ。

「仕方ないでしょ!私も昨日明智先生に連れてこられたばかりなのよ!!」

何故か逆ギレされた。

え?なに?こわ、なんなのこの子?キレやすい若者なの?カルシュウムとか取ったほうがいい。ししゃもとか食え、乳酸菌取ってる??

「ま、まあ、知らねえんじゃ推測するしかねえよな」

与えられた情報ゼロ。はっきり言ってノーヒント。

ーいや、待て。逆に言えばヒントしかない。

自慢じゃないが小さいころから友達が少なかった俺は、一人でできるゲームはめちゃくちゃ得意だ。ゲームブックや謎々の類いはかなり自信がある。高校生クイズだって勝てると思う。まぁ他のメンバーを集めることができないから出場できないけどな。

ここまでわかっていることはいくつかある。それをもとに組み立てれば答えは自ずと出てくるはずだ。

「ロ研(路上研究会)とか」

「へぇ…。その心は?」

高見沢はいくらか興味深げに問い返してくる。

「特別な環境、特別な機器を必要とせず、人数がいなくても廃部にならない。つまり、部費なんて必要としない部活だ。加えて、高見沢、あんたは外を眺めていた。答えは最初から示されていたのさ」

我ながら完璧推理。「あれれーおかしいよー?」とか言いながらヒントを出してくるメガネの小学生がいなくてもこれくらいは朝飯前だ。

高見沢は多少なりとも感心したのか、ふむと小さく息をつく。

「違うんじゃない?私たまたま外を眺めていただけだし」

……。

「…それじゃ何部なんだよ?」

こんなんわかるかよ。もっと簡単に分かるのにしろよ。「家が大火事、涙が洪水、なぁんだ?」みたいなよ。それただの火事じゃねぇか。

「それは…私に聞かれても分からない、けど…」

「…まあ、そうだよな」

二人して言葉に詰まる。

俺は勿論、見たところ高見沢もそんなに積極的に人に話しかけていくタイプには見えない。

そこからは何となく会話の切り口が見つからず静寂が流れた。

そんな静けさを最初に破ったのは高見沢の方だった。

「…あ、あのさ、中学の時…」

高見沢が何かを言いかけたその時、じーっと、壊れたラジオのような音がする。チャイムが鳴る前兆だ。

いかにも合成音声っぽいメロディが流れると、完全下校時刻を知らせる放送が流れる。

「…下校時刻みたいだな」

「え?あ、うん」

俺は床に置いてあった鞄を抱え、席を立つ。

高見沢は未だに何か言いたそうにしているが、そこはそれ、別に今日聞かなくてもいいことだろう。

というか、今日は俺の黒歴史のことなんて女子の口から聞きたくない。

全くなんて厄日だろうか。職員室に呼び出されるわ、名称不明の謎の部活動に加入させられるわ、中学の頃の同級生に会うわ、かなりの大ダメージを受けた。

だいたい部活なんてものは傍から見てるのが正解なんだよな。俺の中では部活動なんて、女の子達がバンドやってんのを円盤で見てるくらいの参加の仕方がちょうどいい。

こーゆー展開を経てラブコメ展開に発展する?それはないわ。先程も述べたが、俺にラブコメ展開はありえない。訓練されたぼっちにその罠が見破れないワケがない。

やはり青春なんて嘘ばっかりだ。

高校三年夏の大会で負けた自分たちを美しいものに仕立て上げるために涙を流し、大学受験に失敗して浪人した自分を誤魔化すため挫折は人生経験だと言い張ったり、好きな人に告白できない自分を偽るために相手の幸福を考えて身を引いたと嘯いたり。

まあ、なんだ、つまり結論を言うとだな…

''やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。''

 




…なんだこれ
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