世にも不思議な転生者   作:末吉

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本当は三周年記念(連載再開ですと二年ですね)の日に更新しようと思いましたが、今更新します。


120:世間話

 しばらくベンチに座って雄樹と二人でやる事なくてのんびりしていると、話が終わったのかはやて達が来た。

 

「お待たせ雄樹。……なんか、疲れてへん?」

「問題ないよ。それより、彼女達はどう?」

「入ってくれると思うで」

 

 嬉しそうに話すはやて。余程入れたかったのだろう。

 全体的に嬉しそうな三人に対し、俺はあの二人の懸念材料に気付いていたため何とも言えない。

 その雰囲気の違いに気付いたらしいフェイトは、「どうしたの?」と訊いてきたので、俺は答えた。

 

「あの二人を合格にした俺が言うのもなんだが、あいつらは戦場で突っ走って死ぬタイプだぞ」

「素直な子たちだと思ったけど」

 

 なのはが二人の印象についてそう言ったが、戦争や事件、こと戦闘に関してはこの中で一番経験し、その中で様々なタイプの人間と遭遇してきたので、そう言う雰囲気は大体わかる。

 信じられなさそうなので、俺は根拠を言った。

 

「昔のお前――たぶん今も変わってないだろうが――もそうだぞ。自分で行って自分で傷ついて、それでも止まることをしない。そういう奴は周りの忠告を聞かないで突っ走って、気付いたら死んでいたというパターンが多い」

「わ、私今は違うからね!」

「どうだか。自分の力を過信して限界を理解しないのは愚か者のすることだ」

「それじゃ、あの二人はなのはと似てるってこと?」

 

 話が進まないと思ったのかフェイトが口を挿む。

 それに対し俺は頷いて、「二人とも自分の目的を持っていて、それを目指す過程で入るのだろう。だが、その目的だけを追い求めようものなら、待ち受けるのは死か、現役引退に追い込まれるほどの怪我を負い、トラウマが植えつけられるかのどちらかになるだろう。最悪、取り返しのつかないことをしでかして組織自体に影響を与えるぞ」と締める。

 

「「「「…………」」」」

 

 この場の空気が重くなる。雰囲気が悪くなるのも分かる。その現状を作った俺ではあるが、別に後悔はしていない。

 

「お前らはあいつらの上司で、あいつらに組織で働くためのいろはを教え、何が悪いか、何が良いかを理解させるという責任がある。それが部下を持つという事であり、組織の上にいるという事だ」

 

 そう。部隊を作るというのはまさにそういう事なのだ。その重さと意味を知らずに、ただ『連携が遅いから』という理由だけで組織を立ち上げたところで、それが解体された後はどうすることも出来ない。

 

 厳しいと思うのならそいつは意味が理解できていないだけ。ならばこれ以上言う気もないし、このまま立ち去る。

 こいつらはどうだろうかと思いながら何か言うのを待っていると、「確かにそうだね」と雄樹が。

 

「僕達は組織を立ち上げた。けれど、そのあとは? 部下として入隊させる人達の教育方針は? 出動させる条件は? 失敗した場合の対処の仕方は? 部下が何かに悩んでいたら? …それらを深く考えないでいた。組織の上に立つということがどういう事かグレアム元提督やクロノ提督達を見て学んだと思っていたばかりで」

「……雄樹はどっちの味方や?」

「これは敵味方じゃないよ。組織内における上司と部下の関係の話をしているんだ。部下の人たちは上司の行動を見て学ぶ。そのお手本となり、鏡となるべき僕達上司は、部下の性格や短所などを知り、どうすればいい方向へ向かうか考えなければいけないってこと」

 

 そうでしょ? とでも云う様に雄樹が顔をこちらに向けてきたので俺は頷き、付け加える。

 

「理想論だと言われればそれまでだが、この職場は一度の失敗で『死ぬ』こともあり得る。特にお前達新進気鋭のエースと呼ばれる奴らは。俺と関わったばかりに、その確率はさらに引き上げられた」

「「「……」」」

「だからこそ、その理想を追いかけろ。自分達ができる領分で。そうすれば死ぬことはないし、部下もいい方向へ向かう可能性がある」

 

 ひねくれていたらどうしようもないと思ったが、言わない。

 

 再び沈黙が場を支配する。完全に説教が入ってる気がするが、そうでもしないとこいつら心に留めなさそうだからな。

 つぅか今何時だ? 時間が気になった俺は普通に携帯電話を開いて時間を見る。

 

 もう一時か。昼食うの忘れてたな。

 

 思い出したらお腹が空いたので腹をさすりながら「まぁ今思いついた話だ」と言ってその場を離れようとしたところ。

 

「なるほどなぁ。それは確かにやっていかないとやね」

 

 不意にはやてがポツリとつぶやいた。

 

 俺は反応すべきかどうか悩み、昼を食べたいために無視する方向でそのまま歩きだしたところ、「ちょ、ちょっと待ってな!」と制止の声が。

 

「いや、分かったのならもういいかなと思って」

「そこは普通何か返すやろ!!」

「昼食べたいから俺帰るな。これでいいか?」

「話題そっちのけやん! そこは『頑張れよ』とか言うてな!!」

「己で理解しなければ意味がない言葉に悩む奴らにエールを送る? それで解決するわけないだろ。悩ませて自分で理解すればいいんだよ」

 

 有無も言わせない言葉で黙らせる。

 それを確認した俺は、理解できてないらしいなのはやフェイトに視線を向け、何も言わずに背を向けて歩く。

 

 さて、家帰ってお昼食べるか。

 

 

 

「お帰りなさいませ大智様」

「ただいま」

 

 転移装置で本部へ戻ってきたところ、イクスヴェリアが出迎えてくれた。

 

「どうでした?」

「まぁ休憩にはなったな。……ところで、依頼は?」

「大智様の依頼はありませんでした。裕也様と元一様はこちらに来て報告書を書いていきました」

 

 こちらですと言って手渡されたファイルを受け取りパラパラとめくる。

 ……ふむ。意外と上々のようだな。

 木在は大丈夫なのだろうかと思いながら「腹減った」と呟くと、「では何かお作りしましょう。私もご一緒していいですか?」と訊ねてきた。

 断る理由がないため頷くと少々お待ちくださいと言ってキッチンへ消えて行く。

 

『いやー結構実感のこもった言葉でしたね』

「今まで黙っていたと思ったら」

『そりゃ仕方ないですって。私淡々と魔法式を起動させる補助だけでしたので』

「……ところでナイトメア。俺が扱う特殊術式ってなんだかわかるか?」

『知りませんよそんなの。私だって皆さんと設定が違うとか言われてるんですから』

「確かに魔法式や魔法体系が私達と違いますね。それはやはり神様と関わりがあるからでしょうか。…こちら昼食です」

「悪いな」

 

 不意に他者と比べて魔法式があまりにも違うことを思い出した俺は聞いてみたが、やはりデバイスも知らないらしい。

 こればっかりは俺にもわからんと思っていると、イクスヴェリアが料理を運んできた。

 

 彼女が料理を運び終えて席に座ったのを見計らい「いただきます」というと、彼女も両手を合わせて食べ始める。

 その直後に俺は「そうかもしれないな」と言うと、話題を理解したのか「私達も驚きです。確立された二つの魔法体系から外れた第三の魔法体系が未来に存在するとは」と食べながら言った。

 

「いや、残念だが俺以外には使えない魔法式だろう。こんな術式使った奴を見たことはない」

「私もです。博士が言っていました。『いつか君のデバイスを解析したい』と」

『私解剖されるんですか!?』

「分解の違いだろ」

「どっちもどっちだと思います」

 

 ぴしゃりというイクスヴェリア。たかが言葉の違いだと云う様に。

 だが俺達は「『違う』」と断言した。

 

「分解はバラバラにすることだ」

『解剖は人体を切り裂いて中身を見ることです』

「……だとしたらナイトメアの発言は違うのでは?」

『私の感覚だとそうなるんです!!』

 

 まぁ確かにそうなるか。

 そんなこと考えながら完食したところ、仕事用の携帯電話が鳴ったので取り出して出る。

 

「もしもし」

『あ、大智?』

 

 とりあえず切った。

 

「誰からで?」

「管理局から」

「依頼ですか?」

「だろうな」

 

 無視することで決定したその声だが、もう一度同じ所から電話が来たので仕方なく出ることにした。

 

「もしもし」

『なんできったんや大智!』

「管理局の仕事を受ける気は俺にはない。その意思表示だ」

『いさぎいいなぁホンマ!』

 

 怒気を孕んだその声にやれやれと思いながらも「長期かつ面倒な依頼をしてくるからに決まってるだろ」と経験した事を突き付けると、いきなりあちら側が黙った。まぁ思い当たる節があるだろう。

 そうでもなければ俺はすぐさま縁を切りたいと心底思ったりする。

 ……冗談だが。

 

 そのまま黙っているので待っていると、何かに気付いたのか『……ちょい待ち。仕事の依頼断るって会社としてどうなん?』と言ってきた。

 当然そこに帰結するよなと思いながら、「会社の信用としては不味いだろうが、そこは別な仕事で挽回するさ」と答える。

 

『さすがの自信やな』

「まぁな。ぶっちゃけ一ヶ月以内で百件こなしたから」

『……ホンマ恐ろしい奴やな。なんやそのスタミナとか』

「全力と本気ですべてに取り掛かってるからな」

『せやったらその自信もあり得る、か……。なんやそう言われると頼み辛いなぁ』

 

 急に弱気になるはやて。それを聞いた時「あ、これ優しくしたら絶対に断れないようになるな」と瞬時に判断した俺はそのまま黙って電話を切った。

 

「……なぜ依頼をお請けならないのですか?」

 

 電話を切ったらイクスヴェリアが質問してきたので、俺は素直に答えた。

 

「頼られても困るんだよ。あいつらの仕事に対し」

「……なるほど。それは確かにそうですね」

 

 納得した。

 ところ、「おーいたいた」と親父の声が。

 

「どうした親父」

「あーなんかな、月読さんが未来を見たんだけどよ……」

 

 いきなり現れて言葉に詰まった親父。そこには、どこかためらいが含まれていた。

 珍しい事だと思いながら後ろにいる親父の言葉を待っていると、「このままだと(・・・・・・)みんな死ぬぞ(・・・・・・)」と冷たい声で宣言した。

 

「……」

 

 どういった未来を見たのかわからない。だが、みんなというのは確実に管理局の奴らだというのは直感した。

 真っ先に浮かんだのはふざけるなという気持ち。次に浮かんだのは、そうかという納得した気持ち。

 これだからまだ俺は人間になれていないんだなと思いながらも、「俺にどうさせたいんだ?」とあえて質問する。

 

分かってるだろ(・・・・・・・)?」

「……」

 

 どうやら、俺の思考は正しかったらしい。

 

「強くすればいいのか?」

「それは俺達も手伝う。そうじゃなければ、ここから先は常に死が付きまとうことになると考えた方がいい」

「なぜ?」

「相手が本気の神様連中だと言ったら、どう考える?」

「!」

 

 なぜここで出てくるのか分からない。分からないが、どうにも嘘じゃないらしい。

 絶対に全滅コースだろと思いながら、「あいつらはそれを知ってるのか?」と質問する。

 

「いや。未来を予言するレアスキル所持者はいるが、恐らく無理だな。神の存在をただの人間が予測できない」

「……そうか」

 

 となるとダメだな。そう考えた俺はすぐさまプライベートの携帯電話で裕也に電話する。

 

『もしもし? 一体どうした』

「裕也。よく聞いてくれ」

『……なんだ?』

「俺はこれから一年近く社長として依頼を取り合えない。その上、おそらくこちらに戻って来れるかどうかわからない」

『マジか。どうするんだ?』

「だからお前に業務を一任する。地球圏内だけに集中してくれ」

『……いいのか?』

「ああ。そうでもしないと俺の愛する人達(・・・・・)が危険らしい」

 

 そう言うと『よくそんなこっぱずかしい事言えるな』と笑いながら返してから『それなら仕方ねぇな。力也とかにも事情を説明して助けてもらうか』と言ってくれた。

 

「……助かる」

『なぁに今までお前には助けられてばかりだからな。今回は俺らが助けてやるよ』

 

 ありがとう。自然と出たその言葉とともに、なぜか目頭が熱くなった。

 

 ちなみに、きちんとアリサとは夕食を共にした。




ご愛読ありがとうございます。

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