世にも不思議な転生者   作:末吉

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百話目になりますが、まだ日常です。あと二十話近くはそうですね


100:六年・夏祭り

「次、上段蹴り左」

「がっ!!」

 

 時間帯的には夜。

 スサノオに頼んでこの空間を作ってもらい、ここで俺はあの時から――三年の春休みの時から毎日のように行っている――稽古(・・)を今もしていた。

 

 いつも通りに放たれる加減した蹴り。いつもと同じコースをなぞっているのに、未だに雄樹は避けられずにいた。

 吹っ飛んだ方向を見ずに俺は「銃弾、弾雨」と呟く。

 

 すると眼前の上空から銃弾が一面に降り注ぐように落ちていく。

 

 その速度はまさに銃弾が発射された時の初速度のまま。

 ドドドドドドッと地面が揺れるほどの衝撃が加わっている中、俺はその場から動かずに腕を上に伸ばす。

 

 ガシッ

 

「え?」

「甘い」

 

 振り下ろされた剣(・・・・・・・・)をつかまれたことに驚いてる彼をそう評価し、俺はそのまま地面に叩きつけ、少しバウンドしたところを右足で蹴り上げる。

 

「ぐふっ」

 

 そのまま雄樹は宙を舞い、どこも動かずに地面に落下した。

 

 

 所要時間わずか三分ジャスト――それが今回の組手の結果だった。

 

 

 

 

「起きろ」

 

 回復魔法をかけて雄樹に呼びかける。ちなみにバリアジャケットを展開していない。

 

「う、うぅ……」

 

 うめき声を上げながら彼は目を覚まし、俺の顔を見て「…どのくらいだった?」と質問してきたので、三分ジャスト、と答える。

 

「まだ三分しか持たないのか……」

「ちなみに速度だけ(・・・・)ならフェイトは俺の事をとらえられるんじゃないか? もちろん、俺が魔力を使わない状態で、だが」

「あぁ、小五までの君のハンデね。あれでも十分僕達魔導師を凌駕してるから困りものだよ」

「今じゃ、なのは・フェイト・はやての三人相手だと負けることはあるがな」

「それはそれで十分脅威だよ……でも、だからこそ師事する意味がある」

 

 そういうと雄樹は起き上がり、俺を見てニヤッと笑う。

 

 ――そう。以前ランスロットに瞬殺されたこいつは俺が戻ってきたその日に「僕は強くなりたいんだ」と電話越しで頼み込んできたのだ。

 

 当時の事を思い返しながら俺は、「あの時からは強くなっているが……実際まだまだだな。あいつらも、お前も」と評価する。

 すると雄樹も真面目な顔をして頷いた。

 

「そうだね。大智がいない時に偽神や忘却神具をもった人を相手取るときは『まだまだだ』って痛感するし」

「倒せるだけ御の字だと思っておけ。偽神相手の場合は」

「知ってるよ。僕達の死力を尽くしてようやく倒せる相手ばかりだからね。みんなそれを思い知らされているよ」

「ならいいが……ランスロットとの稽古はどうなっている?」

「未だに本気を出してもらってないね。『……死線を潜り抜けてこそ本気になってやる』って」

「あいつらしいな」

 

 そう言って俺は小石を上空へ投げる。

 それを見た雄樹は警戒心をあらわにし、構える。

 

 そして小石が地面にぶつかった時、俺達の姿は一瞬(・・)消えた。

 

 

 

 

 

 

「……フェイトさんってこんな景色に慣れているんだね」

「お前それ何度目だよ」

「いややってみると本気で何度もそう思うんだよ」

 

 地面に倒れ息を整えながらそう呟く雄樹に対し、俺はため息をつきながら「言っとくが、これを戦闘が終わるまでキープし続けなければ負けるぞ」と言っておく。

 

「…マジ?」

「ああ。特に雷神とか」

「……つくづく遥か上だと理解させられるね」

 

 そう言った後、俺らは誰ともなく沈黙する。

 

 この空間はスサノオが作った精神体を映し出し、リアルにダメージなどを反映させる場(起きた時の)。

 息一つ乱れていない俺は、ナイトメアに話しかけた。

 

「ナイトメア」

『……なんですか』

「お前、最近不機嫌そうだが……どうした?」

『本気で言ってるんですか!? 本気で言ってるんですね!?』

「お前ちょくちょく使ってただろ」

『魔力解放だけですよ! バリアジャケット展開なんて一体ここ数年何回あったと思います!?』

「……四回?」

『そうです四回です! 暇なんです! 私もリインフォースⅡみたいになりたいとどれほど思った事か……!』

「そもそもカートリッジシステムすらないがな」

『そうなんですよね! なんか特別製で迂闊に手を出せないって言われましたよね!!』

「……ここまでハイテンションになるのデバイスって」

『いえ、俺はなりませんが』

 

 ふむ。元気になったようだな。

 半ば自棄になっているナイトメアの言葉を無視し、俺は雄樹に話しかける。

 

「さて、次はレアスキル活用講座だな」

「……え? 前のドラゴン造れで終わりじゃなかったの?」

「戦闘編だ。いかに細かい扱いができるか実戦形式でやるぞ」

「嘘でしょ?」

「本気だが?」

「「…………」」

『でしたら私バリアジャケット展開させてもいいですよね! ね!?』

「げ」

「何やら了承もなしで展開されたが……まぁいい。来いよ」

「どんなムリゲーだよっ!」

 

 やけくそ気味にそう叫びながらもしっかりと周囲に氷の粒をバラいたのを確認した俺は、右手に持っていた太刀を地面に叩きつけて砂煙を発生させた。

 

 

 

 

「すっきりしたか?」

『ハイッ!』

「僕はもう精根尽き果てかけてるよ……」

 

 ナイトメアが俺の指示なく勝手に魔法を使いまくるのでそのまま放置して数分。

 見事に白くなりかけている雄樹と、機嫌がよくなったナイトメアが存在していた。ちなみに俺も多少疲れている。

 

 と、ここでふと思ったことを雄樹に訊ねた。

 

「今年の夏祭り行くのか?」

「えっと……たぶん」

「あと二日だぞ?」

「そういえばそうだったね! 道理ではやてが最近『今年こそ絶対に休んだる!』と意気込んでた訳だよ!!」

「かくいう俺も、一昨日オーディンの手伝いで狂信者どもを殲滅してる最中になのはからの電話で知った」

『バリアジャケット展開せずに二人で万を越える人たちを制圧してましたけどね!』

「……もうツッコミを入れる元気もないよ」

 

 そういうと雄樹は自然と消えて行ったので、俺も目を瞑ってこの空間から消える感覚に身を委ねた。

 

 ……言い忘れていたが今は夏休み。宿題なんてもらったその日に終わらし、今じゃ神様のパシリ同然になっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 で、夏祭り。

 着物や浴衣がないのでとりあえず売っていた甚平を着て神社へ向かっている。ちゃんと甚平買ったぞ。

 

「……帰ったら家で飲み会やってないだろうな」

 

 祭りの雰囲気に充てられてこっちに来て飲み会やってそうな予感がしたので呟いてみる。が、不安要素が増えただけだった。

 今更だが小学六年になり、身長も百六十ぐらいに伸びた。元の身長に戻るまであと数年と言ったところだろう。その際は前世より動きやすくなっているのかもしれない。

 

「よぉ坊主。お前の両親は仕事か?」

「それがどうした巡査」

 

 神社へ向かっていると下駄に浴衣姿で警官帽をかぶっている宮野巡査と遭遇した。何ともミスマッチな姿だった。

 両親が仕事だと分かると、彼は「あーマジか」と頭を掻き始めた。

 

 何か困ってることでもあるのだろう。

 そう思った俺はそのまま素通りしようとしたところで、肩をつかまれた。

 昔は巡査も大きいと思ったんだがなと思いながら、「厄介事を押し付けるな」と先手を打っておく。

 しかしそれは無視された。

 

「頼む。ちょっと機械直してくれ」

「は?」

「話は歩きながらでいいな」

「お、おい」

 

 こうして俺は連行された。

 

 こちらとしても一応約束があるから困るんだが……

 

 そんな言い分は、当然のごとく無視された。

 

 

 

 

「これだ」

「あー確かに無理そうだな」

 

 固まっていたアリサ達に気付きながらもスルーせざるを得なかった俺は、巡査に連れられた場所にある機械を見て呟く。

 作ったのはきっと親父。少しでも楽させたいと思っての事だろう……この、太鼓をたたくロボットを。

 壊れた箇所は暗いから良く分からない。巡査がライトを照らしてくれているから全貌は分かるが、どこも壊れた箇所は見当たらない。

 

 となると内部か……センサー類やそこら辺が壊れてるのかもしれない。

 そう判断した俺は何とか解体しようとした人の工具を使い、解体し始めた。

 

 結果。

 

「ダメだな。壊れてるというかパーツが劣化して反応しづらくなってるみたいだ。おまけに動力部も少しガタが来てるときた。応急処置をしても例年通り動けないと思うぞ」

「マジか……それじゃ今年は人を立たせなきゃいけないのか……」

 

 冷静に状況を述べたところ巡査が呟く。

 

 普通は人が立つんじゃないのかと思いながら「巡査がやればいい」と案を出す。

 

「いや俺巡回あるから無理」

「その警官帽はフェイクで今日は非番だろ?」

「非番でも巡回するんだよ」

「逃げたな……っていうか、この事を神主に言ったのか?」

「今から言うさ」

 

 そういうと巡査は走り去ったので、器用に走り出すものだと思いながら親父に電話してみた。

 

『もしも』

「親父が作ったロボットが動かない」

「なんだとっ!?」

 

 用件を言ったらすぐに声が聞こえたので視線を向けると、倉庫の屋根の上に親父がいた。

 電話を切った俺は親父に向かい、「これだこれ」と指をさすと、すぐさま近くに来て「あーマジだ……」と言ってから思いっきりバラバラ(・・・・)にした。

 

 ……。

 

「な」

「あー予想より早く動かなくなったなーまったく困ったものだー待ってよろーいま完璧に作り直してやる」

「……ああ」

 

 棒読みでそんなことを言いながらも手が尋常じゃないくらいのスピードで動いている。それに比例してロボットがまた一から組み立てられていく。

 

「はい完成」

「……今度から直せる物作れよ」

「それは無理。じゃな! 家で飲んでるから!!」

 

 ……不安が的中し、目の前の問題が解決されたのに、何故か俺は取り残された気分だった。

 

 

 

「あんたさっき警察官の人に連れて行かれてたけど……何かあったの?」

「聞くな……泰然とできなかっただけだ」

「「「「??」」」」

 

 とりあえず親父が直したことを報告しお役御免となった俺は、待ってくれていたアリサ達と合流した。

 現在のメンバーは地球組。アリサ、すずか、アリシア、アインスさん、鮫島さん、アルフ、元一、木在、力也、裕也に俺。

 

「とりあえずはそろったわね」

「雄樹から『遅れるかも』ってメールが届いたから先行っていいんじゃね?」

 

 当然のように仕切り始めたアリサに、なんかもう色々感覚がマヒしたのか普通にため口になった元一。

 そんな二人を見ていると、アリシアが小声で「一緒に回らない?」と聞いてきた。

 

 今更だが、本当に今更だが、アルフと鮫島さん以外の外見もそれぞれ変わった(鮫島さんに関しては変わらない理由が謎)。

 力也は今までよりさらにカッコ良くなり、身長も俺には及ばないが伸びた。というか身長に関して全員伸びている。

 裕也は野球少年のイメージがさらに強くなった。元一は少し体格がよくなり、外見だけできる少年に。

 女性陣はまぁ……成長してる。どうでもいいことだが。

 

 アリシアの誘いに、俺は肯定も否定もせず「こんな大所帯で移動する気か?」と言っておく。

 

「確かにそのとおりね……じゃあ、二組に分かれるわよ」

 

 その言葉を皮切りに全員拳を握り、一斉に振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし良かったのか?」

「何が?」

 

 露店を見ながら階段を上っていると、不意に裕也が呟いたので尋ね返す。

 すると力也が「バニングスさん達の事」と言ってきたのでさっきの反応を思い出した俺は「じゃんけんは意思疎通の問題だろ」と答えておく。

 

「そういう問題かね……」

「大智君、そんなこと言ったらダメだよ」

「ですね」

 

 そして木在とアインスさんに注意される。ふむ。良く分からん。

 

「……結構親しくなったと思うが」

「彼女達には同情したくなるね」

「「はい」」

 

 ……?

 

 良く分からない事なので、俺はそれ以上考えることを放棄した。

 

 

 

 射的、金魚すくい、輪投げ……力也と勝負する奴に大人げなく全勝した俺は、景品を大量に抱えていた。

 

「金魚は飼えないから戻したが……これらをどうするか」

「くっ! 僕はまだまだだ!!」

「いや、力也は力也で結構おかしいから。お前ら二人で金魚すくいやって金魚が一匹もいなくなるってどういう事だよ」

「アレはヤバかったな……四匹差で何とか勝てたし」

「……水梨さん、あの二人はいつもですか?」

「はい……」

 

 力也は力也で結構持っているが、俺が大きさも含めて数があるので持つのが非常に面倒。

 今頃きっと屋台の奴ら俺らを警戒しているんだろうなと思いながら境内に着いたのでそこに生えている木まで近寄って荷物を置き、息を吐く。

 

「結構持ちにくい」

「まったくだね」

「お前らだけだろそりゃ……」

「そう言う裕也君も、それなりに持ってる……」

「大智君に関わった男の人ってみんなこうなるんですかね……」

 

 女性陣、特にアインスさんが変なことを言ってた気がするが聞かないふりをして空を見上げる。

 今宵は月が綺麗だ。となると、打ち上げられる花火もさぞ綺麗なモノだろう。

 そんなことを思っていたら丁度祭囃子が聞こえたのでその方向へ向くと、櫓を囲んでる人たちが踊っているのが見えた。

 

「音頭か」

「踊りに行くか?」

「私は、いい……」

「僕も遠慮する。大智との勝負で集中力をだいぶ使ったから」

「私は……」

 

 そう言って後から何も言わないので振り返ると、何か躊躇っているようだった。

 …………。

 俺はすぐさま携帯電話を取り出し、電話を掛けた。

 

『もしもし大智? 今からそっち向かうから』

「分かった。親父に言っておく」

『え?』

 

 電話を切ってすぐさま親父に電話する。

 

『はいはーい』

「酔ってるところ悪いが雄樹たちをすぐさま俺がいる場所まで飛ばしてくれ」

『りょうかーい』

 

 言ってすぐに雄樹・はやて・ヴォルケンリッター・フェイト・なのはが現れ、周囲にいる全員が驚く。

 困惑している中、俺はアインスさんに言った。

 

「はやてと一緒に行ってきたらどうです? 久々の家族団らんで」

「あ……」

 

 俺の意図が伝わったらしく驚くアインスさん。頭を下げてから次いではやてに向く。

 

「はやて」

「なんやアインス?」

「一緒に、盆踊りしません?」

 

 そう言って櫓の方を指さす。

 それを見たはやてはすぐさま笑顔になって「せやな! どうせならシグナム達も一緒に踊ろうか!」と言ってアインスさんの手を引き始める。

 

 それを見た俺は、マモンの「随分とまぁ人間らしくなってるなぁおい」と言う言葉を無視し、とりあえずとった景品の中で喜びそうなものを配っていった。

 

 

 

 

 

 

「……なぁ力也」

「なんだい?」

「今晩泊めてくれ」

『え?』

 

 祭りが終わり、帰る頃にそんな一幕があって色々おかしくなった結果アリサの家に泊まることになり、色々と気まずい中夜は更けていった。




ご愛読ありがとうございます。
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