世にも不思議な転生者   作:末吉

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あと八話ぐらいでストライカーへ移行できる……はずです。


110:誕生日の一日

 日曜。約束の日。

 

 いつも通りのトレーニングをしてから朝食を食べ、食器を片づけてからコーヒーを飲んで呑気にテレビを見ていると、「うぃーっす」と気の抜けた声が聞こえたのでテレビを消し、コーヒーを飲み終えて流し台に置いてからナイトメアを装着して「いいぞ」と誰もいない空間で呼びかける。

 

 瞬間、俺は草原に立っていた。

 

『今日誕生日会ですよね? 遅めの』

「とはいえこっちの方が早いからな…」

 

 ナイトメアの呟きにそう返すと、俺の目の前に四人の男が現れた。

 

 一人はペルセウス。弓矢を持ってきてないところを見ると、完全に短剣の近接戦闘をするようだ。

 もう一人はトール。雷神としてなのか豊穣神としての側面なのか分からないが、柄が短い槌は持ってきていた。

 三人目は孫悟空。完全に殺す気なのか、最初から殺気がダダ漏れ。

 で、最後が――

 

「ウルスラグナ、か。武闘派ばっかじゃねぇか。しかも最後負けたことがないってふざけんなよ」

「主も似たようなもんじゃろ? わしらが本気で、殺す気でやって、ようやく倒せる相手だと聞いておるぞ」

「誰だよそんなデマ流したの。真に受けんなよ孫悟空」

「いやでも、大体その言葉通りだよなトール?」

「だな。まぁ今回の勝負は完全に打ち倒そうと考えた布陣だからな」

「僕も戦ってみたいと思ってたからね」

 

 そう言って全員臨戦態勢になる。唯一ウルスラグナだけは自然体。

 それらを見て俺はため息をついてから「解放」と指示をする。

 

 時間にして数秒ですべての魔力が解放され、自分を中心に開放した余波らしき風が草原を駆け回る。

 

 顔を険しくする四人。それらを見た俺は「勝負方法は?」と質問する。

 

 答えたのは、ウルスラグナだった。

 

「僕達の誰かを指名して一騎打ち。勝っても負けても休憩入れて、また別な人と勝負」

 

 簡単でしょ? と笑顔で首を傾げる彼を見てそりゃそうだなと思いながら、「じゃぁ孫悟空からな」と指名する。

 

「お、マジか主よ」

「さっさと勝負しないと一番疲れそうだから」

「かっかっかっ。その意気やよし。存分に期待に応えようではないか!」

 

 言った瞬間俺の眼前に孫が持っていた如意棒の先が来たので、反射的に左手で押し上げる。

 チッ、という音が頭上から聞こえたが気にしない俺は、「ダグラス」と呟いて全長一メートルほどのロングソードを右手で持って駆け出す。

 

「ぬぅ。これならどうじゃ!」

 

 接近されるのを嫌ったのか如意棒を一瞬で縮めたと思ったら俺の腹部辺りに先が伸びていたので、左足に魔力を込めて全力で横に飛ぶ。

 ズシャァァァ! と地面が抉れる音がしたが気にしなかった俺は、右わき腹に手を当てて感触を確かめる。

 

 ……掠ったぐらいで骨が折れたわけじゃなさそうだな。それでもひびが入ってるのかもしれんが。

 孫悟空に一瞬で接近しながら考えた俺は、如意棒でロングソードを防いでいる奴に対し「この剣に見覚えがあるだろ(・・・・・・・・・・・・)?」と言ってやる。

 その言葉を理解したのか如意棒で押し返した孫悟空は、飛ばした俺の体勢が整わせないように近づき攻撃を仕掛ける。

 

「オルァァ!」

「ぐふっ!!」

 

 腹に突き刺さる右ストレート。その衝撃と威力で内臓が潰されたのか、俺の身体の力は抜け、口から溜まってきた血を吐き出す。

 ダラリとなった俺の体。意識が飛びかけてることが分かりながらも、俺は落とさなかったダグラスを握り「ぶっ飛ばせ(・・・・・)」と呟く。

 

 瞬間。俺の身体は宙を舞い、孫悟空はダグラスのゼロ距離爆発(・・・・・・)を食らった。

 

 

 

 

「わしの勝ちじゃろ」

「あぁ。そうだな」

 

 目を覚ましたら二時間が経過していた。あまりにも元気に返事をするものだから、疲れた俺はため息をついて頷く。

 あー畜生。やっぱりバリアジャケットも展開しとくべきだったか……? そんなことを思いながら上半身を起こして反省していると、「まぁわしも内面はヤバいんじゃが」と笑いながら口から血を流す。

 

 ダグラスというロングソードは巻き添え用の物ではない。相手に細菌兵器或いは猛毒を内部へ送る時用の剣である。

 仕組みは簡単で、相手と打ち合う側の先端に極微小の穴があり、そこから衝撃で飛びだすというもの。爆発機能は、相手が遠距離だった場合に投擲だけでは送れないから後付けされた。作ったの俺だけど。

 

 前回はこれで倒したから行けると思ったが……流石に安易すぎたか。

 

 やっぱり反省だなと思いながら首を左右に曲げて立ち上がり、尻の方を払ってから「二回戦やるか」と提案する。

 

「別にいいが、大丈夫なのか?」

「問題ない。それじゃ次は……ウルスラグナだ」

「あ、僕か。うんいいよ」

 

 拍子抜けするほどあっさりと引き受けた彼は一歩前へ踏み出したところ、「あ、そういえば」と呟く。

 

「どうした?」

「いや、僕絶対に勝つよ」

「あっそ」

 

 勝利宣言を聞いた俺は冷たく返し「じゃ、やるか」と同時に発砲した。

 

 

 

 

 

 

 

 結局。全員が本気で殺しに来たので全戦全敗。さすがに孫悟空とウルスラグナまで来ると無理があったか。

 全部生身だったからな…と思い返しながらため息をつくと、ケロッとしている神様達が「いや危なかった」と言い始めた。

 

「バリアジャケット展開されてたら負けてたな」

「そうだな。しかし、武器を量産されるのも厄介だった」

「わしたち神壁を展開せんかったからの」

「いやー久々にギリギリの戦いが出来たよ。本当に疲れた。あれだけ執拗に量産されるとつらいよこっちも」

 

 全員にウソつけと言いたいが、多少なりともある程度追い詰めていたと自負できるのであえて言わない。

 

 すると、不意に思い出したペルセウスが「もうすぐ時間じゃね?」と確認してくる。

 時計類を置いてきた俺は「どうなんだろう?」と首を傾げると、トールが「そういえば」と何か思い出した様子を見せた。

 

「どうした」

「いやなに。お前のプレゼントというか、もうあのスーツ着れないだろうからという配慮でな。すっかり忘れていた」

 

 そういうと同時に俺の事を囲む四人。

 何する気だと警戒すると、次の瞬間「ようやく来たか遅い」とオーディンの声が。

 

「白熱して、つい」

「……まぁいい。時間的には間に合うだろ」

 

 そういうと誰かが俺の肩をたたいたので振り返る。そこにいたのはノスだった。

 ? と事態を飲み込もうとしていると、「じゃ、行こうか」と言われ、俺は回廊の中に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *斉原雄樹視点

 

「久し振りだな、雄樹」

「そうだね元一……ところで、大智は場所を知ってるの?」

「知ってると思うぜ」

 

 そんな会話を交わしながら、久しぶりの再会を楽しむ。

 まぁ本当にこうして久し振りに集まったからね僕達。

 

「にしてもお前…なんか顔つき変わったよな?」

「まぁ…たくさんの現場を見てきたからだと思うけど」

「体つきはあんまり変わってないけどな」

「そういう元一は未だに外見だけでしょ」

「うっせ。高校入学しておいてテスト日や数回しか出てこない奴に言われたくないぜ。それに、俺の成績は今じゃそこそこいい方なんだっての」

 

 そう言いながらコップに入っていたジュースを飲む。

 僕もそれにつられて飲むと、「目の敵にされて大変じゃないか?」と力也がコップを指一本で支えながらこちらに寄って来た。

 中身入ってるんだけどそれ……なんて驚きながら思っていると、「もうすぐ始まるんじゃないのか?」と裕也が手ぶらで寄って来た。

 

「て、なんで僕の方に?」

「滅多に会えない男友達に顔見せたらだめなのかよ?」

 

 ……。どうやら、彼らなりの励ましらしい。

 向こうは向こうでいろいろ盛り上がってるみたいだし、まぁここはありがたく……

 

「ぎりぎりセーフ!!」

『!?』

 

 聞き慣れた声が聞こえたのでその方向へ体を向けると、そこには吸血鬼の真祖が黒いマントを広げながら叫んでいて、それがハラリと戻ると彼の横に大智が新品同様の黒いスーツを着て現れた。

 

 ……とんでもなく似合っていて、僕達は開いた口が塞がらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「さぁそれでは」

 

 ビシッとしていてもう青年実業家と言われても納得してしまう雰囲気の大智に「どうした?」と真顔で聞かれて我に返った僕達。

 だけど直視できないのか、フェイトになのは、アリシアにすずかにアリサの五人はちらちらとみるだけでまともに視線を合わせることをしない。

 

 …今まで普通に視線を合わせてたのにね。

 そんなこと言ったら僕は殴られるんじゃないかと思ったので黙っていると、いつの間にか来ていた大智の両親が司会をやっていた。

 

 ……よく見たらペルセウスにスサノオ、ミカエルさんにロキとか神様いるし。

 

 と、僕達の視線を向けさせた当の本人は大智にマイクを渡していた。

 

『何を話せばいいんだ?』

 

 あ、マイクのスイッチ入ってるのね。

 

「そりゃ、感謝の言葉だろ」

『なるほど……。あー集まってくれてありがとう。今回が初めての誕生日会なので少々緊張している』

 

 言われても分からないけど……まぁいいか。

 

『まぁ正直な話何を言うべきなのか分からないのでここで話を終わらす』

 

 そういうとすぐさまマイクを渡してしまった。乾杯の音頭とか言えばよかったのに。

 その事は大智の両親も同感だったらしいけど、気を取り直したようで『さぁ乾杯!』とコップを突き上げる。

 

『カンパーイ!!』

 

 その言葉に続いて、僕達もコップを突き上げた。

 ……大智だけはそのまま何事もなく飲んでいた。

 

「おめでとう大智」

「俺は四月だ」

「あ、そうだったね」

 

 メールの内容を思い出した僕は笑って誤魔化すと、大智は見逃してくれたのか皿に乗せた料理を食べる。

 

 言い忘れていたけどここはアリサの家。鮫島さんを筆頭に、僕達も頑張った。いや、流石に料理は作らなかったけど。

 

 料理を食べ続けている大智に、僕は少しばかり確認した。

 

「あっちの方は行ったの?」

「ヴォルケンリッターの方は……挨拶を、したな」

「なんで間が空くのさ?」

「いや、近づいたら驚かれてな。そこから軽い言い争いになって別れた」

「…あぁ、なるほど」

 

 それは挨拶なのか断定できないね。

 

「あれ、はやてはいなかったの?」

「あいつならなのは達のところにいるぞ? 何故かミカエルも」

「ふーん」

 

 きっと発破でも掛けに行ったんだろうね。

 

「裕也達とも話をした。こうして祝ってもらうというのは些か高揚感をもたらすな」

 

 ……うん。僕は敢えてツッコまないことにした。

 と、いつの間にか食べ終わって飲み物を口にしていた大智が何の気なしに「そういえばお前達はキスをしたのか?」と訊いてきたので思わず吹き出す。

 

 な、何をいきなり唐突にそんな話題に吹っ飛ぶんだよ!? 咳き込みながら赤面しつつそんなことを考えていると、「いや、付き合った男女はキスをするのにそれほど躊躇いがないのは本当なのか気になって」と相も変らぬ鉄面皮で補足する。

 

 ……あー一応は考えているんだ…。いや、考えているというより知識を増やしてるって感じかな?

 

 とにかく恋愛ごとに関して調べているようなので進歩してると言っても過言でもなさそうだ。…情報源が少々おかしい気がするけど。

 

「ちなみにそれは何で聞いたの?」

「恋愛小説だな。後は……クラスメイトが話をしてるのを」

 

 誰だそんな話をしてる奴。普通は違うよ普通は。

 

「で、どうなんだ?」

「普通は躊躇うって。羞恥心を乗り越えてキスをするんだって」

「やったのか?」

「や、やってない!」

「…ヘタレって奴か」

「……なんでそんな言葉知ってるのさ」

「元一に対して使われているのを聞いた」

「え、俺がなんだって?」

「なんでもないよ」

 

 途中で入ってきた元一をやんわりと外しながら、念話でどういう事か聞こうと思ったけど不意に思い当たる事柄を思い出したので、小声で確認する。

 

「それってさ、木在との…?」

「ああ。あの二人、まだ付き合っていない。どちらも告白しないでここまで来ている」

「なるほどね……」

「あの二人の関係がつかず離れず。相思相愛なのかと参考にしている」

「……で? 自分の気持ちは分かった?」

 

 そう聞くと大智は首を横に振って「いやまったく。特に気持ちが焦がれるとかってのはない」と真面目な顔で答えた。

 

 一応理解してるみたいだから進歩はしてるんだろうけど……結構長くなりそうだねぇ。

 

 女性陣の苦労は尋常じゃなさそうだと思いながらため息をつき、僕は思い出した。

 

「ああそういえば」

「ん?」

「プレゼント」

 

 ポケットから取り出した本を渡す。

 最初何のことだかわからなかったのかその場で固まっていたけど、「あぁそういうことか」と理解を示してくれたようで、素直に受け取ってくれた。

 

「『ダジーラの悲恋』……まぁありがたく受け取っておこう」

「正直言って一番苦労したね今までで」

「そうか」

 

 こういう自力で何とかできる人に対して何がいいのかなんて、本当難しいよね。

 

 大智はというともらった本を早速ぱらぱらとめくったと思ったら徐に閉じ、「なるほど」と言って本を消した。

 ……あれ?

 

「本は?」

「家」

「あの一瞬で…?」

「ああ」

 

 そんなことに魔法使うってどんだけ……なんて思っていたら、ローソクが立っているケーキが運ばれているのが見えた。どうやら消してもらうようだ。

 

 普通に消せるのかなと心配しながら、僕はチラリと視線を後ろへ向けた大智を誤魔化すように話しかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *

 

 結論。

 

 意外といいものだった。




それでは。
ご愛読ありがとうございます。
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