世にも不思議な転生者   作:末吉

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こちら投稿するの忘れていました


113:高3・お届け者

 進級して高校三年。

 力也とアリサとすずかは進学、管理局組(アリシアも)はそのままそっちの方へ行くことが確定していたので、特に進路で悩む必要がないためある程度暇ができた七月。

 

 ……俺の進路? 普通に起業だが何か?

 

 まぁともかく。学生でいられる奴らにとっての最後の夏休みだという事で、暇をもらったらしいなのはたちが俺が去年うっかり漏らした言葉を真に受けて提案してきた。

 

「ねぇ、海行かない?」

 

 アリシアから言われたその言葉で去年の暮を思い出した俺は「そうだな…」と窓の外の景色を眺めながら呟き、次いで現状を見ながら言った。

 

「お前ら全員が補習にならなかったらな」

「「「「「「「「うっ」」」」」」」」

 

 ペンを走らせていた腕が止まる彼女達。

 ため息をついて髪の毛を掻いた俺は、いつものように言った。

 

「……ノート貸したのに復習しないお前らが悪い。ほら勉強しろ勉強」

「「「「「「「「はーい」」」」」」」」

 

 

 一部管理局組じゃない奴らもいるが、そこは日頃の勉強不足が(一人は問題ない)たたっているせい。

 一応だが海に行く計画を考えておくか。図書館で俺と力也、アリサやすずか以外が勉強しているのを尻目に、外の景色を眺めながらそんなことをぼんやりと頭にとどめておくことにした。

 

 現在は六月中旬。七月上旬がテストで中旬から八月末まで人生最後の夏休みを満喫するためにいつものメンバーが勉強している。勉強しなくとも学年トップの俺や同率一位のアリサや力也は大学の勉強、すずかは工学系の本を読んでいる。

 

 高校三年になって全員の進路が固まりだしてきた。もっとも、俺や管理局組は決まっていたが。

 とりあえず進学するのはアリサと力也とすずか。学力的には何ら問題ない大学へ推薦ではなく一般で受けると危なげに言っていたので大丈夫だろう。

 

 裕也に関してはドラフトの声がかかったそうだが、やんわりと断ったらしい。甲子園三連覇を達成するだろうから野球に打ち込めなくなってしまったらしい。大智のせいだなと笑いながら言っていた。

 単に向上心のおかげじゃないかと思ったが、何やら吹っ切れた様子なので別に反論する気はなかった。

 大学にはいかず、卒業までに就職を探すようだ。

 

 元一と木在は、とりあえず付き合い始めた。高校三年になってどんな心境の変化があったか知らないが(知ろうと思えば知ることはできるが、野暮と言うものだろう)、もう付き合ってると思っていたクラスメイトは驚いていた。驚いていないのは、俺と力也位だったな。

 進学するには金銭的に無理だということで二人とも就職するらしいが、裕也と同じで卒業式までに探すようだ。

 

 なお俺は、先程ものべたように起業して生活するので、進路なんてはなから考える気はなかった。

 

 そういえば今日って卵の特売日だった気がしたな……不意に沈みゆく太陽を見て思い出した俺は、冷蔵庫の在庫を思い出して買いに行かなくてはいけないなと決断。

 そのまま踵を返して図書館を出ようと歩み始めようとしたところ……時が止まっていた。

 

 何時から時が止められていたのか知らないというのも不気味だなと警戒していると、「ああごめん。そんな警戒しなくていいよ長嶋大智君」と俺と背が変わらない古代ローマ時代の服を着て眼鏡をかけた男が前方から――アリサ達が止まっている方から――現れた。

 正体を察した俺は、一体何の用だと問いかけようとしたところ、「ちょっと君に頼みたいことがあるんだよ」と申し訳なさそうな顔をしてそいつは、頭を下げた。

 

「ちょっと預かってくれない!?」

「何を預かればいいんだよクロノス(・・・・)。というか、なぜそんな話になる」

 

 平身低頭さと頼みごとの内容に驚きつい名を告げてしまう。

 

 神様にとって名前とは、その存在を固定するための楔同然。スサノオやトール、イザナミなど時空に関係しない神に関しては気にすることもないが、クロノスや時間、時空、空間などに関係する神に対してはあまりよろしくない。

 

 なぜならクロノスたちはどこの時空、時間にも存在し、存在していないから。矛盾するような話だが、時間軸と言う線ではなく、時間や空間という点に存在しているのだ。どこかの存在が消えたら他の存在も消える。つまり、神の前で名を告げてしまった場合、この世界のこの時間に固定され、それ以外の管理ができないという大惨事になってしまう。

 そうなるとどうなるか……当然タイムパラドックスや歴史改変等イレギュラーなことが起こってしまう。

 

 そんな心配をよそに、彼――クロノスは、「大丈夫」と笑って打ち消した。

 

「僕も君達(・・)と同じで【狭間人】だから。普段は自意識に干渉できないけど、今は色々立て込んでるからね。ちょっと体を借りてるのさ」

「……【狭間人】とは一体なんだ?」

「それについては僕の口からはなんとも。ただ、おおよその予想はついていると、未来を知る僕は思うけど」

「そうか」

 

 となるとどこかで俺は【狭間人】のことを知る。あるいは、心の奥底でその可能性に行きついているのだろうか。

 ふと疑問に思ったことに対する解釈をした俺は、本題に戻ることにした。

 

「何しに来た」

「ちょっと届け物、かな? 未来と過去を知っているからこその処置だけど」

 

 そう言って彼は袖の方から物を取り出す仕草をして……自分が着ている服が違うことに気付いた。

 

「あははっ。慣れっていうのは恐ろしいね」

「だろうな」

 

 どうやら和服、それも着流しで生活しているらしい。クロノスの身体の持ち主は。

 そういえば前に戦った葉山も武士だからか着流しだったし、俺もバリアジャケットを展開すると着流しになる。

 【狭間人】と服装に何か関係があるのだろうかと思いながらも待っていると、どこからか取り出した写真を二枚持っていた。

 

「それは?」

「今回お届けに参った二人。名前は……聞く?」

「まぁ」

「メガーヌ・アルピーノと冥王イクスヴェリア」

「誰だか皆目見当がつかんが……古い人だというのは分かる」

「片方は死にかけで、もう片方は……古代ベルカ時代で絶望してたからちょっと希望を与えるために連れて来ちゃった」

「……はぁ」

 

 やっぱり神様だな。いくら人に宿ったとしても。

 ……。人に宿る(・・・・)?

 

「どうしたのさ?」

「いや。なんでその二人なのかと思って」

 

 そう訊ねるとクロノスはしばしの思案の後、「あ、もうすぐ時間だ。だから言っておくけど、君の家に二人とも眠っているからよろしくね」と言って勝手に消え、景色の色が元に戻った。

 時間が動き出す。止まっていた俺以外の全ての時間が。

 

 俺が窓の外を見ずにこちらを向いていることに不思議に思ったのか、アリサが「どうしたのよ?」と顔を上げて質問してきた。

 それに対し俺は「そろそろ帰ろうと思った」とテーブルに近づきながら正直に答える。

 

「そしたら誰が勉強を教えてくれるんだよ」

「ノート見ろ。後は自分で何とかしろ。明日返してくれればいい」

 

 そう言って俺は元一の言葉を切り捨て、そのまま図書館を出ることにした。

 

 ……悪いな。色々と立て込んだんだ。

 

 そんなことを、考えながら。

 

 

 

 

 

 さて。とりあえず本気を出して家に帰ったおかげで図書館を出てから二分しか経ってないのだが、家に入って思ったことをありのまま口にするならば。

 

「……せめて止血位しておけよ」

 

 血を流したままの女性をそのままソファに放置されていたことに関して俺はため息をついて、ぼやく。

 そんなこと言ってる間も生存率が下がっていくのでさっさとナイトメアを装着して魔力を解放し、回復魔法を最低限かけておく。

 呼吸が安定したようなので俺は回復魔法をやめ、魔力を封じてからリビングのドアの陰からこちらを見ている少女――確かイクスヴェリアだったか――に声をかけた。

 

「ここは地球と言う、お前が生きていた時代のはるか先に魔法が一部の人間に知れ渡る世界だ」

 

 

 返事がない。

 どうしてなのかと思ったが、そういえば古代ベルカに生きていたのだからベルカ語じゃないと通じないんだなと思い出す。

 発音に関してはシグナムの一度きりなので少しうろ覚え。

 改めて覚えるというのも面倒なので、俺は翻訳魔法を発動させず、念話で対話することにした。

 

『この言葉が理解できてるか、お前』

『…ええ』

『俺の名前は長嶋大智。お前が生きていた時代より先の、お前が生きていた世界とは別の世界に住んでいる人間だ』

『私の名前は、イクスヴェリア。古代ベルカの一国の王だった』

『なるほど。古代ベルカ時代が何年前だかわからないが、お前の国はなくなってるぞ』

『……そう』

 

 自国の滅亡に関して特に思い入れはないらしい。

 となるとこいつが絶望している理由とは? なんて考えそうになったが、別に俺が解決する問題ではないのでその思考をすぐ破棄。

 その代り、俺はそいつに提案した。

 

『お前の過去に関しては聞かない。絶望したらしいのは分かるが、それ以上に関して調べる気もない』

『……』

『そこで提案だが、しばらくここへ住め。期間はそうだな……一ヶ月ぐらい。それまでの間は死ぬのも永眠するのもなしだからな』

 

 ……そこまで言っておいてどうしてこんなことをしているんだろうかと思った。

 クロノスに任せられた(と言うか強制的に引き取らされた)中でメガーヌ・アルビーノはヤバそうだったので世話することにしたが、『絶望して永眠しようとした』イクスヴェリアにの対応に関しては全くの自由。

 だというのに俺は彼女にあんな提案をした。別に無視すれば無視できたにもかかわらず、だ。

 なんでなんだろうかと首を傾げず、俺はすぐさま答えを出した。

 

 結局、いつも通り見捨てられないだけか、という答えを。

 

 やはり俺は甘い人間なんだなと再認識していると、答えを出したのか彼女が頷いたのが見えたので、俺は念話で『これからよろしく』と言っておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『海行けるよ!!』

 

 テストが終わり、そのすべてが返却された日。そんなメールをあの場にいた全員に送られたのを見た俺は、一応計画立てておいてよかったと思いながらイクスヴェリアに「お前も海行くか?」と聞いたところ、

 

「はか、せ、の、てつだ、だいを」

 

 片言ではないが精一杯日本語を発音して用事をイクスヴェリアは伝えてきた。

 

 表情はないにしろ、日々成長(言語習得など)しているので、それなりに順応してるようだ。まだ二週間ぐらいしか経っていないというのに。

 古代ベルカ人は吸収力に優れているのか研究するのも面白そうだと思いながら、俺は起業するための準備の書類をまとめた。

 

 

 ついでにいうと、メガーヌ・アルピーノは、スカリエッティ博士に預けた。今では不自由なく生活できるまでに回復した。そしてスカリエッティ博士は、彼女に全力で土下座した。どうやら彼女のけがの原因はあちらにあったらしい。

 現在メガーヌが監視の下、ナンバーズ及びスカリエッティは昔と違うことの証明を一生懸命している。

 

 俺はメガーヌに礼を言われたが、そこまで回復させたのは博士だというと何やら複雑な顔をしていた。

 

 今回のテストの順位は、相変わらずだった。

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