世にも不思議な転生者 作:末吉
118:呼ばれて
高校を卒業したある日。
すぐさま起業申請を通して会社を作った俺は、誘っていた裕也、元一、木在を雇い、大学に無事進学した力也をバイトとして雇った。有限会社なので、株式を発行しないが、起業の際にすずかとアリサから強引に資金援助された。それらは今も金庫の中に放置されている。
会社の住所を俺の家にして、本部をあの海だらけの世界に作った家としている。
そんな訳で俺は今暇なので、取り寄せた資料を読んでいる。
『暇って……確かにそうでしょうけど。起業して一ヶ月も経ってないのにものすごい数来て、ようやく終わったばかりじゃないですか。それら
「たった百件ほどだろ。しかもどれもが簡単なものばかり」
『そんなんじゃ、人の事言えませんよ』
「生憎だが、そこまで軟じゃないんだよ」
「ですが、それでも心配なんですよ、大智様」
「イクスヴェリア。博士の方へ行かなくていいのか?」
「ええ。今日大智様の仕事がないとのことで。許可はもらいました」
俺とナイトメアの会話にイクスヴェリアが混ざってきた。
彼女はこの一年近くで俺達が使う言語を吸収し、このように淀みなく話せるようになった。
そしたらいつの間にかメイド服を着ていた。メガーヌさんが作ったとのこと。
本人が嬉しそうに着ているので何も言わないが、なにも俺に様付しなくてもいいだろうにと思ったことはある。
そんな彼女に対し、俺は「そうか」と答えるだけにとどめた。というか、それ以外何と言えばいいのか言葉が見つからない。
彼女は俺の反応に対し何も言わず、俺が見ている資料の一部を見て聞いてきた。
「博士が何かしたんですか?」
「俺と出会う前の過去の事なら別に。これは、俺とあってから起きた出来事だ。ただし、本人はやってないと主張しているし、俺もそう考えている」
「つまり、偽物ですか」
「ああ。誰が扮しているのかわからないが、改心してる奴を騙ってやるとはいい度胸だな」
俺が見ている資料は、俺のところに来た以降のジェイル・スカリエッティが起こしたとされる事件の数々。
こんなことは絶対にやってないし、そもそもあいつらにこんなことをする余裕なんてなかった筈。メガーヌさんが来てからは特に。
にもかかわらずこの資料ではレリックに関することが立て続けに起こっているらしい。
正直、それも相まってはやては機動六課を設立できたと言っても過言ではないのかもしれない。
……まぁ、それも偽物が起こした出来事なのだが。
これは早急になんとかしないとなと思いながら読み終えた資料をテーブルに置いて一息ついていると、プライベート用の携帯電話が鳴ったので、出る。
「はいもしもし」
『あ、大智君! 最近忙しかったみたいだけど、大丈夫?』
「なのはか。まぁ暇だ」
若干動悸がおかしくなりそうな心臓を抑えつけてそのまま話していると、『えっと、せっかくのお休みみたいなところで申し訳ないんだけど、管理局へ来てくれないかな?』と訊いてきた。
あれ以来――ここへきて自覚して以来――どうにも告白してきた五人と二人きりになると少しばかり緊張するし、見つめ合うと顔が赤くなる。
これが『恋』であり『愛』なのだろうとあたりをつけながらも、それに振り回されないよう、最大限気持ちを制御して何とか平静を保てている。……たまに失敗する時もあるが。
しかし管理局か……丁度資料も読み終えたから別に構わないな。何をするのかわからないが。
暇潰しにはなるだろうと思いながら肯定の返事をすると、かなり弾んだ声で『待ってるから!』と言われて切られたので、やれやれと思いながら席を立つ。
「出かけるのですか?」
「ああ。休養にはなるだろう」
「……行ってらっしゃいませ、大智様」
察しの良いイクスヴェリアは何も言わずに頭を下げる。
それに対しだいぶ変わったなぁと思った俺は、「行ってくる」と言ってナイトメアを左腕に、腕輪型に改良された転移装置を右腕につけ、右腕につけた装置から映し出されたディスプレイに目的地の名を言ってその場から消えた。
* スバル・ナカジマ視点
「いい加減落ち着きなさい、スバル」
そう言われて私――スバルは逸る気持ちを落ち着かせるために軽くジャンプをする。
けれど気持ちは全然落ち着かない。それどころか、段々はやる。
そんな様子を見たティアは、点検を終えた銃を下ろしながらため息をついた。
「まったく。いくらこの試験に合格すれば”憧れの”なのはさんに近づけるといっても、それだけじゃ合格できないわよ」
「う、うるさい。そう言うティアだって自分のお兄さんを証明するためにここまで来たんでしょ? 私と変わらないよ」
「……言いたいことはあるけれど、今は試験に集中するわよ」
何か反論したかったらしいけどそれを飲み込んだようだ。その態度を見る限り、私の方が子供に感じてしまうけど、今はそんなの関係ない。
「絶対合格しよう、ティア」
「当たり前よ」
『揃ってますかーお二人とも』
「「はい!」」
何ともタイミングのいい感じでディスプレイが表示される。それを見た私達は、反射的に気を付けの体勢に。
『では試験を始めます。試験官はわたくし、リィンフォースⅡです。今回の内容はターゲットをすべて破壊してゴール地点までのタイムが制限時間内であれば合格だったんですが』
「「?」」
モニター越しの試験官――リィンフォースⅡさんの顔が急に曇る。それを見た私達は、そろって首を傾げる。
一体どうしたというのだろうか。まさか、機械が壊れたとか?
そんなありえないことを考えていると、ティアが質問した。
「どうしたんですか? 試験の内容が変わったんですか?」
『はい…その内容がですね……』
そう言われた瞬間、私達の目の前のフィールドから火の手が上がった。
「「!!」」
フィールド全てが火の海に包まれているという状態。それがいつの間にか起こっていたという事実。
あまりにも現実離れした現状に言葉を失っていると、リィンフォースⅡさんはこう言った。
『今この現状を引き起こした人に
その言葉に呼応するように、火の手がさらに大きくなった。
……え? どういう事?
*
「しかしきたら仕事をさせられるとはな……」
『ていうかマスター。マスターがやってることって傍から見たら殲滅行為では?』
「やれとはやてが言うのだから仕方ないだろ。何の試験かは知らないが」
バリアジャケットを展開させた状態で燃え盛る火の中にいる俺。のんびりとしながら燃えている建物たちを見まわし、ナイトメアに話しかける。
「劫火煉獄。はっきり言ってこれでまだ威力が四十分の一ぐらいなんだよな」
『ですね。魔力制限をDにしてその上威力を抑えた結果ですからね……』
こうして間近で見ると自分の異常さがはっきりわかる。やっぱり化け物だなぁと思ったりする。
『しかしこの暑いなかよく平然としていられますね』
「地獄の業火に焼かれたことがある」
『さすがにウソですよね!?』
「腕が消失した」
『まさかの本当だった!?』
熱さを感じない理由は魔力が耐熱・耐寒の役割も持っているから。それに覆われているおかげで、俺は熱いと感じることはない。
と、ここで通信が入ったので出る。
「なんだ?」
『あ、大智? 今どこにいるの?』
「火の海の中だ。気配を消して魔力を微量に放出した状態で移動している。試験を受ける二人の気配はスタート地点から未だ動いて無いようだ」
『うん。とりあえずBランクへの昇格試験にしてはレベルが高すぎる状態だというのは把握したよ』
「そうか。頑張ってもらうしかないな、その二人に」
どうでもいいので適当に返事をすると、雄樹が『いや、君がレベルをさらに落としてくれればいいんだけどさ』と言ってきた。
「来て早々試験相手をやらしているのはどこのどいつらだ?」
『うっ。でもまぁ、これからきっと会うことがあるかもしれないからさ、どうせならということで』
「にしても『認める』ってなぁ」
『仕方ないじゃない。君に一撃を入れるだったら間違いなく彼女達死んじゃうし、君をタッチするでも間違いなく彼女達追いつけないから』
「具体的にどんなことを認めればいいんだ?」
その質問をすると、隣に座っていたらしいはやてが答えた。
『判断能力、実力、チームワーク、勇気……このぐらいやな』
「そうか。どれか一つでもよかったら合格にしてやるか」
『……なんか、判断のレベルが違う気がするんやけど』
「ようやく動いた。切るぞ」
問答無用で通信を切った俺は、特に当てもなく――敷いてあげるならしらみつぶしに探してる二人とはだいぶ遠い場所へ――駆け出した。
未だ燃え続けている建物の中で壁に寄りかかって立っていると、プライベート用の電話が鳴りだしたので出ることに。
「もしもし」
『大智? 今何やってるのよ』
「アリサか。今は管理局が所有している土地で鬼ごっこみたいなことをしている」
『何があったのよ』
「なのはの電話で向かったらはやてが丁度試験やるから試験相手になってくれと仕事を頼んできたので、会社の仕事として受理してやっている」
『……あんた、身体は大丈夫なの?』
ナイトメアと同様の心配をしているなと思いながら問題ないと答えると、「そう……」と翳のある返事をしてから「どのくらいで終わるのよ?」と切り替えて質問してきた。
俺は知らんと答えてから近くに気配を感じたので、そのまま飛び降りる。
四階ぐらいからの落下だが、くるくると回転して衝撃を殺した俺は、着地してから「で、何か用か?」と変わらぬ会話を続ける。
向こうも慣れたのか、「それが終わったら一緒に夕飯食べに行かない?」と誘ってきた。
「どのくらいかかるか知らんぞ」
『終わったら電話をちゃんとしなさいよ』
そう言って向こうから切れた。
おとなしく携帯電話をしまいながら壁を蹴ってバレルロールしていると、丁度その壁正面の路地で光ったのが見えたのでスピードを上げる。
一歩で通り過ぎ、蹴った壁が崩れたところにそれ――ワイヤーか何か――が飛んできた。
……ふむ。飛び道具関係なのだろう。デバイスに当たりをつけた俺は、もう一人の気配が建物内でこちらに近づいてるのを知り、挨拶代りに壁を力いっぱい蹴り出して空へと跳ぶ。
壁はもちろん壊れ、蹴りの力で礫と化す。しかもその礫が銃弾より速い速度で散弾のようにばらまかれる。
下手すると建物崩壊だなと思いながらのんびり空の上で待っていると、壁が壊れた階と、先程の路地の方から人が一人ずつ出てきた。
特徴的な髪の色で受験者二人だと直感した俺は、見上げている二人を意識から一旦おいてどうやって合格させようか考えることにした。
ご愛読ありがとうございます。