世にも不思議な転生者   作:末吉

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遂に彼はみんなに説明しました。


108:高一・そして明かす

 俺達も高校生になった。

 

 結局同じ学校に進学した俺達は何の因果か全員が同じクラスになり、大多数の人間が喜んでいた。俺はどうでもいいと思ってる。

 

 で、告白されたのだが、そういえば俺昔のことを言ってなかったと思い出したので、とりあえず今いるアリサやすずか、元一に木在、裕也に力也を放課後集めた。

 

「で? わざわざあんたが呼ぶなんて、どうかしたの?」

 

 現在は授業が始まり、入部期間が終わって本格的に部活が始まる季節。

 裕也は野球部に、元一と木在は料理部に入っているが、今日は部活がないらしく集まってくれた。

 

 不思議そうに尋ねてきたアリサに対し、俺は「告白を受けて少し考えたんだが……」と前置きをして言うべきことを言った。

 

「俺はお前達に『俺』という存在の不可思議さを教えていなかったことに気付いてな。告白の返事をする前に、まずはそんな俺の事を話そうと思って集めた」

「どういう事だよ?」

 

 さっぱりわからないという顔をして訊いてくるのは予想通り元一。

 それを無視して「無論、これは管理局組にも話をしておく」とさらに前置きをしてから、反応を無視して俺は話し始めた。

 

「まぁとはいっても簡単なことだ。俺はこの世界――お前達が住んでいる世界ではないところで生まれ、そこで死んだ。で、この世界で生き返った。死んだ時と能力は全て同じで、それを引き継いで俺はこうしてここまで生きている」

「「「「「「………………」」」」」」

「簡単に言うなら…ゲームオーバーになったにもかかわらずコンテニュー或いは強くてニューゲーム状態で生きてるあくどくて最悪で劣悪な人間だってこと」

「「「「「「…………」」」」」」

「以上だ」

「……」

「……え?」

「なるほど……」

「??」

「えっとつまり……お前一回死んでるってこと?」

「も、元一!」

「元一の言葉通りだな。別な世界で死んだと思ったらこっちで生き返った。別な世界で培ってきたものすべてを引っ提げて」

 

 だからテストなんて正直勉強しなくても満点はとれると言うと、「なにそれ羨ましい」と元一が本音を漏らし、それ以外は何も言わない。

 

 いう事ではないと思うが、これを言わないと、これを知ってもらわないと、俺は先へ進めない気がした。

 

 誰もが沈黙しているかと思いきや、元一が少し興奮気味に「で、お前その別の世界で何してたんだよ」と聞いてきたので、俺は表情を殺して(元々死んでたな)「聞きたいか?」と真剣な口調で確認する。

 

 俺がそんな確認するのが相当なことだと感じ取ったのか、一同はさらに雰囲気を暗くする。

 

 まるで、前世でクラスメイトが戦死した奴らを埋葬する時のクラスメイト達のような。

 

 その雰囲気につられて黙っていると、力也が口を開いた。

 

神様との交流や(・・・・・・・)戦争が日常だった世界(・・・・・・・・・・)……そうだろ?」

『!?』

 

 力也以外は一斉に俺に視線を向ける。

 とても信じられないという顔を向けられながら、それに対し罪悪感もなくただただ「ああ」と肯定した。

 

「なるほどね。それなら人の悪意の視線に晒されても動じなかったのもうなずける。戦争の第一線で生き残るためには、殺意なんてものを受け続けないといけないから」

「工夫というのは存外大事でな。ダミーを作る時や潜入する際の特殊メイクに美術を、無線信号や声帯で音楽を学ばなければいけなかった。だから俺は天才じゃない」

「良く分かったよ……それにしても今更じゃないか?」

 

 もっと早く言った方がよかっただろと言われ、俺は「そうかもしれない」と苦笑しながら続けた。

 

「力也が説明してくれたから省くが、そんな感じで俺は人を殺してきた。そのせいか最初の頃は感情なんてもの殆ど欠落していた」

「…じゃぁあの光景って」

「どうしたアリサ?」

 

 不意に漏らしたらしい言葉に反応した俺はアリサに視線を向けて首を傾げたが、彼女はすぐさま首を振って視線を俯かせる。

 

 何か見たんだなと思いながら説明を続けた。

 

「で、どうしてこんなことを説明したのかというと、俺が常日頃からお前達で言う『卑下している』理由だ。こんな気味悪くて、愚劣で、最低な人間とこれ以上一緒に居なくてもいいぞっていう勧告でもある」

 

 八割ほど(・・・・)説明を終えた俺は荷物を持って窓を開ける。

 その窓の格子に腰を下ろしながら、夕日の光を浴びながら、「お前達もこれから自分のやりたいことをやりに分かれていくんだ。自分で選択してくれ」と付け足す。

 

 すると、同じく力也が沈黙の中最初に口を開いた。

 

「それで僕がハイそうですかと引き下がるわけないだろ? 君を絶対に負かすまで、僕は君の近くで勝負を仕掛け続ける」

「…そうか」

 

 言うだけ言うと、力也は俺に背を向けて教室を出て行った。

 俺がいた世界をマモンから教えてもらったんだろうなとぼんやり思っていると、裕也が「…まぁ、いきなりとんでもない話を聞かされてイマイチピンとこないけどよ。お前がそうやって話してくれたのって、結局信用した訳だろ? だったら俺の行動は変わらないさ。野球に付き合ってもらったし」と笑って虚をついてきた。

 

 ……そうか。俺は信用したのか。話しても大丈夫だと。

 

 そんなことを考えていると裕也はいなくなっており、元一が頭を掻きながら「なんか途中から分かりにくかったけどよ……ここで暮らしてるお前は――俺達が知ってる長嶋大智は、変わらないんだろ?」といい、木在も「ちょ、ちょっと普通じゃないけど、大智君は優しいよ」と相変わらず元一以外だと緊張した声で主張した。

 

 ……なんか聞いたことがある言葉だったな元一のは。ま、その言葉もある意味真理か。

 

 言うだけ言って二人も教室から出て行った。

 

 残るはアリサとすずか。

 両脇にいる二人に交互に視線を向けながら黙っていると、アリサが「……あんたを助ける時に竜一さんが見せてくれた記憶。あんたみたいな奴に殺されていく人たちの視線の記憶だったけど、今のあんたの姿と話を聞いたら納得したわ」と呟いた。

 

「本当に、あんたは人を殺してたのね」

「……ああ」

「でもあんた、悲しそうだったわよ」

「そうか?」

 

 あの頃を思い出しながら――鉄面皮の鬼神と恐れられたからなぁと思いながら――聞き返すと、不意にすずかが笑った。

 

「どうしたのよ?」

「どうした?」

 

 俺とアリサがすずかに視線を向けると、彼女は口元を隠しながら「霧生君が言った通り、変わらないよ大智君」と答えた。

 

「そうか?」

「うん。そんなこと言ったら私だって吸血鬼の末裔だし、天上君だって悪魔に憑りつかれていたんだよ? 確かに長嶋君の過去は怖かったけど、正直に自分を話してくれたのはどちらかというと嬉しかったよ。昔だったら話すことすらしなかっただろうし」

「……ま、そうだろうな」

「だから、嬉しかったよ。話を聞けて」

 

 そういうと彼女は俺の左腕にしがみついて夕日に当たっているからか赤く見える顔で「じゃ、帰ろうよ」と促す。

 

「って、ちょっと待ちなさいよすずか! あんたさらっと私を置いてこうとしてる!?」

「私は迷わなかったからね」

 

 そう言いながら先へ進もうとするので流されるまま踏み出すと、アリサも何やら葛藤したのか「~~ッ!」と唇を少し噛んだ音が聞こえたと思ったら、右腕に抱きついてきた。

 

 堪らず俺は「なんで腕にしがみつくんだよ」と漏らすと、「すずかはいいのに私はダメなの?」と睨んできたので、盛大にため息をついて文句を消した。

 

 ちなみに。

 

「俺、別世界で恋をした人殺してからそう言う感情があまり湧かないから」

「え?」「ちょっと」

 

 さらっと言ったら二人に腕をつねられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――ということをあっちでは話してきたのでこの際話すことにした」

「どうやって来たのって言いたいけど……」

「私達よりすごい過去だねフェイト」

「うん……そうだね」

「ちなみに雄樹も俺と似たような存在だが、俺とは別な世界から来てる」

「ちょっと。さりげなく僕の事ばらさないでくれない?」

 

 とりあえず管理局へ行って(試作型転移装置)休憩中らしい地球組(全員昇格していた)を集めてもらい(グレアム元提督に言ったらあっさり集まった)同じ事を話して反応を窺ってみようと思ったが……拍子抜けするほどあっさり受け入れられた気がする。

 

 肩透かしを食らったと思いながら頬を掻き「大丈夫なのか?」と質問する。

 

 それに対し、一同は「うん」と頷いた。

 

 ……。

 

「なぜだ?」

「えっと…それでも変わらないから、かな?」

「うん。色々と納得できたから」

「だね!」

「せや、雄樹はどんな世界から来たんや?」

「僕は普通の世界だよ。そんな日常的に戦争があった世界じゃないから」

「なんやそうなんか」

「……そうか」

 

 割と嫌われるのかと思ったのだが、そうでもなかったようだ。

 

 まぁ、ならいいか。

 

 そんなことを思いながら、とりあえずすずかとアリサと同じことを言ったところ、なのは達三人から無言で吹き飛ばされないながらも殴られた。

 

 仕方ないのかもしれない、か。

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、スカリエッティ博士は前のスポンサーとの通信を全部破棄し、自分の研究所を潰して来たそうだ。ナンバーズも成長し、戦闘能力や証拠隠滅能力も全員一流に近い。

 

 ……まぁ、さすがに管理局に占拠された施設に入れなかったようだが。

 

 未だに指名手配されているので、とりあえず上層部を全員黙らせ(または脅迫し)て取り消してやろうと考えている。




ご愛読ありがとうございます。
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