世にも不思議な転生者   作:末吉

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117:本心

 夜。

 

 女子達を露天風呂に案内し、俺達は建物の風呂に入った。

 

 で、戻ってきた俺達は、二階に集まって各々好きに過ごしていた。

 

「ハッ!」

「フッ」

「テヤァ!」

「フン」

 

 俺と力也は卓球で勝負し、

 

「露天風呂どうだったのはやて?」

「結構星空が綺麗やったな。元々混浴らしいし二十四時間開放してるみたいやから、一緒に入らへん?」

「えぇ! そ、それは……」

「って、は、恥ずかしがんといてな!! う、うちだって恥ずかしいんやで!」

 

 はやてと雄樹は二人だけの世界を作り、

 

「うわぁすごい量の設計図を閉じたファイルだ!」

「どれどれ……って、一つのファイルにどんだけあるのよ!? 辞書みたいに分厚いわよ!」

「え? でもそれほど重くはないよ? 鉄鋼とか鉄板より」

「……いや、すずか程力持ちじゃないから」

 

 アリサとすずかが本棚に放置していたファイルの話をしており、

 

「そういえば元一、フェイトの事いやらしい目で見てなかった…?」

「ばっ、み、見てるわけないだろ!?」

「動揺が走ってるぞ元一……ほれ、チェックメイト」

「ぐはっ!」

 

 元一と裕也のチェスを木在が見守り、

 

「ねぇフェイト」

「なに、姉さん?」

「どうせなら、私と一緒に大智のお嫁さんに成ろうよ」

「!? な、ななな何言ってるの姉さん!」

「だって私たち姉妹なんだよ? だったら一緒に嫁にもらってもらえばいいかなって……」

「冗談でもそんなこと言わない!!」

 

 フェイトとアリシアが将来の事を話しており、

 

「なぁシグナム。本棚の一番左上にある本を取ってくんねぇか?」

「どうしたヴィータ。珍しい」

「うっせ。いいだろ。取ってくれよ」

「分かった」

 

 シグナムはヴィータの頼みで本棚の一番左上から本を取っており、

 

「大丈夫ですか、なのはちゃん」

「う、うぅ…フェイトちゃんのバカ……」

「重症のようだな」

 

 シャマルが声をかけてもなのはの調子が戻らないのを見て、ザフィーラはため息をついていた。

 

 そう言えば両親がいないな。7-5で有利な状況だが油断は出来ないからあまり深く考えなかったが。

 夕飯片付けた時には居たんだが、片付け終えた時には消えていた。

 

「そりゃ!」

 

 スマッシュを決められ、これで7-6。あと一点で同点になってしまう。

 俺はボールを拾ってから力也に投げて褒める。

 

「さすがに近づいてきたか」

「ああ。ようやく君の背中が見えてきたよ」

 

 ラケットでボールを弄びながらも真剣な眼差しで俺を見つつ、そう宣言する。

 

「このまま同点に持ち込ませるよ」

「……いいだろう。こっからは四割の力で遊んでやる(・・・・・)

「っ」

 

 俺の雰囲気が変わったのか肌で感じたのか、一層険しくなった力也。

 そのままで力也はボールを上げ、落ちてきたと同時に常人では目視できないだろう速度でラケットを当てる。

 それを見えていた俺は、こちらのコートでバウンドした瞬間、俺はそれよりも速くラケットで打ち返して、相手コートにすぐさま返した。

 

「!」

 

 力也は動けない。いや、ボールが返ってきたことに反応が追い付かなかった。

 少し遅れて音が来る。とても大きな音だったからか、全員がこちらを向いた。

 

「ちゃんと入ったぞ」

「……」

 

 反応がない。いつもなら何か言ってくるはずなのだが。

 一体どうしたのだろうか。こんなものなど何時も見慣れているはずだろうに。

 そう考えたが、今のは些かやり過ぎたのだろうと思い反省する。

 まぁしたところで直るわけがないし、このまま人が離れていくのだったらそれはそれで俺の自業自得なので何も言えない。

 

 なんかお通夜みたいな雰囲気になったなと思っていると、陽気な声が階段下から聞こえた。

 

「おーい! みんなちょっとこっち来~い!!」

「……だ、そうだ」

 

 俺の言葉にみんな何も言わず階段を降りていく。

 残ったのは、俺と力也のみ。

 

 相手は何も言わずに俯いたまま。それゆえに俺はどうすることも出来ない。

 しばらくそうしていると、力也が顔をあげて言った。

 

「あれでまだ全力じゃないんだね?」

「……ああ。俺の全力は、人間相手に出せない」

「そうか……あれでもまだ全力じゃないのか…つくづく君という壁の高さに心が折れそうになるさ」

 

 俺は何も言わない。ただ見守っているだけ。

 このまま心が折れた場合、マモンに魂を奪われるのは確定。その際俺はどう反応すればいいのかを考えながら。

 が、そんな心配は杞憂に終わった。

 

「だけど」

「……ん?」

「そんなことは分かりきっていたさ。君の前世の話を聞いたり、今までの経験で。ここまで来て、今更心折れることはない」

 

 だから……そう言って力也は俺を指さして言った。

 

「僕は君の基準までのし上がる。絶対に。そこからが本当の」

『キャァァァァァ!!』

「……」

「……」

 

 下からの絶叫で、力也の宣言が消えた。

 

 気まずい空気が流れる。そんな中でマモンが一人腹を抱えて笑っているのが聞こえる。

 マモンの態度に苛立った俺が殴ろうとしたところ……それより先に力也が殴った(・・・)

 

「デッ! 何しやがる力也!」

「少しは悪魔でも空気読めないのか!」

「悪魔だから空気読んで笑ったんだよ」

「それは空気を読んだんじゃなく、自分の衝動に従っただけだ!!」

 

 …………マジか。

 俺は驚いていた。

 いや、冷静に考えれば驚くことでもないのかもしれない。だが、一般人の中でいくら突き抜けていたとしても悪魔を殴れるはずがないのだ。

 ひょっとしてこいつ……ある仮説を思い浮かべた俺は、説教を真面目に聞かないマモンに説教している力也に声をかけた。

 

「なぁ」

「少し待ってくれ大智。こいつに説教して反省させてるから」

「そんな役に立たない事やってないで話を聞いてくれ。ひょっとしたらお前、すぐにでも俺と同じスタートラインに立てるかもしれないぞ」

「……なんだって?」

 

 すぐさま反応する力也。それに対し俺は頷いて方法をしゃべろうとしたところ、ドダダダダ! と階段を駆け上がる音が聞こえたのでそちらへ視線を向ける。

 

「ひにぁぁぁぁぁ!」

 

 勢いよく階段を駆け上っていくなのはがいた。

 

「……何があったんだ?」

「さぁ。ところで大智。今君が言ったその方法って一体――」

「うわぁぁ! やめろ、こっちくんなよぉぉ!!」

 

 今度はヴィータの声。階段を上ってきたと思ったらこちらに来て、俺達の後ろに隠れていた。

 

 もはや方法を教える空気じゃなくなったため、俺達は誰からともなく脱力して「どうする?」と今の状況について考えることになった。

 

「まず何があったか分からないとね」

「あれだろ?」

「ん? あの火の玉?」

「うわぁぁ!」

 

 力也の言葉にヴィータが叫ぶ。

 あまりの怯えように俺と力也は顔を見合わせてから、互いに首を傾げた。

 

「そんなに怖いか、これ?」

「いや別に。ここまで怯える理由がないね」

「お前らなんだよおかしいぞ! あ、あの火の玉はな、人の怨念の魂なんだぞ!!」

「大方やったのうちの両親だな」

「な、なんでそんな冷静にできるんだよお前ら!!」

 

 喚くヴィータを無視し、俺はため息をつく。

 

「下で何をやってるんだ、おい」

「怖い話とかだろうね。火の玉を見た限りだと」

「だろうな」

 

 火の玉は俺達に近づかず、ただその場でゆらゆらと燃えている。

 敵意も害意もなく、また単純に動くものに反応しているのだろうと予測できる。

 どのくらいの速さまで反応できるのかわからないが、あの両親が出したと仮定した場合、俺の速度に追いつけてしまう可能性がある。

 

 まぁいいか。

 魔力を放出したままの俺はそんな風に結論付けて一歩軽く踏み出し、火の玉に肉薄したと同時に左手を下から上へ振り上げる。

 刹那の速度。反応がなかったのは単に迎撃機能がなかったからか。そんなのは今どうでもよかった。

 魔力で覆われているからか、火の玉の温度を感じられなかった。そこが不思議な点である。

 いくら速度が速く、また魔力で手が覆われていたとしても、一瞬でも触れたのならば温度と言うのは伝わるはず。

 ……まぁ、魔力が温度を遮断しているのなら問題はないのだが。

 いかんせんあまりやらないので、自分でも十全に把握できていない。

 消えた火の玉を見ず、俺はそのまま下に向かった。

 

 

 

「……何やったらみんな気絶するんだよ」

「なんだ大智つまんねぇな」

「俺に怖い話に怯える姿を期待するな」

「そんなの期待してねぇけどよ」

 

 そう言いながらもろうそくの灯りだけで過ごす親父。他の奴らはみんな床に倒れている。

 そこまで怖い話を聞いたのだろうかと考えていると、「肝試しやろうぜ肝試し」と明るい声で呑気に言ってきた。

 

「なにする気だ?」

「なにって……」

 

 もったいぶった親父は不意に蝋燭の火を消す。

 辺りが真っ暗になる。が、俺には関係がない。

 などと自然体のまま立っていると、背後から真剣な声でこうささやかれた。

 

答えを出させてやるんだよ(・・・・・・・・・・・・)

 

 は? と言ってる意味を問いただそうとした瞬間、闇に呑まれた。

 

 

 

「よぉ大智」

「……親父か。いきなりどうした」

 

 闇に引きずり込まれた先で立っていると、親父が片手をあげてきたので状況を把握するために質問する。

 すると親父は、答える代わりに指を鳴らす。

 

 その音で出てきたのは、意識を失い、なおかつ黒い『何か』で縛られているなのは、アリシア、すずか、アリサ、フェイトの五人。

 

「!」

 

 咄嗟に身構える。それに対し、親父は「あー待て待て」と言ってから衝撃の事実を告げた。

 

「俺を殺したら彼女達、死ぬぜ?」

「!!」

 

 事実かどうかわからない。親父のハッタリだというのもあり得る。

 が、それとは関係なく今の俺の心情ははらわた煮えくりかえっていた。

 

「……親父」

「なんだ、おい」

 

 俺の無意識が低い声を出す。その正確の心情を親父が読み取ったかどうか知らないが、俺はそのまま――目の色を変える。

 

 黒色から赤色に。それに伴い、愉快そうに笑っていた親父に一歩で肉薄してボロボロの布きれを身にまとった左腕で顎を打ち抜く。

 

「ぐふっ」

「――なら、死なないように攻撃するだけだ。韋駄天(・・・)

 

 刹那の変化。だが、それは明確に表れる。

 

「だはっ。くそっ、いきなりそれ(・・)使うのかよ……!」

『――死なないんだから、いいだろ』

 

 声が遅れて響き渡るのが分かる。だがその間にも俺は親父を殴り続けている。

 神様一の俊足と名高い韋駄天の速度で殴り、追いつき、蹴り、追いつき、殴り……。

 目に見えてあざだらけになっている親父の姿を間近で見ていた俺は、すぐさま「トール(・・・)」と呟く。

 姿まで変わり、さらに速度が一気に戻ったことにより俺の体感速度がだいぶおかしくなっているのが分かるが、それを気にせず「神装ミョルニル(・・・・・)」と呟く。

 

「ちょっ、おま……!」

 

 持ち手の短い槌が振り下ろされるのをわずか数センチの距離で見ていた親父があわてるが、時すでに遅く。

 俺は全力で振り下ろし、ミョルニルは、本物と変わらぬ威力(・・・・・・・・・)を発揮した。

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁっ!! ……ったく、自爆特攻とは恐れ入った」

「……」

 

 俺は喋れない。親父の言った通り自爆覚悟でミョルニルを使い、親父以上にダメージを受けたうえ、レアスキルの反動により、身体が全く動かず魔力もうまく機能していないから。

 

 そのレアスキルの名は『神性変化(ゴッド・エボル)』。正真正銘俺の最後の切り札(ラストレアスキル)であり、諸刃の剣。

 

 レアスキルの名の通り、神様の力をそのまま使える(さらに姿も変わる)というものだが、使った時間・神様に比例して俺の行動を著しく阻害する。

 一回だけ悪魔の書の力を抜き取るためにこのスキルを使った時は倦怠感がのしかかった程度だったが、今では完全に体が動かない。魔力がうまく機能していない。

 

 口すらもまともに動かずに暗い空間の中横たわっていると、ボロボロの親父が足を引きずりながらこちらに近づいてきたらしい。顔を覗き込んできた。

 

「しかしいきなりあんな反則にも似た力使うなんて……よっぽど許せなかったんだな」

 

 当たり前だろと言いたいが、口が動かないので言えない。

 今にして思えばこれが演技だった可能性も否めないが、それでも俺は同じことをやっただろう。

 だが親父はポリポリと頬を掻きながら、「口にしてもらうぐらいには回復させないとな…」と呟き指を鳴らす。

 

 それだけで体の倦怠感が軽くなり、多少動けるようになったので、俺は体を起こして親父を睨みつけながら言った。

 

「俺はもう二度とこんな選択で迷わない。一人だけと言われようが必ずあいつら全員助ける」

「お前が死ぬしかないと言われたら?」

「仮死状態にでもなればいいだろ。それでも死亡に変わりあるまい」

「仮死状態、か……お前よくそんな事思いつくな」

「ま、簡単に死んでやるつもりはない。俺はあいつらが」

あいつらが(・・・・・)?」

 

 親父に復唱されて自分が何を言おうとしていたのかに気付く。

 それは、今まで意識さえしなかったこと。言葉の意味が分かっていても、自分にそれが当てはまっているかどうかわからなかったもの。

 

 急に恥ずかしさを覚えた俺は、ニヤニヤしている親父に背を向けて早口で言った。

 

「――あいつらが好きで、一緒に居たいと思っているからな」

「ようやく言えたじゃねぇか!」

 

 バシンと背中を叩かれる。痛みこそそれほどないが、身体がボロボロなのが分かっていると、かなり痛みがあると錯覚する。

 元気がなくなる俺とは対照的に、親父は元気になっていく。

 

「おぉぉ! 大智がようやく言いやがったぁぁぁ!! 傷だらけになってよかったぁぁ!!」

 

 とまで言ったところで唐突に親父のテンションは元に戻り、俺の肩を組んで耳元で訊いてきた。

 

「で、ミカエルの事は含まれてるのかよ?」

「………どうだかな」

「おいその間はなんだ? まさか、初めから想像してなかったわけじゃ……」

「…そんなまさか」

「そ、そんな……」

 

 突如として声が聞こえたので俺達はそちらの方を向く。

 そこにいたのは、絶望した顔のミカエルだった。

 端正な顔立ちだというのに酷いものだなと他人事のように思いながら、若干蚊帳の外に置いていたミカエルの問題について考えてみる。

 

 結論。天使と人間って結婚できなくね? そんな実例あったか? そもそも天使って結婚できるのか?

 

「ゼウス認めればできるんじゃね? 聖書だとゼウスではなくキリストの親父(神様)の方だけど、今ゼウスに全権任せてるからな、あの人」

「さらっと思考を読むなバカ親父」

「ひどくねっ!?」

 

 オーバーリアクションを無視して考える。

 過去ミカエルと遭遇して特に思い出に残っていること……。

 

「ダメだ。スサノオが泡吹いて倒れた記憶しか残ってない」

「なんでそんな黒歴史を覚えているんですか!? 忘れてください!!」

「あれは忘れろという方が難しいぞ」

「……それで! 私の事はどう思っているんですか!!」

 

 いてもたってもいられなかったのか、ついには顔と顔が近づくぐらいに迫ってきて聞いてきた。

 その必死な表情にどことなく可愛さを覚えた俺は、なぜだか急に頬が赤くなるのを自覚し、目を逸らしていった。

 

「……可愛いとは、思うぞ」

「……か、かわ、いい…ですか?」

 

 急にしおらしくなる。それほどおかしなことを言ったわけではないのだが。

 気が付けば親父は近くに居らず、どこかに遁走したらしい。

 どうせどこかで眺めているんだろうと思っていると、どうやら満足したらしいミカエルが「えへ、えへへ、か、可愛いですか……予想していた答えとは違ってましたがそれでも……」と呟いているので「大丈夫か?」と咄嗟に質問する。

 

 それで我に返ったらしいミカエルは、しかし、口元が元に戻ってないまま「で、ではこれで!!」と言って右手を振って消えた。

 

 体が軽くなったことに気付いた俺は、「最初から見ていたんじゃないだろうな…」と嫌な予感を口に出しつつ心の中で感謝した。

 

 

 ……そういえば。

 

「親父」

「なんだミカエルに好きとは公言していない大智」

「なんでみんな気絶していたんだ?」

「俺がリアルで体験したある話をしたら」

「そりゃキャパ超える恐怖だろうな」

「たかが母さん連れ帰る時に体験した話だったんだけどなぁ」

 

 そんな話をしながら戻ってきたら、親父は母さんに連行され、俺は力也に詳細を聞かれ、目が覚めたらしいアリサ達からは目を逸らされた。

 

 部屋割りは、俺の周りになぜか集中していた。




これでようやく日常のみのパートは終わります。次回からストライカーズに……なっていくと思います。

ご愛読ありがとうございます。
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