世にも不思議な転生者 作:末吉
「……なぁ大智」
昼を食べ、その食器を俺一人で片づけていたら全員水着になっていたので俺もとりあえず初めての水着を着用して外に出て。
普通に持ってきたらしいビーチボールとかを浮遊魔法を使って遊ぶ管理局組を見た元一が、俺に話しかけてきた。
俺はビーチパラソルを先程作ったテーブルの近くに差してシートを引きながら「なんだ」と返事をする。
「いや、魔法ってすごいなって思って」
「科学の力もバカにできないぞ」
そう言って俺はどこからともなくローラーがついてないスケートボードの板を取り出す。
「なんだそれ?」
「前世で海を渡る時に使ったジェットボード。ここで遊ぶ計画を立てた時に作った」
実際はそれ以前に開発していたのだが、まぁ嘘も方便だ。作られたという事実に変わりはない。
そのボードを地面に差して元一に見せていると、力也が「そのボードは空でも飛べるのかい?」と話を聞いていたのかピンポイントな質問してきた。
「ああ。バッテリー自体は前世で作っていたものだから世界を駆け回って素材を集めた。主なエネルギー源は太陽の光だな。太陽光パネルみたいだが、光をエネルギー源としている」
「……つまり、太陽じゃなくとも、光を浴びせれば充電は可能だという事かい?」
「さらに言えば永久機関並みの変換率だ」
「……君の前世は余程エネルギー事情に問題があったようだね」
「??」
話を理解してため息をつく力也と、理解できずに首を傾げる元一。説明するのが面倒なので、俺は刺したボードを元一に渡す。
「ほら」
「ってなんか思ってたより軽い」
「素材自体が地球にないものだからな。だいぶ軽い」
「で、これでどうしろと?」
「乗ってみろ」
「ボードに?」
「ああ」
俺が頷くと元一は恐る恐ると言ったように地面に置いたボードに足を載せる。
すると、ボードの下から風が噴き出たと思ったら、急にボードが砂浜から勢いよく浮いた。
「うおぉぉぉぉぉ!?」
上空で驚きの声を上げる元一。
それを見ずに、俺は近くにいた力也にも渡す。
「乗ってみるか?」
「ああ」
力也の方は何のためらいもなく足を載せ、同じく浮いた……と思ったが、どうやら乗ってすぐに理解したらしい。元一の半分(それでもなのはたちと同じ高さ。十メートルぐらい)で上昇が止まった。
「お、一体どうしたあいつら」
「何も言わずにこのボードに乗ればわかる」
「そうか」
裕也が海パン一丁で今から泳ぎに行こうとしていたのでそう言ってボードを渡すと、そのまま何も聞かずに足を載せて浮く。
それを見た俺は女性陣に追究される前にボードに乗って浮いた。
「こえぇぇ!」
「怖がるなよ元一。このぐらいの高さで」
「いやお前みたいに普段から慣れてないんだから無理だっての!」
「なるほど……君の前世は相当に科学技術が進んだ世界のようだ。マモンは教えてくれなかったが」
「これはすごいな。高町さん達と同じ視線だ」
「……少なくともお前だけだぞ?」
「うっせ! あいつらはお前の常識に染まり過ぎてんだよ!」
そう言いながら決して下を見ようとしない元一。
高所恐怖症なのかと思いながら、すでに手足のように自由に動かしている力也と一直線を往復している裕也にも聞こえる様に言った。
「いいか! 言っておくがこの世界は島から遠くなるほどに海の深さを増す!! あまりに遠くへ行きすぎた場合、下手したら死ぬ!!」
「つまりそこまで遠くへ行くなってことだな?」
「そういうことだな」
「うっわ、こえぇ、マジこえぇって!!」
未だ慣れないらしい元一。話を聞いてるかどうか怪しいが、恐らく大丈夫だろうと思っていると、こちらを見上げて必死な顔をしているアリサの顔が明確に見えたので、「あとは好きに飛んでろ」と言って一気に高度を――前に体重を一気にかけて――落とし、わずか数秒で地面スレスレ、アリサの真横に到着する。
「一体どうした?」
ボードに乗って地面に少し浮いたまま訊ねるが、アリサは何も返してこない。
その間にまじまじとアリサの水着姿を見る。
水着の色はすべて赤。どれだけ目立つ色が好きなんだと思ったが言わないでおく。
水着の種類はツーピース水着のセパレーツタイプ…だったか。以前はやてが『行こうや!』と言った際に水着の新調(俺の)という名目で男女問わずこの世界での水着を調べた時に大まかに調べた。
「……な、なによ……」
マジマジと見つめていたのか体を手で隠しつつ頬を赤く染めながら後ろに下がるアリサ。
それに対し俺は「お前がこっちを見ていたから降りてきた」と言ってから、「で、一体何か用か?」ともう一度聞く。
するとアリサは一度深呼吸してから「べ、別に大したことじゃないわよ! た、ただ……何をしていたのかなって聞きたかっただけよ!」とこちらに顔を向けず声を大にして質問してきた。
俺は迷わずに答えた。
「似合ってるぞ」
「……」
顔を真っ赤にするアリサ。その速度はゆでだこの色が変わるより速いだろう。
これでいいのだろうかと思いながらじっと見ていると、「な、何見てるのよ!?」とアリサがビンタをかましてきたので上体を少し逸らして避ける。
そのまま体重を後ろにかけて推進力のもと上空へはばたく。
『ちょ、ちょ……!!』
何か言ったらしいアリサを無視し上空を漂っていると、ボールが飛んできたので反射的に蹴りあげてボールをキャッチする。
俺より上にいる力也と裕也と元一は思いっきり遊んでいる。空を自由に飛び回っている。
すごいな。これが若さと言うものか。
そう思いながら見もせずにボールを投げると、「ありがと」となのはの声がした。
「どういたしまして」
「…ねぇ大智君。一緒にバレーやらない?」
「丁度人数が対等だろ。それに、俺はパワーバランスを崩すぞ」
「それもそうだね。でも、そうして一人でいるのはつらくないの?」
「ふむ。辛くないと答えておこうか。こうしてお前達と一緒に居られるからな」
「そうなんだ…」
ちょっと頬が赤くなったなのは。それを見て微笑ましいと思いながらも不意に視線を感じた俺は視線の主――恐らく海の方を見る。
前に感じたことのある視線。それも少し昔の。
……やれやれ。また厄介ごとになるのか。
それは嫌だからみんなが寝静まった時にでも話を聞くかと考えていると、急に海の奥底から感じる力が増したので、同じく感じたらしいなのはに「お前達はみんなを守れ」と呟いて一気に海へ落ちる。
「大智君!!」
「セットアップ、ナイトメア」
『久し振りです、ね!』
バリアジャケットを展開し、ボードを急降下させてる途中で海へ突っ込む。
その瞬間、俺は上空へ打ち上げられた。
『大智(君)!!』
みんなから心配そうな声をもらった俺は良く分からない事態を考えずに一回転して浮遊魔法で空中に浮き、水中に潜む何かに警戒心を募ら――
「おい大智テメェ。自分で誘っといてまざらんとはどういう了見だ」
「……なんで海の中にいたんだよ、親父」
現れたのはふんどし姿の親父。何をどうやってるのか知らないが、見事に濡れていない。
一瞬で脱力すると、「お前は子供らしく遊んできやがれ!」と中指を立てて舌を出されて言われた。
「一応社会人になる年なんだが」
「ここの成人は二十歳だよバカ!」
あっかんべーとイラッとくるポーズをやりながら親父が叫んでいると、海の中から突如として髪の毛が現れた。
『…あなた』
「「!!」」
底冷えするような声に俺と親父は反射的に身を固くする。
その間に髪の毛は動きだし、親父をぐるぐるとしばりつけ始める。
「え、ちょっと母さん? 黄泉の扉から出ようとした時のホラーをどうしてゴボゴボゴボ」
最後まで言わせない勢いで親父は沈んでいった。
「……さて」
俺は今の光景を無かったことにして振り返り、こちらの方を呆然と見つめている彼女達に言った。
「俺も混ざるか」
最初は管理局グループ(魔法が使える方)に混ざった。
「ほな、鬼ごっこでもやろか」
「どうでもいいが、俺はバランスを壊すぞ?」
「ていうか、大智にハンデつけても意味がない気がしてきたんだよね」
「「「「「「「それは確かに」」」」」」」
「だったら俺は魔法を使わずにこのボードだけで逃げる。それでいいんじゃないか?」
「でもこっちの方が有利になる気がするんだけど」
「大智にそんなの関係あらへん……せや」
鬼ごっこと言う方向性で話が決まり出したところ、はやてが俺を見ながら悪い顔をしたので、ボードに乗って調子を確かめながら「俺をタッチ出来たらそうだな……一回だけ何かしてやる。ただし先着一名に限る」と先に宣言しておく。
「ってまた読まれたわ!」
「俺を出し抜くならもう少し無表情を作れ。普通に見抜かれるぞ」
「いや、はやての考えを先読みできるのは雄樹か長嶋だけだと思うのだが」
そんな訳で制限時間は一時間。範囲はこの世界全域。俺は魔力を一切使わない+隠れるの禁止と言うルールで鬼ごっこは始まった。
最初の鬼はヴィータ。
「待ちやがれお前ら!」
「ヴィータちゃん。鬼になりたくないからみんな逃げるのよ?」
「頑張って捕まえてみろ」
「待てー!」
海面スレスレでのんびりと眺めながら俺はその場にいた。
十分が経ち、鬼は何をどうやったのか雄樹。
すぐさま俺を見つけたようなので、俺は全力でその場から逃げた。
「って、その速度何!? 僕全力出してるんだけどさ!」
少し後ろから追いすがるような感じで来る雄樹。声が若干小さく聞こえるので俺は無視し、自分達の拠点である島近くまで来たら体重を後ろに掛けて角度をつけ、上空へ飛ぶ。
そのまま行くとちょっとヤバいのですぐさま体重を均等に戻して水平にし、前の方に体重を移動させて先端を止め、そのままターン。
すぐさま水平に戻した俺は、いつの間にか鬼が変わっていたことに気付き、今度はシグナムから逃げることになった。
で、一時間後。
「もうダメだよ……」
「せや、な……」
「動けねー!」
「追いつけないとは」
「長嶋君は本当にはやての言ったとおりね」
「みんな大丈夫ですかー?」
「無理もあるまい。私とてこうして立っているのがやっとだ。しかし……フェイトに雄樹は大丈夫そうだな」
「雷神さんに鍛えてもらってますから」
「僕もランスロットに教えてもらってるから」
「だらしないなお前ら」
結局フェイトがあと少しで俺をタッチできるところまで行って鬼ごっこは終了した。みんなバリアジャケットを解除している。
疲労感らしい疲労感が特になかった俺は、息も絶え絶えの状態で砂浜で寝転がっている彼女達に「夕飯まで休憩してろ」と言って場所を移動した。
「あ、大智! さっきは大丈夫?」
「問題ない……ところで、アリシア達は何をやっているんだ?」
「う~んと……パラソルの中でのんびりしてるよ」
「そうか。なら飲み物でも作るか」
「あ、じゃぁ私も一緒にいい!?」
「構わん」
「やったぁ!」
そういうとアリシアは俺に抱きついてきた。
白のモノキニ。良く考えたら単色系が多いなうちの女子達。
事実を照らし合わせながらそんなことを考えていると、「どこで作るの? やっぱりキッチン?」と首にしがみついたまま聞いてきたので(身長差二十センチぐらい)、「その前に冷蔵庫いかないと食材ないぞ」と言ってそっちの方へ向かった。
のだが。
「すずかにアリサ。木在は置いてよかったのか?」
「大丈夫だよ大智君。今元一君がヘロヘロになって戻ってきたから」
「『あいつらなんなのマジで……』って、ち、力なく言ってたしね!」
なぜかそのまま通り過ぎたところ、いつの間にかアリサとすずかが俺の両脇に来ていた。ちなみにすずかは白のビキニ。
「で、あんたはアリシアと二人で! どこに行く気だったのよ」
「どこって、冷蔵庫。ほらそこだ」
「すごいねーこの小屋丸々そうなんだー」
「本当にすごいね大智君」
冷蔵庫を見てアリシアとすずかは素直に感心する。元一は絶句していたので、そういわれると嬉しい限りである。
ちらっとアリサの方を見ると、少し小屋を見ていたかと思うと俺の方を見て、すぐさま視線を逸らされた。
ずっと前に雄樹が言っていた『アリサはツンデレ』とはこういう意味なのだろうかと視線を自然に戻しながら考え、俺は普通に扉を開けることにした。
夕食の時間になった。
結局作ったジュースは全員に配り、そのままみんなこの時間まで砂浜でのんびりしていた。
元気だったのは俺だけで、一人手持無沙汰だったから何するかと考えているとなのはが俺の横に来て座り込んだ。
今俺がいるのは屋根の上。ここに来るには魔法で飛ばない限り方法はない。
「ねぇ大智君」
「楽しかったか?」
「うん……ありがとね」
「どういたしまして」
日が沈む。水平線しかないこの世界の眺めは、やはり最高だ。
そろそろ夕飯考えないとなと思っていると、「大智君」とその名をもう一度呼ばれた。
「どうした?」
「えっと…すごいよね、大智君は」
「そうでもない。俺は…愚かだ」
「え?」
こちらに向くのが分かる。おそらく、何を言っているのだろうかと思っているのだろう。
だがこれは自分じゃなければわからないもの。行動し、感じ取っている己以外は。
それは誰だってそうなのだろうと思いながら、俺は「言っておくが、慰める言葉は不要だ。その愚かさで俺は生活しているからな」と言っておく。
「そうなんだ……強いね、大智君」
「それを言うならお前もな。なのは」
「え……」
意外なのだろうか。そう思いながらも、俺は言葉を続ける。
「リンカーコアに傷がついて魔法が使えないかもしれないと言われた時、お前は素直に絶望したはずだ。だが、俺の言葉があったとはいえお前はここまで来た。障害がいくつもあっただろうに」
「……」
「だからお前達は強いよ。これから俺を乗り越えていくはずだ」
「…そうだったら、いいな」
「目指せば行ける。俺はお前達とは違って『成長』できないからな。素直に羨ましい」
「…大智君」
「どうした?」
こっち向いて。そう言われたので横に顔を向けると、なのはが立ち上がっていた。
夕日が沈む光が俺達を包む。なのはの全身がオレンジ色に染まって見える。
小学生の事から一緒に居たこいつがここまで成長したのは些か感慨深い。
「あのね…」
なのはが慎重に切り出す。まるで重大な告白のような雰囲気で。
告白されたのもこんな雰囲気だったなと思い出していると、なのはが俺に近づいてきた。
元々近かった距離がゼロになる。互いの顔が間近で見える。
「私はやっぱり」
吐息がじかに感じられる。そこに緊張が含まれているのを見抜いていた。
何が起こるのか考えずに待っていてなのはの目を閉じられたのを確認した瞬間。
「――何してるの、なのは」
「へ、フェイトちゃん!? こ、これは別にその……!!」
どこか怒りを含ませた声で俺達に声をかけてきたのはフェイト。先程の鬼ごっこでそれほど疲れを見せなかった一人だ。
どうやら俺達を探しに来たらしい。そんなことを冷静に考えていると、なのはが俺からパッと離れ顔を赤くしながら慌てて言い訳を重ねる。ただしフェイトはそれに耳を傾けてる様子がない。静かにこちらに向かってくる。
そう言えば俺はあのままだったらどうなったんだろうかと考えていると、「なのは?」と冷たい声が。
「は、はい!」
「……ちょっと来てくれる?」
「……うん」
力なく従うなのは。それを見送った俺は、結論が出た。
「そうか。キスをされそうになったのか」
納得できた俺は、下で聞こえる悲鳴を聞かなかったことにして冷蔵庫へ向かうことにした。
夕飯の席は、俺の隣で誰と誰が座るかで大いに揉め、何かで勝ち取ったらしいすずかとフェイトがどこか積極的だった。
それに触発されたのかはやてと雄樹もそんな感じだった。
力也と裕也は、そんな俺達を見て笑いながら食事をしていた。
あと一話ぐらい更新したいと思います。
ご愛読ありがとうございます。