世にも不思議な転生者 作:末吉
*斉原雄樹視点
「――というわけで、これからよろしくな、みんな♪」
『――はいっ!!』
機動六課隊舎でのはやての挨拶が終わる。それを皮切りにみんなからの拍手。
隣にいる僕達はそれを一身に受けてどこかこそばゆい気持ちになりながらも――同時に僕達は緊張する羽目になっていた。
――管理局に入局し、その上で機動六課に入隊してきた大智の助言を受けて。
事の起こりはこのスピーチが始まる数分前。
はやての隊長室で僕達が懐かしんでいたところ、大智がどこからともなく現れた。
そんな機械を作っていたことを知っていたから大して驚くことはなかったけれど、驚いたのはその服装。
なんと、僕達と同じ管理局員の服装だったのだ。
突然の登場と驚きの服装に言葉を失う僕達。そんな事お構いなしに、彼は随分慣れた笑顔で挨拶をしてきた。
「本日入局し、管理局員となりそのままこちらに入隊することになった長嶋大智……です。これからしばらくの間よろしくお願いし…ます」
慣れない敬語を使っているからかどうにも間があるけれど、僕達はそんなことに気付いても何も言えない。
なぜなら大智が管理局にいるという事実が衝撃的だから。何度電話しても誘いを断ったという事実も相まって。
――最初に口を開いたのは、この沈黙の原因を作った大智。
「――敬語は不味いか?」
我に返った僕は、「いやそこは別にいいんだけど…」と言葉を濁すと、グリフィス君が驚いた顔で「あなたは大智さん! どうしたんですかその服装は!!」と言ったので、更に驚く。
「……ん? お前はグリフィスか?」
「はい! 数年前に助けていただいたグリフィスであります!! そこからも色々ありましたが、こうして管理局に入局できました!!」
「それは良かったな……ところで、なのはたちを元に戻せるか?」
「えっと……衝撃が強いせいだと思いますが」
グリフィス君が的確に答える。
その間違っていない答えに大智は目を瞑って「そうか……」というと、急に踵を返した。
「ど、どこに行かれるんですか?」
「どうもこの姿は刺激が強いらしい。少し時間を置いてまた来ることにするが――一つだけ言っておく」
そう言うと開いた扉を背にし、彼は僕達にとんでもない爆弾を落としてきた。
「俺が入った理由は、お前達だけだと全滅するからだ。だから鍛える。神様連中総出でな」
「「「「「!!?」」」」」
どこか悲しげな顔を見せた大智は、そのまま消えた。
で、所信表明が終わった後。
はやてとフェイトさんは中央管理局へ行くといい、なのはさんはフォワード勢にこれから戦うガジェットに似た機械――ガジェット・ドローンを戦わせるとのこと。
一応僕も教導官なんだけど……シャマルさんの手伝いをしている。
――さらっと大智も混ざってきて。
「シャマルさん、これここでいいんですか?」
「はい。おねが……え?」
大智の声に頷いたシャマルさんの動きが止まる。それを見ていたほかの隊員がシャマルさんに声をかけている間に、手早く機械を設置・調整を終わらせる。
「終わりましたよシャマルさん」
「……」
「シャマルさんどうしたんですか?」
終わらせた大智が報告するけどシャマルさんの反応せず、ほかの隊員が代わりに聞いたところ我に返ったらしい。
僕達だって驚いたからしょうがないよなんて思いながら運んでいると、「大智君いつの間に入局したの!?」と正常な叫び声をあげた。
ほかの人たちの動きが止まり、大智とシャマルさんに視線が集まる。
彼はポリポリと頬を掻きながら「入局したのは昨日の夜あたりですかね。色々と話を聞いて書類提出して試験をしてもらって。それでここに入隊が決まったのはついさっきです」と淀みない敬語ですらすらと経緯を話してくれた。
先ほどの彼とはあまりにも別人過ぎてさっきのはなんだったんだと思いたくなる一方で、それほどの急な入局をよく管理局が許したなとも考えた。
シャマルさんもそう考えたようで、「よくそんないきなりでなれましたね」と感心した。
「まぁ前々から書類はもらっていましたからね。あとは推薦書とか。それをまとめて持って行って少し話の分かる人と話したらって感じです」
その話が脅しじゃないことを僕は切に願う。
大智の話し相手がかわいそうだと思った僕は、周囲が予想に反してざわめいていないことに気付いた。
むしろ、どこか興味津々といったところ。
そんな視線を受けてなお大智はぶれないようで、「では俺は他に挨拶してきますのですみませんが席を外します。少ししか手伝わなかったこと、この場で謝っておきます」と丁寧に頭を下げてそのまま部屋を出ていく。
呆気にとられたみんなとは対照的に、立派にあいさつできるんだ本当はと感心した。
*
「見知った奴は全員驚いていたな」
『そりゃそうでしょうよ』
気配を断って歩きながらとりあえずデバイス製作の場所まで向かう俺。
管理局の真新しい制服を着てたった一人で行動していることにだれも気付かないという事実に当然かと思いながら歩いていると、シグナムが前方から歩いてきた。
そのまま歩いていると、シグナムは俺を確実に見て驚いていた。
「長嶋……なぜお前が管理局の制服を着ている」
絶対最初に聞くよなそれ。そんなことを思いながら何度目かの説明を、懲りずにする。
「機動六課に入るために管理局にしばらく籍を置くことにしました。これからよろしくお願いします、シグナム先輩」
「……よせ長嶋。お前に先輩と呼ばれるのは何か気分がへんになる」
「ですが私は新入りですので」
「敬語もやめろ。普通に話してくれ。頼む」
「……いいのかよシグナム」
「ああ。それでこそ長嶋だが……向こうに何しに行くんだ?」
話題が戻ってきたので、俺は素直に「デバイス製作班の人たちに挨拶してくる」と答える。
「そうか。ならそれはまたの機会でいいか? すでにフォワードの模擬練習が始まっているからそちらへ合流してもらいたい」
まぁ上司の言うことには逆らえないので、俺は素直にうなずいて足の向きをシグナムと同じほうへ変える。
隣同士で歩きながら、俺たちは世間話をした。
「そういえば先ほどの挨拶にはどうしていなかったんだ?」
「その前に挨拶に行ったら予想以上のリアクションをされてな。ちょっと空を眺めるために外にいたら電話があったので地球に戻ってた……そういうシグナムも成長したようだな」
「まだまだだ。ガジェットなどもはや敵ではないが、たまに出てくる偽神となると、こちらの被害が大きいままだからな」
「それでも何とか倒せるんだからいいだろ。俺なんて暴走した忘却神具止めたり回収したりドラゴンのストレス発散につきあったり家屋修復したり土地再生してそれどころじゃなかったからな」
「なんでもできるんだな、さすがに」
「力の汎用性が高いだけだ」
『その分私の出番は少ないですけどね!』
「……デバイスとは自虐するものか?」
「たぶん俺のだけだと思う」
そんなやり取りを(たまにナイトメアが口を挟みつつ)しながら普通に歩いていると、ヴィータを発見した。
その奥のほうでは
こんな金よくあったなと思いながら黙って近づくと、シグナムが「どうだヴィータ」と質問する。
それに答えようとこちらを向いて俺に気付いたヴィータは、大げさに驚いた。
「な、なんでこいつがここにいるんだよ!?」
「昨日から籍を置いたそうだ」
「よろしくお願いしますヴィータ先輩」
「やめろお前に敬語使われたら肌寒くなる!」
そこまで俺の敬語はおかしいだろうかと内心で首をかしげていると、シグナムがもう一度同じ質問をする。
それを受けたヴィータは冷静に「まだひよっこの域から脱してねぇよあいつらは」と断言する。
思わず俺は「それはそうだろ」と口をはさむ。
「ん? そういえば長嶋、お前どこに配属されるんだ?」
「機動六課ですが?」
「だから敬語やめろって。そうじゃなくてだな……」
「役回りとしてはどこに配属されるんだと聞きたいんだろ、ヴィータ」
「そうそう! それだシグナム!!」
その質問に俺は今までの会話を反芻して……首をかしげた。
「そういえばどこだか聞いてない」
「マジか」
「それはそうだろ。何せ昨日の今日でここにいるのだから」
「ま、どこでもいいや。基本何とかなるだろうから」
「そういわれると確かにそうだとしか答えられねぇのが不思議だよな…」
「それが長嶋だとしか言えないな」
そんな会話をしていると、なんか始まったらしい。前方の施設で爆発音が聞こえた。
「どうやら始まったようだな」
「ま、こんなものできなかったらどうしようもないけどな」
「つぅか何と戦っているんだ?」
今更な質問をすると、「お前なんでしらねぇんだよ」とヴィータに言われた。
俺は正直に「かかわった記憶がない」と答えると、シグナムが教えてくれた。
「ガジェットと同等の性能を持つガジェット・ドローンだ。本物さながらの動きをする」
「ガジェット……それってあれか? 小五の時なのはのリンカーコアに傷をつけた」
「……ああそうさ」
憎々しげに吐き捨てるヴィータ。それを見た俺はいまだに引きずっているのかと思いながら彼女の頭に手を置いて言った。
「後悔ばかりじゃ先に進まん。あいつ自身が前を見ているのだから、お前が立ち止っては一緒に進めないぞ」
「……あたしの頭に手を置くんじゃねぇ!!」
そういって蹴りを入れてきたので普通によけた俺は、「いきなりだな」と肩をすくめる。
「お前が子供みたいに頭に手を置いてきたからだろ!?」
「落ち込むのを励ましただけだ。その行為に意味はないし、むしろやりづらかった」
「殺す! 絶対に殺してやる!!」
「落ち着けヴィータ!」
何やら怒り出したので俺は視線を試験場へ向けたが、思い出したことがあったので独り言のようにつぶやいた。
「言っておくことがある。今回に限り俺のことを思う存分頼ってくれ。無論、それは稽古の話だが」
「……なんだよいきなり」
「これはなのは達に言った話だが、今回の未来は最悪全員死んでしまう可能性がある」
「!?」
「ど、どういうことだ!」
「あくまで最悪の未来の話だ。それを回避するためにはこれ以上に強くなってもらうしかない。だから、そのために俺はここにいる」
「……はやても死んじまうのか?」
「それもあり得るというだけだ。弱ければな」
「「……」」
黙りこくる二人。よほど衝撃的な話だったのだろう。
そりゃそうだろうなと思いながら、俺は励ますことにした。
「強くなれば問題ないだけだ。全員生き残るように俺や神様たちも全力で助けてやる」
そんなことを言っていると、不意にこちらに視線を向けたなのはと目が合った。
視線だけで何か怒ってるのが分かった俺は、仕方ないので「そういう訳だ。これから一年はここにいるし一緒に戦うさ」と二人に言ってからなのはの下へ向かう。
「どうしたんだ一体」
「べっつにー……ところで大智君。管理局に入ったのって本当?」
「期間限定だけどな」
「本当!?」
途端に喜ぶなのは。どうでもいいが、
「お前、あそこにいる奴らを教えるんだろ? よそ見していていいのか?」
「シャーリーさんがデータ分析してるから、私は特にアドバイスぐらいしかないんだよ」
「そうか」
どうやら、自分達で考えさせることを第一としているようだ。
特に文句をいう事はないので、俺は隣で座りこんでから呟く。
「頑張れよ」
「うん。頑張るよ! ……そういえばさ」
意気込んでから、何か思い当たることを思い出したのか質問してきた。
「大智君って私達の後輩なんだよね?」
「まぁそうだな」
「ということは、さ……私と一緒に居られるってこと、だよね?」
「……まぁ、そうだな」
フェイトやアリシアもその範囲にあると思うという言葉を飲み込み、とりあえず肯定。
するとホッと胸をなでおろしたかと思ったら、「あ」と何か思いついたような発言を。
きっと戦えと言われるんだろうなとぼんやり思っていると、「スバル達に戦い方を見せてあげるられるね」と案の定言ってきた。
「あのな、なのは」
「何?」
「俺の戦い方は俺でしかできないんだぞ? 参考なんてできる訳がないだろ」
「あはは……確かに」
「その上単純にスペックの差があり過ぎる。参考なんて無理だろうが」
「あーうん。そうだったね。ごめん」
そうこうしている内に何機か撃破したらしい。
なのはが驚いているところを見るとそう考えられると思った俺は、「中々優秀だな」と呟く。
「そうなんだよ! これは鍛えがいがあるよ!!」
「そりゃ良かったな。俺は言われれば手伝う位だ」
「……そ、そういえば会社の方は!?」
「裕也に任せた。アリサやすずかから電話が来たが、納得してもらった。おそらく力也や元一、木在の力を借りて」
「それじゃ、こっちの世界の依頼は?」
「しばらくはやらないな。お前らには死んでほしくないから」
「…………」
頬が赤くなったのが見上げればわかる。
だが特にいう事はないので、俺は爆発音に耳を澄ませていた。
ちなみに。
「大智君ならガジェットどうする?」
「素手で壊す。蹴って壊す。斬って壊す。そのほか約俺の手数と同等の手段がある」
「……とりあえずお構いなしだというのは分かったよ」
夜まで続いたこのトレーニングを一緒に見物し、最後の方は自分の寝床へ帰るためにはやてを探してそのことを言い、家へ帰った。
その時「なのはちゃん達と一緒の部屋でもいいんちゃう?」とニヤニヤしながら訊いてきたので、「だったらお前と雄樹が一緒の部屋でもいいだろ」と言い返しておいた。
案の定、顔を真っ赤にして支離滅裂なことを言っていた。
ご覧いただきありがとうございます。