パンジーがあの決戦後のエスターの姿を見たのは魔法省の大人達が言い争っている最中の時の事だった。
パンジー達生徒は死喰い人の子供であるが、子供であった。彼女達は親が死喰い人だった所為でそれに従うしか出来ず、閉鎖された空間で孤立した所為でそれに従うしか無かったと言うスネイプの証言から子供達は全員が当たり前の日常を送る事が出来た。
犯罪者の子供というレッテルを張られながらも、彼女達は昨日の続きを繰り返す事が出来ていた。
そんな中だ、パンジーが父親の裁判の証言者として魔法省の裁判所に行った帰りに大人達の言い争う声を聞いた。
その声は父が裁かれる裁判所よりは小さくも、裁判所の役割を果たす小部屋から聞こえた。
エスター・ポッターを何処の墓地に入れるか。
大人達の醜い言い争いを聞いてパンジーは息をするのを忘れて必死で考えた。
大人達は血脈に従ってポッター家の墓地に入れるか、マグル側の墓地に入れるか、アズカバンの共同墓地に入れるかで言い争っている。
身内だからポッター家に、英雄と同じ墓に入れるなんておこがましい犯罪者なのだからアズカバンに入れろ、アズカバンの共同墓地に入れられるのは収監者だけなのだからマグル側に入れろ。
生け簀の中をただぐるぐる回り続ける魚のように繰り返される中身の無い言い合い、その部屋の真ん中でただ人が変わっただけの舞台で彼女は黙ったままそこにいるだけだった。
「・・・アンタって、誰よりも頭良い癖に私より馬鹿よね」
部屋の真ん中にいるエスターは黙るだけだった。
赤子より小さくなったエスターが喋る訳無いと言うのに。
「エスターの好きな人って誰なの?」
あれは三年生の時だっただろうか、パンジーはよく覚えていない。
同室で二人っきりになった時にパンジーは前々から思っていた事をエスターに聞いた、パンジーはドラコに恋する乙女なのだ。
類は友を呼ぶ、その言葉は的を射ているとパンジーは思っていた。だって自分にはエスターが誰かに恋しているとわかるのだから。
何時も笑っているが、その笑みにどんな感情を秘めているのかパンジーには分かっていた。だてに純血貴族の令嬢をやっていないのだから。
だから聞いた、エスターは隠さずに自分の好きな人の特徴を一つずつ挙げて行った。
ベルベットボイスの人だと、背の高い人だと、何時も真っ黒な衣装に身を包んだ人だと、気難しいけど優しい人だと、魔法使いだと、何時も見ているのだと。
エスターが言った特徴に当てはまる人をパンジーは頭の中で検索し、一人の魔法使いを見つけた。
その人物がエスターの好きな人だと分かるとパンジーは嘘でしょと叫び、思わず肩を掴み興奮で応援すると言おうとした。
だけど、エスターが諦めたような笑みを浮かべて自分を見てくれない人だと言う言葉を聞いてパンジーの興奮は醒めた。
何故そんな事を言うの、恋は何時だってチャレンジなのよ!そう思ったのに口に出す事はしなかった。
エスターは自分より頭がいい、あのマグル生まれのグレンジャーよりも。それでいて誰よりも賢かった。
だから、だから彼女は自分を見てくれないという理由を見つけてしまったかもしれない。
恋する乙女にとって、自分を否定するような理由を見つけたのは恋が叶わないという現実を知った事に等しいのだから。
パンジーは一度口を閉じると、笑ってじゃあ新しい人を好きになりなさいと言った。
女の子の体から女の体に移る特別な時を存分に楽しむ為に、青春という一瞬のシーンに最高の思い出を張りつける為に。
パンジーにとって、エスターは恋する乙女でしかなかった。
「ねえ、エスターって付き合わないの?」
五年生?六年生?もうわからない、あの目まぐるしい時の中で話した会話の中であれは一番些細で時の波にかき消されてしまったのかもしれない。
エスターが同級生のレイブンクローに告白された帰りにパンジーはずっと聞きたかった事を聞いた。
エスターはスリザリン生とレイブンクロー生を中心にモテていた、なのに彼女はずっと誰とも付き合わなかった。
パンジーは夕焼けの光が差し込む廊下を歩きながら自分の後ろを歩くエスターに聞いた、エスターは好きな人がいるからよと静かな笑みを浮かべてそう答えた。
健気ね、パンジーは素直に思った。自分を見てくれない人を好きになり続けるなんてパンジーには出来ない事だ。それ程にエスターは先生を愛しているのだと思ってもやはり応援するような事は出来ない。
エスターも新しい恋をすればいいのに、そうすれば毎日が楽しくなるわよとわざと軽そうに言うと足音が自分だけになり、足を止めて振り返る。
夕焼けの光が照らす廊下に立ち止まるエスターの顔は、静かに絵画のような微笑みを浮かべていた。
パンジーって本当に優しいよね。エスターはそう言っていた。パンジーは何を言っているんだと思った、何を思って優しいと思ったんだと。
パンジーにとってエスターは恋に関しては不思議な少女だった。
その少女の恋する姿は一枚の絵画のような美しさを持っていながら、その先を描かれる事は無い絵画みたいだと。
「ねえエスター、どうしてこんなことするの」
この言葉を行った時の事をパンジーは朧げに覚えている、七年生の秋が過ぎ冬に入ろうとしていた時の真夜中だ。
月すらいない空は夜の癖に、明るかった。真っ黒な闇では無く、暗闇に紛れる青が見える。夜だというのに。
彼女の足元には磔の呪文で息も絶えようとしている男女が転がっている、きっとエスターが拷問でもしたのだろう。
パンジーはエスターが簡単に人を傷つけるような子だとは思っていなかった、だから思わず声を出してしまった。
その言葉を聞いたエスターは石畳の上を歩きパンジーに近づく。コツコツと音を立ててゆっくりと。
あと一歩、という所で止まるとエスターは背筋に悪寒が走るような笑みを浮かべ本当にパンジーは優しいよねと呟いた。
薄っすらと青い夜の下で、エスターは相変わらず笑っている。その笑みはもはや気味の悪い感情のような物になっている。
秋を彩る紅葉のような赤毛も、この空の下ではまるで血のように見えてくる。その優しい顔立ちも、まるで死神のように思える。感情の乗せられた言葉も、人を操るだけのツールのように。
エスターはもう一度、優しいよねと言うとパンジーの横を通り過ぎ二度と青い夜はやってこなかった。
翌日から、エスターは次期右腕と言われるようになった。
「何が見てくれないよ、見てないのは自分じゃない」
エスターの遺骨は、パンジーが引き取る事になった。パンジーの強い希望だ。無論、エスターの遺骨をどうにかしたい魔法省は喜んで押し付けてくれた。
エスターの遺骨はパーキンソン家が所有する片田舎の別荘の近くの庭に埋葬された、毎年エスターの友人が墓参りにやってきてくれる。
エスター、此処に眠る。たったそれだけ書かれた簡素な墓石には沢山の花と罵詈雑言の手紙が送られる。
彼女と友人だったスリザリン生と、エスターの悪行しかしらない人達からだ。彼女の遺骨を引き取ったパンジーにも手紙が送られているが。
パンジーは結婚して、娘を産んで、その娘がホグワーツに入学して、第二次成長期を迎えた頃に1人でエスターの墓に向かった。
「聞いてよエスター、サルビアに好きな人が出来たって言うの。背の高くてクィディッチでキーパーを務めている二学年上って」
パンジーにとってエスターは生き残った女の子であった。優秀で賢い友人であった。強い魔女であった。
怖い存在であった。弱い人であった。馬鹿な同級生であった。
失恋するのが怖くて間違った事をしただけの少女であった。
ハーマイオニーにとってエスター・ポッターはライバルであった。
生き残った双子として有名でありながら自分と同じマグル世界で生きていたと言う同じラインからのスタートでありながらエスターは自分よりも賢く優秀な成績を収めた。
杖の振り方や発音、魔法薬の調合も、魔法薬草の育て方も、魔法の使い方も箒の乗り方も何もかも自分より上にエスターは立っていた。
それだけじゃない、敵対する寮に所属しながらエスターとハーマイオニーの立ち位置や振る舞いはあまりにも違っていた。
親と仲の良いハーマイオニーと血の繋がったハリーと仲の悪いエスター、寮に馴染めなかったハーマイオニーと周囲に溶け込み当たり前のように存在するエスター。
図書室で本に齧りつき集めた知識を持つハーマイオニーとまるで昔から知っているように知識を出すエスター、規則に従い真面目なハーマイオニーと狡猾に規則を利用するエスター。
最初から何もかも違っていた、だけど何処かでハーマイオニーはエスターと何処か近い部分を感じ勝手にライバルとして敵視していた。
「エスターに負けたわ!!!」
その言葉を言ったのは一年生の最後の時期だった。
最終成績表が張られた壁を見てハーマイオニーはハリーとロンに悲鳴のような報告をした、各教科並び総合成績でハーマイオニーは人生で初めて二位という地位に納まってしまったのだ。
一位はエスター・ポッターで、エスターは周りにいるドラコ達に凄いと褒められている。
初めての屈辱だった、今まで勉強では負けて無かったのに初めて負けた。例え三人で例のあの人から賢者の石を守ったとしても実践という経験と勉強という経験は全くの別物。
自分のアイデンティティーとも言えた勉強で負けたのはハーマイオニーにとってショックでしか無かった。
あんなに頑張って勉強したのに、誰よりも頑張ったのに。
ハーマイオニーにとってエスターはライバルであり初めて自分に屈辱を与えた魔女だった。
「エスターに負けたわ!」
その言葉を言ったのは二年か三年の時だった。
二年の時はハーマイオニーより先に秘密の部屋の怪物を知っていて、三年の時は誰よりも先にルーピンの正体が人狼である事を見破っていた時だったはずだ。
スリザリン生で優秀な彼女は半分がハーマイオニーと同じマグルの血が流れていながら秘密の部屋に怯える事無く何時も通りの日常を送っていた。
その癖に、マグル生まれの人達にさり気なくアドバイスをしていた事を今更になって知った。
眼鏡をしていたら?貴方達は何時も一緒なんだから瞳でも見つめ合えば?身嗜みを整える為に鏡を持ってはいかがかしら?どれもこれも遠回しにバジリスクの眼から発せられる即死の光線を避ける為の言葉だった。
誰も厭味としてしか受け取っていなかったけど、彼女なりの優しさがあったのかもしれない。今はもう分からないけど。
ルーピンの正体が人狼である事をエスターはきっと二度目の満月を迎えた頃には知っていたかもしれない。
彼女はやたらとルーピンから距離を取っていた、ドラコ達にも近づかないように言っていた。当時はエスターがルーピンを嫌っていたからだと思っていた。
だけど人狼と戦って分かった、大切な人が出来て分かった、子供を持って分かった。
安全な場所に、例え安全だと分かっていても人狼が居るのは恐ろしい事なのだと。満月になれば無差別に人を襲う人狼を。
例え信頼できる人だとしても人間と人狼の本能は違う、例え薬を飲んでも意識が保たれるだけで肉体は人狼となり人を襲う能力を保有する。
そして爪で引っ掻かれれば大きな傷跡がずっと残り、噛まれれば同じように人狼になってしまう。
ハーマイオニー達にとってルーピンは信頼できる人だったから人狼だと知っても信頼していた。
エスターにとってルーピンは信頼できない大人だから、人狼だと知っても距離を取っていたのだ。
当時のハーマイオニーとってエスターは自分よりも先に謎を解く敵であり、傲慢な魔女だった。
今のハーマイオニーとってエスターは、自分よりも大人な魔女だった。
「エスターに負けた…」
その言葉を言ったのは何時だったのだろう、多分五年生の時に言っていたはずだ。
五年生の時、ハーマイオニー達の防衛術の教室を知ったのはエスターであり襲撃したのもエスターだった。
確か四年の時からドラコと戦うのはハリーで、エスターと戦うのはハーマイオニーという当たり前が出来ていた。
だからエスターの裏の裏を読み、ありとあらゆる罠を作って安全策をとった。それなのにエスターは嘲笑うようにその罠をすり抜けて本物に辿り着いた。
エスターに負けた所為で参加した皆が傷ついた、ハーマイオニーにとって初めて失敗という重圧がのしかかった。
五年生の時は、多分あの時からエスターはヴォルデモートと繋がっていたのかもしれない。
シリウスを殺したのはベラトリックスだった、だけどシリウスの杖を奪ったのはフードを被った誰か‐多分エスター。
エスターはハーマイオニー達を嘲笑って、ハリーの大切な人を奪った。血の繋がった弟の養父になれた人を。
エスターはハーマイオニーなんて取るに足らない存在だったのだろう。
だけど今はどうだろう、ハーマイオニーはエスターをライバルと見ていた癖に実際エスターについて何も知らない。
あの時、エスターは何故自分の行動を読めたのだろうか。何故エスターはシリウスを殺したのだろうか。
当時のハーマイオニーにとってエスターはハリーにとってのヴォルデモートのような存在だった。
今では、エスターという人物がどんな人なの分からない。
「・・・エスターに、負けたわ」
この言葉を言ったのは、六年生?七年生?もうあの時の事は急速に過ぎ去って分からない。
ドラコが何かをしているとハリーが疑っている時、ハーマイオニーはエスターを警戒していた。
なのにエスターはものの見事にダンブルドアを殺した、あんなに警戒していたのに。
エスターは例のあの人の次期右腕と言われる程の存在になった。生き残った女の子は闇に堕ちたのだ。
もうその時にはハリーとエスターは血の繋がった双子では無く、敵になっていた。
分霊箱を破壊する旅でも多くの試練が降りかかった、その度にエスターが邪魔していると思っていた。
エスターに負けた、ダンブルドアを殺された。
エスターに負けた、分霊箱が破壊出来ない。
エスターに負けた、ロンが離脱した。
エスターに負けた、このままじゃベラトリックスに殺される。
ずっとエスターに負け続けた事が記憶に堪っていた、心に刻まれ続けていた。
最後に負けたのは、エスターが殺された時だ。
彼女は自分達と同じように、分霊箱を破壊した。そしてヴォルデモートに殺された。
何故裏切ったのか今でもハーマイオニーは分からない、いやきっと皆分からないだろう。
彼女は物語の登場人物だとするとトリッキーなキャラ、ピエロだと思う。皆を化かす哀れなピエロ。
彼女は物語を引っ掻き回して最後には殺されるそんな人物だった。
エスターはハーマイオニーに勝ち続けたまま死んだ。
ハーマイオニーはエスターに負けたまま永遠に勝つ事は出来なくなった。
「ねえエスター。本当は私、貴方と友人になりたかったんだと思うの」
多くの若い命がこの世から去り、悪名高き闇の帝王が滅び、最悪の裏切者が粛清された日の夜。
ハーマイオニーはリータ・スキーターが書いたノンフィクション作品『エスター・ポッターという魔女』の表紙に使われた動くことの無い何処から入手したのか分からない写真を見つめながら呟く。
写真のエスターは最後に見た姿よりうんと幼く、きっとホグワーツに入学する前の写真なのだろうか。ぎこちない微かな笑みを浮かべハーマイオニーを見つめる。
ハーマイオニーにとってエスターは友人になりたかった魔女であった。
そして、ハーマイオニーはエスターという魔女について何も知らない事を改めて実感した。
この気持ちすら、本当なのかも。
「エスター」
女の子はみんな賢い、みんな頭が良い。IQとか知識の話じゃない。感情や思考について女の子は誰よりも優れている。
私以上にパンジー・パーキンソンとハーマイオニー・グレンジャーは優れている。
パンジーにその名前を呼ばれるたびに、きっと私はエスターだと認められているんだと思えた。
ハーマイオニーにその名前を呼ばれるたびに、きっと私はエスターが望まれた存在だと思えた。
彼女達はきっと自分勝手に私を想い、理想のエスターを私に重ねてみているのだろう。
それでも私には嬉しかった、きっと私が無意識下で望んだ願いを彼女達は叶えてくれたに違いない。
私は彼女達の理想を叶えず我儘に生きて、我儘に死んだのだから。
「エスター」
パンジーにその名前を呼ばれるたびに、彼女の優しさに触れた。
彼女の事を酷く言う人は大勢いる、なんならスリザリン寮生ですら彼女を悪く言う。だけど彼女は酷い子じゃない。
女の役割を、貴族としての責任をしっかり分かっているからより良い血統の男性と近づこうとし両家の繁栄の為に我が身を捧げようとしている。
形ばかりだけどそれなりに機能している貴族制度、貴族として自分の家を守り家に泥を塗る輩を蹴落とす。当たり前の事。
彼女は当たり前の事をしているだけだ、純血主義なんて私にはどうでもいいし穢れた血と言われようがなんとも思わない。
だってマグルの方じゃ未だに優性主義者とか男尊女卑とかいろんな差別が蔓延しているし労働階級の飲み場に行けば穢れた血なんていう言葉がお上品に聞こえる程の酷い差別用語がわんさか聞ける。
私にとって、彼女もまた周りにいるだけの人の子であるという事が確認できて嬉しいだけ。
彼女が普通の子だと知れる、彼女の優しさに触れる事が出来る。それが嬉しい。
私の幸せを願うその思いが、私を思ってくれるその声が、私を心配してくれるその顔が、私には嬉しかった。
ごめんねパンジー、貴方の思いを踏み潰して。
貴方の思いを、こんな形で返して。
「エスター」
ハーマイオニー、貴方が私の事をライバルだと思ってくれていたの実は嬉しかったの。
だからって貴方と友達になる気はさらさら無いわ。だって私と貴方は根本的な部分で違うもの。
生活スタイルも家族構成も性格も何もかも、私と貴方は違い過ぎた。だから友人になれるとは思わない。
だけどやはり嬉しい、貴方が私を求めていた事は。エスターという存在を求めていた事は。
私は母を越える為に賢くならなければならなかった、きっと貴方からすれば私は目障りな存在でしょう。
私は誰よりも自分が大切だ、貴方からすれば私は惨めな存在でしょう。
私は誰よりも自分の未来を確固たる物にすべくスリザリン生らしい事を沢山した、貴方からすれば私はヴォルデモートに匹敵するぐらいの極悪人だろう。
でも私はあの人に恋をした、あの人を愛している。だからあの人の心の中に母と同じいやそれ以上に居たくて私は自分も他人も認める極悪人になったのだ。
きっと彼女は私を大馬鹿者だと罵るだろう、こんな奴をライバルだと思っていたのかって。
仕方ないわよ、古今東西恋に狂った人達の生きざまや末路なんてこんなものだから。
ああでも、きっと魔法族にはこの思いや物語は理解出来ないだろうな。魔法でなんでも手に入れて叶えられるんだから。
ねえハーマイオニー、貴方は私以上に優秀な魔女よ。胸張っていきなさい。
そして、私みたいなバカはさっさと忘れなさい。
私は貴方のライバルのエスター・ポッターのまま忘れ去られたい。
「エスター」
ねえパンジー、ねえハーマイオニー・グレンジャー。
私ね、きっと貴方達が居たから私は最後まで自分の思い描く未来を実現できたのかもしれない。
貴方達が私ですら見なかったエスター・ポッターを見てくれたから、エスターを思ってくれたから。
貴方達が居なかったらきっと私は私を見失っていたかもしれない、きっとリリー・エヴァンスを越えようと必死であの人の面影を追い続けて皆の望むエスターになっていたかもしれない。
だからさ。
「エスター!!!!」
何処かで誰かが私の名前を呼んだ。
誰が私の名前を読んだか分からない、そもそも周りは白一色で自分が何処に居るかもわからない。
けど声が何処から聞こえたのかは分かった。だから私は声のした方へ振り返り何時も通り笑みを浮かべた。
なあに、って言ってさ。