世にも不思議な転生者   作:末吉

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お久し振りです。ストックが減った状態です。そろそろこっちも書かないとですね…


104:中二 文化祭

「今年も、か……」

 

 思わずため息が漏れる。

 それを見ていたらしい元一が装飾品(・・・)を抱えるように持ったまま、叫んだ。

 

「本当いつも通りだな大智! さっさと手伝えよ!!」

「残念ながら、俺は本格的な参加は無理だ。これを行うための予算調整とかやらされてたし、理事長に止められてる」

「畜生! ただでさえ人がいないってのにこれはきついぃぃ!!」

「騒いでないでやれ!」

「アダッ!!」

 

 裕也に叩かれ落としそうになる元一。それを見ながら、改装されていく教室内を見渡して呟く。

 

「……さて、今年はどうなるかな」

 

 

 

 文化祭という行事がある。学習発表会というクラスごとの発表会を誇張したという認識の行事だが、去年からは一般公開がされているので金をとる方策に。

 

 で、俺は一度も参加したことがない。

 

 理由を挙げるならば当日や準備までの諸雑務をこなさなければならなかったのと、特に参加することに楽しさを感じなかったから。

 頑張って作ったというのは傍から見てわかるし拍手もするが、特に興味をそそられるものがないため大体屋上で校庭を見てたり、寝てる。

 片付けはいかず、基本的に家でナイトメアと会話していた。

 

 三年から毎年アリサ達から誘われているのだが、それらすべてをスルーしている。

 

 自分の教室から離れ、自分の仕事場である生徒指導室へ向かう。

 

 時折すれ違う生徒達の楽しそうな表情を見て少しいいなと思ったが、ないものねだりしてもないものはないと言い聞かせて通り過ぎる。

 というか、基本的に行事でまともに参加できるのは遠足だけだったんじゃないだろうか。あと全部裏方で、一回だけ運動会に出たが、俺一人対学内の運動自慢な奴らの集まりという見世物で、しかもそれを加減して圧倒してしまったのでそれ以降参加することなかったな。

 

 そんな風に過去を思い出していたら、不意に修学旅行の事を思い出したと同時にぶつかった。

 

「きゃっ」

「悪い……って、フェイト? お前今日休みなのか?」

「え、な、なな、だ、大智!?」

 

 相手はフェイト。しかも学校の制服ではなく、すずかの家にいるメイド達の服装になっていた(色は違うが)。しりもちをついたらしく、顔を真っ赤にさせて慌てている。

 まぁぶつかってしりもち着いたところを知ってる奴に見られたら恥ずかしいだろうなと思いつつ手を貸して起こしたが、未だに両手を勢いよく動かして何かを説明しようとしている。

 分かりにくいことこの上ないので、「似合ってるぞ。その服装で接客頑張れ」と言って通り過ぎることにした。

 

 ふぇ!? という声が背後から聞こえ、そんなに驚くようなことを言ってないぞと思った。

 

 そしてついた生徒指導室という名の俺の仕事場。はっきり言って理事長がこういう事をやらないため、一人あぶれた俺が毎年やっている。

 

「今日は特に仕事はなさそうだな……」

「あ、長嶋君。これ、理事長から仕事だって」

「あ、はい」

 

 ドアを開ける前に先生に書類を渡される。もう本番まで日がないのになぜこうも仕事があるのだろうか。事務的なモノなら一週間前に終わらせたのだが。今もこうして雑務がちょくちょくとあるし。

 ま、書類の量見た限りそれほど時間はかからないだろうと思いながら引き戸を開けると、

 

「!? だ、大智様!?」

「……何ニヤけながら机で寝てるんだ、ミカエル」

 

 何故かミカエルが机に突っ伏して寝ていた。慌てて起きたようだが、その際翼が広がりそうになったので素直に注意する。

 

「翼」

「あ、」

 

 何とかミカエルは自重してくれた。

 俺は扉を閉めて机のない方のいすに座り、書類をパラパラとめくりながら質問した。

 

「何の用事で来た?」

「え、えっと、ですね……」

「分かった帰れ」

「用件言ってません!」

「じゃぁそこどけ。お前が下敷きにしたノートPCがある机を使うから」

「……はい」

 

 素直にどいてくれたので俺は見終わった書類を机に置いて、コンセントを挿してから開いて電源をつける。

 ブゥンと起動する音がする。その音を聞きながら鞄から筆記用具とノートを一冊取り出し、ミカエルを見る。

 

「何か用か?」

「……大智様は、いつまでこちら(・・・)にいるつもりですか?」

 

 唐突に呟かれる質問。それに対し俺はマウスを移動させながら画面に視線を移して「死ぬまでじゃないか?」と答える。

 

「そうですか……」

「お前達と違い寿命があるし、神様に成れるわけでもないしな」

「ですけど……」

「というか、本当に何の用だお前。そんな分かりきったことを聞くためじゃないだろ?」

「それは……」

 

 パソコンに必要な情報を全て打ち込んで顔を上げ、言いにくそうな顔をしているミカエルを見る。

 

 ……何故か頬が赤い。どうして緊張を……ああ。

 

「そういえば告白されたっけ、俺。今ようやく思い出した」

「わ、忘れてたんですか!? あんな一世一代の告白で玉砕したことを!」

「今まで忘れてた」

「どういう神経してるんですか!?」

「こういう神経。だから『好き』を理解できない(・・・・・・)のかもな……」

「え?」

「ん? どうした?」

 

 何か変なことを言ったか、俺と思い首を傾げる。するとミカエルは首を振って「なんでもありません」と答えた。

 渡された書類の仕事を理事長に添付ファイルで送ったのでやる事がなくなった俺は、別ファイルを開き読み流しながら呟く。

 

「……修学旅行か。前世じゃ『戦場旅行』だったからどうにも殺伐としてたもんだが……こっち()考えないといけないんだよな」

「文化祭の次を考えてるんですか? 早いですね」

「俺の仕事はもう終わったから」

「え? 参加しないんですか?」

「できない、と言った方が正しいな。まぁ個人パフォーマンスの参加はギリギリ認められてるから出来るんだろうが、特にやりたいと思う事でもないしな……」

「やりましょうよ! 私達も(・・・)行きますから!!」

「……待て。なんでそんな話になる」

 

 話の流れが見えてこないので、何故か急に勢いがついた彼女に訊ねる。

 彼女はペラペラと語り出した。

 

「だって人間の文化祭ですよ!? 見てる限りじゃ結構はしゃいで楽しんで、甘酸っぱそうな雰囲気出して、ドキドキしながら色々な出し物見て回るんですよ! だったら行こうってなりますよ!!」

 

 竜一さんや怜奈さんも楽しかったと言ってましたし! などと力説を始める。

 最近神様が変な方向に壊れてる気がするのはどうなんだろうかと思いながら話を聞いていると、不意にノックの音がしたのでミカエルが静かになる。

 気配は……二か。そう思いながら引き戸を開けるために立ち上がると、あっちが勝手に開けた。

 

「やっほーいいところで邪魔して悪いねー」

「ふむ。力説して籠絡しようとしてるところ悪いが、ここは学校だ。場を弁えてほしい」

「そ、そんなことしてません!」

「で、どうした理事長? ノスはちょくちょく来過ぎだろ」

 

 もう抗議してるミカエルを無視して理事長に話を聞く。すると理事長が話をする前にノスが口を開いた。

 

「実はね、泊めてほしいんだよ僕を」

「それはいいが。またすずかが狙われるのか?」

「違う違う。もうそれはないって」

「ならなぜ」

文化祭見るから(・・・・・・・)

お前もか(・・・・)……」

 

 げんなりする。そして本当にこいつら暇だなと思う。

 スゴイパフォーマンス期待してるからねなんて親指突き出して更に言われ、俺は理事長を見る。

 

「俺参加すると言った記憶がないんだが」

「書類仕事や諸々をやってくれた礼だ。文化祭を盛り上げてくれたまえ」

「いやあのな」

「良かったじゃないですか!」

「年に一回の行事なんだから楽しもうよ!」

「……もういい」

 

 話が平行線になったのが分かったので諦める。そして、一つ質問してみる。

 

「どこまでならいいんだ?」

「中学生で火を使うものはダメ。他には、ロボットにやらせるのもダメだ」

「盛り上げられるものでいいんじゃないの?」

「はいはい!」

「何か案があるのか、ミカエル?」

 

 とりあえず参考にできるかどうか判断するために意見を聞いてみる。

 ミカエルは自信満々でこう言った。

 

「はい! ブレイクダンスやってる姿を見たいです!」

「却下」

「じゃぁダブルダッチ!!」

「なんでストリート系なんだよ。一人でダブルダッチは無理だろ」

「踊ってる姿を見て盛り上がります!」

「……さて。何がいいかな」

「え、無視ですか!? ここで無視ですか!?」

 

 とりあえずミカエルの案は聞かなかったことにしよう。そう思った俺は続く二人に話を聞こうと思ったが、ロクでもない答えが返ってきたそうだったので自分で考える。

 が、理事長が追い打ちをかけてきた。

 

「ちなみに、一人で弾き語りをやらせるつもりなので頑張りたまえ」

「おい! 悩んでた俺がバカみたいじゃないか!!」

「それと、クラスの出し物は給仕係にならOKを出していたから。もうすぐ」

「おーい大智ー!」

「頑張りたまえ」

「じゃねー」

「それでは」

「あっ、くそっ」

 

 言い逃げされ頭を抱えそうになるが、元一の声と気配が近づいてきたのでパソコンの電源を切って鞄に荷物をしまい、生徒指導室を出ることにした。

 

 

 

 

「しかしあと三日で許可が下りるとは思わなかったんだよな」

「だろうな。俺は今年もどこかで時間を潰そうと考えていたから」

 

 裕也の言葉に返事をしながらネクタイを締めた俺は、一回転してから「どうだ?」と訊いてみる。

 

「どうだって……着こなせるお前がすごい」

「伊達にスーツを小学生から着てない」

「あー確かに」

 

 まぁこれはスーツではなく燕尾服なんだがな。白い手袋をして革靴ののつま先で地面をつつきながらそんなことを思っていると、「うわすげぇ!」という歓声が上がった。

 

 なんで俺が燕尾服を着ているのか。それは、このクラスの出し物である喫茶店が「コスプレ」付きだからである。

 誰が決めたのかは知らないが、これを知った時はよく理事長は通したなと思った。

 で、俺まで巻き込むつもり満々のようなのを知ったのは今日で、元一に連れてこられて教室に入ったら男子のリーダーである裕也に「これを着てくれ」と言われ、普通に着た結果。

 

 今男子の歓声がすごい。

 

 ぐるっと見渡してみても男子で燕尾服は俺だけ。他は全員動物系だった。

 純粋な疑問で俺は聞いた。

 

「なんで俺だけ?」

「あーお前が動物を着てるのはなんか違和感あるし、かといって派手系もおかしいと悩んでたら女子が『燕尾服一択でしょ!』と結託して進言してきたから」

「……どこがいいんだか」

 

 そう思いながらポケットから懐中時計を取り出して時計の確認をする。

 ちゃんと動いてるのを確認した俺は「もう脱いでいいか?」と聞いたところ、それが聞こえたのか女子側から猛反発を受けた。

 

「ダメ! 今日は学校が終わるまでそのままの格好で!!」

「そうそう! キマッてるからそのまま!」

「写真撮らせて!」

「視線をこっちに向けて!!」

「……準備はいいのか? 見たところクラスの準備が全然できてないようだが」

「先に衣装確認なんだよ」

「雄樹……なんで王様?」

「僕がいなかったときに決まったからだよ!」

 

 そう言ってステッキで床をつつく。王様というより影武者の方がしっくりくるのはどうしてだろうか?

 謎だなと思っていると、キャー!! と声が上がるのが聞こえたためそちらの方へ向く。

 すると、マモンが宙で寝そべりながらボーっとしていて、力也がどこかのゲームに出てくる爽やか天才剣士の格好で登場した。

 あんな服装もあるんだなと思っていると、「はやて達の服装もすごいよ」と耳打ちしてきたのでそういえばどこにいるんだろうと今更になって辺りを見渡す。

 

 すると、力也と反対側の入り口から出てきたのか、男子が一斉にそちらを見て叫びだした。

 先生に怒られても知らんと思いながら視線を移してみるとマモンが遮ったので、少しイラッとしてずれるがバスケットのDFみたいに動きに合わせて妨害してくる。

 

 地味にフラストレーション溜まるなと思いながら諦めた俺は着替えようと思ったが、それより先に声をかけられた。

 

「大智君が執事だー! ねぇねぇ、『お帰りなさいお嬢様』ってやって!!」

「お帰りなさいお嬢様。これでいいかアリシア?」

「棒読みじゃダメだよ! もっとこう、お出迎えって感じに! 鮫島さん見たく!!」

「……お帰りなさいませお嬢様。本日は宿題をきちんとやっていただきたいと存じます」

「あー聞こえないー!」

 

 そう言って両耳をふさぐアリシアが見れて、ようやく雄樹の言った意味が分かった。

 確かにすごい。どちらかというとお転婆貴族の娘をイメージさせる服装である。

 ……というか、こんなの買う金どこにあったのだろうか。ふとそんなことを思う。

 少しして彼女は耳から手を放し咳払いしてから「似合ってるよ」と感想を言ってきたので、俺も素直に「そっちもな」と答えておく。

 

 無難な答えでも満足したのか俯くアリシアに首を傾げると、変な気迫を発しながらアリサ達が一直線に俺のところへ来た。

 

 すずかの格好は自身の髪の色に合わせた着物で、さすがに十二単はなかったのだろう。

 フェイトはさっき見た格好で、なのははその恰好の色違い。単純に黒と白なんだが。

 はやては女王の格好みたいだが、どちらかというとじゃじゃ馬の印象を受ける。

 アリサはというと……なぜかスーツ姿に眼鏡だった。

 まぁ似合っているといえば似合っているし、何の問題もないのだが、視力はいいはずなのになぜ裸眼ではないのだろうかと思った。

 

 何故か緊張しているアリサに、俺は質問した。

 

「その恰好は何の真似だ?」

 

 すると彼女は恥ずかしそうに答えた。

 

「――よ」

「は?」

「教師よ! 女教師!! なんか文句ある!?」

「ないが? いいんじゃないか? 良く似合ってると思うぞお嬢様」

「なっ! な、何言ってるのよあんたは!!」

「お前お嬢様だろうが」

「「…………ん?」」

 

 話がかみ合ってない気がしたのか、互いに首を傾げる。その様子を見たはやてが割り込み、「どうやうちらの格好?」と雄樹と肩を組んで(雄樹は赤くなった)聞いてきたので、素直に答えた。

 

「アットホームな王国だろうなお前らが治めるとしたら」

「……う~ん。期待してたのとなんか違うんやけど」

「期待するなよ。立派に夫婦に見えるから」

「ホンマか!?」

「俺に確認するなよ」

「立派に夫婦に見えるやて、雄樹!」

「う、うん。嬉しいよ」

「見せつけてくれるなぁ雄樹。次学校来たら写真を展示してやろうか?」

「なんてこと考えるんだ元一! それだったら木在さんと一緒に買い物してる写真ばらまくよ!!」

「バッ! 俺と木在はそんな関係じゃないって!!」

 

 ……なぜか男二人の醜い争いになったので俺は発言をやめ着替えようと思ったが、写真を撮る音が聞こえたので振り向くと、蕩けたような、というか嬉しさからにやけているなのはの姿が。

 写真でもとったのかと思いながらスルーしたら、気付いたのかアリサがとんでもない雰囲気でなのはに近づき、そのまま引きずって教室から出てしまった。

 

 帰宅する時になのはが悲しそうな顔をして、アリサが上機嫌な顔だったのは俺にはどうすることも出来ない問題だと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『マスター。ギターなんて買ってきてどうしたんですか?』

「練習」

『って、すぐ弦切れちゃったじゃないですか!』

「……力加減を間違えた」

 

 ……三日で何とかなるのだろうか?

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