世にも不思議な転生者   作:末吉

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二か月も空きました。すいません。


125:相談

「ブリザードブレス!!」

「甘い」

「がっ!」

 

 広範囲の冷気を一足飛びで範囲外に移動し、放った本人――雄樹を思いっきり蹴飛ばす。

 身体はくの字に曲がるほどだったが何とか盾を入れたようで、地面を削って勢いを殺すことに成功していた。

 ようやく目が追い付いてきたのかと思った俺は、デバイスのない状態で「八剣抜刀」と呟く。

 一瞬で魔法陣が展開され、俺の周りには八本の剣が浮いていた。

 

「炎刀・焔」

 

 その内の一本を手に取った俺はそのまま一瞬で距離を詰め、こちらに来ようとした雄樹に対し振り下ろす。

 雄樹は咄嗟に剣で防御する。だが、この剣に対し防御するというのは悪手。

 飛び散る火花により刀身は一気に燃え上がり、その重量を増していく。

 前世での兵器の中で案はあったがあの世界では不可能だった剣の一つ。それを魔法で再現した。

 

「ぐ、ぅ!!」

 

 雄樹の足が地面にめり込む。重量のある炎が長さを変えていく。

 その様子を見ながら、俺は昼にルシエに言われた言葉を反芻していた。

 

『長嶋さんにとってなのは教導官やフェイト執務官、アリシアさんやシグナムさんはどういった人達なんですか?』

 

 どういった……それを実際に言葉で表すとなると「護りたい人たち」となる。

 そうなるとそこに愛などの感情は含まれているのだろうが、おそらくその愛は『親愛』なのだろうと考えてしまう。

 

「ハッ!」

 

 雄樹が全力で剣を押し返す。押し返された俺は飛び下がると同時に二メートル強の長刀となった焔を再び振り下ろす。

 

「ぐぅぅ、ガァァァ!!」

 

 わずか数秒で押し負けた雄樹はそのまま地面に叩きつけられると同時に焔に焼かれた。

 まだ一本目だというのにこれじゃぁな…とぼんやり考えた俺は回復魔法をかけて起き上がらせる。

 

「まだ刀一本目だぞ? 全部出させるまで生きなければ神様と闘うには程遠いと思うぞ」

「げほっ、ゲホッ……いきなりこれはレベルが違いすぎるよ」

「甘えるな。俺は鍛えるために来たと言ったはずだ。それに、俺はBランク程の魔力しか放出できない上にバリアジャケットがないんだぞ? 一撃いれれば勝てるのに何をためらってるんだ?」

「……その一撃いれるが遠いんだよ!」

 

 雄樹はそう言って俺を殴る。

 殴られた俺はそれだけフラストレーションがたまっていたのかと思い「だったらおとなしく手を引け。解散しろ。そして二度と関わるな。そうすれば平穏な生活を送れる」と勧告する。

 だが雄樹は、「ここまで来て関わるなだって!? 君は本当に自分勝手だな!」と叫ぶ。

 

「確かにそうかもしれないが、こちら側に来たのはお前達だぞ。俺は別に頼んだわけではない」

「っ! またそうやって……!!」

 

 そう言って剣を握りしめたかと思ったら、雄樹が今までとは比べ物にならない速度で迫ってきて剣を横に振ってきた。

 だが普通に見えている俺はそれを浮いていた八振りの剣の一本を無造作につかんで防ぐ。

 怒りの表情をしている雄樹は、俺が防いでいることに関して驚かずそのまま叫ぶ。

 

「君は本当に変わってない! 変えようと努力すらしない!! なんでさ! どうして前世と同じままで生きているのさ! その生き方で後悔してないのかい!?」

「よくしゃべるな、雄樹。余程余裕があると見た」

 

 今は戦闘。この場は戦場。ならば言って聞かせる通りはない。あるのは生きるか死ぬかだけ。殺すか殺されるかのみ。

 俺はなおも近づいてくる雄樹の剣を防いでいた剣で弾き飛ばし、そこから戻ってくる隙で「土刀・土蜘蛛」と呟いて地面に刺す。

 すると刺した地面から―俺の左横の方――が揺れたと思ったら、刀を中心に蜘蛛の巣のように地面に亀裂が入る。

 あらかじめ(・・・・・)浮いていた俺はこの刀の効果は受けない。が、雄樹は地面に足が取られていた。

 

「くっ!」

「やめとけ。土蜘蛛の半径三十メートルは底なし沼となる。神様でもない限り抜け出せん」

「う、うぉぉぉぉお!!」

 

 足掻く雄樹。それを見た俺は土蜘蛛を抜いてから手を放し、また違う刀を手に取り呟く。

 

「氷刀・白雪」

 

 なおも浮いたままの俺はその刀で空気を斬ると、切られた範囲の空気が氷となって自然落下する。

 これを雄樹の前で見せた俺は、「分かったか?」と抜け出せなくなった雄樹に対して訊ねる。

 しかし反応はなかった。

 

 まぁそうだよなと思った俺は地面におりて袈裟切りをして氷を飛ばす。

 雄樹に全部当たると思ったそれらは、しかし盾で防がれる。

 

「足が動けなくとも問題ない!」

 

 そう言って盾と剣からカートリッジを消費して魔方陣を展開させるが、俺は再び浮いて刀を地面に突き刺す。

 その刀を中心に急速に凍り出す地面。それが雄樹の近くに来た時、あいつの魔法も発動した。

 

「ニブルヘイム!!」

 

 キン、と音がしたと思ったら、一瞬で俺が凍りついたのが分かった。

 ……今度は俺が死ぬのか。

 等と思ったが、それほど氷らなかったので、全身に力を入れて氷を弾き飛ばす。

 

「なっ!!」

 

 どうやら驚いている様だが、そこまで衝撃的なことはしていない。

 異空間からの攻撃とか平気でしてくる神様相手に、この程度など驚くに値しない。

 そのまま佇んでいると、雄樹が驚きの顔のまま凍った。

 刀の柄の上に着地した俺は、凍ったまま動かない雄樹を見つつぼんやり考える。

 

 俺は変わってない。それは確かにそうだ。そんなのは前々から知っていたことだろう。

 だがそれを直すのはまだまだ先になる。生きていればという条件が付くが。

 簡単に死ぬ気はないが、それが神様相手なら難しい。

 

 あいつらの実力を急速に伸ばさないと全員で生き残れないな…と考えていると、更にひびが入り始めたので、俺は魔法を解除する。

 すんでのところで元に戻った雄樹を近くに降り立って見ていると、呼吸を整えながら雄樹は言った。

 

「……まったく。君は、不器用だね…」

「不器用というか、おそらく知らないだけだと思うが」

「……今更だけど、彼女達はこれに耐えられると思うのかい? 僕ですら泣き言をいうこれに」

「耐えてもらわんと困る。正直言って、今のままでは死ににいかせるようなものだ」

「……そう、だね」

 

 精神という肉体のない状況での消耗。いつもより少々飛ばしていたとはいえ、流石に疲弊するのは免れないか。

 このまま眠ったら目を覚まさないだろうな…と雄樹を観察して思った俺は、「休憩するか。今ここで眠られたら明日に響く」と言っておく。

 

「休憩、ね……自分で追い詰めといてよく言うね」

「二段階ぐらいすっ飛ばしていきなり対魑魅魍魎だからな。俺なりに調整したつもりだ」

「どのくらいだい?」

「ざっと八割」

「うん。段階二つ飛ばして八割という君の基準が良く分からないよ」

「現戦力での八割という意味だ。全力の四割ぐらいしか満たないぞ」

「あーごめん。正直君の全力での四割の意味が分からない」

「全力状態のうちの四割という意味だ。バリアジャケットを展開して超高速肉弾戦のみと同等だな」

「……」

 

 想像ができないのか言葉を失ったらしい雄樹。

 それで話題が終わったと思った俺は、先程から思い浮かべていた疑問をぶつけることにした。

 

「ところで恋愛における先輩の雄樹」

「……なんだい?」

「先程から訓練をしつつ考え事をしていたのだが」

「片手間で僕の相手をしてたのかい!?」

「……俺は彼女達を『愛している』のだろうか?」

「…………え?」

 

 言ってる意味が分からないという顔をして、雄樹の表情が凍りついた。

 それはそうだろうと納得しつつ、俺は座り込んで遠い目をしながら言った。

 

「ルシエに言われた、『教導官達とはどういった関係なんですか』という問いを自問自答したがどうしても『恋人』もしくは『好きな人』とは言えなかった。複数人に対しそう言う感情を抱いてるからかと思ったが、やはり俺の中に『恋人』という明確な条件がないんだよ。だから」

「……だから、なのはさん達の事を『好き』になってるかどうかわからない、って?」

「ああ」

 

 素直に頷くと、雄樹はバリアジャケットを解除して座り込み、「君って本当に難しく考えるよね…」と呟く。

 

「難しく考えてるのか?」

「そりゃね。僕なんて前世のアニメで見ていたこれ――と言っても第二期なんだけど、それを見ていた時のはやての頑張る姿に胸が高鳴ってね。転生する前に真っ先にこの世界を思い浮かべたのは、はやてが好きだったからだしね」

 

 ま、どこか似た境遇だったかもしれないけどね……。そう前世の事を漏らした雄樹に、俺は「どうして好きになったのかは説明できるのか?」と訊ねる。

 

「一目惚れ、かな。僕の場合。気が付けばアニメのキャラだったはやての事をずっと考えていた。友達が持ってきたDVDを見た、その時から」

「そうなのか」

「大智はないのかい? なのはさん達の事を『好き』だと感じる事」

「……どうだろう。二人きりになるととても気まずくはなるんだが、それでもどちらかというと緊張からくるものだと思っているからな……」

「その緊張が『相手に変な風に思われていたらどうしよう?』とかという考えから来ると考えたことは?」

「だから緊張するのか?」

「……まず緊張する理由に心当たりがなかったんだね」

 

 ため息をつく。それに対し俺は何も言わず、代わりに「俺はその辺をはっきりさせたいと考えている」と言っておく。

 

「それはいいことだと思うよ」

「だが、それはこの件が片付くまで考えないことにしようと思う」

「え、なんでさ?」

「死なれたら考えることも出来ないだろ」

「…………」

 

 あっさりと言われたことに言葉を失う雄樹。俺はそれを気にせず、「生き残りたいのなら守ってやれ。そして、二人で強く在れ」と言ってから「先にここから出るわ。お休み」と言って俺は目を瞑った。

 

 この世界から消える瞬間、「言われなくても強くなってやるよ。僕は、はやてが好きだからね」という覚悟を持った声が聞こえた。

 

 

 

 ちなみに。

 

「大丈夫か雄樹?」

「あーごめん。今日は完全に無理っぽい。はやてに『ごめん』って言っといてくれる?」

「それならお安い御用だ。ゆっくり休んでくれ」

 

 昨晩の無理がたたったらしく、気怠そうに部屋の中から言ってきたので俺ははやてに「とりあえず今日雄樹の代わりに仕事する」と言って指示を仰いだ。

 

 ま、書類仕事を二時間で終わらせてついでだからはやての仕事(今日の分)も大体終わらせて雄樹の見舞いに行かせた。

 どうやら心配だったようで、言ったらすぐさま出て行った。

 

 とりあえずその間来た相談事を解決しなければならなかったが……まぁたまにはいいだろう。




広げた風呂敷まとめるのって大変ですよね。

ご愛読ありがとうございます。
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