世にも不思議な転生者   作:末吉

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ここら辺で(お気に入りが)打ち止めか知りませんが更新は止めません。


111:高2・エリオという少年

「そういえば大智君」

「どうした博士」

 

 ログハウスでのんびりクロスワードを解いていた七月。

 夏休みに入り宿題を一日で終わらせた俺は、避暑地代わりにこうしてほぼ毎日こちらへ来てだべっている。神様達からのコンタクトも少なくなっているため、こうして完全に暇している。

 

 八割ほど埋め終えた俺は、一度顔を上げてパソコンと睨めっこしている博士を見る。ナンバーズはウーノを除き全員が出払っている。主に情報収集や鎮圧の真似事をさせて戦闘における経験値を溜めさせている。

 

 とりあえず『全員で生きる』と言う博士の条件を実行させるにあたってだったが、数人がいう事聞かなかったので実力行使で理解させた。

 

 今でも不意打ちで俺の事を攻撃しに来る奴がいるので毎回返り討ちにする。

 

 まぁ今は全員で異常気象が起こってる原因の究明及び可能なら排除をさせているからしばらく戻ってこないだろう。

 そんなことを思い返しながら言葉を待っていると、「あぁ僕か」とようやく博士が口を開いた。

 

「前に引き払った研究所が占拠されたと言ったね」

「あぁ。一人の少年が保護されたそうだ…って、ナンバーズの方が知ってるだろ?」

「その少年の名前――エリオじゃなかったかい?」

「そこまでは知らん。いちいち聞くこともないから」

「ふぅん……。でもね、十中八九間違いないんだ。その少年の名前はエリオ。エリオ・モンディアル」

 

 確信をもって少年の身元を断定する。その事から博士はその少年の事を……

 

「造ったのか、ひょっとして?」

「良く分かったね。あぁそうさ。依頼があったし僕もその筋の研究をしていたから丁度良くね」

「……なら指名手配取り消しはやめとくか」

「え、ちょっと? そんなこと考えてくれたの?」

「まぁ。だがこの世界だとクローン製造に関してはアウトなんだろ? 郷に入っては郷に従え。今すぐ通報してやろうかといいたいところだが……」

「だが?」

「正直管理局がもう一度こっちに来る手間を考えたらどうでもいい気がするし、そもそもクローン製造法の禁止に関する法律があるのかすら定かではないから別に取り消してもらう方向を考えるか」

「本当に!?」

「期待はするな。長い間管理局とつながってたんだから取り消してもらえるかどうか怪しい。それに……上層部が危ないんだろ?」

「うん。レジアスに支援してもらってたけど今頃死んでないって分かってるだろうから躍起になってるだろうし、最高評議会って奴らもいるし」

 

 最高評議会と言う名を口にした時、一瞬だが博士の雰囲気に憎しみと苛立ちが混じった。

 きっとロクでもないことをしてたんだろうと思いながら、俺はため息をついて「こうなったらずっと身を隠す他ないな。ある程度失脚させてから」と呟く。

 それを聞いた博士は「それはいい考えだ」とにやけながら言ったと思ったら何か思いついたのか、一心不乱にパソコンに視線を移してキーボードをたたいていく。

 

 そんな時に携帯電話が鳴ったので、俺は「外で電話を受けてくる」と言ってログハウスの外に出た。

 

 ウーノは博士の指示で書類をまとめている。言い忘れていたが。

 

 

「はいもしもし」

 

 相手も確認せずに電話に出る。

 

『あ、も、もしもし! だ、大智君!?』

「……あぁフェイトか。どうした」

 

 異常に――恐らく相手を意識した結果なのだろうと推測する――声高になっているフェイトに冷静に訊ねると、『え、えっと……』と少し躊躇してから彼女は意を決したのか電話越しだというのに叫んだ。

 

『い、一緒に…遊園地いかない!?』

「……いや、別にいいが」

 

 携帯を少し遠ざけてから戻し、了承してから再び遠ざける。

 すると、思った通り『本当に!?』と叫んできた。

 

 嬉しいと人間って叫びたくなるんだなと思いながら無難に返事をすると、『じゃぁ、明日ミッドチルダの管理局前に来て! 九時ぐらいに!!』と叫んで電話を切った。

 通話が終了したことを確認した俺はすぐさま携帯を閉じてポケットに入れ、ログハウスに戻ることにした。

 

「大智君。さっき画期的な発明品を思いついたんだ」

 

 戻って来て早々博士がそう言うのでパソコンの画面を覗き……懐かしいもの(・・・・・・)を見て納得した。

 

「これは確かに画期的だな。これを使えば相互転送が可能だ」

「だよね。けど、装置の子機をどうやって設置しようかってのが問題かな」

「まぁな。転移装置で持っていくにしては少々面倒な気もするし」

「実現するのはもう少し先かなー」

「出来ましたよ博士」

 

 ウーノが書類の束を博士の前にどんと置き、そのままキッチンへ歩き出した。どうやら食事を作るようだ。

 

 この光景を見た限り夫婦のような気がしてならないなと思いながら、夫婦とはこういうものなんだろうなとも考えた。

 

 まぁ邪魔するのも野暮だろう。そんなことを思った俺は博士に「じゃ、俺そろそろ家に帰る」と言ってそのまま地下室へ降りた。

 

 ……そういえば、俺はどうやってミッドチルダへ行くことになるんだろうか。一応転移装置があるから構わないんだが……。

 

 地下室を歩いて自分の家の庭に出た時、ふとそんなことを思った。

 

 

 

 

 

 

 

 で、当日。

 

 とりあえず集合時間より1時間近く前に到着しておいてのんびりと観光して時間を潰し、ギリギリ間に合うように到着した。

 すると、フェイトが小さな少年と一緒に待っていた。

 

「待たせたな」

「ううん。私も今来たところ」

「…で、こいつは?」

「えっと……」

 

 何か言いづらいのだろうか。誤魔化そうとするフェイトを見ながらそう思った俺は、赤髪でこちらに視線を合わせない少年を観察する。

 

 どうも周りにいる奴が全員敵だと思っている眼だ。一応フェイトの事は最低限『信じてる』ようだが……。

 

 なんか俺を見てる様だなと思いながら見ていると、フェイトが少年――恐らくエリオの手を握って「じゃ、行こうか?」と俺を見て提案してきた。

 特に反対する理由もないし人通りが多くなってきたと思ったので、俺は何も言わずについて行くことにした。

 

 

 

 

 

 

「で、どうやって行くんだ?」

「バスとか」

「……大丈夫なのか?」

「え、うん。エリオはこのぐらい(・・・・・)なら大丈夫」

「そうか」

 

 そういう意味じゃないんだがな。

 そう思いながら近くに感じる見知った気配の場所をちらっと見る。

 

「? どうしたの?」

「いや……」

 

 ひょっとしてバレてないのだろうかと思いながら視線を戻してフェイトに「なんでもない」と言っておく。

 ついでメールを即打ちして気配をした奴ら全員に『お前ら小5のアレを繰り返すつもりか?』と送っとく。

 見知った気配を近くに感じれば分かるというのに……そんなことを思いながら、フェイトとエリオの後をゆっくりとついて行った。

 

 

 

 バスの中。

 

 エリオとフェイトは一緒に座席に座り、俺はその近くで立ったまま。

 席に余裕は若干ある。ただ、動きを制限されたくないだけで立っているだけ。

 

「楽しみだね、エリオ」

「…………」

 

 話し掛けてはいるが反応がない。そんなことは前から知っているからか、へこたれずにまた話しかけている。

 よくやるものだと思いながら、俺もこんな風に話しかけられてたなと昔を思い出す。

 そこから俺とエリオが似ているのかもしれないと仮定した場合のこのエリオの状態は、一種の人間不信に陥っているのだろうと仮定する。

 

 ……そう考えるとなのはたちはすごいな。

 

「どうしたの大智君?」

「いや。久し振りに遊園地に行くなと思って」

「私はそうだけど、大智君はあれから何回か行かなかったの?」

「ん? いや、半年前に別世界にあった遊園地のアトラクションの性能実験に立ち会うために行って以来だ」

「それは結構行ってるよね」

 

 でもその前は三年近く行ってないぞ。それは関係ないじゃん。そんなやり取りをしたところ、不意に俺の携帯電話が振動した。

 ポケットから取り出して相手を確認すると、『あんた今どこにいるの?』とアリサからメールが。

 

 ……そういえば何も言ってなかったな。

 

 とりあえず俺は『出掛けてる』と打って返信する。

 するとすぐさま『誰と?』と返ってきた。

 

 ……どう答えたものか。

 正直に答えて良いとは思うのだが、答えたら答えたで別な日になんか面倒なことが起こりそうなので答えづらい。

 

「……」

「どうしたの? メール?」

 

 どう答えたものかと画面と睨めっこしているとフェイトが質問してきたので、「メールの返信で悩んでいる」と答える。

 

「誰からなの?」

「アリサ」

「……」

 

 瞬時にフェイトの顔が赤くなった。一体どんな想像をしたのだろうかと思いながら『呼ばれて』と返信。

 

 …………。

 

「『だから誰と?』って……しょうがない。一人で、と……」

 

 そう返信して寂しい奴だと思われるんだろうなと瞬時に思えた。

 しかしながらアリサはどう思ったのかこれまたすぐさまメールで『な、なら一緒に行ってあげてもいいわy』と返ってきた。

 

「地球じゃないぞ……っと」

 

 返信を確認してから携帯を閉じてポケットに入れる。

 

「これで後顧(こうこ)の憂いなく……って、フェイト。どうした顔真っ赤だぞ」

「えっ!? な、なんでもないよ!!」

 

 明らかに動揺しているのだがそんなにするものだろうかと思いながらエリオという少年をみたが、彼は一切無関心のままだった。

 

 

 

 

 

 

 遊園地に着いた。日本ではお目にかかれない規模だ。

 だがそれほど驚くことではないので、「じゃ行くか」とフェイトに言って歩き出した。

 

「何に乗る? エリオ」

「…………」

 

 フェイトが屈んで目線を合わせて訊ねるも返事はなし。俺はというと、パラパラとパンフレットをめくって全アトラクションを把握して感想を言った。

 

「普通だな」

「え?」

 

 フェイトがこちらを見たが俺は自分が言った言葉に対し何も言わず、俺はパンフレットを二つに折って後ろのポケットに入れてからエリオの襟首をつかんで持ち上げる。

 

「ちょっと大智君!」

「別にいいだろ」

 

 抵抗しているのか背中に足とか拳とか当たっている様だが痛くないので気にせず、「ほらさっさと適当にアトラクションに乗ろうぜ?」と促す。

 フェイトは少し悩んだようだが、「そうだね」と言ってエリオをつかんでいない腕にしがみついてきた。

 

「離せっ!」

「ほら」

「っだ!」

 

 ようやく喋ったようなのでそのまま離す。するとエリオはそのまま落下し、当たり前のようにしりもちをつく。

 

 周囲の人がなんか集まっている様だが俺は気にせず、フェイトに離れてもらって振り返る。

 

 そしたらエリオが憎しみを宿した目で俺に突っ込んできた。

 

「おうらぁ!」

 

 勢いのついた拳。だが痛みは全くない。

 そのまま立っていると連撃が来るようだったので二発目の拳をつかんで「よしジェットコースター行くか」と宣言して引きずる。

 

「っ、離せ! 離せよっ!!」

「うるさい子供。おとなしくついて来い」

「あ、待ってよ」

 

 こうして、俺達は遊園地で遊ぶことになった。

 

 まぁジェットコースターでエリオを乗せ、(身長制限をぶっちぎって)隣に座った俺は安全バーなしで普通に終わるまで寝てた。

 終わって目を覚ました時、何故か疲れた顔をしたエリオと驚く客、そして乾いた笑いを浮かべるフェイト。

 どういう事か気になったが別な場所へ移動するかと思い、すぐさま降りた。

 

 次に乗ったのはコーヒーカップ。俺は一人乗らずエリオとフェイトの二人の姿をのんびり見ていた。時折俺と視線があった時、エリオは不機嫌そうな顔をしたが。

 

 でお化け屋敷なんて魔法のある世界に存在していて試に入ってみたがそれほど怖いものではなかった。

 

 ……フェイトが俺にしがみついて、エリオがフェイトにしがみついていたが。

 

 昼は売店で買ってそこら辺のベンチに座って食べ、そこから色々とあり――

 

 

 現在は三人で観覧車に乗っている。

 

「ありがとね、大智君」

「まぁ暇だったから別に。あ、宿題はちゃんとやれよ」

「やってるよちゃんと」

 

 エリオがしゃべらないので二人で世間話をする。が、急にフェイトが真面目な顔になったので話題をやめて黙る。

 

 次に口を開いたのは、俺達が乗っているゴンドラが真上に来た時だった。

 

「――あのね」

「ん?」

「今日君に来てもらったのは、エリオに知ってもらいたかったんだ」

「愛情を?」

「……うん」

 

 なぜ俺に言うのだろうか。そう思いながらフェイトの肩で眠っているエリオを見る。

 

 …これもう信頼されているんじゃないのか?

 

「エリオはね、私と同じでクローンなんだ。そのせいで色々と酷い目に遭ったらしいんだよ」

「フェイトってクローンだったのか?」

「え? もしかして、知らなかったの?」

「聞いてないからな。まぁお前がクローンでも一個人としてちゃんと生きているんだから関係はないだろ」

「……ありがと」

 

 何故か小声で礼を言われた。

 が、すぐさま彼女は進めた。

 

「エリオを発見した時はすぐさま母さんに頼んで引き取ってもらったんだ。他人事だと思えなかったし」

「そうか」

「そして私はこの子を助けたいと思ってこうしてるんだ。付き合わせてごめんね」

「別に」

 

 俺は素っ気なく返してからゴンドラの外の景色を見つつ続ける。

 

「自分だけでできないから他者に手を借りるというのは当たり前だ。それに、エリオと会って俺もこんな感じだったんだなと確信した」

「……あ。それもそうだね。だから余計に助けようと思ったのかも」

「だったら解決法は簡単だな。なんせ、俺という経験があるんだから」

「…………ふふっ。そうだね」

 

 少しだけ笑った彼女は窓の景色に視線を向けたのが視界の端に映った。

 

「――頑張るよ、私」

 

 宣言するような言葉を聞き、俺は目を瞑って「ああ。頑張れよ」とエールを送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、その日から数日経ったらエリオが心を開いてくれたそうだ。思いのほか早かったな。




ご愛読ありがとうございます。

なお、この時点で彼が出ているのが正しいかどうかは私自身分かりません。(一応、調べて逆算した結果です)

間違っていても訂正はされないのでご了承ください。
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