世にも不思議な転生者 作:末吉
とりあえず成績などをいつも通り満点トップで過ごし、起業準備をしながらスカリエッティ博士の研究(というより俺の論理実証および開発)資金を稼ぐために色々やったり(あるいはナンバーズに仕事を斡旋したり)、転移装置の改良がてら飛んだ世界の先々でトラブルを解決したり、管理局に顔出して顔見知りに挨拶したり、ランスロットやペルセウスや阿修羅とトレーニングという名の死闘を行った。
あとは雄樹の稽古に対しレアスキル使用で魔力制限の条件付きを取り入れたが、レアスキルの応用範囲が広すぎるせいか、それとも俺が戦争を体験していたからか、何でもかんでも出してしまうので一週間続けたが止めることにした。
他にもなのはと二人で勉強会をしたり、アリシアの買い物に付き合ったり、アリサと映画観たり、すずかに工学系の勉強を教えたり、フェイトと屋台を回ったりしたな。……力也との勝負は未だ勝ち続けているが。
そんなこんなで九月。
新学期が始まり、文化祭や体育祭あるなという話をしていると、何を思ったのか元一が「そういやよ」と質問してきた。
「大智って誕生日祝ったことあるのか? 今まで不思議だったんだが」
少し考えてから「祝ったことはあるぞ」と答える。
「マジで? で、いつなの?」
「なのはは五月、はやては六月……」
「いやお前の誕生日聞いてるんだけど」
「俺の?」
「なんで真顔で首かしげるんだよ」
「いや――」そう言って言葉を濁した俺は、自分の誕生日がないことをすぐさま思い出したが、どう答えようか迷った。
「……ひょっとして、誕生日祝ったことないのか自分の?」
まさかと言った表情で恐る恐る質問してくる元一。
それに対し腹を括った俺は素直に頷いた。
「……マジ?」
「ああ。この世界では小学生から過ごしたからな」
「じゃぁこの世界に来る前は?」
「それも似たようなもんだな。気が付けばそこに存在していたから」
「……そりゃ誕生日も祝えないわな」
小声でそんな感想を漏らす。それに対し「そんなに重要なことか?」と質問すると、「いや特に何も。ただ授業が分からなくて眠りそうだったから」と小さく欠伸を漏らしながらウソをつく。
大方誰かが元一に聞けと言ったんだろうな。席、隣だし。
そんなことを推測しながら、俺は授業を真面目に聞かないながらもノートを取っていた。
放課後。
「今日は何する予定だったか……」
手帳で今日の日付を見ながら予定を確認しつつ立ちあがると、囲むように人の気配が出てきたので俺は特に関心せずそれを抜いて教室を出ようとする。
今日は……あぁ。スカリエッティ博士のところで話をする予定があったんだ。
最近色々あるから思い出すのも苦労すると思っていると、後ろから「待ちなさいよ」とアリサの声が。
用事があるんだが…と思いながらも振り返ると、「あんたいつ誕生日やってほしい?」と訊かれた。
「誕生日? 別にやらなくていいぞ。俺も色々と忙しいし」
「そんなこと言わないでよ大智君。私達のお祝いに参加してもらってばかりだからさ」
「むしろそっちの方が楽だ」
すずかがアリサの援護をしたのであっさり切ると、元一が俺の肩を組んで「まぁまぁ。祝ってもらうっていうのも悪くはないぞ?」と諭してくる。
買収されたのかこいつなどと怪訝な表情を浮かべながら元一を見ていると、我慢できないのか「で、いつやるの?」とアリサが苛立った声で訊いてきた。
「だから俺は別にいいって…」
「なんでそこまで嫌なのよ!」
「祝られたことがないから」
「は?」
「え?」
「嘘だろ?」
若干キレたアリサが叫んだので正直に答えると、アリサ含む三人が呆けた顔をした。
嘘じゃないぞと元一の質問に答えてから、俺はため息交じりに説明した。
「前世じゃ全員で同じことを祝うしかないから誕生日関係ないし、こっちでは両親が褒めたことはあれど祝ってくれたことなどない」
俺が説明し終えたところ、三人が何とも微妙な表情をして沈黙していた。
驚きたいけど驚けない――そんな矛盾を孕んだ表情を。
一体どうしたお前らと言いたかったが、すぐさまアリサが回復したために言えなかった。
「……なるほどね。それじゃあんた、どうでもいいと思う訳ね」
「まぁな。それに、今は高校を卒業をしてからの準備もあるから忙しいし」
「そんなに早くするの?」
驚いた顔で聞いてくるすずか。詳細を教えればその理由も納得してくれるだろうが、これは卒業間近になって話すべきだろうし、今から話したら自分の道が揺らいでしまうのではないかと危惧したので、「やりたいことの努力をするには、早い方が色々と今後を決めやすいんだよ」と無難に答える。
「でもあんた、少しぐらいゆっくりしてもいいんじゃないの?」
「してるぞ。学校の授業で。後は家に帰って」
「……」「……」「たまに俺達と遊ぶだろ」
「そういやそうだったな」
忘れてるんじゃねぇよと肩を叩いていた元一だったが、木在が「部活に遅刻だよ、元一」という言葉で慌てて教室へ戻って荷物を持ち、「俺はこの辺で!」と言ってダッシュした。木在はその後を追うように小走りしていった。
残った俺達三人。
「……」
「……」
「……なぁ」
「なに」
「いや、帰っていいか?」
「別にいいわよ」
「うん…」
とても気まずかったので、俺は素早く家へ帰った。
「そういや俺の誕生日っていつなんだろうか」
博士との話し合い(クローン施設を一つだけ占拠され、その中に一人だけ無事な男がいたという報告を受けた)で指名手配取り消しをやめようと思った俺はナンバーズ戦闘班全員を身体能力だけで十秒で鎮圧し帰宅。
夕飯を作って食べながら、不意に話題に上がったことを気になって呟いてみる。
それを聞いたナイトメアは、『マスターに誕生日あるんですか?』と質問してきた。
「ないと思うが……」
『だったら神様に電話すればいいのでは? マスターの事を知ってる』
「それもそうだな」
いいアドバイスを受けたので、俺は夕食を食べ終えて食器を片づけてから携帯電話でスサノオに電話することにした。
『なんじゃ珍しい』
「俺の誕生日っていつだ?」
『…長嶋大智という意味じゃよな?』
「それ以外はないぞ」
『……おい伊弉諾。大智の誕生日っていつじゃ?』
『あー……あ』
『どうしたんじゃ?』
『あいつの誕生日一回も祝ってねぇぇぇぇ!!』
親父の叫びがこちらにまで響いたので思わず携帯電話を耳から離す。
しかもまだ『なんってこったちくしょぉぉぉぉ!』と叫ぶので、一回電話を切って時間を置いてからもう一度かけた。
「大丈夫か?」
『まぁ。ちょっと黙らせたし』
「で、分かったのか?」
『う~む。わしにはわからん。お釈迦様やイザナミあたりなら知っているのではないか?』
「……分かった」
どうやらスサノオも分からなかったらしい。
となると母さんに電話した方が早いな……二者の選択をすぐさま終えた俺は母さんに電話を掛ける。
『もしもし大智? 珍しいけどどうしたの?』
「俺の誕生日知ってる?」
『えーっと……一応戸籍には載ってるから調べればいいんじゃない?』
「……」
ピッ。何も言わずに電話を切る。
『分かりました?』
「覚えてないのか忘れてたのか知らないが……戸籍という書類に行きついた」
『…それは分かってないってことじゃないですか…』
まぁそうなんだが。
心の中で同意した俺は、調べるとしたら明日かとため息をつく。
が、それもすぐさま解消された。
「君の誕生日は四月……君がこの世界に転生した日だが?」
「理事長……最近会わないからって直接家に来過ぎだろ」
「君が誕生日について調べているようだと風の噂で知ってね。久し振りに登場する機会だと思ったわけだ」
「いやまぁ確かにそうだろうが……あんた【統括者】なんだろ? いいのかよ力使いまくって」
「【統括者】といえばそうだが、そうじゃないともいえるから問題ないし、この世界に魔法があるのだから別に気味悪がる人間はいない」
「また屁理屈を……」
「詭弁と否定と屁理屈を使い分ける人間よりマシだと思うが」
「……」
「……」
少しの間睨み合った俺と理事長。が、互いに示さず同時にふっと息を吐き、リラックスする。
「ていうか、俺の誕生日転生日かよ」
「ちなみにもう一人の転生者は六月だ」
「…明らかにおかしい」
「まぁそうぼやくな。分かっただけでもいいだろう」
「…まぁ」
渋々肯定すると、「ではまた。今度は
「……」
『身近な人が知ってましたね』
「だな」
理事長の言葉にまさかなと思いながらもナイトメアの感想に相槌を打った俺は、アリサに誕生日の事をメールしといた。
そしたら数分で返事が来て、『遅いながらも来週の日曜やるわよ!』とメールなのに強い口調だった。
日曜か…確か神様達から死闘の誘いを受けてたな……。
そんなことを思いながら、アリサから『なのは達にもメールしなさいよ!』というメールが届いたので、仕方なく管理局組にそのメールを送った。
返事は、一同に『行く』だった。
やれやれ。
ご愛読ありがとうございます。