世にも不思議な転生者 作:末吉
卒業式を終えて春休みを怠惰に過ごそうとしてもなのは達からの誘いや神様達のパシリをやっていたらそれどころではなかった。
で、春休みが終わり、俺達は中学生になったのだが……
「……まさか入学式であいつらが来ないとはな……」
「そう言うあんたは卒業式に来なかったじゃない」
「人の事言えないよ大智君」
「アリサにすずかか。同じ学校なんだな」
「エスカレーター式なのにわざわざ別な学校受験するのも面倒だしね」
「大智君と一緒に居る日々も楽しいし」
「あっそ」
今は中学校のクラス。大体同じメンバーなので特に緊張するということはない。
いつも通り窓際の席を陣取って暇潰しに窓ガラスを見ていると、アリサやすずかの他に近づいてくる気配がしたので見向きもせずに話し掛けた。
「どうした元一。料理ちゃんと出来る様になってから」
「ああ。おかげで家族も安泰、俺も料理するのが楽しくて色々な料理を作ってる……って、なんでわかった?」
「窓ガラス。あとは言わなくても分かるだろ力也」
「そりゃね。窓に反射した僕達の姿が見えればすぐにわかるだろう」
そう言うと力也が「今年こそ君に勝つ」と言ってすぐさま離れた。
それを聞いた俺は去っていくのを窓ガラス越しに見ながら「やれやれ」と呟く。
それをどういう意味にとらえたのか、アリサが頷いた。
「変わってないわね、あいつ」
「俺だって大元は変わっていない」
「大智君結構変わったよ?」
「だから大元だって言っただろう。根源的なものが変わってないのだからいくら精神が変わろうが俺の無表情さは変わらないのと同じだ、あいつも」
「……さっぱりわからねぇ」
いつも通りの会話をし、いつも通りにその場にいる全員が戸惑った反応を見せていると、「おっはよー」と明るい声が教室中に響き渡る。
俺以外はその声に反応し、声の主へ向いて「おはよう」と返事をする。
そんな中俺は、窓の外の景色を眺めながらあいつら元気にやってるからなぁと柄にもなく心配した。
中学生になったからと言って特に周囲に変化は……あったな。
まず元一。あいつは小学五年の頃に両親が離婚しかけた原因の料理を教えてくれと頼んできたので、小学五年と六年で基礎らしきものをすべて叩き込んだら料理好きになった。それにつられてなのか、木在の料理も改善されていった。
次に力也。あいつは家が金持ちだからか、テレビで紹介された。『天才』と称されて。
事実、俺と競っていたせいかあいつはあいつで勝負したものすべてが一流の域に達していた。小学六年あたりで。
自分の事を超一流と称するわけではないが――そもそも身体能力からして隔絶があるので勝負が分かりきってることが多いが偶に迫ってくることがあるので(加減して)、そんじゃそこらの人間と一線を画しているには違いあるまい。
おまけにマモンがあの手この手で邪魔してくるのをはねのけて俺と勝負するのだ。その気概がどこかなのはと似てる気がするが、唯一ちがうのは無理をしないでここまで来たという事だろう。本当天才だ。
なお、力也のファンクラブは普通に存在し、あいつの容姿も相まって世界から色々注目されている。
裕也は……野球部のエースになるんじゃないだろうか。俺とよくキャッチボールしてたし、クラブチームを優勝に導いた立役者になったらしいし。
まぁ勉強に関しては元一と一緒で相変わらず微妙なところだが。
アリシアとフェイトは未だにアルフとプレシアさんと一緒にここで暮らしている。偶にプレシアさんが管理局で研究する時アルフと一緒に行って学校に来ない時もあるが、フェイトより学校にいるのでよく話している方だったりする。成長に関してはフェイトの方がいいのかもしれん。
アリサはまぁ……カリスマ性が上がったんじゃないだろうか。なんとなくそんな気がする。あと、何かにつけて俺を使う様になった。
すずかは……機械が好きだという事実を知った時にうっかり『家に工房みたいなのがある』と口走って以来ちょくちょく来ては地下室で作ってる(俺は指導役みたいなもの)。外見と雰囲気がかみ合わないのになんとも思わないのはやはり俺の感覚がマヒしてるからだろうか。
はやてと雄樹? あいつらは普通に結婚するんじゃないのか? そんな雰囲気を小学生から醸し出してたから。
ちなみにアインスさんは管理局でデバイスの研究をすることが多いらしく、家はグレアム提督が借りてる。リーゼ姉妹と一緒にのんびりしてる姿を目撃した時の気まずさと言ったらなかったな。
んで、なのはだが……まぁ元気だな。色々と重圧はあるようだが。エース・オブ・エースとか呼ばれているらしいから。
恭也さんはすずかの姉――忍さんと一緒に世界を旅しているのだとか。異世界ではなく、普通の地球と言う枠の中での。
美由希さんは翠屋に就職したんじゃなかったか。その際料理ができないという欠点があったとかで元一と一緒に教えた記憶が……あぁ、シャマルも一緒だったな。
宮野巡査は未だに交番勤務だが、事件解決率が高いお蔭で人気がある。殆どが勘で解決してるらしく、「いやー昇給はされたけど苦い顔されてたな」と巡回中に遭遇した巡査がそんなことを言っていた。
……こんなものか。
俺は相変わらず神様のパシリ同然だがめっきり減ったので、日々の鍛錬と夜の雄樹の稽古と魔法の練習しかしてない。偶になのはやフェイト、はやてやヴォルケンリッターの稽古を神様達にお願いしたり、家での宴会の料理を作ったり、アリサに付き合わされたり、すずかに機械の使い方や構造に関して講義したりぐらいしかしてないな。
「もぅ。無視しないでよ大智君」
「……悪かったなアリシア」
「…本当に悪いと思ってるの? っていつも思うんだけど」
「少し眉が下がってるから悪いと思ってるわよ、きっと」
「だね」
「え、良く分からないよ」
俺もだが。顔の表情なんて笑顔以外だと焦ったりするぐらいしか出ないと(あと怒り)思っているのにそんなことを言われるなんて。
内心で驚いていると、アリサが「今度は驚いてるわね」と言い当てる。
「良く分かったな」
「そりゃ、伊達に三年間一緒に居ないわよ」
「そうだね」
「いや、俺は分からなかったんだが」
「私も分からなかったよ」
分かったのはアリサとすずか。分からなかったのは元一とアリシア。
おそらく付き合いの密度の違いだろうとあたりをつけた俺は、廊下側から歩いてくる人の気配を感じ取り「先生来るぞ」と言って再び窓の景色に視線を移した。
「祝! 大智の中学校進級~~!! イエーー!!」
『『『イエーー!!』』』
「……帰って早々」
入学式がつつがなく終了し帰宅した俺がまず聞いたのは、両親が音頭を取る声と、それに呼応してコップを打ち付ける音だった。
それだけで何が起こるのか分かった俺はこめかみを抑えながら二階へ上がる。
『お帰りなさいマスター』
「ただいま。いつからあいつらは?」
『ほんの五分前でしょうか』
「……速いな」
準備して実行するその速度が。
まぁ法則適用するにはいささか理不尽な存在達なので適用するのが間違っているのだが、それにしたって。
ハァッとため息をついて鞄をベッドに投げ、制服から着替えた俺はカバンの中から一枚の用紙を取り出して机に置こうにもパソコンが陣取っているため出来ない。
とりあえずパソコンの上に置いておき、一階に行くと何があるのか分かりきっているのでベッドに座って天井を見ながら不意に漏らす。
「……将来か」
『進路ですか?』
「まぁな。なのはたちは決まってるから問題ないだろうし、それぞれやりたいことがあるだろうが……俺は特にな」
『そうなんですか?』
意外そうな声を出すナイトメア。
それに対し、俺は現状の思考をそのまま言葉にする。
「前世じゃ戦争ばかりしてて人員不足だったから医者も兵器開発も自分達の手でやった。というか、それ以外にやる事がなかったから考えることがなかった」
『でも買い物とかしてたんですよね? 売ってる人を見てなりたいとか思わなかったんですか?』
「いや。『頑張ってくれ』と声援を受けてたから特に」
『……でも、今は戦争ありませんよね』
「あったらそれこそ止めるけどな……で、現状は特になりたいものがないというか神様のパシリで世界自体を飛び回っているから考えられない」
『あー……』
納得してしまったナイトメア。意味が理解できたようで何よりである。
「かといって起業するのもな……」
『起業? やりたいことあるんですか? 考えられないとか言ってたのに』
「お前偶に毒吐くな……やりたいことというか、ちょっと考えたんだ」
『何をです?』
「管理局は異世界の監視及び犯罪者たちを追っている。だけどその世界で起きたことに関してはほとんどやらない。そしてここはちょくちょく異世界から人間が来る」
『神様も来ますけど』
「まぁそうだが……犯罪者以外に異世界に来る奴らだっているだろ? それに、今後俺達の中で異世界に行きたいとかいう奴らがいるかもしれない。そんな奴らのために何かしてみるのもいいかなと」
『……なるほど』
「それを行うには起業が手っ取り早いんだが……起業申請するの面倒だからやりたくないし、高校卒業しないと出しても突っ返されそうだからあんまり」
『だったらそれ書けばいいじゃないですか』
「魔法とか異世界とかの説明するの面倒だから書けないんだよ」
『……あ、それもそうですね』
また納得してくれたナイトメア。
ならどう書くか……なんて少し考えたが未来は不確定だと思い至った俺は『未定』と大きく書いてそんな悩みを終わらせた。
『いいんですか?』
「理解できなければそれでいいさ。俺が構想を決めていれば」
『時折無自覚にそんなセリフ出ますよね……』
ナイトメアのその言葉にそうか? と首を傾げながら解決した俺は騒がしい下の様子を見に行きたくないので、気配を消してこっそりと外へ出た。
「うぅぅぅん」
外に出て背筋を伸ばす。無用に先の事を考えたせいか、体が硬くなった気がする。
「あ、大智君! ちょうどよかった」
「どうしたなのは? お前管理局じゃなかったのか?」
「うんそうだったんだけど……早めに終わってね」
「?」
体を解そうと屈伸をやり始めたところになのはが塀から顔をのぞかせたのでどうしてここにいるのか尋ねると、何やら嬉しいけど複雑な感じを漂わせていた。
「何があった?」
「えっと……なんか向かった先々で犯人が伸びてたからそれを回収したらやる事なくなっちゃって」
「……」
その原因をすぐさま推測できた俺はちらっと家へ視線を向け、何事もないようにふるまうことにした。
「良かったな」
「そうなんだけど……ひょっとしたらと「良かったな。休めるぞ」……うん、そうだね」
何やら釈然としてないようだが俺はスルーし、「で、戻ってきたけど結局入学式終っててどうするかと外に出たら俺を見かけたから声をかけた、と」と話題をずらすことにした。
「まぁそうだけど……大智君、メール読んでないの?」
「メール?」
言われて携帯を取り出し確認する。
最新メールが親父の『宴会やってる』で、二番目がアリサからの『翠屋に来なさい』。
「……お前の家結構繁盛してるな」
「そうかな?」
「ま、行くか。今からだと怒られるの確定だけど」
「はははっ。そうだね」
自分も怒られるのを想像したのだろう。なのはは若干声を上ずらせて答えていた。
まぁ面倒なので、俺は塀に上ってから電柱を駆け上がり「先行くぞ」と上から言って屋根へと跳んだ。
「ずるいっ!」
跳べないのが悪い。
「遅いわよ大智、なのは」
「ごめんアリサちゃん」
「進路を考えててメールに気付いたのがついさっきなんだが」
とりあえず翠屋に着いた俺となのはは、一角を占拠している代表格であるアリサに当然怒られた。それを見たフェイトは苦笑し、すずかはアリサを宥める。
アリシアは我関せずでケーキを食べていて、雄樹とはやては互いに隣通しに座り何やらやっているので無視。
と、俺の言葉に何を思ったのか、アリサが聞いてきた。
「進路って、決まってるのあんた」
「いや? 構想自体はあるが、どこかで歯車がくるってしまいそうだから口にしないだけだ」
「それを決ってるっていうのよ……」
「え、決まってるの大智?」
「ひょっとして、うちらと同じ管理局にようやく決心したんか!?」
「なんでそうなる」
はやての言葉を即座に否定しながら空いてる椅子に座る。
露骨にテンションが下がった二人を無視し、俺は続けた。
「俺は白を黒、黒を白と言う組織に入るつもりはないし、捕まえようものなら誰であろうと容赦はしない。組織自体を叩き潰す」
「「「「「「……ああ…………」」」」」」
何かを想像したのか納得する六人。アリシアは関係ないと云う様に「シュークリーム追加お願いします!」と注文していた。
「大智君は何かあるかい?」
「コーヒーでお願いします」
「いつものだね」
アリシアの注文に顔を出した士郎さんが俺の注文も取りに来たらしいので、いつも通りの注文をしておく。
そして、黙っている六人に「ちなみに俺が管理局に入ったらまず間違いなく爪弾きにされて上司の不正暴いて上層部を大体追放する」と付け足す。
……更に空気が重くなった。
おかしいな。ここはツッコミが入ってもいいはずなんだが。
「どうした。冗談だぞ?」
「いや……」
「あながち冗談じゃなさそうね」
「せやな」
「「「うん」」」
本気でやるほどそこまで管理局をウザったいと思ってないのだが……。そう言うと更に空気が重くなるんじゃないかと予想できたので、桃子さんが持ってきたコーヒーを飲んでみんなの回復を待つことにした。
「そういえば」
「ん?」
回復し、談笑しながら昼(とは言えないが昼)を食べていると、何かを思い出したのかアリシアが呟いた。
「大智君ってミカエルさんとどうなってるの?」
「「「「!!?」」」」
「どう、とは?」
質問の意図がはっきりしないので尋ね返すと、はやてが「そんなのきまっとる」といってから説明した。
「あんたとミカエルさんが付き合ってるかどうかや!」
「…………」
ドヤ顔の自信満々で俺を指さして言うので、しばらく視線を向けてから静かにコーヒーを飲む。
その反応で何を勘違いしたのか「キスしたんか!? なぁ!?」と絡んでくる。
俺はコップをテーブルに置いて静かに息を吐き、言い切った。
「
「……へ?」
「大智、それ本当に言ってるの?」
「至って真面目だ」
その言葉に雄樹は頭を抱え、はやては固まり、他は絶望した表情を浮かべていた。
同じ男だからかそれほどショックがなかった雄樹は「あのね」と前置きしてから説明してくれた。
「付き合うっていうのは、僕とはやてみたいな関係なんだよ」
「あぁそういえばそうだったな。で?」
「君、ミカエルさんとどうなったの?」
「特に何もないが? というかたまに会うがそんな話一切しないが? 何やら体を近づけさせることは多々あるが?」
「う、わぁ……」
「難敵どころちゃうでこりゃ……」
ふむ。なぜこの二人も頭を抱え始めたのだろうか。
周囲の反応に首を傾げていると、「とりあえず奥へ来たらどう?」と桃子さんが手招きしたので、動かない皆を置いて俺一人向かった。
「大智君って鈍感ね」
「…そうですかね?」
「そうよ」
そんな会話をしながら厨房で調理の手伝いをする俺。と言ってもメニューにあるお菓子を作ってるようなものだが。
俺が未だに首を傾げていると、桃子さんが笑いながら言った。
「あなたはなのはの事が好き?」
「……嫌いではありません」
「じゃぁみんなの事は?」
「同じです」
「みんなと離れたいと思う?」
「必要とあれば。と言っても人生じゃ別れたり合流したりの連続ですけどね」
「じゃぁ必要ないのに別れることになったら?」
「割り切ります」
「そう」
何故かあちらの方が黙ってしまった。
俺は作っていたお菓子を完成させ桃子さんを見る。
「どうかしましたか?」
「好きってなんだと思う?」
「……?」
作業する手を止めてまで聞くようなことなのだろうかと思っていると、再び質問してきたので少し考えて「分かりません」と答える。
すると桃子さんは分かっていたのかつづけた。
「それはね、どうしても離れたくないって思えたり、心配したり、怒ったり、そんな気持ちを抱かせるものなの」
「はぁ」
「大智君もなのは達の事を心配したり怒ったりするでしょ? それが好きってこと」
「……そう言うものですかね」
「そうよ」
そう断言する桃子さんを見て、それもそうかもしれないと納得する。
ならば俺も……等と考えていると、「じゃ、あと何個か作りましょ?」と言ってきたので、黙ってうなずいて作ることにした。
ちなみに、管理局の仕事が早めに終わったのは飲み会に参加する神様の仕業だという予想は当たっていた。帰ったら出来上がっていた親父たちの会話を聞いていたら、な。
大体六話ぐらいで中学生が終わり、そこから十話近く高校生だった気がしなくもないです。
ご愛読ありがとうございます。